概要
短体幹型骨異形成症4型(ブラキオルミア4型)は、背骨(椎体)が平たくなるために胴体が短くなり、背が低くなる骨系統疾患です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、PAPSS2(10q23)遺伝子の変化が原因となります。
「ブラキオルミア」は「短い胴体」という意味の言葉で、手足の長さに比べて胴体が短いことが特徴です。生まれたときの身長はほぼ正常なことが多く、幼児期以降に背の伸びが緩やかになったり、背骨の曲がり(側弯・後弯)が出てきたりして気づかれます。知的な発達はふつう保たれ、命にかかわる病気ではありません。
ブラキオルミアにはいくつかの型があり、原因遺伝子や遺伝形式が異なります。4型は PAPSS2 遺伝子が原因の潜性遺伝の型で、背骨の変化に加えて、手足の骨の端(骨端・骨幹端)にも軽い変化を伴うことが特徴です。一方、3型は TRPV4 遺伝子による顕性(優性)遺伝の型で、遺伝のしかたがまったく異なります。また、PAPSS2 遺伝子の変化は、性ホルモンのバランスにも影響することがあります(後述)。
原因
PAPSS2 は、体のなかで物質に硫酸を結合させる反応(硫酸化)に欠かせない「PAPS」という硫酸の供給源をつくる酵素です。
軟骨の土台となる「プロテオグリカン」という物質は、硫酸を結合させることで水を抱え込み、クッションとしてはたらきます。PAPSS2 がはたらかないと、軟骨のなかで PAPS が不足し、プロテオグリカンの硫酸化が不十分になります。その結果、成長期の骨の伸び、とくに背骨の高さ方向の成長が妨げられ、胴体が短くなります。
また PAPS は、副腎でつくられるホルモン「DHEA」を硫酸化して「DHEA-S」という形に変えるのにも使われます。この反応がうまく進まないと、DHEA が男性ホルモン(アンドロゲン)に変わりやすくなり、男性ホルモンが多めになることがあります。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。
症状
- 胴体の短い低身長:手足の長さに比べて胴体が短く、幼児期以降に目立ってきます
- 背骨の変化:椎体が平たくなり(扁平椎)、縁が不ぞろいになります。側弯や後弯が出ることがあります
- 手足の骨の端の軽い変化:4型に特徴的な所見で、股関節やひざの骨の形にわずかな変化がみられます
- 関節の痛み・早い時期からの変形性関節症:背中や股関節、ひざの痛みが若いうちから出ることがあります
- 肋軟骨が早い時期から石灰化すること(X線で見つかります)
- ホルモンへの影響:一部の方で、血液中の DHEA-S が低く、早い時期の陰毛の発生(早発陰毛)や、女性では多毛・月経不順などがみられることがあります
- 知的な発達はふつう保たれます
検査・診断
生まれたときにはほとんど目立たないため、妊娠中の超音波検査で見つかることは少ない病気です。多くは幼児期以降に、低身長や体の比率(胴体が短いこと)、背骨の曲がりから疑われます。
全身の骨のX線検査では、椎体が平たく長方形に近い形になり、椎体と椎体の間のすき間が狭いこと、手足の骨の端の軽い変化、肋軟骨の石灰化などが手がかりになります。あわせて、血液中の DHEA-S などのホルモンを調べることもあります。
確定診断は遺伝学的検査で行い、ブラキオルミア4型では PAPSS2 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。見た目が似ていても遺伝形式の異なる型(顕性遺伝の3型など)があるため、次のお子さまの見通しを正しくお伝えするうえで、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。
治療
現時点で、この病気そのものを治す治療はありません。治療の中心は、背骨や関節の症状、ホルモンへの影響に合わせた対症療法と、成長に合わせた見守りです。
- 整形外科での定期的な経過観察:側弯・後弯の進み具合を確認し、必要に応じて装具や手術を検討します
- 痛みへの対応:鎮痛薬やリハビリテーションを用い、関節に負担をかけにくい運動を工夫します
- 内分泌(ホルモン)の評価:早発陰毛や月経の異常などがあれば、小児内分泌科・婦人科で相談します
- 生活面の支援:低身長に合わせた学校や生活環境の工夫と、心理的な支え
- 遺伝カウンセリング:診断の意味や、次のお子さま・ご親族への影響についてご説明します
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる PAPSS2 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、PAPSS2 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。
専門的な解説
