ラロン型小人症

Laron dwarfism, GHR

概要

ラロン型小人症は、成長ホルモンは十分に出ているのに、体がそのホルモンに反応できないために、強い低身長となる病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、GHR(成長ホルモン受容体)遺伝子の変化が原因となります。「ラロン症候群」「成長ホルモン不応症」とも呼ばれます。

成長ホルモンが足りない「成長ホルモン分泌不全性低身長症」とよく似た見た目になりますが、この病気では血液中の成長ホルモンはむしろ高く、成長ホルモンの注射が効きません。これが大きな違いです。知的発達は多くの場合保たれ、寿命が短くなる病気ではありません。

生まれたときの身長はやや小さい程度のことが多く、妊娠中の超音波検査で気づかれることはほとんどありません。多くは乳幼児期に、身長の伸びが極端に悪いことから見つかります。

GHR 遺伝子の変化は、重さの異なる状態を起こします。両方の遺伝子のはたらきがほぼ失われた典型的な状態がこのラロン型小人症で、はたらきが一部残る変化や、片方だけの特殊な変化では、症状の軽い「部分的な成長ホルモン不応症」となり、原因のはっきりしない低身長として扱われていることもあります。

原因

GHR は、細胞の表面で成長ホルモンを受け取る「受け皿(受容体)」をつくる遺伝子です。5番染色体の短腕にあります。

成長ホルモンは、主に肝臓の受容体にくっつき、「IGF-1(インスリン様成長因子1)」という物質をつくらせます。骨や筋肉を伸ばす力の多くは、このIGF-1が担っています。受容体がはたらかないと、成長ホルモンがいくら出ていてもIGF-1がつくられず、骨の伸びが強く妨げられます。体はホルモンが足りないと判断して、さらに成長ホルモンを出し続けるため、血液中の成長ホルモンは高くなります。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 強い低身長:生後まもなくから身長の伸びが悪く、治療をしない場合、成人の身長はおおむね100〜140cm前後にとどまります
  • 特徴的な顔つき:額が広く突き出し、鼻の付け根が低く、顔の中央部が小さく見えます
  • 乳幼児期の低血糖:空腹時に血糖が下がりやすく、早めに気づいて対応することが大切です
  • 高めの声、髪の毛が細くまばら、歯の生えそろいが遅い
  • 男の子では陰茎が小さいことがあります
  • 体脂肪が多くなりやすく、筋肉量が少ない傾向
  • 思春期が遅れることがありますが、多くは妊娠・出産も可能です

検査・診断

乳幼児期の強い低身長と特徴的な顔つきから疑われます。血液検査では、成長ホルモンが高いのに、IGF-1が非常に低いという組み合わせが特徴です。多くの方では、受容体の一部が血液中に出た「成長ホルモン結合たんぱく」も低くなります。成長ホルモンを数日注射してもIGF-1が上がらないことを確かめる検査(IGF-1生成試験)が行われることもあります。

確定診断は遺伝学的検査で行い、ラロン型小人症では GHR 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。成長ホルモンの不足による低身長とは治療法がまったく異なるため、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

この病気では成長ホルモンの注射は効きません。代わりに、不足しているIGF-1そのものを補う注射(メカセルミン)が国内でも使われています。早く始めるほど身長の伸びが期待されますが、効果には個人差があり、平均的な身長に届かないことも少なくありません。長期にわたる治療となるため、小児の内分泌を専門とする医師のもとで続けることが大切です。

  • IGF-1製剤の注射:通常は1日2回、食事に合わせて皮下に注射します
  • 副作用への注意:低血糖がもっとも注意すべき副作用で、ほかに扁桃の腫れ、頭痛(頭の中の圧が上がる)、注射部位の脂肪の変化などが知られています
  • 乳幼児期の低血糖対策:こまめな授乳・食事など、空腹の時間を長くしない工夫
  • 体重・食事の管理:体脂肪が増えやすいため、成長に合わせた栄養指導
  • 歯科・耳鼻科などの定期的な診察
  • 心理的・社会的な支援:身長に関する悩みや学校生活への配慮について、ご本人とご家族を継続して支えます

