メチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症 cblC型

Methylmalonic aciduria and homocystinuria, type cblC, MMACHC

概要

メチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症 cblC型は、ビタミンB12(コバラミン)を体のなかで使える形に変えられないために、メチルマロン酸とホモシステインという物質が同時にたまる先天代謝異常症です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、MMACHC(1p34.1)遺伝子の変化が原因となります。

ビタミンB12の細胞内でのはたらきに関わる病気(cblA型〜cblJ型など)のなかで、cblC型はもっとも頻度が高い型です。多くは生後1年以内、とくに新生児期〜乳児期早期に、哺乳不良・体重が増えない・筋緊張の低下・発達の遅れなどで発症します(早期発症型)。一方で、幼児期から成人期になって、歩き方の異常や精神症状、血栓などで初めて気づかれる方もいます(遅発型)。

この病気は新生児マススクリーニングでメチルマロン酸血症として見つかることがあり、早く治療を始めることで、命に関わる急な悪化を防ぎ、経過を改善できると考えられています。ただし、治療を続けていても、目(網膜)の症状や発達の遅れが残ることが少なくありません。

原因

MMACHC は、食事からとり込んだビタミンB12を細胞のなかで「下ごしらえ」するたんぱく質です。

ビタミンB12は細胞のなかで2つの形に変えられ、それぞれ別の酵素を助けます。ひとつはメチルマロン酸を分解する酵素、もうひとつはホモシステインをメチオニンに戻す酵素です。MMACHC はこの2つの形に分かれる手前の段階を担っているため、はたらかないと両方の酵素が同時に動かなくなり、メチルマロン酸とホモシステインが血液や尿にたまり、メチオニンが不足します。これらが脳・目・血液・腎臓・血管などにさまざまな影響を及ぼします。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 哺乳不良・嘔吐・体重が増えない:早期発症型の最初のサインとしてよくみられます
  • 筋緊張の低下、発達の遅れ、けいれん:小頭症や水頭症を伴うこともあります
  • 目の症状(網膜の変性、眼振、視力の低下):この型に特徴的で、治療を続けていても進むことがあります
  • 巨赤芽球性貧血などの血液の異常
  • 血栓性微小血管症(溶血性尿毒症症候群):腎臓の障害を起こすことがあり、重症化に注意が必要です
  • 肺高血圧、先天性の心臓の病気、胎児期からの発育の遅れがみられることもあります
  • 遅発型:歩行の異常(脊髄の障害)、認知機能の低下、精神症状、血栓症などで、幼児期〜成人期に気づかれます

検査・診断

新生児マススクリーニング(ろ紙血のタンデムマス法)で、プロピオニルカルニチン(C3)の上昇やメチオニンの低下から疑われることがあります。ただし、スクリーニングで見つからない場合もあるため、症状から疑うことも大切です。精密検査では、尿中のメチルマロン酸の増加と、血液中の総ホモシステインの著しい上昇が同時にみられ、メチオニンが低いことが特徴です。

確定診断は遺伝学的検査で行い、cblC型では MMACHC 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。似た検査結果を示す型は複数あり、なかには遺伝形式が異なるものもあるため、原因遺伝子を確定することは、治療方針と次のお子さまの見通しを正しくお伝えするうえで大きな意味があります。

治療

現時点で、この病気を根本から治す治療はありませんが、生涯にわたる治療で代謝の状態を改善し、急な悪化を防ぐことが期待できます。治療への反応や経過には個人差があり、先天代謝異常症の専門医のもとで続けていくことが大切です。

  • ヒドロキソコバラミン(ビタミンB12の一種)の注射:治療の中心です。シアノコバラミンでは効果が不十分とされています
  • ベタイン:ホモシステインを下げ、メチオニンを補うために使います
  • 葉酸(フォリン酸)・カルニチンの補充
  • 体調を崩したときの早めの対応:感染症や食事がとれないときは悪化しやすいため、早めに受診します
  • 目・腎臓・心臓・発達の定期的な評価と、療育・リハビリテーションなどの支援

