CODAS症候群

CODAS Syndrome, LONP1

概要

CODAS症候群は、脳(Cerebral)・目(Ocular)・歯(Dental)・耳(Auricular)・骨格(Skeletal)の5つの部位に、生まれつきの特徴があらわれるまれな病気です。病名は、この5つの英語の頭文字をとってつけられました。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、LONP1(19p13.3)遺伝子の変化が原因となります。

主な特徴は、発達の遅れ、生まれつきの白内障、歯の形の異常、耳の形の特徴、低身長と骨の発育の異常です。症状の組み合わせや重さには個人差が大きく、生まれてすぐに白内障や骨の所見から気づかれることもあれば、成長の過程で少しずつ明らかになることもあります。

LONP1 遺伝子は、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアのなかで、たんぱく質の品質を管理する酵素の設計図です。同じ遺伝子の変化で、CODAS症候群のような体の形の特徴が目立つ病気とは別に、筋力低下や乳酸の上昇などが中心となる「ミトコンドリア病」の形をとる例も報告されています。この記事では、目・歯・耳・骨の特徴がそろうCODAS症候群について説明します。

原因

LONP1 は、ミトコンドリアのなかで古くなったり、形がくずれたりしたたんぱく質を分解して片づける「掃除役」の酵素(Lonプロテアーゼ)をつくる遺伝子です。また、ミトコンドリアが独自にもつ遺伝子(ミトコンドリアDNA)を保つはたらきにも関わっています。

この酵素のはたらきが弱まると、ミトコンドリアのなかに不要なたんぱく質がたまり、エネルギーをつくる仕組みがうまくはたらかなくなります。とくに、胎児期に目の水晶体・歯・耳・骨や軟骨がつくられる時期には多くのエネルギーと正確なたんぱく質の管理が必要なため、これらの部位の発生に影響が出ると考えられています。ただし、なぜ特定の部位に症状が集中するのか、詳しいしくみはまだ研究が続いています。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 脳・発達:発達の遅れ、筋肉の張りの弱さ(筋緊張低下)がみられます。程度には個人差があります
  • 目:生まれつきの白内障がもっとも特徴的です。ほかに、まぶたが下がる(眼瞼下垂)、目が揺れる(眼振)などがみられることがあります
  • 歯:歯の生える時期の遅れ、歯の形(かみ合わせ面のでこぼこ)の異常、エナメル質の発育不良などがみられます
  • 耳:耳の外側のふち(耳輪)が折れ込んだような特徴的な形がみられ、難聴をともなうことがあります
  • 骨格:低身長、骨の成長部分(骨端・骨幹端)の形の異常、股関節の形成不全、側弯などがみられます。X線では背骨(椎体)に縦の裂け目のような所見(冠状裂)が見られることがあります
  • 気道:のどや気管がやわらかく、呼吸のときにつぶれやすい(喉頭軟化症・気管軟化症)ことがあり、乳児期に呼吸の手助けが必要になる場合があります
  • その他:関節のゆるさ、顔つきの特徴(鼻の付け根が平たいなど)がみられることがあります

検査・診断

生まれたあと、生まれつきの白内障、耳の形の特徴、骨のX線所見(背骨の冠状裂や骨端の異常)などの組み合わせから疑われます。歯の異常は、乳歯が生えそろう時期以降に明らかになります。妊娠中の超音波検査で骨の特徴に気づかれることもありますが、超音波検査だけでこの病気と見分けることは難しいのが一般的です。

確定診断は遺伝学的検査で行い、CODAS症候群では LONP1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。白内障や骨の異常はほかの多くの病気でも起こるため、原因遺伝子を確定することで、今後の見通しや次のお子さまへの影響を正しくお伝えできるようになります。

治療

現時点で、この病気そのものを治す治療はありません。治療は、それぞれの症状に合わせた対症療法と、成長・発達を支える支援が中心です。複数の診療科が連携して、長く見守っていくことが大切です。