PAPSS2(3′-phosphoadenosine 5′-phosphosulfate synthase 2)は ATP スルフリラーゼと APS キナーゼの2つの活性をもつ二機能酵素で、あらゆる硫酸転移反応に共通の基質である PAPS を合成する。軟骨では PAPSS2 が主要なアイソフォームであり、欠損するとプロテオグリカン(アグリカン)のコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化が低下する。Papss2 の機能喪失によるマウスの brachymorphic(bm)変異体は、短体幹・短肢を示すモデルとして知られる。
PAPSS2 関連の骨系統疾患は、ブラキオルミア4型(軽度の骨端・骨幹端変化を伴う)から、より重症の脊椎骨端骨幹端異形成症パキスタン型までの連続したスペクトラムとして捉えられる。ブラキオルミア4型の X 線所見は、長方形の扁平椎と椎体終板の不整、椎間腔の狭小化、肋軟骨の早期石灰化、短い大腿骨頸部、軽度の骨端・骨幹端変化が特徴とされる。出生時の身長はほぼ正常で、低身長は幼児期以降に目立ってくる。
骨以外の所見として、DHEA の硫酸化が障害されて血中 DHEA-S が低値となり、DHEA がアンドロゲンへ代謝されやすくなる。早発陰毛や多嚢胞性卵巣症候群に似た高アンドロゲン症状を示した報告があり、保因者でも軽度の DHEA-S 低値を示しうるとされる。表現型の幅は大きく、骨所見が軽微な例もある。
鑑別としては、ブラキオルミア3型(TRPV4、常染色体顕性)、ブラキオルミア1型(常染色体潜性)、脊椎骨端異形成症、ムコ多糖症(特にモルキオ症候群)が挙がる。TRPV4 関連の3型は顕性遺伝であり、次子再発率は潜性(25%)と顕性(罹患した親からは50%、新生突然変異ではごくわずか)で大きく異なるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。
よくある質問
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。ブラキオルミアには顕性遺伝の型(3型)もあり、その場合は再発率の考え方がまったく異なります。再発率が大きく異なるため、原因遺伝子を確定することが重要です。
Q. 妊娠中に分かりますか。
A. この病気は生まれたときの体つきがほぼ正常なことが多く、妊娠中の超音波検査で気づかれることはまれです。ご家族に診断がついている場合や、ご両親がキャリアと分かっている場合は、遺伝学的検査による出生前の確認を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q. 大人になるとどうなりますか。
A. 知的な発達は保たれることが多く、学校生活や仕事など日常生活を送る方が多い病気です。ただし、低身長に加えて、背骨の曲がりや、背中・股関節・ひざの痛みが若いうちから出ることがあります。症状の程度は人によって大きく違うため、整形外科での定期的な経過観察が大切です。
Q. 骨以外に気をつけることはありますか。
A. PAPSS2 遺伝子は、性ホルモンのもとになる DHEA の処理にもかかわっています。そのため一部の方では、早い時期の陰毛の発生や、女性での多毛・月経不順など、男性ホルモンが多めになる症状がみられることがあります。気になる症状があれば、小児内分泌科や婦人科でご相談ください。
Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。
A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。
参考文献
- Miyake N, Elcioglu NH, Iida A, et al. PAPSS2 mutations cause autosomal recessive brachyolmia. J Med Genet. 2012;49(8):533-538.
- Iida A, Simsek-Kiper PÖ, Mizumoto S, et al. Clinical and radiographic features of the autosomal recessive form of brachyolmia caused by PAPSS2 mutations. Hum Mutat. 2013;34(10):1381-1386.
- Faiyaz ul Haque M, King LM, Krakow D, et al. Mutations in orthologous genes in human spondyloepimetaphyseal dysplasia and the brachymorphic mouse. Nat Genet. 1998;20(2):157-162.
- Noordam C, Dhir V, McNelis JC, et al. Inactivating PAPSS2 mutations in a patient with premature pubarche. N Engl J Med. 2009;360(22):2310-2318.
- OMIM #612847 Brachyolmia 4 with mild epiphyseal and metaphyseal changes. Online Mendelian Inheritance in Man.
