3MC症候群2型

3MC Syndrome 2, COLEC11

概要

3MC症候群2型は、目と目の間が広い、まぶたが下がる、眉が高く弓なりになるといった特徴的な顔つきに、口唇裂・口蓋裂、頭の骨の早期癒合、臍や腎臓・泌尿器の形の異常などを伴う、生まれつきの病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、COLEC11(2p25.3)遺伝子の変化が原因となります。

「3MC」は、この病気を報告した4人の医師(Malpuech、Michels、Mingarelli、Carnevale)の頭文字に由来します。以前は別々の症候群とされていた4つの病気が、同じ一つの病気の幅広い現れ方だとわかり、まとめて3MC症候群と呼ばれるようになりました。非常にまれな病気で、世界でも報告は限られています。

3MC症候群は原因遺伝子によって3つの型に分けられます。1型は MASP1、2型(この病気)は COLEC11、3型は COLEC10 という遺伝子の変化で起こります。3つの型の症状はよく似ており、症状だけで型を見分けることは難しいため、どの型かは遺伝学的検査で原因遺伝子を確かめて決まります。2型は、3MC症候群の原因遺伝子として最初に見つかったものの一つで、報告例のなかでも比較的多い型です。

原因

COLEC11 遺伝子は、CL-K1(コレクチン11)というたんぱく質の設計図です。CL-K1 はもともと、体に入った細菌などを見つけて免疫のしくみ(補体)を動かす役割を持つたんぱく質として知られていました。

その後の研究で、CL-K1 は胎児の顔や頭がつくられる時期に、「神経堤細胞」という細胞が正しい場所へ移動するための道しるべとしてはたらいていることがわかりました。神経堤細胞は、顔の骨や軟骨、目のまわりの組織などのもとになる細胞です。CL-K1 が十分にはたらかないと、この細胞の移動がうまくいかず、顔つきの特徴や口唇裂・口蓋裂などが生じると考えられています。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。報告例には、ご両親が血縁関係にあるご家族が多く含まれています。

症状

症状の組み合わせや程度には個人差が大きく、同じご家族の中でも違いがみられます。主なものは次のとおりです。

  • 特徴的な顔つき:目と目の間が広い(眼間開離)、まぶたのすき間が狭い、まぶたが下がる(眼瞼下垂)、眉が高く弓なりになる。この病気でもっともよくみられる所見です
  • 口唇裂・口蓋裂:哺乳やことばの発達に影響することがあります
  • 頭蓋骨縫合早期癒合症:頭の骨のつなぎ目が早く閉じ、頭の形が変わることがあります
  • 臍の異常:臍ヘルニアや、臍帯ヘルニアなどの腹壁の異常
  • 腎臓・泌尿器・生殖器の異常:膀胱尿管逆流、腎臓の形の異常、停留精巣など
  • 尾てい骨のあたりの突起、前腕の2本の骨(橈骨と尺骨)がくっつく橈尺骨癒合
  • 難聴、目の前のほうの部分(前眼部)の異常
  • 発達の遅れや学習の困難:みられないお子さまも多く、程度もさまざまです

命に関わる重い内臓の異常を伴わない場合、多くの方は成人まで成長されます。見通しは、合併する異常の種類と程度によって大きく変わります。

検査・診断

多くは生まれたあとに、特徴的な顔つきと口唇裂・口蓋裂、臍や泌尿器の異常などの組み合わせから疑われます。妊娠中の超音波検査で口唇裂や腎臓の異常、腹壁の異常が見つかることはありますが、顔つきの特徴は妊娠中にはわかりにくく、出生前にこの病気と診断されることはまれです。

診断がついたあとは、腎臓・泌尿器の超音波検査、聴力検査、眼科の診察、頭の骨の画像検査などで合併症を確認します。確定診断は遺伝学的検査で行い、3MC症候群2型では COLEC11 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。似た症状の病気は多く、型によって原因遺伝子も異なるため、原因遺伝子を確定することは次のお子さまの見通しを正しくお伝えするうえで大きな意味があります。

治療

現時点で、遺伝子の変化そのものを治す治療はありません。それぞれの症状に合わせた治療(対症療法)と、成長・発達の支援を、形成外科・眼科・耳鼻科・泌尿器科・小児科などが連携して行います。

