概要
X連鎖性知的障害61型は、知的な発達がゆっくりで、ことばや学習、日常生活の技能の習得に支援が必要になる病気です。X連鎖という形式で遺伝し、RLIM 遺伝子の変化が原因となります。
X連鎖性知的障害は、男の子に症状が出やすいのが特徴です。X染色体を2本持つ女の子では、もう1本の正常な遺伝子がはたらくため、症状が出ないか軽くすむことが多くなります。原因遺伝子は150以上が知られています。
原因
RLIM 遺伝子はX染色体上にあり、脳の神経細胞が育ち、互いにつながり合う(シナプスを作る)ために必要なたんぱく質の設計図です。
神経細胞どうしのつながりは、学習と記憶の土台です。この遺伝子に変化があるとつながりの形成や調節がうまくいかず、知的な発達に影響が出ます。
RLIM は、いらなくなったたんぱく質に目印を付けて分解へ回す酵素(E3ユビキチンリガーゼ)です。X染色体の使い方を決めるしくみにも関わっています。
症状
- 知的な発達の遅れ(軽度から重度まで幅があります)
- ことばの発達の遅れ
- 運動発達の遅れ(おすわり、歩行が遅い)
- 特徴的な顔つき、筋緊張の低下、行動面の特性
- 行動面の特性(多動、自閉的な傾向、こだわりなど)を伴うことがある
- てんかんを伴うことがある
- 男の子で症状が出やすく、女の子(保因者)では症状がないか軽いことが多い
- ※進行性に悪化する病気ではありません
検査・診断
発達の評価と、頭部MRI・脳波などの検査を行います。知的障害の原因は非常に多いため、まず染色体検査やマイクロアレイ検査を行い、原因が特定できない場合に遺伝学的検査へ進むのが一般的です。RLIM 遺伝子の解析によってX連鎖性知的障害61型と確定します。原因が分かることで、伴いやすい症状への備えと、ご家族への遺伝カウンセリングが可能になります。
治療
- 根本的に治す方法は確立していません
- 早期からの療育(理学療法・作業療法・言語療法)
- 教育面での支援(個別支援計画、特別支援教育)
- てんかんがある場合は抗てんかん薬
- 行動面の特性に対する支援(環境調整、必要に応じた薬物治療)
- 定期的な発達の評価と、成長に応じた支援の見直し
- ご家族への支援と、次のお子さまについての遺伝カウンセリング
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる RLIM 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、RLIM 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
この疾患はX連鎖で遺伝します。お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。キャリアスクリーニングテストでは、お母さまが保因者かどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
X連鎖性知的障害61型は RLIM(Xq13.2)の変異による。X連鎖性知的障害(XLID)は150を超える遺伝子が同定されており、知的障害全体の約10%、男性の知的障害では相当な割合を占めると推定される。
RLIM(RNF12)はE3ユビキチンリガーゼで、Xist発現の制御を介してX染色体不活化の開始に関与することで知られる。ヒトでは Tonne-Kalscheuer 症候群(TOKAS)を生じ、知的障害、発話障害、特徴的顔貌、筋緊張低下、しばしば泌尿生殖器の異常(尿道下裂など)を伴う。女性保因者は無症状だが、極端に偏ったX不活化を示すことが報告されている。
XLID全般に共通する臨床的留意点として、(1) 女性保因者の表現型はX染色体不活化の偏り(skewed XCI)に依存し、軽度の学習障害から無症状まで幅があること、(2) 家系内で男性のみに発症が集積する場合はXLIDを強く疑うこと、(3) de novo変異の割合も少なくないため、家族歴がなくても否定できないことが挙げられる。
遺伝カウンセリングでは、母が保因者の場合の再発率(息子の1/2が発症、娘の1/2が保因者)と、生殖細胞モザイクの可能性を説明する。原因遺伝子の同定は、合併症のサーベイランスと出生前診断の選択肢につながる。
よくある質問
Q. 進行して悪くなりますか?
A. 進行性の病気ではありません。発達はゆっくりですが、支援を続けることでできることを増やしていけます。
Q. 女の子でも症状が出ますか?
A. 多くの場合、女の子(保因者)では症状がないか軽くすみます。ただし、X染色体の使われ方の偏りによって、学習面の困難が出ることもあります。
Q. 次の子も同じ病気になりますか?
A. お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。新しく生じた変化のこともあるため、遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q. 療育はいつから始めるとよいですか?
A. できるだけ早くです。早期からの療育が、その後の発達に有効とされています。
Q. お母さまの検査で分かることがありますか?
A. この型では、保因者のお母さまでX染色体の使われ方に偏りがみられることが報告されており、診断の手がかりになることがあります。
参考文献
- Tønne E, Holdhus R, Stansberg C, et al. Syndromic X-linked intellectual disability segregating with a missense variant in RLIM. Eur J Hum Genet. 2015;23(11):1652-1656.
- Lubs HA, Stevenson RE, Schwartz CE. Fragile X and X-linked intellectual disability: four decades of discovery. Am J Hum Genet. 2012;90(4):579-590.
- Neri G, Schwartz CE, Lubs HA, Stevenson RE. X-linked intellectual disability update 2017. Am J Med Genet A. 2018;176(6):1375-1388.
- Vissers LE, Gilissen C, Veltman JA. Genetic studies in intellectual disability and related disorders. Nat Rev Genet. 2016;17(1):9-18.
