概要
FG症候群2型は、乳児期の筋緊張の低下、頭が大きめであること、強い便秘や肛門の形の異常、発達の遅れなどが組み合わさって現れる先天性の症候群です。X連鎖潜性(劣性)遺伝の形式をとり、FLNA(Xq28)遺伝子の変化が原因となります。症状が出るのは主に男の子です。
FG症候群は、最初に報告されたご家族の頭文字から名づけられた病気で、原因遺伝子が一つではなく、原因ごとに「型」に分けられています。もっともよく知られた1型は MED12 遺伝子が原因で、この2型は FLNA 遺伝子が原因であることが特徴です。2型と確認された報告はごく限られた家系にとどまり、症状の全体像はまだ十分にはわかっていません。
FLNA 遺伝子は、変化の種類によってまったく異なる複数の病気を起こします。主に女性に脳の形成異常(脳室周囲結節性異所性灰白質)とてんかんを起こすもの、骨・顔・口蓋の形に特徴が出る耳口蓋指症候群のなかまなどがあり、FG症候群2型はそのなかで「発達の遅れと便秘・肛門の異常を伴う男の子の症候群」として現れる型です。
原因
FLNA 遺伝子は、フィラミンAというたんぱく質の設計図です。フィラミンAは、細胞の形を支える骨組み(アクチン線維)を網の目のようにつなぎとめるはたらきをしています。
この骨組みは、胎児期に脳の神経細胞が正しい場所へ移動するとき、心臓の弁や血管、骨、腸の筋肉がつくられるときなどに欠かせません。フィラミンAのはたらきが変わると、脳の発達、腸の動き、体の形づくりなど、複数の場所に影響が出ると考えられています。
FLNA 遺伝子はX染色体の上にあります。男の子はX染色体を1本しか持たないため、変化した遺伝子を受け継ぐと発症します。女の子はX染色体を2本持つため、多くは症状のない、または症状の軽いキャリア(保因者)となります。お母さまがキャリアの場合、男の子では2分の1の確率で発症し、女の子では2分の1の確率でキャリアとなります(X連鎖潜性遺伝)。
症状
報告例が少ないため、以下は FG症候群に共通してみられる特徴と、2型の報告にもとづくものです。現れる症状とその程度には個人差があります。
- 乳児期の筋緊張低下:体がやわらかく、首すわりやお座りが遅れることがあります
- 頭が大きめ、広く高い額、前髪の生え際が上向きになる、目と目の間が広いなどの顔立ち
- 強い便秘、鎖肛(肛門が正しくつくられない)や肛門の位置の異常:FG症候群を疑うきっかけとなる重要な所見です
- 発達の遅れ・知的障害:程度は軽度から中等度までさまざまです
- 人なつこさ、落ち着きのなさ、注意の続きにくさなどの行動の特徴
- 幅の広い親指・足の親指
- 脳の形の変化(脳梁の形成異常や、脳室のまわりに神経細胞が取り残される異所性灰白質など)がみられることがあり、てんかんを伴う場合があります
検査・診断
多くは出生後に、筋緊張の低下、頭の大きさ、便秘や鎖肛、発達の遅れなどの組み合わせから疑われます。頭部MRI検査で脳梁や脳室のまわりの状態を確認し、必要に応じて心臓や腹部の検査も行います。妊娠中の超音波検査で脳梁の異常などに気づかれることもありますが、超音波検査だけでこの病気と見分けることは困難です。
FG症候群は症状が似ていても原因遺伝子が異なる場合があるため、確定診断は遺伝学的検査で行います。FG症候群2型では、男の子の FLNA 遺伝子に変化が見つかります。お母さまがキャリアかどうかを調べることで、次のお子さまの見通しを正しくお伝えできます。
治療
現時点で、この病気そのものを治す治療はありません。それぞれの症状に合わせた治療と、成長と発達を支える療育を早くから続けることが大切です。
- 便秘・鎖肛への対応:食事や薬による排便の管理、鎖肛がある場合は外科手術を行います
- 療育:理学療法・作業療法・言語療法などで、運動やことばの発達を支えます
- 行動面・学習面の支援:特性に合わせた保育・教育環境を整えます
- てんかんがある場合の治療:抗てんかん薬などで発作を抑えます
- 心臓・血管の確認:FLNA 遺伝子は心臓の弁や血管にも関わるため、必要に応じて検査を行います
- ご家族への支援と遺伝カウンセリング
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる FLNA 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、FLNA 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
X連鎖潜性(劣性)遺伝の疾患は、お母さまが症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、男の子の2分の1の確率で発症します。お母さまがキャリアかどうかを事前に知ることで、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。
専門的な解説
