「お腹の赤ちゃんは元気に育っているだろうか?」 妊娠がわかった瞬間から、多くのプレママ・プレパパが抱くこの切実な思い。現代医療の進歩により、生まれる前に赤ちゃんの健康状態や疾患のリスクを知る「出生前診断」が普及してきました。
しかし、いざ調べ始めると「NIPT(新型出生前診断)」「胎児ドック」「クアトロ検査」「羊水検査」「絨毛(じゅうもう)検査」など、あまりにも多くの専門用語が並び、どれを選べばいいのかパニックになってしまう方も多いのではないでしょうか。
「費用もバラバラだし、リスクも違うみたいだけど、何がどう違うの?」 「全部受けなきゃいけないの?それともどれか1つでいいの?」
もしあなたが今、そんな迷いの中にいるのなら、この記事がすべての疑問を解決します。 本コラムでは、数ある出生前診断を「2つのグループ」に分けて分かりやすく整理します。そして、それぞれのメリット・デメリット、決定的なリスクの違い、さらには医師として絶対におすすめしたい「障害を見逃さないための最強の検査組み合わせ」について、徹底的に解説します。

名前が乱立している出生前診断ですが、難しく考える必要はありません。実は、すべての検査は大きく「非確定検査」と「確定検査」のたった2つのグループに分けられます。 ここを混同してしまうと検査選びで必ず失敗するため、まずはこの全体像をしっかり把握しましょう。
非確定検査とは、別名「スクリーニング検査」とも呼ばれます。 この検査の最大の目的は、「潜在的なリスクを可視化すること(ふるい分け)」です。 超音波(エコー)や母体の血液を採取するだけで行えるため、お腹の赤ちゃんや母体への身体的ダメージ(流産リスクなど)が「ゼロ」であることが最大の特徴です。
具体的には以下の検査がこのグループに含まれます。
確定検査は、その名の通り「白黒はっきりさせる(診断を確定させる)」ための検査です。 非確定検査(スクリーニング検査)で「陽性(リスクが高い)」という結果が出た場合に、最終的な確認として行われます。 お母さんのお腹に直接長い針を刺して、羊水や胎盤の細胞を採取するため、「わずかながら流産のリスク(身体的ダメージ)が存在する」のが非確定検査との決定的な違いです。
具体的には以下の2つです。
まずは「リスクのない検査」から受けること
日本産科婦人科学会はもちろん、アメリカ産婦人科学会(ACOG)のガイドラインにおいても、「いきなりお腹に針を刺す確定検査を受けるのではなく、まずは流産リスクのないスクリーニング検査から検討すること」が強く推奨されています。 まずは安全な方法でリスクの有無を調べ、もし疑いが出た場合のみ、覚悟を持って確定検査へ進む。これが絶対的な鉄則です。
では、最初に受けるべきスクリーニング検査(非確定検査)の中で、どれを選べば良いのでしょうか? ここでは代表的な3つの検査について、その「得意分野」と「限界」を比較します。
通常の妊婦健診で行う数分のエコーとは異なり、専門の資格を持った医師が20〜30分かけて赤ちゃんの全身を詳細にスキャンします。「指がちゃんと5本あるか」「心臓の構造に異常(穴など)はないか」といった「体の形の異常」は、この胎児ドックでしか見つけることができません。
また、イギリスの胎児医学財団(FMF)のニコライデス教授が提唱したことで有名な「NT(首の後ろのむくみ)」もここで確認します。このむくみが厚いと、ダウン症などの染色体異常や心疾患のリスクが高いというサインになります。 ただし、超音波を当てる医師の「腕前(技術と経験)」によって精度が大きく左右されるという注意点があります。
妊婦さんの血液中の成分を分析し、ダウン症などの確率(例:1/300など)を割り出す検査です。比較的安価で受けやすいのが特徴ですが、専門医の視点から言うと「今から受けるのはあまりお勧めしない」検査です。
なぜなら、精度(病気を見つける力)が約80%程度しかないからです。つまり、「陰性」と言われて安心して生んだのにダウン症だったり、逆に「陽性」と言われてパニックになり羊水検査をしたら全く異常がなかった(偽陽性)というケースが非常に多く、結果に振り回されて不安を増幅させてしまう妊婦さんが後を絶ちません。また、妊娠15週以降と検査時期が遅いのもデメリットです。
