3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損症

3-beta-Hydroxysteroid Dehydrogenase Deficiency, HSD3B2

概要

3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損症は、副腎と性腺(精巣・卵巣)でホルモンをつくる途中の酵素がはたらかないために、副腎皮質ホルモンと性ホルモンがともに不足する病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、HSD3B2 遺伝子の変化が原因となります。

この病気は「先天性副腎過形成症」と呼ばれる病気のグループの一つです。先天性副腎過形成症のほとんどは21-水酸化酵素欠損症で、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損症はまれな型です。重い場合は生後まもなく体から塩分が失われる「塩喪失」が起こり、早く気づいて治療を始めないと命に関わります。

この型の大きな特徴は、男の子では外性器の発達が不十分になり、女の子では外性器がやや男性寄りになることがあるという点、つまり男女どちらにも外性器の変化が起こりうることです。多くの先天性副腎過形成症で外性器の変化が主に女の子に現れるのとは異なります。また、名前が似ている HSD3B7 遺伝子の病気(胆汁酸がつくれず肝臓に障害が出る病気)とは、原因遺伝子も症状もまったく別の病気です。

原因

HSD3B2 遺伝子は、副腎と性腺ではたらく「3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(2型)」という酵素の設計図です。

体はコレステロールを材料にして、何段階もの反応を経てコルチゾール(ストレスに対応するホルモン)、アルドステロン(体に塩分と水分を保つホルモン)、男性ホルモン・女性ホルモンをつくります。この酵素はその流れのかなり早い段階を受け持つため、はたらかないとこの3種類のホルモンがすべてつくりにくくなります。

コルチゾールが足りないと、脳から副腎を刺激するホルモンが多く出つづけ、副腎が大きく(過形成に)なります。一方で、途中で止まった材料のうち弱い男性ホルモン(DHEA)がたまり、その一部が肝臓などで別の酵素により男性ホルモンに変えられるため、女の子では外性器がやや男性寄りになることがあります。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

症状の重さには幅があり、塩喪失を伴う型と塩喪失を伴わない型に分けられます。

  • 塩喪失(副腎不全):生後1〜2週ごろから、哺乳が弱い、吐く、体重が増えない、ぐったりするなどの症状が出ます。治療しないと脱水やショックに進み、命に関わります
  • 男の子の外性器の発達不全:尿道の出口が先端にない(尿道下裂)、陰茎が小さい、精巣が陰嚢に下りていないなど。男女の区別がつきにくいこともあります
  • 女の子の外性器の軽い男性化:陰核がやや大きいなど。目立たず、ほとんど変化がないことも多くあります
  • 皮膚の色が濃くなる(色素沈着)
  • 思春期の問題:男の子では乳房がふくらむ、思春期の進みが不十分になることがあり、女の子では月経不順、多毛、にきびなどが見られることがあります
  • 大人になってからの妊よう性(子どもをもつ力)の低下:個人差が大きく、男性では精子がつくられにくいことがあります

検査・診断

生まれたときの外性器の所見や、生後まもなくの塩喪失症状(血液中のナトリウムが低く、カリウムが高い)から疑われます。日本の新生児マススクリーニングは主に21-水酸化酵素欠損症を見つけるための検査(17-OHP の測定)のため、この病気は新生児マススクリーニングで見つからないことがあります。

血液検査では、酵素が止まる手前の物質(17-ヒドロキシプレグネノロン、DHEA など)が高くなることが特徴で、副腎を刺激する負荷試験を行うこともあります。確定診断は遺伝学的検査で行い、HSD3B2 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。21-水酸化酵素欠損症など、ほかの型の先天性副腎過形成症と区別することが、治療と次のお子さまの見通しの両方にとって大切です。

治療

病気そのものを治す治療はありませんが、不足するホルモンを薬で補うことで、多くの方が日常生活を送っています。治療は生涯にわたって続ける必要があり、小児内分泌の専門医による定期的な診察が欠かせません。

  • 副腎皮質ホルモンの補充:ヒドロコルチゾンなどを毎日のみます。成長に合わせて量を調整します
  • 塩分を保つホルモンの補充と食塩の補給:塩喪失を伴う型では、フルドロコルチゾンと食塩を加えます
  • 体調を崩したときの対応:発熱やけが、手術のときには薬を増やす必要があります。あらかじめ対応を決めておくことが大切です
  • 思春期の性ホルモンの補充:思春期の進みが不十分な場合に、男性ホルモンまたは女性ホルモンを補います
  • 外性器についての相談:手術を行うかどうか、その時期を含め、専門のチームとご家族が十分に話し合って決めます
  • ご本人とご家族への心理的支援:成長に合わせた病気の説明や、思春期以降の相談を継続して行います

