診察室で出会ったご夫婦や妊婦さんとのできごとを、ひろし先生がつづった「独り言」です。(個人が特定されないよう配慮しています)

言葉が通じなくても伝わった診察

ある時、旦那様が日本人で奥様が中国人という夫婦がNIPTを受けにいらっしゃいました。入室前に奥様のご両親が現在来日されているので、一緒に診察を受けたいとのご要望がございました。そのご両親も奥様も日本語は全くわかりませんとのことでした。4人が診察室に入室された時に、念のため日本語だけでの診察でも本当によろしいでしょうかと尋ねたところ日本語で構わないとのことでした。

いざ診察を始めてみると、旦那様が通訳をしてくださることもなく、私の話に4人が笑顔で一生懸命うなづいてくださり、一つ一つ反応してくださいます。肝心なところだけ旦那様が奥様にかたことの中国語で説明していました。以心伝心の和やかな診察が終わると、これまた「ありがとう!ありがとう!」と4人で笑顔でおっしゃって、これから横浜観光とのことで楽しそうに帰って行かれました。

子を授かるというできごとが、国の違う家と家を結び、家族をも大変幸せにする大切なことなんだと、つくづく考えさせられた、私にとっても幸せな一日となりました。

結果が陽性でも「産む」と決めたご夫婦

NIPTの結果で性染色体に異常がありXXYクラインフェルター症候群と判定されてしまったあるご夫婦のケースです。相談としての診察の始めの方では、その結果データの信頼性などについてのやり取りが行われました。そして具体的な症状はクラインフェルター症候群 として、ある程度予想はできますが、検査を受けられたご夫婦の一番知りたいところの実際の障害の程度までは、生まれてみるまではどう考えてみてもわかりえません。やはりそうですよねとお二人でおっしゃって、いろいろと考えを巡らせている様子でした。NIPTは非確定検査ですので、羊水検査で診断が確定してから、もう一度考え直してみることを提案しようとしたところ、そこで奥様の方から実は産むことを考えているとお話しを切り出されました。旦那さまの方も子供が不妊となったら心配だなぁとは思うけれども、せっかく授かった児だし、やはり我が家の一員として育てていきたいなぁとおっしゃられました。私の方も気持ちが次第に和んできて、きっとそのようなご夫婦のご家庭なら、生まれてくる子はきっとすばらしい人間として育ってくれることでしょうというお話しをして診察を終えました。これは結果が陽性であっても産む決断をされた、あるご夫婦のお話しでした。

XXX症候群と告げられた妊婦さん

これまたNIPTの結果で性染色体に異常がありXXX症候群と判定されてしまったある妊婦さんのケースです。相談としての診察の始めの方では、やはりその検査結果データの信頼性などについてのやり取りが行われました。そして予想される症状についてのご質問がいくつかありました。ご自身でもいろいろとお調べになったようで、症状についてはやはりそうなのかとおっしゃっておりました。他の性染色体異常と大きく違う点は、多くの場合妊娠・出産が可能である点です。身長が高くなりやすいという点も、それは逆に長所ではないかと考えたそうです。彼女は最初その結果を見たときは、どうして私が引っかかってしまったのかと思ってしまったそうですが、高齢出産ということになってしまったので、そういうこともあるんだろうなと考え直したそうです。この段階では産むつもりですとのことでした。そして診察の最後にたくさんの質問とご相談にのっていただきどうもありがとうございましたと述べられて、お帰りになりました。その後羊水検査の結果では陰性で、産むという覚悟のある方でしたので、私の方も良かったと思いました。

出生前親子鑑定が両家の顔合わせに

ある時二十歳くらいの若いカップルが出生前親子鑑定を受けたいとのことでいらっしゃいました。受付でお二人のご家族も一緒で後ほどいらっしゃるとのこと。ご家族の方々が認めてくださっている関係なら問題ないのですが、そうでない場合もありえるのでこの段階では私たちスタッフも状況がまだわからずどのような場になるのか心配でした。ご家族の方々も続々と集まってきまして、はっきりとした状況もわからないまま診察となりました。診察室の中には計8人ほどいらっしゃっていて、ちょっと緊張もしましたが診察で検査の説明などを行って、検査も終わりいよいよ皆様解散というところで、両家のご家族の方々がお互いに初めまして、これからもよろしくお願いいたしますとご挨拶を交わしだしたのでした。クリニックの親子鑑定の場が両家の初顔合わせの場だったのかと、ちょっと不思議だけど微笑ましい場となりました。

