X連鎖性滑脳症2型

X-linked Lissencephaly 2, ARX

概要

X連鎖性滑脳症2型(XLAG/X連鎖性滑脳症・性器異常症候群)は、脳の表面のしわ(脳回)が十分に作られないために、重いけいれんと発達の障害が現れる病気です。X連鎖という形式で遺伝し、ARX 遺伝子の変化が原因となります。

男の子では、けいれんと性器の形の異常(外性器の低形成)を伴う重い型になります。女の子(保因者)では、脳梁の欠損などの軽い所見にとどまることが多いとされます。

原因

ARX 遺伝子は、脳の発生を調節する転写因子(他の遺伝子のはたらきを制御するたんぱく質)の設計図です。とくに、脳のなかで抑制性の神経細胞(インターニューロン)が正しい場所へ移動するために重要です。

この遺伝子に変化があると神経細胞の移動がうまくいかず、脳のしわが浅くなります(滑脳症)。また、ARXは精巣の発生にも関わるため、外性器の形にも影響します。

症状

  • 難治性のけいれん(生後まもなくから。点頭てんかんの形をとることがあります)
  • 重度の発達の遅れ
  • 筋緊張の異常(低下または硬直)
  • 外性器の低形成(男児):小陰茎、停留精巣など
  • 体温調節の異常
  • 脳梁の欠損や低形成
  • MRIでの滑脳症(脳のしわが浅い)
  • 予後は不良で、乳幼児期に命にかかわることが多いとされます

検査・診断

頭部MRIで滑脳症と脳梁の異常を確認し、男児で外性器の異常を伴うことから疑います。ARX 遺伝子の解析によって確定します。ARX の変化は、この病気のほか、点頭てんかん、X連鎖知的障害など幅広い病気を引き起こします

治療

  • 根本的に治す方法は確立していません
  • 抗てんかん薬によるけいれんのコントロール(治療に抵抗することが多いとされます)
  • 呼吸・栄養の管理
  • 体温調節の異常への対応
  • 理学療法、体位の管理による合併症の予防
  • ご家族への支援と、緩和ケアを含めた話し合い
  • 次のお子さまについての遺伝カウンセリング

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる ARX 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、ARX 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

この疾患はX連鎖で遺伝します。お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。キャリアスクリーニングテストでは、お母さまが保因者かどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

X連鎖性滑脳症・性器異常症候群(XLAG)は ARX(Xp21.3)の機能喪失型変異による。ARXはaristaless関連ホメオボックス転写因子で、GABA作動性インターニューロンの接線方向移動と分化、および精巣の発生に必須である。

ARX関連疾患は変異の種類によって表現型が大きく異なる。機能喪失型(ナンセンス・フレームシフト)はXLAGを、ポリアラニン鎖の伸長は点頭てんかん(West症候群)・Partington症候群・非症候性X連鎖知的障害を生じる。同一遺伝子でこれほど広い表現型スペクトラムを示す例は少ない。

XLAGの滑脳症は後頭部優位で皮質が3層構造をとる点で、LIS1(PAFAH1B1)関連滑脳症(後頭部優位・4層)やDCX関連(前頭部優位)と区別される。インターニューロンの欠損が難治性てんかんの基盤である。

女性ヘテロ接合体では、X染色体不活化により表現型が軽く、脳梁欠損のみを呈することが多い。したがって、児がXLAGと診断された場合、母の頭部MRIで脳梁欠損を確認することが保因者診断の手がかりとなる。

よくある質問

Q. けいれんは薬で抑えられますか?

A. 治療に抵抗することが多い病気です。複数の薬を組み合わせて、発作を減らすことを目指します。

Q. 女の子でも発症しますか?

A. 保因者の女の子では、脳梁の欠損などの軽い所見にとどまることが多いとされます。男の子で重い症状が出ます。

Q. 同じ遺伝子で別の病気になることがあるのですか?

A. はい。ARX の変化は、点頭てんかんやX連鎖知的障害など、幅広い病気を引き起こします。変化の種類によって症状が変わります。

Q. 母親も検査を受けたほうがよいですか?

A. 保因者かどうかを知ることは、次のお子さまについて考えるうえで重要です。母親の頭部MRIで脳梁を確認することも手がかりになります。

Q. 出生前に調べられますか?

A. ご家族の変化が分かっている場合には、次の妊娠で出生前診断を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

参考文献

  • Kitamura K, Yanazawa M, Sugiyama N, et al. Mutation of ARX causes abnormal development of forebrain and testes in mice and X-linked lissencephaly with abnormal genitalia in humans. Nat Genet. 2002;32(3):359-369.
  • Sherr EH. The ARX story (epilepsy, mental retardation, autism, and cerebral malformations): one gene leads to many phenotypes. Curr Opin Pediatr. 2003;15(6):567-571.
  • Kato M, Das S, Petras K, et al. Mutations of ARX are associated with striking pleiotropy and consistent genotype-phenotype correlation. Hum Mutat. 2004;23(2):147-159.
  • Shoubridge C, Fullston T, Gécz J. ARX spectrum disorders: making inroads into the molecular pathology. Hum Mutat. 2010;31(8):889-900.
  • OMIM #300215 Lissencephaly, X-linked, 2
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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