ムコ多糖症VII型(スライ症候群)

Mucopolysaccharidosis type VII, GUSB

概要

ムコ多糖症VII型(スライ症候群)は、体のなかで不要になった糖の鎖(ムコ多糖)を分解できず、全身の臓器にたまっていく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、GUSB 遺伝子の変化が原因となります。

ムコ多糖症のなかではもっともまれな型です。もっとも重い場合は、生まれる前に全身がむくむ「胎児水腫」として現れます。酵素を補う治療が使えるようになりました。

原因

GUSB 遺伝子は、β-グルクロニダーゼという酵素の設計図です。この酵素は、ライソゾームでデルマタン硫酸・ヘパラン硫酸・コンドロイチン硫酸を分解しています。

酵素がはたらかないとこれらのムコ多糖が分解されず、骨・肝臓・脾臓・心臓の弁・脳などにたまっていきます。

症状

  • 非免疫性胎児水腫(重症型では、生まれる前から全身のむくみとして現れます)
  • 低身長、骨格の変形(多発性異骨症)、関節の拘縮
  • 肝臓・脾臓が大きくなる、臍ヘルニア・鼠径ヘルニア
  • 特徴的な顔つき
  • 知的な発達の遅れ(重症型でみられます。軽症型では保たれます)
  • 角膜の濁り、難聴、心臓の弁の異常
  • くり返す気道感染

検査・診断

尿中のムコ多糖の増加を調べ、白血球や培養した皮膚の細胞でβ-グルクロニダーゼの酵素活性を測定して診断します。GUSB 遺伝子の解析によって確定します。原因不明の胎児水腫では、この病気を含むライソゾーム病を考える必要があります。

治療

  • 酵素補充療法(ベストロニダーゼ アルファ/メプセヴィ®。海外で承認されています。国内での使用については担当の先生にご確認ください)
  • 造血幹細胞移植が検討されることがあります
  • 心臓の弁、脊髄の圧迫、ヘルニアなどに対する手術
  • 理学療法、呼吸のサポート
  • 定期的な心エコー、聴力検査、眼科・整形外科の診察

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる GUSB 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、GUSB 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

ムコ多糖症VII型(Sly症候群)は GUSB(7q11.21)の両アレル変異による。β-glucuronidase の欠損によりデルマタン硫酸・ヘパラン硫酸・コンドロイチン-4,6-硫酸が蓄積する。ムコ多糖症全体の1%未満と最もまれである。

臨床像は幅広く、最重症型は非免疫性胎児水腫として胎内で顕在化する。ライソゾーム病は非免疫性胎児水腫の原因の約5〜15%を占め、そのなかでMPS VIIは代表的な原因のひとつである。原因不明の胎児水腫では鑑別に加えるべきである。

軽症型では知能が保たれ、骨系統病変と角膜混濁が主体となる。MPS I(Hurler)と類似の表現型をとるが、酵素診断で鑑別できる。

ベストロニダーゼ アルファ(vestronidase alfa)は2017年にFDAが承認した組換えβ-グルクロニダーゼで、尿中GAG排泄の減少と歩行・肺機能の改善が報告されている。中枢神経への到達性は限定的である。

よくある質問

Q. 胎児水腫と言われました。この病気の可能性がありますか?

A. 原因不明の胎児水腫では、この病気を含むライソゾーム病を調べることがあります。担当の先生にご相談ください。

Q. 治療法はありますか?

A. 酵素を点滴で補う治療が海外で承認されています。国内での使用については担当の先生にご確認ください。

Q. 知的な発達に影響しますか?

A. 重い型では影響しますが、軽い型では保たれます。型によって経過が大きく異なります。

Q. ムコ多糖症の他の型とどう違うのですか?

A. 原因となる酵素が違います。VII型はもっともまれな型で、酵素の検査で区別できます。

Q. 手術のときの注意はありますか?

A. 気道が狭くなっていることがあり、麻酔の管理に注意が必要です。必ず病名をお伝えください。

参考文献

  • Sly WS, Quinton BA, McAlister WH, Rimoin DL. Beta glucuronidase deficiency: report of clinical, radiologic, and biochemical features of a new mucopolysaccharidosis. J Pediatr. 1973;82(2):249-257.
  • Tomatsu S, Montaño AM, Dung VC, et al. Mutations and polymorphisms in GUSB gene in mucopolysaccharidosis VII (Sly Syndrome). Hum Mutat. 2009;30(4):511-519.
  • Harmatz P, Whitley CB, Wang RY, et al. A novel Blind Start study design to investigate vestronidase alfa for mucopolysaccharidosis VII. Mol Genet Metab. 2018;123(4):488-494.
  • Gimovsky AC, Luzi P, Berghella V. Lysosomal storage disease as an etiology of nonimmune hydrops. Am J Obstet Gynecol. 2015;212(3):281-290.
  • OMIM #253220 Mucopolysaccharidosis type VII
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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