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる GHR 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、GHR 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

ラロン型小人症は常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患のため、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

GHR はサイトカイン受容体スーパーファミリーに属する1回膜貫通型受容体で、成長ホルモン(GH)の結合により二量体の構造変化が起こり、JAK2–STAT5B経路を介して肝臓でのIGF-1産生を誘導する。細胞外ドメインがタンパク分解で切り出されたものが血中のGH結合タンパク(GHBP)である。1966年にLaronらがイスラエルの家系で「GHが高値の遺伝性下垂体性小人症」として報告し、1989年にGHR遺伝子の部分欠失が初めて同定された。

変異の多くは細胞外ドメインに集まり、GHBPが低値となる。一方、膜貫通ドメインや細胞内ドメインの変異、二量体化のみを障害する変異ではGHBPが正常〜高値となるため、GHBPが正常でも本症は否定できない。エクアドルの大規模集団(創始者変異 E180 の同義置換によるスプライス異常)では、低身長にもかかわらず2型糖尿病とがんの発生がきわめて少ないことが報告され、IGF-1シグナルと老化研究の観点からも注目されている。また、イントロン内の変異による偽エクソンの挿入や、細胞内ドメインを欠く優性阻害型の片アレル変異では、より軽症の部分的GH不応症を呈する。

鑑別としては、GH分泌不全(GH1、GHRHR など)、STAT5B欠損症(STAT5B、免疫不全を伴う)、IGF-1欠損症(IGF1、小頭・難聴・知的障害を伴う)、酸不安定サブユニット欠損症(IGFALS)、IGF-1受容体異常(IGF1R、IGF-1は正常〜高値)が挙がる。GH補充が有効な病態とIGF-1補充が必要な病態を区別するため、内分泌検査と遺伝子診断を組み合わせることが治療選択に直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。2分の1の確率で症状のないキャリアとなり、4分の1の確率で変化を受け継ぎません。低身長にはさまざまな原因があるため、まず原因遺伝子を確定することが大切です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 生まれたときの体の大きさは平均よりやや小さい程度のことが多く、妊娠中の超音波検査で気づかれることはほとんどありません。前のお子さまで診断がついている場合や、ご両親がキャリアとわかっている場合は、遺伝子を調べる出生前検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 成長ホルモンの注射で背は伸びますか。

A. この病気では成長ホルモンを受け取る受容体がはたらかないため、成長ホルモンの注射では効果が期待できません。代わりにIGF-1の注射を行います。身長の伸びには個人差があり、低血糖などの副作用にも注意しながら、専門医と相談して進めます。

Q. 知能や寿命に影響はありますか。

A. 多くの方で知的発達は保たれ、寿命が短くなる病気とは考えられていません。ただし、乳幼児期の低血糖を見逃さないことが大切です。進学・就労・結婚・出産など、多くの方がそれぞれの生活を送られています。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Laron Z, Pertzelan A, Mannheimer S. Genetic pituitary dwarfism with high serum concentration of growth hormone–a new inborn error of metabolism? Isr J Med Sci. 1966;2(2):152-155.
  • Godowski PJ, Leung DW, Meacham LR, et al. Characterization of the human growth hormone receptor gene and demonstration of a partial gene deletion in two patients with Laron-type dwarfism. Proc Natl Acad Sci U S A. 1989;86(20):8083-8087.
  • Rosenfeld RG, Rosenbloom AL, Guevara-Aguirre J. Growth hormone (GH) insensitivity due to primary GH receptor deficiency. Endocr Rev. 1994;15(3):369-390.
  • Guevara-Aguirre J, Balasubramanian P, Guevara-Aguirre M, et al. Growth hormone receptor deficiency is associated with a major reduction in pro-aging signaling, cancer, and diabetes in humans. Sci Transl Med. 2011;3(70):70ra13.
  • OMIM #262500 Laron syndrome. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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