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる MMACHC 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、MMACHC 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

MMACHC は細胞質でコバラミンの上軸配位子を除去し(シアノコバラミンの脱シアノ化、アルキルコバラミンの脱アルキル化)、コバラミンを後続の処理経路へ受け渡す。欠損するとミトコンドリアのアデノシルコバラミン(メチルマロニルCoAムターゼの補酵素)と細胞質のメチルコバラミン(メチオニン合成酵素の補酵素)の双方が欠乏し、メチルマロン酸血症と高ホモシステイン血症・低メチオニン血症が併存する。

遺伝型と表現型にはある程度の相関がある——c.271dupA は欧米でもっとも頻度の高い変異で、ホモ接合では早期発症型をとる。東アジアでは c.609G>A(p.Trp203Ter) の頻度が高く、やはり早期発症型と関連する。これに対し c.394C>T(p.Arg132Ter) は遅発型との関連が知られる。早期発症型では治療下でも網膜症(黄斑症)・眼振が進行しやすく、神経発達予後も不良な例が多い。また、胎児期から発症し、子宮内発育遅延・小頭症・心奇形を伴う例が報告されている。

鑑別としては、同じく複合型を示す cblD型(MMADHC)、cblF型(LMBRD1)、cblJ型(ABCD4)、X連鎖性の cblX型(HCFC1、MMACHC の転写を制御する因子の異常)、さらに PRDX1 変異に伴う MMACHC のエピ変異(epi-cblC)が挙がる。メチルマロン酸単独の上昇であれば MMUT・MMAA・MMAB の異常、ホモシステイン単独であれば cblE型・cblG型・MTHFR欠損症を考える。母体のビタミンB12欠乏による新生児の二次的な異常も重要な鑑別である。cblX型では次子再発率が男児で2分の1となり、epi-cblC では遺伝の様式自体が異なるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。男の子・女の子で確率は変わりません。似た病気のなかには遺伝形式が異なるもの(X連鎖性の cblX型など)もあるため、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 新生児マススクリーニングで見つかりますか。

A. メチルマロン酸血症として見つかることがありますが、すべての方が見つかるわけではありません。とくに遅発型では、新生児期の検査値がはっきりしないことがあります。ご家族に診断された方がいる場合は、主治医にその旨をお伝えください。

Q. 早く見つかれば、ふつうに成長できますか。

A. 早く治療を始めることで、急な悪化や血液・腎臓の重い合併症を防ぎやすくなります。ただし、早期発症型では治療を続けていても、目の症状や発達の遅れが残ることが少なくありません。経過には個人差が大きいため、専門医と相談しながら見守っていきます。

Q. ビタミンB12のサプリメントを飲めば防げますか。

A. いいえ。この病気は、体に入ったビタミンB12を細胞のなかで使える形に変えられないことが原因で、ビタミンB12の不足とは異なります。治療は、医師の管理のもとでヒドロキソコバラミンの注射などを行います。自己判断のサプリメントでは代わりになりません。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Sloan JL, Carrillo N, Adams D, Venditti CP. Disorders of Intracellular Cobalamin Metabolism. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
  • OMIM #277400 Methylmalonic aciduria and homocystinuria, cblC type. Online Mendelian Inheritance in Man.
  • Lerner-Ellis JP, Tirone JC, Pawelek PD, et al. Identification of the gene responsible for methylmalonic aciduria and homocystinuria, cblC type. Nat Genet. 2006;38(1):93-100.
  • Carrillo-Carrasco N, Chandler RJ, Venditti CP. Combined methylmalonic acidemia and homocystinuria, cblC type. I. Clinical presentations, diagnosis and management. J Inherit Metab Dis. 2012;35(1):91-102.
  • Huemer M, Diodato D, Schwahn B, et al. Guidelines for diagnosis and management of the cobalamin-related remethylation disorders cblC, cblD, cblE, cblF, cblG, cblJ and MTHFR deficiency. J Inherit Metab Dis. 2017;40(1):21-48.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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