ブルック症候群1型

Bruck Syndrome 1, FKBP10

概要

ブルック症候群1型は、骨が折れやすい「骨形成不全症」と、生まれつき関節が曲がったまま伸びない「先天性関節拘縮」をあわせもつ病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、FKBP10(17q21.2)遺伝子の変化が原因となります。

出生時から肘や膝などの関節が曲がって固まっており、関節の内側に皮膚のひだ(翼状片)がみられることがあります。骨折は乳児期から小児期にかけてくり返し起こりやすく、成長とともに背骨の曲がり(側弯)や低身長が目立ってきます。一方で、知的な発達は通常保たれます。非常にまれな病気で、世界でも報告は限られています。

FKBP10 遺伝子の変化は、ブルック症候群1型のほかに、関節拘縮をともなわない骨形成不全症(XI型)や、骨の弱さが目立たず関節拘縮が中心となる病気も起こします。また、症状がよく似たブルック症候群2型は別の遺伝子(PLOD2)が原因です。「骨折しやすさ」と「生まれつきの関節拘縮」が両方そろい、原因が FKBP10 であるものがブルック症候群1型です。

原因

FKBP10 は、FKBP65 というたんぱく質の設計図です。FKBP65 は細胞の中で、骨や皮膚、腱の主成分である「Ⅰ型コラーゲン」が正しく組み立てられるよう手助けする「介添え役(シャペロン)」としてはたらきます。

コラーゲンは、細胞の外に出たあと、分子どうしが橋をかけるように結びつく(架橋)ことで、強くしなやかな線維になります。FKBP65 がはたらかないと、この橋かけに必要な部分の化学的な仕上げ(水酸化)が不十分になり、コラーゲン線維の強さが損なわれます。その結果、骨がもろくなるとともに、関節のまわりの組織の発達にも影響し、関節拘縮が生じると考えられています。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 先天性の関節拘縮:肘・膝・股関節などが曲がったまま固まっています。この型を特徴づける所見で、生まれたときからみられます
  • 翼状片:肘や膝の内側に、皮膚が水かき状に張ったひだがみられることがあります
  • 内反足(足首が内側に曲がった状態)
  • くり返す骨折:多くは乳児期〜小児期に始まり、軽い力でも骨折します。生まれたときにすでに骨折がみられることもあります
  • 進行する背骨の変形(側弯・後弯)と、手足の骨の変形
  • 低身長:骨折や変形をくり返すことで目立ってきます
  • 歩くことが難しくなり、車いすが必要になる方もいます
  • 白目が青く見える、歯がもろい、難聴といった、他の骨形成不全症でみられる症状は目立たないことが多いとされます

検査・診断

生まれたときの関節拘縮と、その後にくり返す骨折から疑われます。妊娠中の超音波検査で、関節の動きが少ないことや内反足が指摘されることもありますが、骨折が目立つのは出生後であることが多く、妊娠中の超音波検査だけで診断をつけることは難しい病気です。X線検査では、骨量の低下、細い骨、骨折の跡、背骨の変形、頭の骨の縫い目に小さな骨片が並ぶ所見(ウォルム骨)などがみられます。

確定診断は遺伝学的検査で行い、ブルック症候群1型では FKBP10 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。関節拘縮をともなう病気や骨形成不全症にはさまざまな原因と遺伝形式があり、次のお子さまの見通しを正しくお伝えするために、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、この病気そのものを治す治療はありません。骨折を減らし、関節の動きと生活の質をできるだけ保つことを目標に、整形外科・小児科・リハビリテーション科などが協力して治療を行います。

  • 骨を強くする薬(ビスホスホネート製剤など):骨密度を高め、骨折の回数を減らす効果が期待されます。効果の程度には個人差があります
  • 整形外科的治療:骨折の治療、骨の変形の矯正、骨の中に金属の棒を入れる手術、側弯への対応などを行います
  • リハビリテーション:関節の動く範囲を保ち、筋力を維持するための理学療法・作業療法
  • 装具・車いすなどの補助具:骨折を防ぎながら、移動や日常生活を助けます
  • 日常生活の工夫と学校・地域での支援:抱っこや着替えのしかた、安全な遊び方などをご家族と一緒に考えます
  • ご家族への心理的支援と遺伝カウンセリング