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる HSD3B2 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、HSD3B2 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

HSD3B2 は副腎皮質と性腺に発現する3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素/Δ5-Δ4イソメラーゼ2型をコードし、プレグネノロン→プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン→17-ヒドロキシプロゲステロン、DHEA→アンドロステンジオンの変換を担う。欠損すると糖質コルチコイド・鉱質コルチコイド・性ステロイドの3系統すべての合成が障害される点で、先天性副腎過形成症のなかでも特異な位置を占める。

46,XY では精巣でのテストステロン合成が低下して外性器の男性化が不十分となる。46,XX では、蓄積した DHEA が末梢(肝臓・皮膚など)に発現する1型アイソザイム(HSD3B1)により一部アンドロゲンへ変換され、軽度の男性化を来しうる。同じ機序で 17-OHP が軽度上昇することがあり、21-水酸化酵素欠損症との鑑別にはΔ5ステロイド(17-ヒドロキシプレグネノロン、DHEA)とΔ4ステロイドの比の評価が有用である。重度の機能喪失変異は塩喪失型と、残存活性を保つ変異は非塩喪失型と概ね相関する。かつて「非古典型」として報告された例の多くには遺伝子変異が確認されておらず、診断には遺伝学的確認が求められる。

鑑別としては、21-水酸化酵素欠損症(CYP21A2)、11β-水酸化酵素欠損症(CYP11B1)、17α-水酸化酵素欠損症(CYP17A1)、先天性リポイド副腎過形成症(STAR)、P450酸化還元酵素欠損症(POR)が挙がる。いずれも常染色体潜性遺伝であるが、外性器所見・血圧・塩喪失の有無と治療内容が型ごとに異なるため、遺伝子診断による病型確定が管理と遺伝カウンセリングの前提となる。なお、名称の類似する HSD3B7 欠損症は胆汁酸合成異常症であり、本症とは別の疾患である。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。男の子でも女の子でも同じ確率です。発症しないお子さまのなかにはご両親と同じキャリアになる子もいますが、キャリアの方に症状は出ません。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 通常の妊婦健診の超音波検査で、この病気に気づかれることはほとんどありません。外性器の様子からまれに疑われる程度です。前のお子さまで原因遺伝子の変化がわかっている場合は、出生前の遺伝学的検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 新生児マススクリーニングで見つかりますか。

A. 日本の新生児マススクリーニングは主に21-水酸化酵素欠損症を対象としているため、この病気は見つからないことがあります。ご家族にこの病気の方がいる場合や、ご夫婦がキャリアとわかっている場合は、出生後すぐに担当の医師へお伝えいただくと、早めの検査と治療につながります。

Q. 治療を続ければ普通に生活できますか。

A. 早く診断され、ホルモンの補充をきちんと続けることで、多くの方が学校生活や仕事を含めた日常生活を送っています。ただし、体調を崩したときの対応や思春期の性ホルモンの補充が必要になり、将来の妊よう性には個人差が大きいため、大人になってからも専門医による継続的な診療が必要です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Simard J, Ricketts ML, Gingras S, Soucy P, Feltus FA, Melner MH. Molecular biology of the 3β-hydroxysteroid dehydrogenase/Δ5-Δ4 isomerase gene family. Endocr Rev. 2005;26(4):525-582.
  • Rhéaume E, Simard J, Morel Y, et al. Congenital adrenal hyperplasia due to point mutations in the type II 3β-hydroxysteroid dehydrogenase gene. Nat Genet. 1992;1(4):239-245.
  • Al Alawi AM, Nordenström A, Falhammar H. Clinical perspectives in congenital adrenal hyperplasia due to 3β-hydroxysteroid dehydrogenase type 2 deficiency. Endocrine. 2019;63(3):407-421.
  • Speiser PW, Arlt W, Auchus RJ, et al. Congenital adrenal hyperplasia due to steroid 21-hydroxylase deficiency: an Endocrine Society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(11):4043-4088.
  • OMIM #201810 Adrenal hyperplasia, congenital, due to 3-beta-hydroxysteroid dehydrogenase 2 deficiency. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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