概要
X連鎖性知的障害98型は、知的な発達がゆっくりで、ことばや学習、日常生活の技能の習得に支援が必要になる病気です。X連鎖という形式で遺伝し、NEXMIF 遺伝子の変化が原因となります。
X連鎖性知的障害は、男の子に症状が出やすいのが特徴です。X染色体を2本持つ女の子では、もう1本の正常な遺伝子がはたらくため、症状が出ないか軽くすむことが多くなります。原因遺伝子は150以上が知られています。
原因
NEXMIF 遺伝子はX染色体上にあり、脳の神経細胞が育ち、互いにつながり合う(シナプスを作る)ために必要なたんぱく質の設計図です。
神経細胞どうしのつながりは、学習と記憶の土台です。この遺伝子に変化があるとつながりの形成や調節がうまくいかず、知的な発達に影響が出ます。
NEXMIF(KIAA2022)は、神経細胞が伸びて互いにつながるときに必要なたんぱく質です。この型は、女の子でも症状が出ることがある点が特徴です。
症状
- 知的な発達の遅れ(軽度から重度まで幅があります)
- ことばの発達の遅れ
- 運動発達の遅れ(おすわり、歩行が遅い)
- 自閉スペクトラム症、てんかん、女性でも発症しうる
- 行動面の特性(多動、自閉的な傾向、こだわりなど)を伴うことがある
- てんかんを伴うことがある
- 男の子で症状が出やすく、女の子(保因者)では症状がないか軽いことが多い
- ※進行性に悪化する病気ではありません
検査・診断
発達の評価と、頭部MRI・脳波などの検査を行います。知的障害の原因は非常に多いため、まず染色体検査やマイクロアレイ検査を行い、原因が特定できない場合に遺伝学的検査へ進むのが一般的です。NEXMIF 遺伝子の解析によってX連鎖性知的障害98型と確定します。原因が分かることで、伴いやすい症状への備えと、ご家族への遺伝カウンセリングが可能になります。
治療
- 根本的に治す方法は確立していません
- 早期からの療育(理学療法・作業療法・言語療法)
- 教育面での支援(個別支援計画、特別支援教育)
- てんかんがある場合は抗てんかん薬
- 行動面の特性に対する支援(環境調整、必要に応じた薬物治療)
- 定期的な発達の評価と、成長に応じた支援の見直し
- ご家族への支援と、次のお子さまについての遺伝カウンセリング
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる NEXMIF 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、NEXMIF 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
この疾患はX連鎖で遺伝します。お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。キャリアスクリーニングテストでは、お母さまが保因者かどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
X連鎖性知的障害98型は NEXMIF(Xq13.3)の変異による。X連鎖性知的障害(XLID)は150を超える遺伝子が同定されており、知的障害全体の約10%、男性の知的障害では相当な割合を占めると推定される。
NEXMIF(neurite extension and migration factor、旧KIAA2022)は神経突起の伸長と細胞移動、シナプス形成に関与する。ヘテロ接合性女性でも発症し、しかも男性より重い自閉症・てんかんを示す例があることが報告されており、X不活化のモザイクによる細胞間の不均一性が症状を悪化させる可能性が指摘されている。男性では重度知的障害と無発語が多い。
XLID全般に共通する臨床的留意点として、(1) 女性保因者の表現型はX染色体不活化の偏り(skewed XCI)に依存し、軽度の学習障害から無症状まで幅があること、(2) 家系内で男性のみに発症が集積する場合はXLIDを強く疑うこと、(3) de novo変異の割合も少なくないため、家族歴がなくても否定できないことが挙げられる。
遺伝カウンセリングでは、母が保因者の場合の再発率(息子の1/2が発症、娘の1/2が保因者)と、生殖細胞モザイクの可能性を説明する。原因遺伝子の同定は、合併症のサーベイランスと出生前診断の選択肢につながる。
よくある質問
Q. 進行して悪くなりますか?
A. 進行性の病気ではありません。発達はゆっくりですが、支援を続けることでできることを増やしていけます。
Q. 女の子でも症状が出ますか?
A. 多くの場合、女の子(保因者)では症状がないか軽くすみます。ただし、X染色体の使われ方の偏りによって、学習面の困難が出ることもあります。
Q. 次の子も同じ病気になりますか?
A. お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。新しく生じた変化のこともあるため、遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q. 療育はいつから始めるとよいですか?
A. できるだけ早くです。早期からの療育が、その後の発達に有効とされています。
Q. 女の子でも症状が出るのですか?
A. この型では女の子でも発症し、自閉的な特性やてんかんを伴うことがあります。X染色体の使われ方の違いによると考えられています。
参考文献
- Van Maldergem L, Hou Q, Kalscheuer VM, et al. Loss of function of KIAA2022 causes mild to severe intellectual disability with an autism spectrum disorder and impairs neurite outgrowth. Hum Mol Genet. 2013;22(16):3306-3314.
- Lubs HA, Stevenson RE, Schwartz CE. Fragile X and X-linked intellectual disability: four decades of discovery. Am J Hum Genet. 2012;90(4):579-590.
- Neri G, Schwartz CE, Lubs HA, Stevenson RE. X-linked intellectual disability update 2017. Am J Med Genet A. 2018;176(6):1375-1388.
- Vissers LE, Gilissen C, Veltman JA. Genetic studies in intellectual disability and related disorders. Nat Rev Genet. 2016;17(1):9-18.
