こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。
結論からお伝えすると、妊婦健診や歯科・整形外科などで受ける通常のレントゲン(X線)検査やCT検査で、お腹の赤ちゃんに影響が出るリスクは極めて低いとされています。胸部X線検査で赤ちゃんが受ける線量は0.01mGy未満、頭部CTでも0.005mGy未満と報告されており、いずれも国際的な基準で「影響は認められない」とされる100mGyという数値を大きく下回るためです。
「妊娠に気づかずレントゲンを撮ってしまった」「CT検査を受けたけれど赤ちゃんは大丈夫だろうか」。実際の診療の場でも、こうしたご相談を受けることは少なくありません。ネット上には極端に不安を煽る情報もあれば、根拠なく安全だと言い切る情報もあります。大切なのは、イメージで怖がることではなく、正体・量・リスクを一つずつ正しく知ることです。
この記事でわかること
代表的な検査で胎児が受ける線量は、いずれも「影響が出るとされる基準値」を大きく下回ります。まずは数値で全体像をつかんでおきましょう。
| 検査の種類 | 胎児被ばく線量の目安 |
|---|---|
| 胸部X線検査 | 0.01 mGy未満 |
| 頭部CT検査 | 0.005 mGy未満 |
| 腰椎CT検査 | 2.4 mGy程度 |
| 腹部CT検査 | 8 mGy程度 |
| 骨盤部CT検査 | 25 mGy程度 |
| 胎児への影響が出るとされる基準値(しきい値) | 100 mGy超 |
数値の出典は日本放射線技術学会「妊娠と医療での放射線について」です。X線やCTのような体外から照射する放射線検査では、mGy(ミリグレイ)とmSv(ミリシーベルト)はほぼ同じ数値として扱われるため、以降は文脈に応じて併記します。
ご覧の通り、骨盤部CTのように比較的線量が高い検査でも25mGy程度。しきい値の100mGyには届きません。国立保健医療科学院の解説でも「100mGy以下の胎児線量であれば、放射線被ばくを理由に妊娠を中断する医学的な正当性はない」と明記されています。1回や2回の検査で、赤ちゃんに障害が出るような線量に達することはまずありません。
放射線は「エネルギーを持って空間を飛ぶ粒子や電磁波」そのもの、放射能は「放射線を出す能力」を指します。ニュースや病院でよく耳にする2つの言葉ですが、混同している方は意外と多いものです。まずは基本を整理しましょう。
わかりやすく例えるなら、懐中電灯と光の関係に似ています。放射線は懐中電灯から出ている「光(エネルギー)」そのもの。放射能は懐中電灯が光を出す「能力」のことです。「放射能が漏れる」というニュースは、放射線を出す能力を持った物質(放射性物質)が外に出た、という意味になります。
すべての物質は原子からできていますが、中には状態が不安定な原子があります。この原子が安定しようとして変化するとき、余分なエネルギーを外に放出したもの。これが放射線の正体です。
放射線にはいくつか種類があり、それぞれ性質が異なります。アルファ線やベータ線のような粒子線は、物質に衝突すると原子を弾き飛ばして「イオン化(電離)」を起こしますが、透過力は弱く、紙一枚で止まるものもあります。一方、ガンマ線や医療用のエックス線のような電磁波は貫通力が強く、体を通り抜けて骨や臓器の様子を映し出せるのは、この性質を利用しているためです。
「放射線=人工的に作られた特別なもの」というイメージを持つ方もいますが、実際は違います。宇宙から降り注ぐ宇宙線、大地に含まれる放射性物質、空気中のラドン、食べ物に含まれるカリウム40など、私たちは生まれたときから自然放射線を浴び続けています。
世界平均では年間およそ2.4mSvの自然放射線を浴びているとされ、それでも私たちは健康に暮らしています。つまり「放射線があるかないか」ではなく、「浴びる量が許容範囲内かどうか」が判断のポイントです。
放射線は細胞内のDNAを傷つけますが、少量であれば体には修復する力が備わっています。「浴びたかどうか」ではなく「量」で考えるべき理由は、この修復のメカニズムにあります。
私たちの体は約37兆個の細胞でできており、その一つひとつに遺伝情報であるDNAが入っています。放射線が体を通過するとき、強力なエネルギーで細胞内の原子や分子を弾き飛ばし(イオン化)、これがDNAにダメージを与えます。
ダメージの与え方は大きく2パターンです。放射線がDNAの鎖を直接切断する「直接作用」と、体の60〜70%を占める水分子に放射線が当たって活性酸素などの反応性の高い物質が生まれ、それがDNAを傷つける「間接作用」があります。