爽やかな居心地をくださった方

ある時ベビーカーを押して華麗な印象の若い女性がNIPT検査を受けにいらっしゃいました。実際に診察に入ってご挨拶しますと、とても明るく笑顔でご挨拶を返してくださいました。「プラン選びにあたって何かご質問などございますでしょうか?」とお尋ねしたところ、とても落ち着いた様子でゆったりと「私も医療者で調べて来ましたので大丈夫です。ところでこのプランの中で一番調べられるのはどれでしょうか?」とご質問されました。「F143というプランです。」と私。「ではそれでお願いします!」とレストランのメニュー選びのように 即決されました。驚きもしましたが、その後の診察もせかせかしたところもなく、とてもスムーズで爽やかな雰囲気で無事に終わりました。一連の流れからきっと上流に属するお方であるに違いないと簡単に察することができました。それにしても全体的に優雅で気品があって、接する私たちスタッフ皆に決してストレスを与えない、むしろ爽やかな居心地を与えてくださる、とても上品な方でありました。

NIPTの検査結果も陰性でした。日々このお方のように、他人を爽やかにしてくれる接し方のできるお人には、たくさんの幸運が自然と引き寄せられてくるんだなぁとスタッフ皆が感じた印象深いお人でありました。

なぞのままのプラン選び

ある時NIPT検査を受けに女性の方がいらっしゃいました。急に予約の入った方です。いざ診察に入ってお話をうかがうと、F143MONOのプランを是非受けたいとのことです。「大変申し訳ございません。このプランはまだ始まっておりません。」と丁寧に謝罪しお断りしましたが、どうしてもお受けになりたい様子で、いつ始まるのかなどご質問がやみませんでした。私も今回せっかくのF143MONOプランを受けさせてあげられないことをとても残念にそしてとても悔しく思いました。

プランについては渋々ですがF143に落ち着きました。同意書の作成も終わって、羊水検査サポートの説明をしようとしたところ、突然彼女がプラン表を指差して、「プランの下にあるこの数字は何ですか?」と尋ねました。「プランの金額です。」と私。すると彼女は素早く顔色を変えることなく「私やはりHプランにします。」とプランをあっさり翻したのでした。

彼女がなぜF143MONOのプランにかくも執着しこだわっていたのか、いまだにわかりません。なぞのままです。

心療内科のオンライン診察でのご相談

ある時高校3年生の女の子が心療内科でオンライン受診されました。困りごとを聞いてみますと、片付けが苦手、時間管理ができない、忘れ物をしやすいとの症状でした。診断としてはADHDの可能性が高いと判断し、その対策法をアドバイスし対面での専門医受診を勧めました。診察を終えようとしたところ「最後に一つお聞きしてもいいでしょうか?」と側から今度はお母様が現れて、「この子はまだ月経がないのですけれども」というご質問でした。これについては婦人科受診を勧めて診療を終えましたが、背も高い様子でしたのでひょっとしたらXXX症候群の可能性もあったのではと思い出されます。

22番トリソミーの第一子を育てるご夫婦

ある時夫婦でNIPTを受けにいらっしゃった方がおりました。お話をお伺いしますと、22番の染色体の異数性が調べられるプランをお願いしますとおっしゃられました。その訳もお伺いすると、実は第一子が22番のトリソミーの子で障害があるとのことです。そのため障害の子が二人となるとつらいなぁとおっしゃっておりました。お話を聞いていて私も確かにそう思いそう感じました。お二人とも40歳くらいのご夫婦なのですけれども、とても落ち着いていらっしゃって品があって、その先に生まれた障害の子に対しての強い愛情もなんとなく感じさせてくれる方達でした。結果は陰性でしたが、心に残った忘れられないご夫婦でした。

アーリー検査を待ってくださった方

ある時妊娠約6週くらいの女性がNIPTを受けたいと受診してくださいました。お話をお聞きしたところまだ胎児の心拍は確認できておりませんとのことでした。妊娠週数が浅いと判定不能になる可能性もあることをお伝えしてはありますが、それをご承知の上、是非検査をお受けしたいとのことでした。胎児の心拍を確認せずに検査とはさすがに無理なので、心拍をご確認後いらっしゃってくださいとお詫び申し上げて再度ご来院いただくことをお願いいたしました。

