進行性脊柱後側弯・ミオパチー・難聴を伴うエーラス・ダンロス症候群

Ehlers-Danlos Syndrome with Progressive Kyphoscoliosis,Myopathy, and Hearing Loss, FKBP14

概要

進行性脊柱後側弯・ミオパチー・難聴を伴うエーラス・ダンロス症候群は、生まれたときからの筋肉の弱さ、成長とともに進む背骨の曲がり(脊柱後側弯)、難聴を特徴とする、結合組織の遺伝性疾患です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、FKBP14(7p14.3)遺伝子の変化が原因となります。

エーラス・ダンロス症候群は、皮膚・関節・血管などを支える「結合組織」が弱くなる病気の総称で、現在の国際分類では13の型に分けられています。この病気はそのうちの「後側弯型」に含まれ、FKBP14 遺伝子による後側弯型と呼ばれます。世界で報告されている患者さんは数十人程度の、きわめてまれな病気です。

後側弯型には、PLOD1 遺伝子による型もあります。FKBP14 による型は、筋肉の病気(ミオパチー)と難聴を伴いやすいことが特徴で、PLOD1 による型でみられる眼球の破れやすさは目立たず、尿検査の値も正常です。知的発達は通常保たれます。

原因

FKBP14 遺伝子は、細胞のなかの「小胞体」という場所で、つくられたばかりのたんぱく質の形を整える手伝いをするたんぱく質の設計図です。

コラーゲンは、3本の鎖がよりあわさった丈夫な縄のような構造をしています。FKBP14 のたんぱく質は、一部のコラーゲンが正しく折りたたまれ、よりあわさるのを助けると考えられています。このはたらきが失われると、皮膚・関節・血管・筋肉を支える結合組織が十分な強さを保てなくなり、背骨の曲がりや筋力の低下などの症状が現れます。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 生まれたときからの筋緊張低下と筋力低下:体がやわらかく、首すわりや歩き始めが遅れます。筋力は小児期にある程度改善することもあります
  • 進行性の脊柱後側弯:乳幼児期から目立ちはじめ、成長とともに進みます。この病気の経過を左右する重要な症状です
  • 難聴:生まれつき、または小児期からみられることが多く、感音性・伝音性・その両方の場合があります
  • 関節が柔らかすぎる(過可動性):脱臼しやすいことがあります。一方で、生まれつきの関節の硬さや内反足がみられることもあります
  • やわらかく伸びやすい皮膚、あざができやすい、毛穴のぶつぶつ(毛孔性角化症)
  • 筋肉のやせ(筋萎縮)、膀胱憩室、ヘルニア
  • 動脈の破裂・解離・動脈瘤:頻度は高くありませんが、命にかかわることがあるため注意が必要です

検査・診断

生まれたときの体のやわらかさ(筋緊張低下)、運動発達の遅れ、早くから現れる背骨の曲がり、難聴に、関節や皮膚の特徴が加わることで疑われます。筋電図や筋肉の組織検査では、筋肉の病気(ミオパチー)を示す所見がみられることがあります。尿のコラーゲン架橋の比は正常で、PLOD1 による後側弯型(この比が高くなる)との見分けに役立ちます。

先天性ミオパチーや筋ジストロフィーなど、症状の似た病気が多いため、確定診断は遺伝学的検査で行います。この病気では FKBP14 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。次のお子さまの見通しを正しくお伝えするために、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、この病気を根本から治す治療はありません。症状に合わせた治療と、生活を支える取り組みを、整形外科・小児科・耳鼻科・循環器科・リハビリテーションなどの多職種が連携して行うことが大切です。

  • リハビリテーション:理学療法で筋力と運動機能を保ち、関節を守る動き方を身につけます
  • 背骨の曲がりへの対応:定期的な経過観察、装具、必要に応じて手術を検討します。組織が弱いため、手術は経験のある施設で慎重に計画します
  • 難聴への対応:早期の聴力検査と補聴器などにより、ことばの発達と学習を支えます
  • 血管の見守り:画像検査による定期的な確認、血圧の管理を行い、急な痛みなどがあれば早めに受診します
  • 日常生活と学校生活の支援:けがを防ぐ工夫、体育や活動内容の調整、心理的な支えを含めて継続的に支援します

