フコシドーシス

Fucosidosis, FUCA1

概要

フコシドーシスは、体のなかで不要になった糖たんぱく質を分解できず、細胞のなかにたまっていく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、FUCA1 遺伝子の変化が原因となります。

きわめてまれな病気で、世界での報告は100例あまりです。発達の遅れと退行、骨の変形、血管角化腫、くり返す感染症が主な症状です。

原因

FUCA1 遺伝子は、ライソゾームではたらくα-L-フコシダーゼという酵素の設計図です。この酵素は、糖たんぱく質や糖脂質からフコースという糖を切り離す役目をしています。

酵素がはたらかないとフコースを含む糖鎖が全身の細胞にたまり、とくに脳・皮膚・骨のはたらきをそこないます。

症状

  • 発達の遅れと、いったん獲得した能力の退行
  • 筋緊張の低下 → のちに硬直(痙性)
  • 血管角化腫(体幹や陰部にみられる、赤紫色の小さな点):この病気に特徴的です
  • 骨の変形(多発性異骨症)、低身長
  • 特徴的な顔つき
  • 汗が多い
  • くり返す感染症(気道感染)
  • けいれん、視力・聴力の障害

検査・診断

尿中のフコースを含むオリゴ糖の増加を調べ、白血球や培養した皮膚の細胞でα-L-フコシダーゼの酵素活性を測定して診断します。FUCA1 遺伝子の解析によって確定します。血管角化腫はファブリー病でもみられるため、区別が必要です。

治療

  • 根本的に治す方法は確立していません
  • 造血幹細胞移植:早期に行った症例で、進行が抑えられたという報告があります
  • けいれんに対する抗てんかん薬
  • 理学療法、呼吸のサポート、栄養の管理
  • 感染症の予防と早期治療
  • 療育・教育面での支援

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる FUCA1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、FUCA1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

フコシドーシスは FUCA11p36.11)の両アレル変異による。α-L-フコシダーゼの欠損により、フコース含有糖鎖(糖タンパク質・糖脂質・オリゴ糖)が全身の組織に蓄積する。世界での報告は約100例と極めてまれである。

従来はI型(重症・乳児型)とII型(軽症・若年型)に分けられたが、現在は連続的なスペクトラムと理解されている。血管角化腫(angiokeratoma corporis diffusum)は本症の特徴的所見で、II型でとくに顕著である。

血管角化腫はファブリー病、ガラクトシアリドーシス、β-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症でも認められるため、血管角化腫を認めた場合はこれらライソゾーム病群の鑑別が必要である。

神経学的には、進行性の白質病変と基底核病変をMRIで認める。造血幹細胞移植の報告例は少数だが、早期実施例で神経学的進行の抑制が報告されている。酵素補充療法は現時点で存在しない。

よくある質問

Q. 血管角化腫とは何ですか?

A. 体幹や陰部にできる、赤紫色の小さな点です。この病気の特徴的な症状のひとつですが、ファブリー病などでもみられるため、検査で区別します。

Q. いったんできたことができなくなってきました。

A. この病気では、獲得した能力が失われていく「退行」がみられます。担当の先生にご相談ください。

Q. 治療法はありますか?

A. 根本的な治療は確立していません。早期の造血幹細胞移植で進行が抑えられたという報告がありますが、症例数は限られています。

Q. 汗が多いのは関係がありますか?

A. はい。この病気では汗が多くなることが知られています。

Q. 次の子も同じ病気になりますか?

A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。

参考文献

  • Willems PJ, Gatti R, Darby JK, et al. Fucosidosis revisited: a review of 77 patients. Am J Med Genet. 1991;38(1):111-131.
  • Stepien KM, Ciara E, Jezela-Stanek A. Fucosidosis-Clinical Manifestation, Long-Term Outcomes, and Genetic Profile-Review and Case Series. Genes (Basel). 2020;11(11):1383.
  • Vellodi A, Cragg H, Winchester B, et al. Allogeneic bone marrow transplantation for fucosidosis. Bone Marrow Transplant. 1995;15(1):153-158.
  • OMIM #230000 Fucosidosis
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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