それから日が経ってまたご来院くださいました。ちょうどその頃、NIPTのプランが新しくなったばかりで、旧FMプランより検査項目の増えたStandard ProMaxを選択してくださり、しかもFMプランより結果も早く出るとのことで、待った甲斐がありましたと大変満足されて嬉しそうに帰って行かれました。アーリーでの検査でしたので、2度目の検査の時にお会いしましたが、結果も陰性でやはり大変嬉しそうでした。

10番モノソミーの結果を受けた妊婦さん

最初のアーリー検査で10番染色体のモノソミーという結果となってしまった妊婦さんのお話です。2度目の検査の時に相談・診察を担当させていただきました。極めてまれな疾患であるため事前に調べ上げてから診察に臨みました。いざ診察に入ってみますと、心の外すごく落ち込んでいる様子でもなく、妊娠経過も順調とのことでして、あまりご質問もなく、すんなり診察が終わってしまいました。普通に考えると、すごく落ち込んで不安で心配になってしまうのに、どうしてだろうかと逆にこちらの方が心配になりました。彼女はきっとその結果は偽陽性に違いないと固く信じていて、2度目の検査に期待を寄せているのかなぁなどと思ったりもしました。またNIPTは非確定検査なので、気持ちの切り替えも大切だよなぁと考えたりもしました。

果たして2度目の検査結果に期待しましたが、2回目も10番染色体のモノソミーという全く同じ結果でありました。私もその結果に大変驚きましたが、その後どのような経過を彼女がたどったのか、わからないできております。羊水検査は受けない様子でしたので、実際は特に何の異常もなければと今も切に思っております。

「閾値に近い陽性」のご相談

ある日NIPT検査においてディジョージ症候群が閾値に近い陽性となってしまった妊婦さんのご相談をさせていただくことになりました。主治医の産婦人科の先生も、認証施設のNIPTプラン以外のディジョージ症候群の検査項目については面食らった様子で、当院の検査結果の書き方では説明が足りないなどという注文も主治医の先生からついておりました。主治医の先生への診療情報提供書は検査所の方で詳しく作成して頂きまして、問題ありませんでした。

相談での質問の内容は「閾値に近い陽性」とはというところから始まりました。NIPT検査は偽陰性を限りなく小さくした判定をしておりますので、判定の線引きのところでは、どうしても偽陽性を拾ってしまいます。偽陰性も偽陽性も同時に減らすという両立は、いかなる検査でもできないからですと、まずはそこをしっかり説明しました。よって「閾値に近い陽性」とは偽陽性の可能性もありますとつけ加えました。

次にこれまでのデータが欲しいということになり、総検査数は12294件で、ディジョージ症候群の検査項目での陽性は5人(うち 羊水検査2名実施し2名陽性)、ボーダーラインリスク陽性は13人(うち 羊水検査1名実施し陰性)ということも伝えました。そこから先、実際に陽性になる可能性はどれくらいでしょうかとか、どれくらいの障害の重さになりますでしょうかなど、いくつかご質問がございました。確かにその質問の一つ一つは当人にとって、どれも知りたいことであるということはよくわかります。私の心情としましてはもちろん、少しでも安心できることをお伝えしてあげたいのですが、軽はずみなことも言えず、言葉を慎重に選びつつお話しするということになります。つまり相談者としては、確定的なことが知りたくて質問をする。こちらとしては非確定検査ですので、現段階では確定的なことが言えないという平行線をたどるということになります。あまり不安にさせないように、そしてあまり楽観視させ過ぎないように、繊細に事を運ぶところが非常に難しいところです。結局その方は前向きに羊水検査に進むことになりました。そして羊水検査の結果も陰性でした。とても気をつかいましたが大変うれしい結果となりました。

18番トリソミーの子を亡くされた方

ある時NIPT検査を受けにいらっしゃった妊婦さんのお話です。診察室でプランのご相談をしておりますと、その妊婦さんは、前回妊娠の時の子に18番染色体のトリソミーの異常があったそうで、出産後まもなくしてから亡くなったとのお話を、とても静かにゆっくりとお話されました。そして「もうあのような悲しい思いはしたくないなぁ。」ともゆっくりと続けておっしゃいました。私はそうでしたかと傾聴するだけでしたが、初めて聞いたその時のお話が心に強く残りました。