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる FKBP10 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、FKBP10 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

ブルック症候群1型は常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患で、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

FKBP10 がコードする FKBP65 は、粗面小胞体に局在するペプチジルプロリルイソメラーゼ(FKBP ファミリー)で、Ⅰ型プロコラーゲンの分子シャペロンとしてはたらく。FKBP65 はリシルヒドロキシラーゼ2(LH2、PLOD2 の産物)と協調し、コラーゲンのテロペプチド領域のリシン水酸化に必要であることが示されている。FKBP10 欠損では骨コラーゲンのテロペプチドリシン水酸化が低下し、ヒドロキシリシン由来の成熟架橋が減少する。ブルック症候群2型(PLOD2)と同一の生化学的経路の障害であることが、両者の臨床像の類似を説明する。

FKBP10 関連疾患は表現型の連続体(スペクトラム)を形成する——①関節拘縮をともなわない常染色体潜性骨形成不全症(OI XI型)、②先天性関節拘縮・翼状片と骨脆弱性を併せもつブルック症候群1型、③骨脆弱性が軽く関節拘縮が主体となる表現型(アラスカ先住民で報告されたクスコクウィム症候群)である。多くは機能喪失型変異で、同一の変異でも家系によって関節拘縮の有無が異なる例が報告されており、遺伝子型から表現型を確実に予測することは難しい。プロコラーゲンの分泌は遅延するが、COL1A1/COL1A2 変異型でみられる過剰修飾は目立たないとされる。

鑑別としては、ブルック症候群2型(PLOD2)、COL1A1/COL1A2 による骨形成不全症(多くは常染色体顕性、新生突然変異も多い)、その他の潜性骨形成不全症(SERPINF1、CRTAP、P3H1 など)、先天性多発性関節拘縮症をきたす諸疾患が挙がる。これらは遺伝形式が異なり、次子再発率が25%(潜性)から、新生突然変異による顕性ではごくわずかまで大きく違うため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。骨形成不全症の多くは常染色体顕性遺伝で、新生突然変異によって偶発的に起こることもあり、その場合の再発率は大きく異なります。正しい見通しのために、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 超音波検査で関節の動きの少なさや内反足が指摘されることはありますが、それだけでこの病気と診断することは困難です。前のお子さまで原因となる遺伝子の変化がわかっている場合は、妊娠中の遺伝学的検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. ブルック症候群1型と2型はどう違いますか。

A. 症状はよく似ていて、見た目だけで区別することはほとんどできません。違いは原因遺伝子で、1型は FKBP10、2型は PLOD2 です。どちらも常染色体潜性遺伝ですが、ご家族の検査では原因遺伝子を調べる必要があるため、遺伝学的検査で区別することが大切です。

Q. 大人になるまで生活できますか。

A. 骨折や変形の程度には個人差が大きく、成人して生活されている方も報告されています。知的な発達は通常保たれます。一方で、くり返す骨折や背骨の変形によって移動に車いすが必要になることもあるため、早い時期から骨の治療とリハビリテーションを続け、生活を支える体制を整えることが大切です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • OMIM #259450 Bruck syndrome 1; BRKS1. Online Mendelian Inheritance in Man.
  • Alanay Y, Avaygan H, Camacho N, et al. Mutations in the gene encoding the RER protein FKBP65 cause autosomal-recessive osteogenesis imperfecta. Am J Hum Genet. 2010;86(4):551-559.
  • Kelley BP, Malfait F, Bonafe L, et al. Mutations in FKBP10 cause recessive osteogenesis imperfecta and Bruck syndrome. J Bone Miner Res. 2011;26(3):666-672.
  • Shaheen R, Al-Owain M, Faqeih E, et al. Mutations in FKBP10 cause both Bruck syndrome and isolated osteogenesis imperfecta in humans. Am J Med Genet A. 2011;155A(6):1448-1452.
  • Schwarze U, Cundy T, Pyott SM, et al. Mutations in FKBP10, which result in Bruck syndrome and recessive forms of osteogenesis imperfecta, inhibit the hydroxylation of telopeptide lysines in bone collagen. Hum Mol Genet. 2013;22(1):1-17.
  • Marini JC, Forlino A, Bächinger HP, et al. Osteogenesis imperfecta. Nat Rev Dis Primers. 2017;3:17052.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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