ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー症候群)

Mucopolysaccharidosis type VI (Maroteaux-Lamy), ARSB

概要

ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー症候群)は、体のなかで不要になった糖の鎖(ムコ多糖)を分解できず、全身の細胞にたまっていく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、ARSB 遺伝子の変化が原因となります。

骨や関節、心臓の弁、目、耳などに症状が現れますが、知的な発達は保たれるのが、ほかの型のムコ多糖症との大きな違いです。酵素を補う治療が使えます。

原因

ARSB 遺伝子は、アリルスルファターゼB(N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ)という酵素の設計図です。この酵素は、細胞のなかのライソゾームで、デルマタン硫酸というムコ多糖を分解しています。

酵素がはたらかないとデルマタン硫酸が分解されず、骨・軟骨・心臓の弁・角膜などにたまって、少しずつ組織のはたらきをそこないます。

症状

  • 低身長、背骨や胸郭の変形(多発性異骨症)
  • 関節が硬くなり、動かせる範囲が狭くなる
  • 角膜が濁って視力が下がる
  • 心臓の弁の異常(僧帽弁・大動脈弁)
  • 肝臓や脾臓が大きくなる
  • 難聴、くり返す中耳炎
  • 手根管症候群、脊髄の圧迫
  • 気道が狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸を起こす
  • 知的な発達は保たれる

検査・診断

尿中のムコ多糖(デルマタン硫酸)の増加を調べ、白血球や培養した皮膚の細胞でアリルスルファターゼBの酵素活性を測定して診断します。ARSB 遺伝子の解析によって確定します。

治療

  • 酵素補充療法(ガルスルファーゼ/ナグラザイム®の点滴。国内でも使用できます)
  • 造血幹細胞移植が検討されることがあります
  • 心臓の弁、角膜、脊髄の圧迫などに対する手術
  • 理学療法、呼吸のサポート(睡眠時無呼吸に対するCPAPなど)
  • 定期的な心エコー、聴力検査、眼科・整形外科の診察

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる ARSB 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、ARSB 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

ムコ多糖症VI型(Maroteaux-Lamy症候群)は ARSB(5q14.1)の両アレル変異により生じるライソゾーム病である。ARSBがコードする N-acetylgalactosamine-4-sulfatase の欠損により、デルマタン硫酸(および一部のコンドロイチン-4-硫酸)が分解されず全身の細胞に蓄積する。

他のムコ多糖症(I型、II型、III型など)と異なり、中枢神経系の実質病変を欠き知能は正常である点が最大の臨床的特徴である。ただし、脊髄圧迫や水頭症による二次的な神経症状は生じうる。

臨床経過は残存酵素活性と尿中GAG排泄量に相関し、急速進行型(尿中GAG高値、10歳未満で著明な症状)と緩徐進行型に分けられる。心弁膜症と気道狭窄が生命予後を規定する。

治療はガルスルファーゼ(rhASB)による酵素補充療法で、6分間歩行距離や呼吸機能の改善が報告されている。骨・軟骨および角膜への到達性には限界があり、造血幹細胞移植が選択されることもある。周術期は気道確保が困難であり、麻酔管理に特別な注意を要する。

よくある質問

Q. 知的な発達に影響はありますか?

A. この型では、知的な発達は保たれるのが特徴です。ほかの型のムコ多糖症とはこの点が大きく異なります。

Q. 治療法はありますか?

A. 酵素を点滴で補う「酵素補充療法」があり、国内でも使用できます。早く始めるほど、体への蓄積を抑えられると考えられています。

Q. 手術を受けるときの注意はありますか?

A. 気道が狭くなっていることがあり、麻酔の管理に特別な注意が必要です。必ずこの病気であることを麻酔科の先生にお伝えください。

Q. どんな検査を定期的に受けますか?

A. 心臓の超音波検査、聴力検査、眼科(角膜)、整形外科(背骨・関節)、睡眠時の呼吸の検査などを、定期的に受けていただきます。

Q. 次の子も同じ病気になりますか?

A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。

参考文献

  • Litjens T, Hopwood JJ. Mucopolysaccharidosis type VI: Structural and clinical implications of mutations in N-acetylgalactosamine-4-sulfatase. Hum Mutat. 2001;18(4):282-295.
  • Harmatz P, Giugliani R, Schwartz I, et al. Enzyme replacement therapy for mucopolysaccharidosis VI: a phase 3, randomized, double-blind, placebo-controlled, multinational study of recombinant human N-acetylgalactosamine 4-sulfatase (recombinant human arylsulfatase B or rhASB). J Pediatr. 2006;148(4):533-539.
  • Valayannopoulos V, Nicely H, Harmatz P, Turbeville S. Mucopolysaccharidosis VI. Orphanet J Rare Dis. 2010;5:5.
  • Giugliani R, Lampe C, Guffon N, et al. Natural history and galsulfase treatment in mucopolysaccharidosis VI (MPS VI, Maroteaux-Lamy syndrome). Am J Med Genet A. 2014;164A(8):1953-1964.
  • OMIM #253200 Mucopolysaccharidosis type VI
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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