概要
眼皮膚白皮症VII型は、皮膚・髪・目の色素(メラニン)が少なくなり、とくに目の見え方に影響が出る病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、LRMDA 遺伝子の変化が原因となります。
眼皮膚白皮症(白皮症・アルビニズム)は原因遺伝子によっていくつもの型に分けられ、VII型はそのひとつです。この型の特徴は、皮膚や髪の色の薄さが軽く、ご家族と比べて「少し色白」と感じる程度のこともある一方で、眼振(目が細かく揺れる)や視力の低下といった目の症状ははっきり現れることです。そのため、目だけに症状が出る白皮症と区別がつきにくい場合があります。
VII型は、2013年にフェロー諸島(デンマーク領)のご家系の研究から見つかった比較的新しい型で、世界でも報告はごく少数です。白皮症そのものは知的発達や寿命に影響する病気ではなく、目と皮膚のケアを続けながら、多くの方が学校生活や社会生活を送っています。
原因
LRMDA は、色素をつくる細胞(メラノサイト)が一人前の細胞に育つ過程ではたらく遺伝子と考えられています。以前は C10orf11 という名前で呼ばれていました。
多くの型の白皮症は、メラニンを合成する酵素や、その材料を運ぶたんぱく質の異常で起こります。これに対してVII型は、メラノサイトそのものの成熟がうまく進まないために、メラニンが十分につくられないと考えられています。メラニンは皮膚や髪の色を決めるだけでなく、胎児期に目の網膜や視神経が正しく発達するためにも必要です。このため、皮膚の色の変化が軽くても、目の発達には影響が出ます。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。
症状
- 眼振:目が細かく揺れる症状で、生後数か月ごろに気づかれることが多いです
- 視力の低下:網膜の中心(黄斑)の発達が不十分なため、眼鏡をかけても視力が出にくいことがあります
- 虹彩の色の薄さ:光を当てると虹彩が透けて見えることがあります
- まぶしさ(羞明)、斜視
- 皮膚や髪の色の薄さ:この型では軽いことが多く、ご家族と比べて少し色白・髪の色が明るい程度のこともあります
- 日焼けしやすさ:紫外線から皮膚を守る力が弱く、長い年月のうちに皮膚がんのリスクが高まります
- 知的発達や身体の発育には通常影響しません
検査・診断
乳児期の眼振や、眼科での虹彩の透け、黄斑の低形成をきっかけに疑われます。白皮症では視神経の交差の仕方が通常と異なるため、視覚誘発電位(VEP)という検査で特徴的な所見が得られることがあります。光干渉断層計(OCT)で黄斑の形を確認することも診断の助けになります。
皮膚や髪の色の変化が軽いVII型は、見た目だけでは白皮症と気づかれにくいため、目の所見が重要です。確定診断は遺伝学的検査で行い、眼皮膚白皮症VII型では LRMDA 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。白皮症には原因遺伝子も遺伝形式も異なる型が複数あるため、原因遺伝子を確定することは、ご本人の見通しと次のお子さまへの影響を正しくお伝えするうえで大きな意味があります。
治療
現時点で、色素の量を元に戻したり、目の発達の違いを治したりする治療はありません。治療の中心は、見え方を最大限に生かす工夫と、紫外線から皮膚と目を守ることです。早い時期から支援を始めることで、生活上の困りごとを減らすことが期待できます。
- 定期的な眼科診察:乳幼児期から屈折の状態を調べ、適切な眼鏡で視力の発達を支えます
- まぶしさへの対策:遮光眼鏡、つばの広い帽子などを使います
- 弱視・ロービジョンへの支援:拡大鏡や拡大読書器、タブレット端末の活用、教室での座席の配慮など
- 斜視や、眼振にともなう頭の傾きに対しては、状態に応じて手術を検討することがあります
- 紫外線対策と皮膚の定期的な確認:日焼け止め、衣類での遮光、皮膚科での定期的な診察
- 就学・就労に向けた相談と、ご家族への心理的支援
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる LRMDA 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、LRMDA 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。
専門的な解説
