ネマリンミオパチー10型

Nemaline Myopathy 10, LMOD3

概要

ネマリンミオパチー10型は、生まれつき筋肉の力が弱い「先天性ミオパチー」のひとつです。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、LMOD3 遺伝子の変化が原因となります。

筋肉を顕微鏡で見ると、「ネマリン小体(ロッド)」と呼ばれる棒状の構造が現れるのが名前の由来です。症状の重さには大きな幅があり、生まれてすぐ呼吸の助けが必要な方から、成人になってから気づかれる方までさまざまです。

原因

LMOD3 遺伝子は、筋肉が縮むときに使われる「細いフィラメント」を構成する(あるいはその形成に関わる)たんぱく質の設計図です。

筋肉は、太いフィラメント(ミオシン)と細いフィラメント(アクチン、トロポミオシン、トロポニン等)が滑り合うことで縮みます。この遺伝子に変化があると細いフィラメントの構造や調節が乱れ、筋肉が十分な力を出せなくなります。乱れた成分が集まったものが、ネマリン小体として観察されます。

LMOD3(レイオモジン3)は、細いフィラメントが新しく作られるときの「起点」を作るたんぱく質です。この型も重症で、生まれたときから著しい筋力低下がみられます

症状

  • 生まれたときからの筋緊張の低下(体がやわらかい)
  • 顔・のど・体幹の筋力低下:哺乳が難しい、飲み込みにくい、表情が乏しい
  • 呼吸の筋力低下:この病気で予後を決める最も重要な症状です(夜間の低換気から始まることがあります)
  • 運動発達の遅れ
  • 脊柱側弯、関節の拘縮、胸郭の変形
  • 高口蓋、下顎が小さいなどの特徴
  • 知能は保たれます
  • 経過は進行しないか、ごくゆっくりであることが多いとされます

検査・診断

筋力低下の様子、血液検査(CKは正常〜軽度上昇)、筋MRIから疑い、筋生検でネマリン小体(ゴモリトリクローム変法染色で赤紫色の棒状構造)を確認します。原因遺伝子が10以上知られているため、LMOD3 遺伝子を含む遺伝学的検査によってネマリンミオパチー10型と確定します。

治療

  • 根本的に治す方法は確立していません
  • 呼吸機能の定期的な評価と、非侵襲的換気療法(NPPV):予後を大きく左右します
  • 嚥下の評価と栄養の管理(必要に応じて経管栄養)
  • 理学療法、装具による関節拘縮の予防
  • 脊柱側弯に対する定期的な評価と、必要に応じた手術
  • 麻酔を受けるときは必ず病名を伝えてください(呼吸抑制が遷延しやすく、術後の呼吸管理に配慮が必要です)
  • 感染症(とくに気道感染)の予防と早期治療

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる LMOD3 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、LMOD3 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

ネマリンミオパチー10型は LMOD3 の両アレル変異による先天性ミオパチーである。ネマリンミオパチーは、筋線維内のネマリン小体(Z帯由来のα-アクチニン、アクチン等からなる電子密度の高い構造)を病理学的特徴とし、責任遺伝子として NEB、ACTA1、TPM3、TPM2、TNNT1、CFL2、KBTBD13、KLHL40、KLHL41、LMOD3 など10以上が同定されている。

これらの遺伝子産物の多くは細いフィラメント(thin filament)の構成蛋白または、その長さ・安定性の制御因子である。したがってネマリンミオパチーは「thin filament myopathy」と総称される。ネマリン小体の量と筋力低下の程度は必ずしも相関せず、収縮蛋白の機能異常そのものが病態の本質と考えられている。

LMOD3(3p14.1)はleiomodin-3をコードし、アクチンフィラメントの核形成(nucleation)を促進して細いフィラメントの形成を開始させる。KLHL40はLMOD3を安定化するため、両者は同一経路上にあり、いずれの欠損も重症ネマリンミオパチーを生じる。臨床的には出生時からの重度筋力低下、呼吸不全、関節拘縮を呈し、予後不良である。

予後を規定するのは呼吸筋の障害である。四肢の筋力が保たれていても呼吸機能が低下していることがあり、自覚症状に乏しい夜間低換気の評価(睡眠時の経皮CO2モニタリング等)が重要である。麻酔管理では、呼吸抑制の遷延と術後の換気補助を要する可能性を想定する。

よくある質問

Q. 進行しますか?

A. 多くの型では進行しないか、進行してもごくゆっくりです。ただし、成長に伴って側弯や呼吸の問題が出てくることがあります。

Q. 呼吸の検査はなぜ必要ですか?

A. この病気では呼吸の筋力低下が予後を大きく左右します。夜間の呼吸から弱くなることが多く、自覚しにくいため、定期的に調べておくことが大切です。

Q. 知的な発達に影響しますか?

A. 影響しません。この病気で弱くなるのは筋肉です。

Q. 手術や麻酔のときの注意はありますか?

A. 必ず病名をお伝えください。麻酔後に呼吸が戻りにくいことがあり、術後の呼吸管理に配慮が必要です。

Q. KLHL40型と関係がありますか?

A. はい。KLHL40 はこの遺伝子が作るたんぱく質を守るはたらきをしており、同じ経路の病気です。症状もよく似ています。

参考文献

  • Yuen M, Sandaradura SA, Dowling JJ, et al. Leiomodin-3 dysfunction results in thin filament disorganization and nemaline myopathy. J Clin Invest. 2014;124(11):4693-4708.
  • North KN, Wang CH, Clarke N, et al. Approach to the diagnosis of congenital myopathies. Neuromuscul Disord. 2014;24(2):97-116.
  • Sewry CA, Laitila JM, Wallgren-Pettersson C. Nemaline myopathies: a current view. J Muscle Res Cell Motil. 2019;40(2):111-126.
  • Wallgren-Pettersson C, Sewry CA, Nowak KJ, Laing NG. Nemaline myopathies. Semin Pediatr Neurol. 2011;18(4):230-238.
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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