ネマリンミオパチー7型

Nemaline Myopathy 7, CFL2

概要

ネマリンミオパチー7型は、生まれつき筋肉の力が弱い「先天性ミオパチー」のひとつです。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、CFL2 遺伝子の変化が原因となります。

筋肉を顕微鏡で見ると、「ネマリン小体(ロッド)」と呼ばれる棒状の構造が現れるのが名前の由来です。症状の重さには大きな幅があり、生まれてすぐ呼吸の助けが必要な方から、成人になってから気づかれる方までさまざまです。

原因

CFL2 遺伝子は、筋肉が縮むときに使われる「細いフィラメント」を構成する(あるいはその形成に関わる)たんぱく質の設計図です。

筋肉は、太いフィラメント(ミオシン)と細いフィラメント(アクチン、トロポミオシン、トロポニン等)が滑り合うことで縮みます。この遺伝子に変化があると細いフィラメントの構造や調節が乱れ、筋肉が十分な力を出せなくなります。乱れた成分が集まったものが、ネマリン小体として観察されます。

CFL2(コフィリン2)は、細いフィラメントを切って作り替えるはたらきをするたんぱく質です。筋肉が新しく作られ、修復されるために必要です。

症状

  • 生まれたときからの筋緊張の低下(体がやわらかい)
  • 顔・のど・体幹の筋力低下:哺乳が難しい、飲み込みにくい、表情が乏しい
  • 呼吸の筋力低下:この病気で予後を決める最も重要な症状です(夜間の低換気から始まることがあります)
  • 運動発達の遅れ
  • 脊柱側弯、関節の拘縮、胸郭の変形
  • 高口蓋、下顎が小さいなどの特徴
  • 知能は保たれます
  • 経過は進行しないか、ごくゆっくりであることが多いとされます

検査・診断

筋力低下の様子、血液検査(CKは正常〜軽度上昇)、筋MRIから疑い、筋生検でネマリン小体(ゴモリトリクローム変法染色で赤紫色の棒状構造)を確認します。原因遺伝子が10以上知られているため、CFL2 遺伝子を含む遺伝学的検査によってネマリンミオパチー7型と確定します。

治療

  • 根本的に治す方法は確立していません
  • 呼吸機能の定期的な評価と、非侵襲的換気療法(NPPV):予後を大きく左右します
  • 嚥下の評価と栄養の管理(必要に応じて経管栄養)
  • 理学療法、装具による関節拘縮の予防
  • 脊柱側弯に対する定期的な評価と、必要に応じた手術
  • 麻酔を受けるときは必ず病名を伝えてください(呼吸抑制が遷延しやすく、術後の呼吸管理に配慮が必要です)
  • 感染症(とくに気道感染)の予防と早期治療

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる CFL2 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、CFL2 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

ネマリンミオパチー7型は CFL2 の両アレル変異による先天性ミオパチーである。ネマリンミオパチーは、筋線維内のネマリン小体(Z帯由来のα-アクチニン、アクチン等からなる電子密度の高い構造)を病理学的特徴とし、責任遺伝子として NEB、ACTA1、TPM3、TPM2、TNNT1、CFL2、KBTBD13、KLHL40、KLHL41、LMOD3 など10以上が同定されている。

これらの遺伝子産物の多くは細いフィラメント(thin filament)の構成蛋白または、その長さ・安定性の制御因子である。したがってネマリンミオパチーは「thin filament myopathy」と総称される。ネマリン小体の量と筋力低下の程度は必ずしも相関せず、収縮蛋白の機能異常そのものが病態の本質と考えられている。

CFL2(14q13.1)は筋特異的コフィリンで、F-アクチンの脱重合と切断(severing)を担い、細いフィラメントのターンオーバーを制御する。欠損によりアクチンフィラメントの過剰な蓄積とネマリン小体の形成が生じる。報告例は少数で、ミニコアやアクチン蓄積など多様な病理像を示すことがある。

予後を規定するのは呼吸筋の障害である。四肢の筋力が保たれていても呼吸機能が低下していることがあり、自覚症状に乏しい夜間低換気の評価(睡眠時の経皮CO2モニタリング等)が重要である。麻酔管理では、呼吸抑制の遷延と術後の換気補助を要する可能性を想定する。

よくある質問

Q. 進行しますか?

A. 多くの型では進行しないか、進行してもごくゆっくりです。ただし、成長に伴って側弯や呼吸の問題が出てくることがあります。

Q. 呼吸の検査はなぜ必要ですか?

A. この病気では呼吸の筋力低下が予後を大きく左右します。夜間の呼吸から弱くなることが多く、自覚しにくいため、定期的に調べておくことが大切です。

Q. 知的な発達に影響しますか?

A. 影響しません。この病気で弱くなるのは筋肉です。

Q. 手術や麻酔のときの注意はありますか?

A. 必ず病名をお伝えください。麻酔後に呼吸が戻りにくいことがあり、術後の呼吸管理に配慮が必要です。

Q. この型に特徴的なことはありますか?

A. 筋肉のフィラメントを作り替えるはたらきに関わる遺伝子です。報告例が少ない型ですが、管理の方法は他の型と共通です。

参考文献

  • Agrawal PB, Greenleaf RS, Tomczak KK, et al. Nemaline myopathy with minicores caused by mutation of the CFL2 gene encoding the skeletal muscle actin-binding protein, cofilin-2. Am J Hum Genet. 2007;80(1):162-167.
  • North KN, Wang CH, Clarke N, et al. Approach to the diagnosis of congenital myopathies. Neuromuscul Disord. 2014;24(2):97-116.
  • Sewry CA, Laitila JM, Wallgren-Pettersson C. Nemaline myopathies: a current view. J Muscle Res Cell Motil. 2019;40(2):111-126.
  • Wallgren-Pettersson C, Sewry CA, Nowak KJ, Laing NG. Nemaline myopathies. Semin Pediatr Neurol. 2011;18(4):230-238.
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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