FLNA がコードするフィラミンAは、N末端のアクチン結合ドメインと24個の免疫グロブリン様リピートからなる大型の細胞骨格たんぱく質で、二量体を形成してアクチン線維を直交架橋し、インテグリンなど多数の膜たんぱく質やシグナル分子と相互作用する。神経細胞移動、血管・心臓弁の形成、骨格形成、平滑筋機能に関与する。
本遺伝子は変異の種類により表現型が大きく分かれる——①機能喪失型変異は脳室周囲結節性異所性灰白質(X連鎖顕性、主に女性に発症し、男性ヘミ接合体は多くが胎生致死)や心臓弁異形成、腸管偽性閉塞を起こし、②特定領域に集中するミスセンス変異(機能獲得型と考えられる)は耳口蓋指症候群スペクトラム(耳口蓋指症候群1型・2型、前頭骨幹端異形成症、メルニック・ニードルズ症候群)を起こす。FG症候群2型は、FG症候群様の表現型を示す家系で FLNA の変異が報告されたことにより位置づけられた型であり、報告例はきわめて少なく、表現型の範囲や既知の FLNA 関連疾患との境界はなお検討の途上にある。
FG症候群は遺伝的に不均一で、鑑別としてはFG症候群1型(オピッツ・カベッジア症候群、MED12 の反復変異 p.R961W)、ルジャン・フリンス症候群(MED12)、CASK 関連疾患などの X連鎖知的障害症候群、染色体の微細な欠失・重複が挙がる。原因遺伝子によって随伴症状(てんかん、脳の形成異常、心血管合併症)の見通しや女性キャリアの症状の有無が異なるため、遺伝子診断はフォローアップと遺伝カウンセリングに直結する。なお、女性キャリアではX染色体不活化の偏りにより軽い症状を示す可能性があり、FLNA 機能喪失型変異では女性に異所性灰白質が生じうる点にも留意する。
よくある質問
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. この病気はX連鎖潜性遺伝のため、お母さまがキャリアの場合、男の子では2分の1の確率で発症し、女の子では2分の1の確率でキャリアとなります。一方で、お子さまに新たに生じた変化(新生突然変異)による場合は、次のお子さまへの影響はごくわずかです。お母さまがキャリアかどうかで見通しが大きく変わるため、遺伝子を調べて確認することが重要です。
Q. 妊娠中に分かりますか。
A. 妊娠中の超音波検査だけでこの病気と診断することは困難で、多くは生まれたあとに気づかれます。ご家族ですでに FLNA 遺伝子の変化がわかっている場合は、出生前検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q. FG症候群1型や、同じ遺伝子のほかの病気とはどう違いますか。
A. 1型は MED12 遺伝子、2型は FLNA 遺伝子が原因で、症状は似ていても原因遺伝子が異なります。また FLNA 遺伝子は、変化の種類によって、主に女性に脳の形成異常とてんかんを起こす病気や、骨や顔立ちに特徴が出る病気も起こします。どの病気にあたるかで必要な検査や見通しが変わるため、遺伝子の変化の内容を専門医と確認することが大切です。
Q. キャリアのお母さんに症状は出ますか。
A. 多くは症状がありませんが、X染色体のはたらき方の偏りによって、軽い症状がみられることがあります。FLNA 遺伝子の変化の種類によっては、女性に脳の形成異常やてんかんがみられる場合もあるため、気になる症状があれば医師にご相談ください。
Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。
A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。
参考文献
- OMIM #300321 FG syndrome 2; FGS2. Online Mendelian Inheritance in Man.
- Unger S, Mainberger A, Spitz C, et al. Filamin A mutation is one cause of FG syndrome. Am J Med Genet A. 2007;143A(16):1876-1879.
- Robertson SP, Twigg SR, Sutherland-Smith AJ, et al. Localized mutations in the gene encoding the cytoskeletal protein filamin A cause diverse malformations in humans. Nat Genet. 2003;33(4):487-491.
- Risheg H, Graham JM Jr, Clark RD, et al. A recurrent mutation in MED12 leading to R961W causes Opitz-Kaveggia syndrome. Nat Genet. 2007;39(4):451-453.
- Robertson SP. Otopalatodigital Spectrum Disorders. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
