バーター症候群2型

Bartter Syndrome 2, KCNJ1

概要

バーター症候群2型は、腎臓が塩分(ナトリウム)とカリウムを尿に失いすぎてしまう、生まれつきの腎臓の病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、KCNJ1(11q24)遺伝子の変化が原因となります。

この型は「胎児期(新生児型)バーター症候群」と呼ばれるグループに入り、お母さまのおなかの中にいるときから赤ちゃんの尿が非常に多くなるため、妊娠中期以降に羊水過多として気づかれることが多い病気です。羊水過多のために早産になりやすく、生まれたあとも多尿と脱水、体の成長の遅れに注意が必要です。

バーター症候群は原因遺伝子によって1型から5型に分けられます。2型ならではの特徴は、生まれてすぐの時期に血液中のカリウムが「高く」なることがある点です。多くのバーター症候群ではカリウムが低くなるのが典型ですが、2型では新生児期に一時的な高カリウム血症がみられ、その後、低カリウムへと移っていきます。また、カリウムの低下は他の型に比べて軽い傾向があります。

原因

KCNJ1 遺伝子は、腎臓の尿細管ではたらくカリウムの通り道(ROMK と呼ばれるカリウムチャネル)の設計図です。

腎臓の「ヘンレのループ」という部分では、尿から塩分を体に取り戻すしくみがはたらいています。このしくみは、いったん取り込んだカリウムを ROMK を通して尿の側へ戻すことで、休まず回り続けることができます。ROMK がはたらかないとこの回収のしくみが止まり、塩分と水分が大量に尿に失われます。さらに ROMK は、腎臓の出口近く(集合管)でカリウムを尿に捨てる役目も担っているため、生まれた直後はカリウムをうまく捨てられず、血液中のカリウムが高くなることがあります。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 羊水過多:赤ちゃんの尿が多いため、妊娠中期以降に羊水が増えます。この型でもっとも早く気づかれる所見です
  • 早産・低出生体重:羊水過多にともなって起こりやすくなります
  • 多尿と脱水:生まれたあとも尿が非常に多く、体重が減りやすくなります
  • 新生児期の一時的な高カリウム血症:2型に特徴的な所見です。その後は低カリウム血症へ移ることが多いです
  • 血液がアルカリ性に傾く(代謝性アルカローシス)
  • 尿にカルシウムが多く出ることと、腎石灰化:腎臓にカルシウムが沈着し、長い目で腎臓のはたらきに影響することがあります
  • 発熱、嘔吐、哺乳不良、体重が増えにくい、成長の遅れ

検査・診断

妊娠中の超音波検査で、ほかに原因の見当たらない羊水過多があるときに疑われます。生まれたあとは、多尿、血液中のナトリウム・カリウム・塩素の値、血液のアルカリ性への傾き、尿中のカルシウムの多さを調べます。新生児期にカリウムが高く、その後低くなる経過は2型を疑う手がかりになります。腎臓の超音波検査で腎石灰化の有無も確認します。

確定診断は遺伝学的検査で行い、バーター症候群2型では KCNJ1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。バーター症候群は型によって経過や合併症(難聴の有無など)が異なるため、原因遺伝子を確定することは、治療方針と次のお子さまの見通しの両方に大きな意味があります。

治療

現時点で、遺伝子の変化そのものを治す治療はありません。失われる水分と塩分を補い、体のバランスを整える治療を続けることで、多くのお子さまが成長し、日常生活を送れるようになることが期待できます。

  • 水分と塩分の補給:新生児期は点滴が必要になることがあります。その後は飲み薬や食事で補います
  • カリウムの補給:2型では生まれた直後にカリウムが高いことがあるため、血液検査で確認しながら慎重に始めます
  • プロスタグランジンを抑える薬(インドメタシンなど):尿の量を減らす効果が期待できます。胃腸や腎臓への副作用に注意しながら、量を調整して使います
  • 成長・栄養の支援:体重の増え方や成長を定期的に確認します
  • 腎臓の定期的な検査:腎石灰化や腎臓のはたらきの変化を長く見守ります

