アラザミ症候群

Alazami Syndrome, LARP7

概要

アラザミ症候群は、おなかの中にいるときから成長がゆっくりで、生まれたあとも身長が伸びにくい「原発性小人症」に、知的障害と特徴的な顔つきが伴う、生まれつきの病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、LARP7(4q25)遺伝子の変化が原因となります。

2012年に、サウジアラビアの血縁婚のご家系の報告をもとに、報告者の名前をとって名づけられました。世界でも報告は数十例ほどのまれな病気です。中東のご家系からの報告が多いものの、ヨーロッパやアジアなど、ほかの地域からも報告されています。命に関わる内臓の重い異常は多くないとされ、成人まで成長された方の報告もありますが、低身長と知的障害に対して、長い期間にわたる支援が必要です。

名前のよく似た病気に「アラザミ・ユアン症候群」がありますが、こちらは ZNF699 という別の遺伝子による別の病気です。アラザミ症候群は LARP7 遺伝子の変化によるもので、LARP7 遺伝子が原因として知られている生まれつきの病気は、現在のところこのアラザミ症候群です。同じ遺伝子で型の異なる病気が並んでいるわけではないため、この病気の特徴は「おなかの中から始まる強い低身長」「ことばを中心とした発達の遅れ」「特徴的な顔つきと歯の異常」の組み合わせと考えると分かりやすいでしょう。

原因

LARP7 は、細胞のなかで「7SK RNA」という小さな RNA にくっついて、これを壊れないように守るたんぱく質です。

7SK RNA は、遺伝子の情報を読み取る作業(転写)の「ブレーキ」の役割を担っています。LARP7 がはたらかないと 7SK RNA が減り、どの遺伝子をどれだけ読み取るかという調節が乱れます。また LARP7 は、遺伝子の情報を編集する仕組み(スプライシング)にかかわる RNA の仕上げにも関与していることが分かってきました。こうした調節は、からだの成長や脳の発達がもっとも盛んな胎児期・乳幼児期に特に重要であるため、成長と発達の両方に影響が出ると考えられています。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。男の子にも女の子にも同じように起こります。

症状

  • おなかの中から始まる成長の遅れと著しい低身長:この病気のもっとも中心となる特徴です。生まれたときから小さく、その後も身長・体重が伸びにくい状態が続きます
  • 知的障害・発達の遅れ:程度は中等度から重度のことが多く、とくにことばの遅れが目立ちます
  • 特徴的な顔つき:逆三角形の顔、鼻の付け根や鼻が幅広い、目がくぼんで見える、口が大きいなど
  • 歯の異常:歯の形や大きさ、歯並び、歯のすきまの異常が多くの方で見られます
  • 哺乳や体重増加の不良:乳児期に体重が増えにくいことがあります
  • 行動面の特徴:多動や落ち着きのなさが報告されています
  • そのほか、頭が小さめであることや、背骨の弯曲(側弯)、手指の形の違いなどが一部の方で報告されています

報告されている方の数が少ないため、症状の現れ方や程度には個人差があり、すべての症状がそろうわけではありません。低身長が比較的軽い方の報告もあります。

検査・診断

妊娠中の超音波検査で赤ちゃんの発育がゆっくりであること(胎児発育不全)を指摘されることがありますが、胎児発育不全にはさまざまな原因があり、超音波検査だけでこの病気と見分けることはできません。多くは生まれたあと、低身長、発達の遅れ、顔つきや歯の特徴から疑われます。

症状だけでは、ほかの原発性小人症や知的障害を伴う病気と区別が難しいため、確定診断は遺伝学的検査で行い、アラザミ症候群では LARP7 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。実際には、多くの遺伝子をまとめて調べるエクソーム解析で診断にたどり着くことが多い病気です。原因遺伝子が分かると、合併症の見通しを立てやすくなり、次のお子さまの見通しも正しくお伝えできます。

治療

現時点で、この病気そのものを治す治療はありません。治療は、お子さまの成長と発達を支える対症療法と支援が中心です。小児科を中心に、さまざまな専門家が連携して長く見守っていくことが大切です。

  • 成長と栄養の管理:身長・体重の定期的な評価と、哺乳や食事の工夫。成長ホルモン治療の効果は確立していないため、主治医とよくご相談ください
  • 療育:言語療法、作業療法、理学療法などで、ことばや運動の発達を支えます
  • 教育の支援:お子さまに合った学びの場や特別支援教育の活用
  • 歯科での管理:歯の形や歯並びの異常に対する定期的な診察と治療
  • 行動面への支援:多動などに対して、専門家と一緒に環境の工夫や対応を考えます
  • ご家族への支援と遺伝カウンセリング:福祉制度の利用や、次のお子さまへの影響のご相談

