概要
シトステロール血症1型(Sitosterolemia 1)は、植物に含まれる脂(植物ステロール)が腸から吸収されすぎて、体のなかにたまってしまう病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、ABCG8 遺伝子の変化が原因となります。
皮膚や腱に黄色いこぶ(黄色腫)ができ、若いうちから動脈硬化が進んで、心筋梗塞などを起こすことがあります。食事の工夫と薬で、たまる量を減らすことができます。
原因
ABCG8 遺伝子は、腸と肝臓ではたらく「排出ポンプ」の設計図です。このポンプは、ABCG5 がつくるたんぱく質と組になって、体に取り込まれた植物ステロールを腸や胆汁へ押し戻しています。
どちらかの遺伝子に変化があるとポンプがはたらかず、ふだんはほとんど吸収されない植物ステロールが体にたまります。
症状
- ひじ・ひざ・アキレス腱・手の甲などにできる黄色いこぶ(黄色腫)
- 若いうちから進む動脈硬化(狭心症・心筋梗塞)
- 血液中の植物ステロール(シトステロールなど)の増加
- 溶血性貧血、血小板の減少
- 関節の痛み
検査・診断
血液中の植物ステロール(シトステロール、カンペステロールなど)を測ることで診断します。コレステロールの値は正常のこともあり、家族性高コレステロール血症とまちがえられることがあります。ABCG8 遺伝子の解析によって確定します。
治療
- 植物ステロールを多く含む食品(植物油、ナッツ、種実類など)を控える
- エゼチミブ(腸からの吸収をおさえる薬)の内服
- 胆汁酸吸着レジンの内服
- 動脈硬化の進行を防ぐための定期的な検査
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる ABCG8 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、ABCG8 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
シトステロール血症1型は、ABCG8(2p21)の両アレル変異により生じる。ABCG8はABCG5とヘテロ二量体を形成してはじめて機能する half-transporter であり、いずれか一方の欠損で同じ表現型をきたす。
ABCG5/ABCG8 は小腸上皮の刷子縁膜と肝細胞の毛細胆管側膜に局在し、吸収された植物ステロールを腸管腔および胆汁へ排出する。機能喪失により血中植物ステロール濃度が正常の30〜100倍に上昇し、黄色腫と早発性動脈硬化をきたす。
エゼチミブによるNPC1L1阻害が有効で、スタチンの効果は限定的である。日本人ではABCG8変異例の報告が比較的多いとされる。
小児期に黄色腫を認め、LDLコレステロールが著明高値でない症例、あるいはスタチン抵抗性の高コレステロール血症例では、本症を鑑別に挙げ血清植物ステロールを測定する。
よくある質問
Q. 植物油やナッツは食べてはいけないのですか?
A. 多く含む食品は控えていただく必要があります。管理栄養士とご相談のうえ、無理のない食事の工夫を続けることが大切です。
Q. コレステロールの薬は効きますか?
A. 一般的なスタチンの効果は限られますが、エゼチミブという薬がよく効くことが知られています。
Q. 2型とはどう違うのですか?
A. 原因となる遺伝子が違うだけで(1型は ABCG8、2型は ABCG5)、症状や治療は同じです。
Q. 貧血もこの病気と関係がありますか?
A. はい。赤血球の膜に植物ステロールがたまることで、溶血性貧血や血小板の減少が起こることがあります。
Q. 子どもにも遺伝しますか?
A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、お子さまが発症する確率は4分の1です。
参考文献
- Berge KE, Tian H, Graf GA, et al. Accumulation of dietary cholesterol in sitosterolemia caused by mutations in adjacent ABC transporters. Science. 2000;290(5497):1771-1775.
- Lu K, Lee MH, Hazard S, et al. Two genes that map to the STSL locus cause sitosterolemia: genomic structure and spectrum of mutations involving sterolin-1 and sterolin-2. Am J Hum Genet. 2001;69(2):278-290.
- Salen G, von Bergmann K, Lütjohann D, et al. Ezetimibe effectively reduces plasma plant sterols in patients with sitosterolemia. Circulation. 2004;109(8):966-971.
- Tada H, Nomura A, Ogura M, et al. Diagnosis and Management of Sitosterolemia 2021. J Atheroscler Thromb. 2021;28(8):791-801.
- OMIM #210250 Sitosterolemia 1
