進行性家族性肝内胆汁うっ滞症4型

Cholestasis, progressive familial intrahepatic 4, TJP2

概要

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症4型は、肝臓でつくられた胆汁がうまく流れ出せずに肝臓の中にたまり、乳児期から黄疸や強いかゆみが続く病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、TJP2(9q21.11)遺伝子の変化が原因となります。

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は、原因となる遺伝子によって1型・2型・3型などに分かれます。1〜3型が胆汁の成分を運ぶ「ポンプ」の病気であるのに対し、4型は肝臓の細胞どうしのすき間をふさぐ「つなぎ目」の病気である点が大きな違いです。4型は乳児期に発症し、肝硬変へ進みやすく、子どものうちに肝臓がん(肝細胞がん)が起こることがあることが知られています。

同じ TJP2 遺伝子の変化でも、血液中の胆汁酸が高くなるだけの比較的軽い病気(家族性高胆汁酸血症)や、遺伝子の一部が重複して起こる難聴(顕性遺伝)が報告されています。この4型は、TJP2 のはたらきがほぼ失われることで起こる、もっとも重い肝臓の病気です。

原因

TJP2 遺伝子は、ZO-2(ゾーナ・オクルーデンス2)というたんぱく質の設計図です。ZO-2 は、隣り合う細胞どうしをぴったりと閉じ合わせる「タイトジャンクション」という目張りの部分をつくる土台としてはたらきます。

肝臓の細胞は、胆汁を細い管(毛細胆管)へ送り出しています。タイトジャンクションは、この管から胆汁が細胞のすき間へ漏れ出さないようにする「パッキン」の役目をしています。ZO-2 がつくられないと目張りがゆるみ、胆汁の成分が漏れ出して肝臓の細胞を傷つけ、胆汁の流れも滞ります。その結果、胆汁うっ滞と肝臓の線維化(かたくなること)が進みます。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 黄疸:多くは生後まもなくから乳児期に、皮膚や白目が黄色くなります
  • 強いかゆみ:眠れないほどのかゆみが続き、生活の質を大きく下げます
  • 白っぽい便、濃い色の尿
  • 体重が増えにくい、身長が伸びにくい:胆汁が腸に届かず、脂肪の吸収が悪くなるためです
  • 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の不足:出血しやすさ(ビタミンK)や骨の弱さ(ビタミンD)につながります
  • 肝臓・脾臓の腫れ
  • 肝硬変・肝不全への進行:この型は進行が早いことが多く、幼児期までに肝移植が必要になることがあります
  • 子どものうちの肝細胞がん:この型で特に注意が必要な合併症です
  • 一部のお子さまで、呼吸器や神経の症状など肝臓以外の症状が報告されています

検査・診断

乳児期の黄疸やかゆみをきっかけに、血液検査で胆汁酸やビリルビンの上昇が見つかります。胆汁うっ滞があるのに、肝臓の酵素の一つである「γ-GTP(GGT)」が正常か低めにとどまることが特徴で、この点で胆道閉鎖症や3型などと区別する手がかりになります。超音波検査で胆道の形に異常がないことも確かめます。

肝生検で組織を調べると、ZO-2 たんぱくが毛細胆管のまわりに見られないことが診断の助けになります。確定診断は遺伝学的検査で行い、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症4型では TJP2 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。症状の似た他の型とは治療方針や肝移植後の経過が異なるため、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、遺伝子の変化そのものを治す治療はありません。治療は、胆汁の流れを助け、かゆみや栄養不足をやわらげ、肝臓の状態を見守ることが中心です。肝硬変や肝不全に進んだ場合は、肝移植がもっとも有効な治療となります。

  • 胆汁の流れを助ける薬:ウルソデオキシコール酸などが使われますが、効果には個人差があります
  • かゆみを抑える治療:複数の薬を組み合わせます。腸からの胆汁酸の再吸収を抑える新しい薬も使われ始めていますが、この型での効果はまだ十分にわかっていません
  • 栄養療法:吸収されやすい脂肪(中鎖脂肪酸)を含むミルクや、脂溶性ビタミンの補充を行います
  • 肝臓がんの定期的なチェック:血液検査(AFP など)と画像検査を定期的に行います
  • 肝移植:肝不全やがんの心配が高まったときに検討します。移植後も長期の通院が必要です
  • ご家族への支援:かゆみによる睡眠不足は家族全体の負担になるため、医療・福祉の支援を活用します