  • 眼科:白内障の手術と、その後の視力の発達を促す治療(眼鏡・コンタクトレンズなど)を行います
  • 呼吸の管理:喉頭軟化症・気管軟化症がある場合は、程度に応じて呼吸の補助や手術を検討します
  • 整形外科:股関節の形成不全や側弯の経過をみて、必要に応じて装具や手術を行います
  • 歯科:歯の形や生え方の異常に対して、定期的な管理と治療を行います
  • 耳鼻科:聴力検査を行い、難聴があれば補聴器などで支援します
  • 発達の支援:理学療法・作業療法・言語療法や、療育・教育面での支援を行います
  • 遺伝カウンセリング:診断の意味、見通し、次のお子さまへの影響についてご説明します

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる LONP1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、LONP1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

LONP1 はミトコンドリアマトリックスに局在するATP依存性AAA+プロテアーゼ(Lonプロテアーゼ)をコードし、ホモ六量体を形成して酸化・変性したマトリックスたんぱく質の分解、シャペロン機能、ミトコンドリアDNA結合たんぱく質(TFAMなど)の量的調節を担う。機能低下によりミトコンドリア内のたんぱく質恒常性が破綻し、呼吸鎖機能の低下やミトコンドリアの形態異常が生じることが、患者由来細胞で示されている。

CODAS症候群は1991年にShebibらが初めて報告し、2015年にLONP1 の両アレル性変異が原因と同定された。報告された変異の多くはATPase領域とプロテアーゼ領域の近傍に集まり、残存活性を保つミスセンス変異が中心である。オールド・オーダー・アーミッシュ集団では創始者変異(p.Arg721Gly)により患者が集積することが知られる。特徴的所見は、先天性白内障、耳輪の過剰な折れ込み、臼歯の咬頭形態異常、椎体の冠状裂、骨端・骨幹端の異形成、喉頭・気管軟化症である。

同じ LONP1 の両アレル性変異でも、骨格・眼・歯の形態異常を欠き、乳酸アシドーシス、筋緊張低下、進行性の神経症状を主体とする古典的ミトコンドリア病の表現型をとる例が報告されている。CODAS症候群は、ミトコンドリアのたんぱく質品質管理の異常が多臓器の発生異常(形態形成の異常)として現れる点で、この表現型と区別される。鑑別としては、点状軟骨異形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、先天性白内障をともなう他の症候群が挙がり、臨床像が重なるため遺伝子診断が確定に不可欠である。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。男の子・女の子で確率に差はありません。症状のないキャリアとなる確率は2分の1です。正確な見通しのために、まず原因遺伝子を確定することが大切です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 超音波検査で骨の特徴などに気づかれることはありますが、超音波検査だけでこの病気と診断することは難しいのが一般的です。前のお子さまで原因遺伝子の変化がわかっている場合は、出生前検査や着床前検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 同じ遺伝子で別の病気もあると聞きました。

A. はい。LONP1 遺伝子の変化では、CODAS症候群のように目・歯・耳・骨の特徴がそろう形のほかに、筋力低下や乳酸の上昇などが中心となるミトコンドリア病の形をとる例も報告されています。どちらの形になるかは遺伝子の変化の種類などが関わると考えられていますが、まだわかっていないことも多いため、専門医とよくご相談ください。

Q. 成長するとどうなりますか。

A. 症状の重さには個人差が大きく、見通しは一人ひとり異なります。乳児期に呼吸の管理が必要になる場合もあれば、白内障の手術やリハビリテーションなどの支援を受けながら成長していく方もいます。早くから眼科・整形外科・歯科・耳鼻科などが連携して見守ることが、生活の質を保つうえで大切です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Strauss KA, Jinks RN, Puffenberger EG, et al. CODAS syndrome is associated with mutations of LONP1, encoding mitochondrial AAA+ Lon protease. Am J Hum Genet. 2015;96(1):121-135.
  • Dikoglu E, Alfaiz A, Gorna M, et al. Mutations in LONP1, a mitochondrial matrix protease, cause CODAS syndrome. Am J Med Genet A. 2015;167(7):1501-1509.
  • Shebib SM, Reed MH, Shuckett EP, et al. Newly recognized syndrome of cerebral, ocular, dental, auricular, skeletal anomalies: CODAS syndrome–a case report. Am J Med Genet. 1991;40(1):88-93.
  • OMIM #600373 CODAS syndrome. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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