3MC症候群1型

3MC Syndrome 1, MASP1

概要

3MC症候群1型は、特徴的なお顔だち(目と目の間が広い、まぶたが下がる、まぶたのすき間が狭いなど)、口唇裂・口蓋裂、おへその異常、聞こえにくさなどが組み合わさって現れる、生まれつきの病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、MASP1(3q27)遺伝子の変化が原因となります。

「3MC」という名前は、もともと別々の病気として報告されていたマルプエッシュ症候群、ミシェルス症候群、ミンガレッリ症候群、カルネヴァーレ症候群の頭文字(3つの「M」と1つの「C」)に由来します。のちに、これらが同じ仕組みで起こる一続きの病気であることがわかり、まとめて3MC症候群と呼ばれるようになりました。世界でも報告例の少ない、まれな病気です。

3MC症候群は原因遺伝子によって型が分かれ、MASP1 遺伝子によるものが1型、COLEC11 遺伝子によるものが2型、COLEC10 遺伝子によるものが3型です。3つの型の症状はよく似ており、見た目だけで区別することはできません。どの型かは、遺伝学的検査で原因遺伝子を調べて初めて確定します。

原因

MASP1 遺伝子は、ひとつの遺伝子から読み取り方を変えることで、MASP-1、MASP-3 などの複数のたんぱく質をつくり分けています。これらはもともと、体を細菌などから守る「補体」というしくみ(レクチン経路)にかかわるたんぱく質として知られていました。

その後の研究で、このしくみが胎児期の顔や体づくりにも使われていることがわかりました。お顔の骨や軟骨のもとになる細胞(神経堤細胞)は、胎児期に決まった場所へ移動していきます。MASP1 からつくられるたんぱく質は、この細胞を正しい場所へ導く道しるべのようなはたらきにかかわると考えられています。このはたらきが失われると、顔や唇、おへそ、尾てい骨のまわりなど、胎児期に「閉じる・合わさる」部分の形成に影響が出ます。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。これまでの報告では、血のつながりのあるご夫婦(近親婚)のご家族からの報告が多く見られます。

症状

症状の現れ方や重さには個人差があり、同じご家族のなかでも違うことがあります。代表的なものは次のとおりです。

  • 特徴的なお顔だち:目と目の間が広い(眼間開離)、まぶたのすき間が狭い(眼瞼裂狭小)、まぶたが下がる(眼瞼下垂)、眉が高く弓なりになるなど。この病気でもっとも多く見られる所見です
  • 口唇裂・口蓋裂:唇や上あごに裂け目がある状態です
  • おへその異常:臍ヘルニア(でべそ)や、腹壁の一部が閉じない臍帯ヘルニアなど
  • 尾てい骨のあたりの小さな突起:3MC症候群で比較的特徴的とされる所見です
  • 聞こえにくさ(難聴):見られることがあり、言葉の発達に影響するため早めの確認が大切です
  • 頭の骨のつなぎ目が早く閉じる(頭蓋骨縫合早期癒合症)、前腕の2本の骨がくっつく(橈尺骨癒合症)などの骨の異常
  • 腎臓・尿路や外性器の形の異常
  • 生まれたあとの成長の遅れ
  • 発達の遅れや知的障害:見られる方と見られない方がいて、程度もさまざまです

多くの場合、ただちに命にかかわる病気ではありませんが、合併する形の異常(臍帯ヘルニアや頭蓋骨縫合早期癒合症など)によっては、早い時期の手術や専門的な管理が必要になります。

検査・診断

出生後に、特徴的なお顔だちに、口唇裂・口蓋裂、おへその異常、尾てい骨付近の突起、難聴などが組み合わさることから疑われます。聴力検査、腎臓の超音波検査、頭や骨のX線・CT検査などで、合併する異常がないかを確認します。

妊娠中の超音波検査で、口唇裂や臍帯ヘルニア、腎臓の異常などが指摘されることはあります。ただし、お顔だちの特徴は超音波ではとらえにくく、妊娠中にこの病気と特定されることは多くありません。

確定診断は遺伝学的検査で行い、3MC症候群1型では MASP1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。症状が似た病気が多く、2型・3型とも見た目では区別できないため、原因遺伝子を確定することが、正しい見通しと次のお子さまについてのご説明につながります。