LRMDA(leucine-rich melanocyte differentiation associated、旧名 C10orf11)はロイシンリッチリピートをもつたんぱく質をコードし、メラノサイトの分化に関与すると考えられている。Grønskov らは2013年、フェロー諸島の近親婚家系の常染色体潜性白皮症で本遺伝子の変異を同定し、OCA7 と命名した。ゼブラフィッシュでの機能阻害により色素をもつメラノサイトが減少し、ヒト胎児組織でもメラノサイトでの発現が確認されている。メラニン合成酵素や輸送体ではなく、メラノサイトの分化そのものに関わる点が他の OCA 遺伝子と異なる。
臨床像は眼症状(眼振、視力低下、虹彩徹照、中心窩低形成、VEP での視神経交叉異常)が主体で、皮膚・毛髪の低色素は軽度にとどまり、家族内で比べて初めてわかる程度のこともある。このため眼白皮症(GPR143、X連鎖潜性)や他の軽症型 OCA との鑑別が問題となる。現時点で LRMDA の変異による OCA7 以外の疾患は確立しておらず、報告例は欧州の家系を中心にごく少数で、表現型の幅は十分には明らかでない。
鑑別としては、OCA1(TYR)、OCA2(OCA2)、OCA3(TYRP1)、OCA4(SLC45A2、日本人に比較的多い)、OCA6(SLC24A5)、OCA8(DCT)、および症候性白皮症であるヘルマンスキー・パドラック症候群(出血傾向、肺線維症)やチェディアック・東症候群(易感染性)が挙がる。症候性白皮症では全身管理が必要となり、眼白皮症では遺伝形式が X 連鎖となるため、遺伝子診断は予後説明と遺伝カウンセリングに直結する。
よくある質問
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。男の子・女の子で確率は変わりません。症状のないごきょうだいは、3分の2の確率でキャリアです。白皮症には遺伝形式の異なる型もあるため、原因遺伝子を確定することが重要です。
Q. 妊娠中に分かりますか。
A. この病気は、妊娠中の超音波検査で見つけることは困難です。多くは生後数か月ごろの眼振などをきっかけに気づかれます。前のお子さまで診断がついている場合や、ご夫婦がキャリアとわかっている場合は、出生前の遺伝学的検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q. 肌や髪の色がそれほど白くなくても、この病気のことはありますか。
A. はい。VII型は皮膚や髪の色の変化が軽く、ご家族と比べて少し色白という程度のこともあります。一方で目の症状ははっきり現れるため、眼振や視力の低下があるときは眼科で詳しく調べ、必要に応じて遺伝学的検査で原因を確かめます。
Q. 視力は成長とともに良くなりますか。
A. 眼振は幼児期にかけて目立たなくなることがあり、視力も乳幼児期にある程度伸びることがあります。ただし、網膜の中心の発達の違いそのものは治らないため、どこまで見えるようになるかには個人差があります。早い時期から眼鏡や見え方の支援を始めることが、学習や生活の助けになります。
Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。
A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。
参考文献
- Grønskov K, Dooley CM, Østergaard E, et al. Mutations in c10orf11, a melanocyte-differentiation gene, cause autosomal-recessive albinism. Am J Hum Genet. 2013;92(3):415-421.
- Grønskov K, Ek J, Brondum-Nielsen K. Oculocutaneous albinism. Orphanet J Rare Dis. 2007;2:43.
- Montoliu L, Grønskov K, Wei AH, et al. Increasing the complexity: new genes and new types of albinism. Pigment Cell Melanoma Res. 2014;27(1):11-18.
- Lewis RA. Oculocutaneous Albinism Type 1. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
- OMIM #615179 Albinism, oculocutaneous, type VII. Online Mendelian Inheritance in Man.