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる LARP7 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、LARP7 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

アラザミ症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患のため、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

LARP7(La-related protein 7)は La モチーフと RNA 認識モチーフをもつ RNA 結合たんぱく質で、7SK snRNA の3′末端に結合し、5′キャップを修飾する MEPCE とともに 7SK snRNP を安定化する。7SK snRNP は HEXIM1 を介して転写伸長因子 P-TEFb(CDK9/サイクリン T1)を不活性状態に保持しており、LARP7 の欠損では 7SK snRNA が減少し、RNA ポリメラーゼIIの転写伸長制御が破綻する。加えて、LARP7 は低分子カハール体 RNA による U6 snRNA の2′-O-メチル化を促進することが示されており、患者由来細胞では U6 修飾の低下とスプライシングの忠実度低下が報告されている。成長障害と神経発達障害は、これら転写・スプライシング制御の異常を背景とすると考えられる。

報告されている病的バリアントの大半はナンセンス・フレームシフトなどの機能喪失型で、両アレル性である。初報はサウジアラビアの血縁婚家系であり、それ以前に知的障害の大規模な血縁家系解析(Najmabadi ら、2011年)でも候補遺伝子として同定されていた。その後、非血縁の両親から生じた複合ヘテロ接合例も報告されており、中東以外の集団でも鑑別に挙げるべき疾患である。表現型は子宮内発育不全から始まる原発性小人症、中等度〜重度の知的障害(とくに表出言語の遅れ)、逆三角形の顔貌・幅広い鼻・深くくぼんだ眼・大きな口、歯の異常を中核とし、低身長の程度には幅がある。

鑑別としては、Seckel 症候群(ATR など)、小頭性骨異形成性原発性小人症II型(PCNT)、Meier-Gorlin 症候群(ORC1 など)、Silver-Russell 症候群(多くは 11p15 領域のエピジェネティック異常)、名称の類似する Alazami-Yuan 症候群(ZNF699)が挙がる。これらは遺伝形式や発生機序が異なり、次子再発率が25%(常染色体潜性)からごく低率(散発性のエピジェネティック異常など)まで大きく違うため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。2分の1の確率で症状のないキャリアとなり、4分の1の確率で変化を受け継ぎません。低身長と発達の遅れを伴う病気にはほかにも多くの種類があり、遺伝の仕方もさまざまです。再発率を正しくお伝えするために、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 超音波検査で赤ちゃんの発育がゆっくりであることを指摘されることはありますが、それだけでこの病気と分かるわけではありません。前のお子さまで LARP7 遺伝子の変化が確定している場合は、出生前に遺伝学的検査を行うことを検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 名前の似た「アラザミ・ユアン症候群」とは違う病気ですか。

A. はい、別の病気です。アラザミ・ユアン症候群は ZNF699 という別の遺伝子が原因で、症状の組み合わせも異なります。どちらの病気かは、原因遺伝子を調べることで区別できます。診断名について不安な点があれば、遠慮なく主治医や遺伝カウンセリングでお尋ねください。

Q. 大人になるまで成長できますか。

A. 報告されている方の数が少ないため、長期的な見通しはまだ十分には分かっていません。ただし、命に関わる重い内臓の異常は多くないとされ、成人まで成長された方の報告もあります。低身長と知的障害は続くことが多いため、療育や教育、福祉の支援を早めに整えていくことが大切です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Alazami AM, Al-Owain M, Alzahrani F, et al. Loss of function mutation in LARP7, chaperone of 7SK ncRNA, causes a syndrome of facial dysmorphism, intellectual disability, and primordial dwarfism. Hum Mutat. 2012;33(10):1429-1434.
  • Najmabadi H, Hu H, Garshasbi M, et al. Deep sequencing reveals 50 novel genes for recessive cognitive disorders. Nature. 2011;478(7367):57-63.
  • Ling TT, Sorrentino S. Compound heterozygous variants in the LARP7 gene as a cause of Alazami syndrome in a Caucasian female with significant failure to thrive, short stature, and developmental disability. Am J Med Genet A. 2016;170A(1):217-219.
  • Hollink IH, Alfadhel M, Al Harbi AS, et al. Broadening the phenotypic spectrum of pathogenic LARP7 variants: two cases with intellectual disability, variable growth retardation and distinct facial features. J Hum Genet. 2016;61(3):229-233.
  • OMIM #615071 Alazami syndrome. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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