短肋骨胸郭異形成症2型(多指症を伴う場合と伴わない場合)

Short-rib thoracic dysplasia 2 with or without polydactyly, IFT80

概要

短肋骨胸郭異形成症2型(多指症を伴う場合と伴わない場合)は、肋骨が短いために胸郭(胸のかご)が狭くなり、肺が十分に育たないために、生まれたあとの呼吸に大きな影響が出る骨系統疾患です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、IFT80 遺伝子の変化が原因となります。

手足の骨も短く、多指症(指が多い)を伴う場合と伴わない場合があります。以前は「窒息性胸郭異形成症(ジューヌ症候群)」「短肋骨多指症候群」などと別々に呼ばれていましたが、いずれも繊毛のはたらきの異常による連続した病気と分かり、現在はまとめて短肋骨胸郭異形成症と呼ばれます。

原因

IFT80 遺伝子は、細胞の表面にある「一次繊毛」という小さなアンテナのなかで、材料を運ぶしくみに関わるたんぱく質の設計図です。

骨が伸びる部分(成長板)の細胞は、一次繊毛を通じて「どこまで伸びるか」という信号(ヘッジホッグ信号)を受け取っています。この運搬がうまくいかないと信号が乱れ、骨の伸びが止まって肋骨や手足が短くなります

IFT80 は、繊毛の先端へ材料を運ぶ「行き」の輸送(IFT-B複合体)の部品です。ヒトで最初に、繊毛の輸送の異常が骨の病気を起こすと証明された遺伝子です。

症状

  • 狭く細長い胸郭(鐘のような形)と短い肋骨
  • 生まれたあとの呼吸障害:この病気の予後を決める最も重要な症状です
  • 手足の骨が短い(四肢短縮)、指が短い
  • 多指症(伴う場合と伴わない場合があります)
  • 骨盤の特徴的な形(三叉状寛骨臼)
  • 比較的軽症で、成人期まで生存する例が多い
  • 腎臓の病気(腎癆、嚢胞腎):学童期以降に現れることがあります
  • 肝臓の線維化、網膜の変性

検査・診断

妊娠中の超音波検査で、胸郭が狭い・四肢が短いことから疑われることがあります。出生後はX線検査で、短い肋骨・狭い胸郭・骨盤の特徴的な形を確認します。原因遺伝子が20以上あるため、IFT80 遺伝子を含む遺伝学的検査によって短肋骨胸郭異形成症2型(多指症を伴う場合と伴わない場合)と確定します。

治療

  • 呼吸の管理がもっとも重要です:酸素投与、人工呼吸器、気管切開が必要になることがあります
  • 胸郭を広げる手術(胸郭拡張術、VEPTRなど)が検討されることがあります
  • 感染症(とくに気道感染)の予防と早期治療
  • 腎機能の定期的な確認(学童期以降に腎不全が現れることがあります)
  • 肝機能、眼科(網膜)の定期的な評価
  • 多指症に対する整形外科的な治療
  • 栄養の管理、理学療法

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる IFT80 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、IFT80 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

短肋骨胸郭異形成症2型(多指症を伴う場合と伴わない場合)は IFT80 の両アレル変異による。短肋骨胸郭異形成症(short-rib thoracic dysplasia, SRTD)は、繊毛内輸送(intraflagellar transport, IFT)の障害による骨系統繊毛病(skeletal ciliopathy)である。

IFTは、繊毛の先端方向へ運ぶIFT-B複合体+キネシン2と、基部方向へ戻すIFT-A複合体+細胞質ダイニン2から成る。成長板軟骨細胞では、この輸送を介したヘッジホッグ(Ihh)シグナルの制御が内軟骨性骨化を規定するため、その破綻が肋骨・四肢の短縮をもたらす。

IFT80(3q25.33)はIFT-B複合体の構成因子で、2007年にヒトで初めて「IFT遺伝子の変異が骨格繊毛病を起こす」ことを示した遺伝子である。この発見が、Jeune症候群をはじめとする一群を「繊毛病」として再定義する契機となった。表現型は比較的軽く、致死的でない例が多い。

臨床的には、従来の Jeune 症候群(窒息性胸郭異形成症)、短肋骨多指症候群(Saldino-Noonan、Majewski、Verma-Naumoff、Beemer-Langer型)、Ellis-van Creveld症候群、Sensenbrenner症候群(頭蓋外胚葉異形成症)は、同一のIFT経路上にある連続した疾患群として理解される。同じ遺伝子が、変異の重症度に応じて周産期致死型から成人期の腎障害単独まで生じうる。予後を規定するのは新生児期の呼吸障害であり、これを乗り切った症例では学童期以降の腎不全が問題となるため、長期の腎機能サーベイランスが必須である。

よくある質問

Q. 生まれたあと、呼吸は大丈夫でしょうか?

A. 胸郭が狭いため、呼吸の管理がもっとも重要になります。出生前に診断がついている場合は、呼吸の準備ができる施設での分娩をおすすめします。

Q. 胸郭を広げる手術はありますか?

A. 胸郭拡張術という方法があり、検討されることがあります。適応と時期は、呼吸の状態と成長に応じて判断します。

Q. 腎臓の検査はなぜ必要ですか?

A. この病気では、学童期以降に腎臓のはたらきが低下することがあります。呼吸の問題を乗り越えたあとに大切になるため、定期的な確認が必要です。

Q. 指が多いことがありますか?

A. 型と個人によって、多指症を伴う場合と伴わない場合があります。必要に応じて整形外科で対応します。

Q. 最初に見つかった遺伝子と聞きました。

A. はい。この遺伝子で、繊毛の輸送の異常が骨の病気を起こすことが初めて証明されました。比較的症状が軽い型とされています。

参考文献

  • Beales PL, Bland E, Tobin JL, et al. IFT80, which encodes a conserved intraflagellar transport protein, is mutated in Jeune asphyxiating thoracic dystrophy. Nat Genet. 2007;39(6):727-729.
  • Huber C, Cormier-Daire V. Ciliary disorder of the skeleton. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2012;160C(3):165-174.
  • Schmidts M. Clinical genetics and pathobiology of ciliary chondrodysplasias. J Pediatr Genet. 2014;3(2):46-94.
  • Zhang W, Taylor SP, Nevarez L, et al. IFT52 mutations destabilize anterograde complex assembly, disrupt ciliogenesis and result in short rib polydactyly syndrome. Hum Mol Genet. 2016;25(18):4012-4020.
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

AIチャットで相談する AIチャット