概要
3M症候群2型は、お母さんのおなかの中にいるときから生まれたあとまで成長がゆっくりで、大人になっても身長が非常に低くなる病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、OBSL1(2q35)遺伝子の変化が原因となります。
この病気では、知的な発達はふつうであることがほとんどです。体に比べて頭が大きく見えること、逆三角形の顔立ち、肉付きのよい鼻先など、特徴的な顔つきと体つきがみられます。命にかかわる内臓の病気をともなうことは少なく、おもな悩みは身長の低さと、それにともなう骨や関節の問題です。
3M症候群は原因遺伝子によって3つの型に分けられます。1型は CUL7、2型(この病気)は OBSL1、3型は CCDC8 遺伝子が原因です。症状はどの型もよく似ていますが、もっとも多いのは1型で、2型はそれに次いで多い型です。2型では、1型に比べて身長の低さがやや軽い傾向があるという報告もありますが、個人差が大きく、型だけで見通しを決めることはできません。
原因
OBSL1 は、細胞の骨組み(細胞骨格)にかかわるたんぱく質の設計図となる遺伝子です。このたんぱく質は、1型の原因である CUL7、3型の原因である CCDC8 のたんぱく質と結びついて、一つのチームとしてはたらきます。
このチームは、細胞のなかで不要になったたんぱく質に「目印」をつけて片づける仕組みや、細胞が分裂するときの骨組みの調整にかかわっていると考えられています。OBSL1 がはたらかないと、このチーム全体が正しくはたらけなくなり、体の細胞が増えて大きく育つ力が全体的に弱まるため、胎児期から成長がゆっくりになると考えられています。3つの遺伝子のどれが変化しても似た症状になるのはこのためです。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。
症状
- 出生前からの成長の遅れ:生まれたときから身長・体重が小さく、その後も低身長が続きます
- 大人になってからの著しい低身長:同じ年齢・性別の平均を大きく下回ります
- 体に比べて大きく見える頭(頭囲そのものはふつうの範囲であることが多く、体が小さいため相対的に大きく見えます)
- 特徴的な顔立ち:逆三角形の顔、広い額、肉付きのよい上向きの鼻先、厚めの唇など
- 短く太い首、角ばった肩、短い胸郭、胸の形の変化(漏斗胸・鳩胸)
- 関節がやわらかすぎる、股関節の形成不全、腰の反り(前弯)が強いなど、骨や関節の問題
- 男性では、精巣のはたらきが弱い、尿道の出口の位置の異常(尿道下裂)がみられることがあります
- 知的な発達はふつうであることがほとんどです
検査・診断
妊娠中の超音波検査で胎児の発育の遅れ(胎児発育不全)を指摘されることがありますが、発育の遅れはさまざまな原因で起こるため、超音波検査だけでこの病気と見分けることは困難です。多くは、生まれたあとに低身長と特徴的な顔立ち・体つきから疑われます。X線検査では、細長い手足の骨や、高さのある背骨(椎体)などが診断の手がかりになります。成長ホルモンの値はふつうであることが多いです。
確定診断は遺伝学的検査で行い、3M症候群2型では OBSL1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。症状のよく似たシルバー・ラッセル症候群など、遺伝の仕組みが異なる病気と区別するために、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。
治療
現時点で、この病気を根本から治す治療はありません。成長や骨・関節の状態に合わせた対症療法と、日常生活・学校生活を支える支援が中心になります。知的な発達はふつうであることが多いため、お子さまが自分らしく暮らせるよう、周囲の理解と環境の工夫が大切です。
- 成長の定期的な見守り:小児科・小児内分泌科で身長・体重の伸びを確認します
- 成長ホルモン治療の検討:試みられた報告はありますが、効果には個人差が大きく、十分な効果が得られないこともあります。主治医とよく相談して決めます
- 整形外科での診察:股関節の形成不全、背骨の曲がり、関節のゆるさなどを確認し、必要に応じて治療します
- 思春期の確認:男性では精巣のはたらきや思春期の進み方を確認します
- 心理的・社会的な支援:身長の低さに関する悩み、学校や職場での生活の工夫について継続的に支えます
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる OBSL1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、OBSL1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
この疾患は常染色体潜性(劣性)遺伝のため、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。
専門的な解説