  • 口唇裂・口蓋裂の治療:成長に合わせた手術、哺乳の工夫、ことばの訓練、歯科矯正
  • 眼瞼下垂の治療:視力の発達に影響する場合は、まぶたを上げる手術を検討します
  • 頭蓋骨縫合早期癒合症の治療:必要に応じて、頭の形を整え脳の成長の場所を確保する手術を行います
  • 腎臓・泌尿器の管理:膀胱尿管逆流などに対する経過観察・治療、停留精巣の手術
  • 聴力の確認と補聴、目の定期的な診察
  • 発達の支援:療育、学習面の支援、ご家族への継続的な支え

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる COLEC11 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、COLEC11 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

COLEC11 はコレクチンファミリーに属する可溶性パターン認識分子 CL-K1 をコードし、MASP 群と複合体を形成してレクチン経路の補体活性化に関与する。2011年、Rooryck らは3MC症候群の家系で COLEC11 と MASP1 の両アレル性変異を同定し、CL-K1 が胎生期の頭部神経堤細胞の遊走に対する誘引シグナルとしてはたらくことをゼブラフィッシュモデルで示した。これにより、自然免疫分子が顔面形態形成に関与するという新たな概念が提唱された。報告された変異の多くは CL-K1 の糖認識ドメインに集中し、ミスセンス変異では分泌障害が示されている。

3MC症候群は同一経路上の3遺伝子による遺伝的異質性を示す——①1型(MASP1、主に MASP-3 アイソフォームの機能喪失)、②2型(COLEC11)、③3型(COLEC10、CL-L1 をコードし、CL-K1 とヘテロ複合体 CL-LK を形成)。いずれも CL-LK/MASP-3 複合体の機能低下に収束すると考えられ、型間で臨床像に明確な差は確立しておらず、眼間開離・眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・高い弓状眉が最も一貫した所見である。Michels・Malpuech・Carnevale・OSA症候群として個別に記載されてきた病態は、同一疾患の表現型スペクトラムとして統合された。

鑑別としては、眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群(FOXL2、常染色体顕性)、Kabuki症候群(KMT2D/KDM6A)、Baraitser-Winter症候群(ACTB/ACTG1、新生突然変異が多い)、Opitz G/BBB症候群、Teebi型眼間開離などが挙がる。これらは遺伝形式が異なり、次子再発率が25%(潜性)、50%(顕性で親が罹患)、ほぼ0%(新生突然変異)と大きく違うため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。発症しないお子さまのうち、多くはご両親と同じく症状のないキャリアとなります。似た症状でも遺伝形式の異なる病気があるため、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 超音波検査で口唇裂や腎臓・腹壁の異常が見つかることはありますが、この病気と診断がつくのは多くの場合、生まれたあとです。前のお子さまで原因遺伝子がわかっている場合は、妊娠中の遺伝学的検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 1型・3型とはどう違うのですか。

A. 違いは原因となる遺伝子です。1型は MASP1、2型は COLEC11、3型は COLEC10 の変化で起こります。これらの遺伝子がつくるたんぱく質は同じしくみの中で協力してはたらくため、症状はよく似ており、症状だけで型を見分けることは困難です。次のお子さまの検査には、どの遺伝子の変化かを知っておくことが必要です。

Q. 知的な発達に影響はありますか。

A. 発達の遅れや学習の困難がみられることがありますが、程度はさまざまで、ほとんど影響のない方もいます。難聴や視力の問題が発達に影響することもあるため、早めに聴力や目の状態を確認し、必要な支援につなげることが大切です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Rooryck C, Diaz-Font A, Osborn DP, et al. Mutations in lectin complement pathway genes COLEC11 and MASP1 cause 3MC syndrome. Nat Genet. 2011;43(3):197-203.
  • Titomanlio L, Bennaceur S, Bremond-Gignac D, et al. Michels syndrome, Carnevale syndrome, OSA syndrome, and Malpuech syndrome: variable expression of a single disorder (3MC syndrome)? Am J Med Genet A. 2005;137A(3):332-335.
  • Munye MM, Diaz-Font A, Ocaka L, et al. COLEC10 is mutated in 3MC patients and regulates early craniofacial development. PLoS Genet. 2017;13(3):e1006679.
  • OMIM #265050 3MC syndrome 2; 3MC2. Online Mendelian Inheritance in Man.
  • OMIM *612502 Collectin subfamily member 11; COLEC11. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

AIチャットで相談する AIチャット