先天性魚鱗癬 常染色体潜性4B型(道化師様魚鱗癬)

Ichthyosis, congenital, autosomal recessive 4B (Harlequin ichthyosis), ABCA12

概要

先天性魚鱗癬 常染色体潜性4B型(Ichthyosis, congenital, autosomal recessive 4B)は、道化師様魚鱗癬(harlequin ichthyosis)とも呼ばれ、先天性魚鱗癬のなかで最も症状の重い型です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、ABCA12 遺伝子の変化が原因となります。

生まれたときから、全身が厚い鎧のような角質の板でおおわれ、板と板のあいだに深い亀裂が入るのが特徴です。以前は生まれて間もなく亡くなることが多い病気でしたが、新生児集中治療とレチノイドの内服によって、成長するお子さまが増えています。

原因

ABCA12 遺伝子の両方に、はたらきをほとんど失わせる変化があることが原因です。ABCA12は角層で脂質を運ぶはたらきを持っており、これが失われると皮膚のバリアがほとんど作られません。同じ遺伝子が原因の4A型よりも、遺伝子のはたらきが大きく損なわれた場合に起こります。

症状

  • 出生時から、全身が厚く硬い角質の板でおおわれる
  • 板のあいだに深い亀裂が生じる
  • まぶたや唇が強く外側にめくれ、耳や鼻の形が平たくなる
  • 手足の指が動かしにくくなる(拘縮)
  • 体温を保てず、水分と電解質が失われやすい
  • 皮膚から細菌が入りやすく、重い感染症を起こしやすい
  • 呼吸や哺乳が難しくなることがある

新生児期を乗りこえたあとは、4A型に近い重い魚鱗癬の状態が続き、生涯にわたる皮膚の手入れが必要です。

検査・診断

出生時の特徴的な見た目から診断されます。ABCA12 遺伝子の解析によって確定でき、次のお子さまについて考えるうえでも役立ちます。

治療

  • 新生児集中治療室(NICU)での全身管理(保温・輸液・感染対策)
  • レチノイド(ビタミンA誘導体)の内服を早い時期から検討する
  • 保湿剤と角質をやわらげる外用薬による、生涯にわたる皮膚の手入れ
  • 眼科・耳鼻科・整形外科など、複数の科による支援

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる ABCA12 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、ABCA12 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

道化師様魚鱗癬は ABCA12 の両アレルにおける機能喪失型変異(ナンセンス変異、フレームシフト変異、スプライス部位変異など)によって生じる。ABCA12蛋白がほぼ完全に失われるため、層板顆粒によるグルコシルセラミド輸送が停止し、角層細胞間脂質ラメラが形成されない。

電子顕微鏡では層板顆粒の異常と、角層への脂質分泌の欠如が観察される。出生時のバリア破綻により、経表皮水分喪失の著明な増加、電解質異常、体温調節障害、敗血症のリスクが高い。

全身レチノイド(アシトレチン等)の早期導入と新生児集中治療の進歩により生存率は改善しており、長期生存例では紅皮症を伴う重症魚鱗癬の経過をたどる。責任遺伝子が同一であるARCI4Aとは、変異の重症度による表現型の連続体として理解される。

よくある質問

Q. この病気は遺伝しますか?

A. 常染色体潜性(劣性)遺伝の形式で受け継がれます。ご両親がどちらもキャリア(保因者)である場合、お子さまが発症する確率は4分の1です。

Q. 検査で調べることはできますか?

A. できます。原因となる ABCA12 遺伝子を、エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)で調べられます。またキャリアスクリーニングテストで、ご夫婦がキャリアかどうかを事前に確認できます。

Q. 生まれたあと、育つことはできますか?

A. 以前は生まれて間もなく亡くなることが多い病気でしたが、新生児集中治療とレチノイドの内服によって、成長するお子さまが増えています。生まれてすぐの全身管理が特に大切です。

Q. 4A型とは何が違うのですか?

A. 原因となる遺伝子は同じ ABCA12 です。遺伝子のはたらきがほとんど失われる変化では4B型(道化師様魚鱗癬)に、はたらきが一部残る変化では4A型になります。

Q. 次の妊娠に備えて何かできますか?

A. ご夫婦の遺伝子を調べておくことで、次のお子さまに受け継がれる可能性を知ることができます。遺伝カウンセリングとあわせてご相談ください。

参考文献

  • Kelsell DP, Norgett EE, Unsworth H, et al. Mutations in ABCA12 underlie the severe congenital skin disease harlequin ichthyosis. Am J Hum Genet. 2005;76(5):794-803.
  • Akiyama M, Sugiyama-Nakagiri Y, Sakai K, et al. Mutations in lipid transporter ABCA12 in harlequin ichthyosis and functional recovery by corrective gene transfer. J Clin Invest. 2005;115(7):1777-1784.
  • Rajpopat S, Moss C, Mellerio J, et al. Harlequin ichthyosis: a review of clinical and molecular findings in 45 cases. Arch Dermatol. 2011;147(6):681-686.
  • Richard G, Ringpfeil F. Ichthyoses. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle.
  • OMIM #242500 Ichthyosis, congenital, autosomal recessive 4B (harlequin)
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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