3M症候群は、最初の報告者3名(Miller、McKusick、Malvaux)の頭文字に由来する、子宮内発育不全に始まる原発性(primordial)低身長症である。成人身長は平均を大きく下回り、相対的大頭、逆三角形顔貌、肉厚の鼻尖、短頸、角張った肩、短い胸郭、踵の突出などを特徴とし、知能は通常正常である。X線上は細長い長管骨と高い椎体が診断の手がかりとなる。
OBSL1(obscurin-like 1)は細胞骨格アダプター蛋白をコードし、CUL7(1型)・CCDC8(3型)と複合体を形成する。OBSL1 は CUL7 の安定化に関与し、CUL7 を中心とするユビキチンリガーゼ系を介して細胞増殖・微小管動態を制御すると考えられている。2型で報告される変異の多くはナンセンス・フレームシフトなどの機能喪失型である。3型の中では1型(CUL7)が最多で、2型がこれに次ぐ。臨床像は3型間で大きく重なり、表現型のみから型を判別することは困難であるが、OBSL1 例では CUL7 例に比べ身長の低下がやや軽度とする報告がある。
鑑別としては、シルバー・ラッセル症候群(相対的大頭・逆三角形顔貌が共通するが、体の左右非対称や哺乳不良・低血糖を伴いやすく、多くはインプリンティング異常による孤発例)、ムリブレイ小人症(TRIM37)、小頭症性原発性低身長症(PCNT など、著明な小頭症を伴う)、マイヤー・ゴーリン症候群が挙がる。これらは遺伝形式や次子再発率が異なるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。
よくある質問
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。よく似た症状のシルバー・ラッセル症候群は、多くが偶発的に起こり再発率がごく低いなど、病気によって見通しが大きく異なります。原因遺伝子を確定することが重要です。
Q. 妊娠中に分かりますか。
A. 妊娠中の超音波検査で胎児の発育の遅れを指摘されることはありますが、それだけでこの病気と診断することは困難です。前のお子さまで原因遺伝子がわかっている場合は、出生前の遺伝学的検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q. 1型・3型とはどう違うのですか。
A. 違いは原因となる遺伝子で、1型は CUL7、2型は OBSL1、3型は CCDC8 です。3つの遺伝子は体のなかで一緒にはたらくため、症状はとてもよく似ています。2型では身長の低さがやや軽い傾向があるという報告もありますが、個人差が大きく、どの型かは遺伝学的検査で確かめます。
Q. 知能や寿命に影響はありますか。
A. 知的な発達はふつうであることがほとんどで、寿命も大きくは変わらないと考えられています。ただし、身長の低さや骨・関節の問題に対して、成長に合わせた診察と生活上の工夫が必要です。進学や就職など、多くの方がそれぞれの生活を送っています。
Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。
A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。
参考文献
- Hanson D, Murray PG, Sud A, et al. The primordial growth disorder 3-M syndrome connects ubiquitination to the cytoskeletal adaptor OBSL1. Am J Hum Genet. 2009;84(6):801-806.
- Huber C, Delezoide AL, Guimiot F, et al. A large-scale mutation search reveals genetic heterogeneity in 3M syndrome. Eur J Hum Genet. 2009;17(3):395-400.
- Huber C, Dias-Santagata D, Glaser A, et al. Identification of mutations in CUL7 in 3-M syndrome. Nat Genet. 2005;37(10):1119-1124.
- Hanson D, Murray PG, O’Sullivan J, et al. Exome sequencing identifies CCDC8 mutations in 3-M syndrome, suggesting that CCDC8 contributes in a pathway with CUL7 and OBSL1 to control human growth. Am J Hum Genet. 2011;89(1):148-153.
- OMIM #612921 3-M Syndrome 2; THREEM2. Online Mendelian Inheritance in Man.