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる FKBP14 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、FKBP14 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

この疾患は常染色体潜性(劣性)遺伝のため、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

FKBP14 は FKBP22 をコードし、小胞体内腔に局在するペプチジルプロリル cis-trans イソメラーゼ(FK506 結合ドメインと2つの EF ハンドをもつ)である。III型・VI型・X型コラーゲンなどに結合し、プロコラーゲン三重らせん形成のシャペロン/触媒として働くと考えられている。患者線維芽細胞では小胞体の拡張と細胞外マトリックスの構築異常が報告されている。

2017年国際分類では、後側弯型エーラス・ダンロス症候群(kEDS)は先天性筋緊張低下・早期発症の進行性後側弯・関節過可動を大基準とし、原因遺伝子により kEDS-PLOD1 と kEDS-FKBP14 に分けられる。FKBP14 型に特異的な小基準として先天性難聴(感音・伝音・混合性)、毛孔性角化症、筋萎縮、膀胱憩室が挙げられる。PLOD1 型(リシルヒドロキシラーゼ1欠損)と異なり、尿中デオキシピリジノリン/ピリジノリン比は正常で、強膜・眼球の脆弱性は目立たない。17例のコホートでは、筋緊張低下は小児期に改善傾向を示す一方で後側弯は進行し、少数例で動脈解離・破裂などの重篤な血管合併症がみられた。反復して報告される変化(創始者効果が示唆されるもの)も知られる。

鑑別としては、kEDS-PLOD1、筋拘縮型エーラス・ダンロス症候群(CHST14、DSE)、コラーゲンVI関連ミオパチー(ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー、COL6A1〜COL6A3)、先天性ミオパチー、古典型エーラス・ダンロス症候群(COL5A1)、脆弱角膜症候群(ZNF469、PRDM5)が挙がる。コラーゲンVI関連疾患には顕性遺伝の例も多く、次子再発率が異なるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。症状の似た筋肉の病気には、顕性遺伝のものや偶発的に起こるものもあり、再発率が異なります。原因遺伝子を確定することが、正しい見通しにつながります。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 妊娠中の超音波検査で気づかれることは多くありません。内反足などが見つかることはありますが、多くは生まれたあとの体のやわらかさや発達の遅れから疑われます。前のお子さまで原因遺伝子がわかっている場合は、出生前の遺伝学的検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 同じ「後側弯型」でも別の型があると聞きました。

A. はい。後側弯型には PLOD1 遺伝子による型と、この FKBP14 遺伝子による型があります。どちらも生まれつきの筋緊張低下と背骨の曲がりがみられますが、この型は難聴や筋肉の病気を伴いやすく、PLOD1 による型は眼球の破れやすさに注意が必要など、特徴や注意点が異なります。

Q. 成長するとどうなりますか。

A. 筋力は小児期にある程度よくなることがありますが、背骨の曲がりは成長とともに進むことが多く、長く経過をみる必要があります。知的発達は通常保たれ、学校生活を送っている方も多くいます。まれに血管の重い合併症が起こるため、定期的な受診を続けることが大切です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Baumann M, Giunta C, Krabichler B, et al. Mutations in FKBP14 cause a variant of Ehlers-Danlos syndrome with progressive kyphoscoliosis, myopathy, and hearing loss. Am J Hum Genet. 2012;90(2):201-216.
  • Giunta C, Baumann M, Fauth C, et al. A cohort of 17 patients with kyphoscoliotic Ehlers-Danlos syndrome caused by biallelic mutations in FKBP14: expansion of the clinical and mutational spectrum and description of the natural history. Genet Med. 2018;20(1):42-54.
  • Malfait F, Francomano C, Byers P, et al. The 2017 international classification of the Ehlers-Danlos syndromes. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2017;175(1):8-26.
  • Brady AF, Demirdas S, Fournel-Gigleux S, et al. The Ehlers-Danlos syndromes, rare types. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2017;175(1):70-115.
  • OMIM #614557 Ehlers-Danlos syndrome, kyphoscoliotic type, 2. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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