治療

現時点で、遺伝子の変化そのものを治す治療はありません。一方で、それぞれの症状に対する治療(対症療法)や支援によって、生活の質を高めることが期待できます。複数の診療科が連携し、成長に合わせて見守っていきます。

  • 口唇裂・口蓋裂の治療:形成外科での手術、言葉の訓練、歯科・矯正歯科での管理を、成長に合わせて段階的に行います
  • まぶたの治療:眼瞼下垂が強く視界をさえぎる場合は、視力の発達を守るために手術を検討します
  • おへその異常・頭の骨の異常に対する手術:状態に応じて小児外科・脳神経外科で治療します
  • 聴力の評価と補聴:早い時期からの聴力検査と、必要に応じた補聴器の使用が大切です
  • 発達の支援:療育やリハビリテーション、就学に向けた支援
  • 腎臓・尿路の定期的な確認

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる MASP1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、MASP1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

MASP1(mannan-binding lectin serine peptidase 1)は選択的スプライシングによりMASP-1、MASP-3、MAp44の3産物を生じる。MASP-1とMASP-3は共通の重鎖(CUB1-EGF-CUB2-CCP1-CCP2)をもち、セリンプロテアーゼ領域をコードするエクソンが異なる。3MC症候群1型の病的バリアントはMASP-3特異的エクソンに集中する傾向があり、MASP-3の機能喪失が主たる病態と考えられている(MASP-1・MASP-3の双方に及ぶバリアントの報告もある)。

2型の原因である COLEC11(CL-K1)、3型の COLEC10(CL-L1)はいずれもMASPと複合体を形成するコレクチンであり、3つの型は同一の分子経路の破綻として説明される。ゼブラフィッシュの解析では、CL-K1が頭部神経堤細胞の遊走を導く化学誘引物質としてはたらくことが示され、補体レクチン経路の構成因子が発生期の形態形成に関与することが明らかになった。型間で臨床像の明確な差は確立しておらず、表現型からの型の推定は困難である。また、補体レクチン経路の構成因子ではあるものの、本症で易感染性は主要な所見とされていない。

鑑別としては、眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群(FOXL2、常染色体顕性)、歌舞伎症候群(KMT2D/KDM6A)、その他の口唇口蓋裂や臍帯ヘルニアを伴う症候群が挙がる。顕性遺伝や新生突然変異による疾患とは次子再発率が大きく異なる(本症は25%)ため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。2分の1の確率で症状のないキャリアとなり、4分の1の確率で変化を受け継ぎません。ご両親の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠で出生前検査や着床前検査を検討することができます。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 超音波検査で口唇裂や臍帯ヘルニアなどが見つかることはありますが、それだけでこの病気と特定することは困難です。前のお子さまで原因遺伝子が確定している場合は、妊娠中に遺伝子を調べる検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 1型・2型・3型は何が違うのですか。

A. 違いは原因となる遺伝子です。1型は MASP1、2型は COLEC11、3型は COLEC10 の変化によって起こります。これらの遺伝子は同じしくみの中で協力してはたらいているため、症状はよく似ており、見た目では区別できません。どの型も常染色体潜性遺伝です。

Q. 知的な発達に影響はありますか。

A. 発達の遅れが見られる方もいれば、年齢相応に発達する方もいて、個人差が大きい病気です。聞こえにくさがあると言葉の発達に影響することがあるため、早めに聴力を調べ、必要な支援を始めることが大切です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Sirmaci A, Walsh T, Akay H, et al. MASP1 mutations in patients with facial, umbilical, coccygeal, and auditory findings of Carnevale, Malpuech, OSA, and Michels syndromes. Am J Hum Genet. 2010;87(5):679-686.
  • Rooryck C, Diaz-Font A, Osborn DP, et al. Mutations in lectin complement pathway genes COLEC11 and MASP1 cause 3MC syndrome. Nat Genet. 2011;43(3):197-203.
  • Titomanlio L, Bennaceur S, Bremond-Gignac D, et al. Michels syndrome, Carnevale syndrome, OSA syndrome, and Malpuech syndrome: variable expression of a single disorder (3MC syndrome)? Am J Med Genet A. 2005;137A(3):332-335.
  • Munye MM, Diaz-Font A, Ocaka L, et al. COLEC10 is mutated in 3MC patients and regulates early craniofacial development. PLoS Genet. 2017;13(3):e1006679.
  • OMIM #257920 3MC syndrome 1. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

AIチャットで相談する AIチャット