その後診察室で、18番・13番のトリソミーはどうせすぐに亡くなるから調べなくてもいいかとお話される受診者様が、結構いらっしゃって、その度にその時のことが思い起こされます。そう単純に片づけられる問題ではないのにと。

ターナー症候群とうつ病

ある時の心療内科でのオンライン診察でのお話です。事前に問診票を確認したところ、うつ病の治療継続ご希望の方でした。現在使用中のお薬を確認したところ、当院でも処方可能なものでした。オンライン診察が始まり、既往歴や現病歴をお聞きすると、「私は先天性のターナー症候群という疾患で、ホルモン治療を受けています。」とのことでした。画面越しにお顔を拝見いたしましたが、全く普通の女の子でした。これまでと同じうつ病のお薬を処方して、無事に診察も終わりました。

後で調べてみると、卵巣機能不全に伴う女性ホルモンの欠乏などでも、心身のコンディションや精神面に影響を与えることがあり、そのためターナー症候群ではうつ病を発症することが増えるそうで、一つ勉強になった体験となりました。

ブルーシールのTシャツ

ある時NIPT検査を受けにいらっしゃったご夫婦のお話です。いつも診察室ではお互い初対面ですし、検査を受ける妊婦さんも少し緊張気味です。そこでいろいろとご質問をお聞きして、きっかけを作って場を和らげていくように少し工夫をしております。たまたまその時は受診された旦那様がある特別なTシャツを着ておられました。それは沖縄の「BLUE SEAL」・アイスクリーム屋さんのTシャツです。私が「それは沖縄のブルーシールのTシャツですね!以前私はそこの産業医をやっていたんですよ!」と話しかけると、ご夫婦でどっと大笑いされて、実は沖縄に行って来て記念に買ったんですよと、ちょっとしたことから緊張も解けて大盛り上がりとなりました。私もTシャツの話をふってみて良かったなぁと思いました。最後のお会計の受付でもお二人ともニコニコ顔で、気持ちよくお帰りになりました。めでたしめでたし。

特別支援学校の近くで祈ること

私の住まいの近くに特別支援学校があります。そのため通勤途中で、恐らくはダウン症の子でしょうか、何人かの子をよく見かけます。そのうちの一人の女の子はいつも身なりもきちんとされていて、少しかわいらしい笑みを浮かべています。その子を見るたびに人の笑顔って本当に大事だなぁと気づかされます。何らかの障害があるのかもしれませんが、障害など感じさせない、花のような何らかの良い雰囲気を、その笑顔から感じさせてくれるからです。私は彼女を見るたびに、襟を正すようにしています。

そして次のようなことを考えて祈ります。日本という国が、先天性の染色体異常をもって生まれてきた人たちや、何らかの障害を持っている人たちにとって、住みやすい社会であることを願いますと!

涙を流した奥様と前向きな決意

ある時、NIPT検査で性染色体の異数性の異常であるクラインフェルター症候群と判定されてしまったご夫婦が医療相談で来院されました。診察の始めの方ではこの陽性結果に対する陽性的中率が約48%であるといったお話がメインとなり、実際にクラインフェルター症候群であった場合に考えられる症状の説明という流れになりました。クラインフェルター症候群であった場合の全体像が見えてきて、どの程度の障害になるのかという部分から輪郭がぼやけはじめます。そのあたりから奥様は涙を流し始めてしまいました。「私が性染色体の検査を含めていなかったら、知らずにすんだのに・・・」とおっしゃられました。旦那様は「・・ちゃんのせいじゃないよ!」と慰められました。この状況での不安とつらいお気持ちはよくわかります。

①羊水検査の結果を見るまでは陰性の可能性もあること、②仮に陽性であったとしても、障害も軽い可能性もあり、早期の療育の活用や周りの理解と適切な支援があれば、充実した学校生活や社会生活を送ることができること、この点をしっかりお伝えしました。そこからは旦那様も少し希望を見出した様子で、奥様とお二人で積極的に前向きにやっていかれる決意を語ってくれました。奥様もその決意には安心感を得たようで、少しずつ元気を取り戻され私も安心して診察を終えることができました。

医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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