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる TJP2 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、TJP2 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

この疾患は常染色体潜性(劣性)遺伝のため、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

TJP2 は MAGUK ファミリーに属するタイトジャンクション裏打ちたんぱく ZO-2 をコードし、クローディン群をアクチン細胞骨格へ連結する足場として機能する。両アレル性の機能喪失変異(ナンセンス・フレームシフト等)では ZO-2 が欠失し、肝細胞間タイトジャンクションへのクローディン-1の局在が失われる。その結果、傍細胞経路のバリアが破綻して胆汁成分が肝実質へ逆流し、低GGT型の進行性胆汁うっ滞を呈する(Sambrotta ら、2014年)。

本型の臨床的特徴は、乳児期発症・早期の肝硬変進展と、小児期の肝細胞がん発生である。一部症例では呼吸器・神経系など肝外症状も記載される。一方、同遺伝子の病的バリアントは表現型の幅が広く、ミスセンス変異(アーミッシュ集団の p.Val48Ala など)は BAAT 変異と併せて家族性高胆汁酸血症として報告され、TJP2 を含む領域の重複は常染色体顕性の非症候群性難聴(DFNA51)を起こす。PFIC4 として扱うのは両アレル性の機能喪失による重症肝病変である。

鑑別としては、低GGT型の PFIC1(ATP8B1)、PFIC2(ABCB11)、PFIC5(NR1H4)、PFIC6(MYO5B)、胆汁酸合成障害、高GGT型の PFIC3(ABCB4)、アラジール症候群(JAG1、顕性)、胆道閉鎖症が挙がる。PFIC1 は肝移植後に下痢や脂肪肝が問題となり、PFIC2 は移植後に抗BSEP抗体による再発がありうるなど、病型ごとに管理が異なるため、遺伝子診断は治療方針と遺伝カウンセリングの双方に直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。キャリアのお子さまは基本的に症状がありません。原因遺伝子が確定していれば、次の妊娠で出生前検査や着床前検査を検討することができます。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. この病気は妊娠中の超音波検査ではほとんど異常が見られず、多くは生まれてから黄疸やかゆみで気づかれます。前のお子さまで原因遺伝子がわかっている場合は、遺伝学的検査で妊娠中に調べることを検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 1型や2型とはどう違うのですか。

A. 症状は似ていますが、原因となる遺伝子としくみが異なります。1〜3型は胆汁の成分を運ぶポンプの異常ですが、4型は肝臓の細胞どうしのすき間をふさぐ部分の異常です。4型では子どものうちに肝臓がんが起こることがあるため、定期的な検査がより大切になります。

Q. 肝移植をすれば元気に暮らせますか。

A. 肝移植により黄疸やかゆみが改善し、成長が追いつくお子さまも多く報告されています。ただし、移植後は拒絶反応を防ぐ薬を続ける必要があり、合併症の可能性もあります。この型は報告数が少なく、長期の経過についてはまだわかっていないこともあります。主治医とよく相談してください。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Sambrotta M, Strautnieks S, Papouli E, et al. Mutations in TJP2 cause progressive cholestatic liver disease. Nat Genet. 2014;46(4):326-328.
  • Carlton VE, Harris BZ, Puffenberger EG, et al. Complex inheritance of familial hypercholanemia with associated mutations in TJP2 and BAAT. Nat Genet. 2003;34(1):91-96.
  • Bull LN, Thompson RJ. Progressive familial intrahepatic cholestasis. Clin Liver Dis. 2018;22(4):657-669.
  • Amirneni S, Haep N, Gad MA, et al. Molecular overview of progressive familial intrahepatic cholestasis. World J Gastroenterol. 2020;26(47):7470-7484.
  • OMIM #615878 Cholestasis, progressive familial intrahepatic, 4. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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