クラリノ症候群 (Currarino syndrome)

この記事のまとめ

クラリノ症候群(Currarino syndrome)は、脊椎(仙骨)の形成不全、直腸の奇形、および仙骨前面の腫瘤(しゅりゅう)の3つの特徴を併せ持つ先天性の疾患です。これらは「クラリノ三徴」と呼ばれます。 この症候群は、7番染色体にあるMNX1遺伝子(旧称HLXB9)の変異、あるいは7番染色体長腕末端(7q36.3)の微細欠失などが原因で起こることが分かっています。

頻度

正確な有病率は不明ですが、非常に稀な疾患とされています。しかし、家族内に同じ症状を持つ人が見つかることも多く、無症状や軽症のために診断されていないケースも存在すると考えられています。

症状

クラリノ症候群の診断には、以下の3つの特徴(三徴)が重要です。ただし、個人によってすべての症状が揃わない場合もあります。

  1. 仙骨の形成不全(半仙骨) 仙骨(腰の下にある骨)が左右非対称であったり、一部が欠けていたりします。レントゲン検査では、鎌(かま)のような形に見える「鎌状仙骨(scimitar sacrum)」が特徴的です。
  2. 肛門直腸奇形 肛門が狭い(肛門狭窄)、あるいは肛門が開いていない(鎖肛)などの状態です。これにより、新生児期からのひどい便秘が初期症状となることが多くあります。
  3. 仙骨前面の腫瘤(presacral mass) 仙骨と直腸の間の隙間に、腫瘍や嚢胞(のうほう)ができることです。最も多いのは「奇形腫(テラトーマ)」や、脊髄の膜が飛び出す「前方髄膜瘤(ぜんぽうずいまくりゅう)」です。
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原因

多くの場合、7番染色体の 7q36.3 領域に位置する MNX1遺伝子 の異常が原因です。

  • 遺伝子変異: MNX1遺伝子の配列の一部が書き換わっている状態。
  • 微細欠失: MNX1遺伝子を含む7q36.3領域がごくわずかに欠けている状態。

MNX1遺伝子は、胎児期における身体の後方の形成(尾側の発達)を調節する重要な役割を担っているため、この遺伝子が正しく働かないことで、仙骨や直腸の形成に影響を及ぼします。

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遺伝

  • 常染色体顕性(優性)遺伝: 親の一方が原因遺伝子を持っている場合、50%の確率で子供に受け継がれます。
  • 浸透率の低さと表現度の多様性: 遺伝子を受け継いでも、非常に軽症(便秘のみなど)で気づかない人もいれば、重症の奇形を持つ人もいます。
  • 突然変異: 家族に誰も症状がなく、子供で初めて発生することもあります。
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治療・管理

奇形の種類や程度に応じた外科的治療が中心となります。

  1. 外科的手術: 肛門直腸奇形に対する形成術や、仙骨前面の腫瘤(奇形腫など)の摘出が行われます。
  2. 便秘の管理: 術後も慢性的な便秘が続くことが多いため、食事療法や緩下剤による長期的なケアが必要です。
  3. 合併症の監視: 腫瘤が髄膜瘤である場合、髄膜炎のリスクがあるため、早期の診断と治療が重要です。

NIPT(新型出生前診断)における検出

クラリノ症候群の原因が「7q36.3領域の微細欠失」である場合は、全染色体領域の欠失・重複を調べるタイプのNIPTで検出できる可能性があります。 一方で、原因が「MNX1遺伝子内の小さな変異(点変異)」である場合は、現在の一般的なNIPTでは検出できません。

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