1997年に「妊婦さんの血液中に、赤ちゃんのDNAの断片がわずかに浮遊している」ことが発見され、それを直接解析できるようにしたのがNIPTです。
胎児ドックが「形」を見るのに対し、NIPTは細胞レベルの「DNA(設計図)」を解析します。染色体の異常は体の形には現れないことも多いため、エコー画像だけでは絶対にわかりません。 NIPTの最大の強みは、「検出力が99%以上」という圧倒的な精度の高さです。特にダウン症に関しては、NIPTで「陰性」と出れば99.9%安心と言えるほどの確実性を誇ります。 費用はかかりますが、妊娠9〜10週(クリニックによってはもっと早く)という早期から受けられ、得られる情報の正確さと安心感は他の検査を凌駕しています。最も投資対効果の高い検査と言えます。
もしNIPTなどのスクリーニング検査で「陽性」という結果が出た場合、それが本当に正しいのかを白黒つけるために「確定検査」に進みます。ここで登場するのが絨毛検査と羊水検査です。
※NIPTは「胎盤由来のDNA」を見ているため、もしNIPTで陽性になった場合は、胎盤の誤差(胎盤モザイク)を排除するために、最終確認は赤ちゃん自身の細胞を調べる「羊水検査」を選ぶのが基本となります。
ここまで一般的な検査を解説してきましたが、近年アメリカの学会(ACMG)などが「すべての夫婦が受けるべき」と強く推奨しているにもかかわらず、日本ではまだあまり知られていない非常に重要な検査があります。
それが「キャリアスクリーニングテスト(保因者診断)」です。
NIPTや羊水検査は、主に「染色体の数(量)」の異常を調べます。しかし、このキャリアスクリーニングは、お腹の赤ちゃんではなく「ご両親の遺伝子レベルの細かな変化」を調べます。
私たち人間は誰しも、発症はしていないだけで、何らかの病気の原因となる遺伝子の変異(劣性遺伝子)をいくつか持っています。片方の遺伝子だけなら発症しないため、自分がその病気の「保因者(キャリア)」であることに一生気づきません。 しかし、もし夫婦揃って「偶然同じ病気の保因者」だった場合、生まれてくる赤ちゃんにその病気が発症する確率が「4分の1(25%)」の確率で発生してしまいます。
そして恐ろしいことに、この劣性遺伝が引き起こす病気(脊髄性筋萎縮症など)は、致死性のものや重篤な障害を伴うものが非常に多いのです。 この遺伝子レベルの異常は染色体の数の問題ではないため、いくら高額なNIPTを受けても、どんなに精密な胎児ドックを受けても絶対に見つけることはできません。「家系に病気の人がいないから大丈夫」は全く通用しないのです。
日本ではこの検査の「結果の解釈」ができる高度な遺伝専門医が少ないため普及が遅れていますが、より深い安心を求め、取り返しのつかない後悔を防ぐためには、絶対に検討すべき検査です。
ここまでお読みいただければ、それぞれの検査が「万能ではない」ことがお分かりいただけたと思います。 だからこそ、ひろし先生が6万人以上のデータから導き出した「障害を見逃さないための最強の結論(組み合わせ)」は、以下の3つを重ね合わせることです。
この3つは、見ている世界が全く異なります。 NIPTだけでは「形と遺伝子」が見逃され、胎児ドックだけでは「染色体と遺伝子」が見逃されます。 得意分野が異なるこの3つを組み合わせることで、お互いの弱点(死角)を完璧に補い合い、美しい階段状にリスクを塞ぐことができます。これこそが、現代の医学で分かり得るリスクを限りなくゼロに近づける、最も理にかなった最強の戦略なのです。
もちろん、これらすべての検査を受けるには数十万円という費用がかかります。決して安い金額ではありません。 しかし、これから20年以上かけて育てていく我が子の命を守るための「最初のプレゼント」、そして「最大の安心材料」として考えれば、その価値は十分にあります。
検査を受けるか受けないか、どれを選ぶかに「全員共通の正解」はありません。ご夫婦でしっかりと話し合い、納得して出した結論であれば、それがお二人にとっての正解です。 しかし、「知らなかったから選べなかった」という後悔だけはしてほしくありません。今回解説した正しい医学的知識を武器に、後悔のないマタニティライフを送り、笑顔で赤ちゃんを迎えられることを心から願っています。
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