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる KCNJ1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、KCNJ1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

KCNJ1 は内向き整流性カリウムチャネル Kir1.1(ROMK)をコードし、ヘンレループ太い上行脚の管腔側膜でカリウムを再循環させ、NKCC2(SLC12A1)によるナトリウム・カリウム・塩素共輸送を維持する。同時に管腔側正電位を形成し、カルシウム・マグネシウムの傍細胞経路での再吸収を駆動する。機能喪失により NKCC2 が実質的に停止し、1型(SLC12A1)と同等の重度の塩類喪失、高カルシウム尿症、腎石灰化、プロスタグランジンE2 産生亢進を来す(高プロスタグランジンE症候群)。

2型の表現型上の特異点は、新生児期の一過性高カリウム血症である。ROMK は皮質集合管主細胞におけるカリウム分泌の主要経路でもあるため、出生直後はカリウム排泄が障害され、偽性低アルドステロン症1型と紛らわしい所見を呈しうる。その後、流量依存性の大コンダクタンスカリウムチャネルによる代償的分泌が発達し、多くは軽度の低カリウム血症へ移行するが、低下の程度は他の型より軽い。

鑑別としては、バーター症候群1型(SLC12A1、胎児期発症・高カルシウム尿症)、3型(CLCNKB、古典型で発症が遅く表現型の幅が広い)、4a型(BSND)および4b型(CLCNKA/CLCNKB、感音難聴を伴う)、5型(MAGED2、X連鎖性で胎児期の一過性経過)、ギッテルマン症候群(SLC12A3、低マグネシウム血症・低カルシウム尿症)が挙がる。5型は X 連鎖性で再発率の考え方が異なり、また自然に軽快しうるため、羊水過多で胎児期型が疑われた場合の遺伝子診断は予後予測と遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。性別による差はありません。バーター症候群の中には X 連鎖性の型(5型)もあり、再発の考え方が異なります。原因遺伝子を確定しておくことが大切です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 多くは妊娠中期以降の超音波検査で、原因のはっきりしない羊水過多として気づかれます。ただし羊水過多にはさまざまな原因があり、超音波検査だけでこの病気と決めることはできません。前のお子さまで診断がついている場合は、妊娠早期からの検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 他の型のバーター症候群とはどう違いますか。

A. 2型は胎児期から症状が出る重い型の一つですが、生まれた直後に一時的にカリウムが高くなること、その後のカリウムの低下が比較的軽いことが特徴です。難聴を伴う型(4型)とは異なり、2型では通常、聞こえの問題はみられません。

Q. 大人になるまで成長できますか。

A. 新生児期を乗り越え、水分・塩分の補給やお薬による治療を続けることで、多くのお子さまが成長していくことが期待できます。一方で、腎石灰化などにより年齢とともに腎臓のはたらきが低下する方もいるため、生涯にわたる定期的な通院が大切です。経過には個人差がありますので、主治医とよくご相談ください。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Simon DB, Karet FE, Rodriguez-Soriano J, et al. Genetic heterogeneity of Bartter’s syndrome revealed by mutations in the K+ channel, ROMK. Nat Genet. 1996;14(2):152-156.
  • Konrad M, Nijenhuis T, Ariceta G, et al. Diagnosis and management of Bartter syndrome: executive summary of the consensus and recommendations from the European Rare Kidney Disease Reference Network Working Group for Tubular Disorders. Kidney Int. 2021;99(2):324-335.
  • Seyberth HW, Schlingmann KP. Bartter- and Gitelman-like syndromes: salt-losing tubulopathies with loop or DCT defects. Pediatr Nephrol. 2011;26(10):1789-1802.
  • Laghmani K, Beck BB, Yang SS, et al. Polyhydramnios, transient antenatal Bartter’s syndrome, and MAGED2 mutations. N Engl J Med. 2016;374(19):1853-1863.
  • OMIM #241200 Bartter syndrome, type 2, antenatal. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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