DNAが傷つくと聞くと不安になるかもしれませんが、日常生活のストレスや代謝、紫外線、自然放射線などによってもDNAは毎日傷ついています。それでも私たちがすぐに病気にならないのは、細胞に修復能力が備わっているからです。少量の放射線でDNAが傷ついても、修復酵素がすぐに働いて元通りに直してくれます。
問題になるのは、修復能力を超えるほどの大量の放射線を一度に浴びた場合です。修復が追いつかなかったり、修復ミスが起きたりすると、細胞が死滅したり、がん化のリスクが生まれたりします。放射線の影響を考えるときに大切なのは「浴びたか、浴びていないか」の二択ではなく、量と時間の掛け算だということです。
胎児の成長段階によって放射線への感受性は変わりますが、器官形成期でも通常の検査でしきい値を超えることはまずありません。時期ごとの特徴を整理します。
| 妊娠時期 | 感受性の特徴 | 100mGy超の被ばく時に懸念されること |
|---|---|---|
| 受精〜妊娠3週ごろ(着床前後) | 「All or None」の時期 | ダメージが大きい場合は流産に至ることがある一方、生き残った場合は修復され、奇形を残しにくいとされる |
| 妊娠4週〜15週ごろ(器官形成期、特に8〜15週) | 最も感受性が高い時期 | 小頭症や精神発達の遅れなどのリスクが理論上高まるとされる |
| 妊娠16週以降 | 感受性は次第に低下 | 同じ線量でも影響はより小さいと考えられている |
器官形成期は赤ちゃんの臓器が作られる大切な時期で、感受性が最も高くなります。ただし、この時期であっても「100mGyを超える大量被ばく」が条件であり、先ほどの表の通り通常のレントゲンやCTでこの数値に達することはまずありません。
リスクが極めて低いとはいえ、被ばくは少ないに越したことはありません。妊娠中、あるいは妊娠の可能性がある場合は、必ず医師や放射線技師に伝えてください。
現場では、お腹を防護衣(鉛のエプロン)で覆う、撮影範囲を必要最小限にする、といった配慮が行われます。放射線を使わないMRIや超音波検査で代用できないか、医師に相談してみるのも一つの方法です。逆に言えば、医師が「レントゲンやCTが必要」と判断した場面では、検査を受けずに病気を見逃すリスクのほうが、母子にとって大きくなる場合が多いのです。
妊娠中に他の病気の治療が必要になったときの考え方は、妊娠中に病気が見つかったときの対処法でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
結論として、福島第一原発事故による先天異常や遺伝的影響の増加は確認されていません。ネット上ではいまだに根拠のない噂を見かけますが、公的なデータで冷静に確認しましょう。
福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センターの県民健康調査(基本調査)によると、震災後4か月間の行動記録をもとに推計された外部被ばく線量は、対象者の99.8%が5mSv未満、最高値でも25mSvという結果でした。
| 比較対象 | 線量の目安 |
|---|---|
| 福島県民健康調査(基本調査)の外部被ばく線量・最高値 | 25 mSv程度 |
| 骨盤部CT検査(胎児被ばく) | 25 mGy程度 |
| 自然放射線(世界平均・年間) | 2.4 mSv程度 |
| 胎児への影響が出るとされる基準値(しきい値) | 100 mGy超 |
住民の被ばく線量の最高値でも、胎児への影響が出るとされるしきい値には遠く及びません。当時パニックのように語られた印象と、実際の数値の間には大きな差があったことがわかります。
国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書は、事故による健康影響の主な結論として「先天性異常・遺伝的影響はみられない」と明記しています。環境省の解説ページでも、「放射線被ばくに関連する先天性異常や死産、早産、低出生体重の過剰についての信頼できるエビデンスの存在は確認されていない」とされ、震災後の福島県内における早産率・低出生体重児率・先天奇形/先天異常発生率は、全国的な人口動態統計と差がないことが分かっています。
広島・長崎の原爆のように一瞬で数千mSvを浴びる「急性・高線量被ばく」と、今回のような低線量・長期の被ばくとでは、体への影響の出方がまったく異なります。微量の放射線であれば、私たちの細胞が持つ修復能力が十分に機能するため、健康被害にはつながりにくいのです。
放射線への不安は、数値で比較すると和らぐことが少なくありません。ここまでの数値を振り返ってみましょう。
私たちは自然放射線だけで年間2.4mSv程度を浴びています。国際線の飛行機に搭乗した際も、上空では地上より宇宙線量が増えるため被ばく量はわずかに上乗せされますが、詳しい考え方は妊娠中の飛行機は大丈夫?赤ちゃんへの影響と気を付けるポイントでも取り上げています。医療検査やワクチン接種など、他の医療行為の安全性を調べる際にも、公的機関の情報にあたる考え方は共通しています。妊婦のコロナワクチン接種は安全?母体と胎児への影響もあわせてご覧ください。
妊娠中は、ホルモンバランスの影響もあり、普段よりも不安になりやすいものです。「ネットの情報が怖くてたまらない」「どうしても検査の影響が心配」。そんなときは一人で抱え込まず、主治医や私たち専門家に相談してください。データにもとづいた正しい知識は、あなたの不安をやわらげる助けになるはずです。
NIPTは母体血液中のDNA断片から胎児の染色体の変化を調べる検査であり、放射線による影響を調べる検査ではありません。被ばくに関する心配ごとは、妊婦健診の際に産婦人科の主治医へ直接相談するのが確実です。出生前診断そのものについては出生前診断はいつからいつまで?種類や時期、診断方法についてでも解説していますので、あわせてご覧ください。
放射線は自然界にも存在し、私たちは日常的に浴びています。「あるかないか」ではなく、「体に影響が出る量(しきい値)を超えているかどうか」で考えることが大切です。
通常のレントゲンやCT検査の線量は、胎児に影響が出るとされる基準(100mGy)をはるかに下回ります。1回や2回受けたからといって、赤ちゃんに障害が出ることはまずありません。不要な検査は避けるべきですが、必要な検査を過度に恐れる必要もない、というのが医学的な結論です。
福島原発事故後の先天異常の増加も確認されていません。一般住民の被ばく線量は、医療検査と同程度かそれ以下にとどまっており、根拠のない噂に惑わされる必要はありません。放射線は、正しく使えば病気を見つけたり治療したりする心強い道具です。今日お伝えした数値を、不安なときの拠りどころにしていただければと思います。
通常の胸部X線検査などで胎児が受ける線量は0.01mGy未満で、影響が出るとされる100mGyという基準値を大きく下回ります。多くの場合、過度に心配する必要はありません。気になる場合は、次の妊婦健診で撮影した時期と検査内容を医師に伝えてください。
頭部CTの胎児線量は0.005mGy未満、腹部CTでも8mGy程度とされ、しきい値の100mGyには届きません。ただし検査部位によって線量は変わるため、妊娠中であることを事前に申告し、必要に応じてMRIや超音波など放射線を使わない検査に変更できないか相談してください。
国際的な基準では、100mGyを超えない被ばくであれば胎児への奇形発生率の増加は認められないとされています。通常の医療検査で1回にこの数値を超えることはまずありません。
器官が作られる妊娠4週〜15週ごろ、特に8〜15週が最も感受性の高い時期とされています。この時期に100mGyを超える大量被ばくがあった場合、小頭症などのリスクが上がるとされていますが、通常の検査でこの線量に達することはありません。
増えていません。環境省やUNSCEAR(国連科学委員会)の報告、福島県の県民健康調査によると、事故後の先天異常発生率や早産率に全国平均との差は確認されていません。県民健康調査の基本調査でも、外部被ばく線量は99.8%が5mSv未満、最高値でも25mSvという結果でした。
わかりません。NIPTは母体血液中のDNA断片から染色体の変化を調べる検査で、放射線による影響を調べるものではありません。被ばくに関する不安は、妊婦健診の際に産婦人科の主治医に直接相談してください。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
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日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
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