骨形成不全症(OI)とエーラス・ダンロス症候群(EDS)は、どちらもコラーゲンの異常が原因となる遺伝性の結合組織疾患ですが、原因遺伝子も遺伝形式も別物です。OIの主役は骨の脆さ、EDSの主役は皮膚と関節の緩み。標準的なNIPT(新型出生前診断)では、どちらも基本的に対象外となります。
私たちはNIPTのご相談を日々受けています。その中で「家族に骨折を繰り返す人がいる」「関節が柔らかすぎると言われた」といった家族歴を心配され、OIとEDSの違いを知りたいという方にもお会いします。両者は症状が重なる部分があり、専門医でも鑑別に悩む場合がある疾患です。
結論からお伝えします。原因の中心はOIがCOL1A1・COL1A2、EDSは病型によりCOL5A1・COL3A1・PLOD1など複数の遺伝子です。単一遺伝子疾患であるため、標準NIPTの対象である染色体異数性のスクリーニングとは仕組みが異なります。この記事では両疾患の違いを整理し、NIPTとの関係も正確にお伝えします。
この記事でわかること
- 骨形成不全症(OI)とエーラス・ダンロス症候群(EDS)、それぞれの基本的な病態
- 原因遺伝子(COL1A1・COL1A2・COL5A1・PLOD1など)と遺伝形式の違い
- 症状の共通点・相違点と、比較の際に見るべきポイント
- NIPTでOI・EDSがわかるのか、確定診断に必要な検査は何か
OI・EDSの医学的な要点(難病情報センターより)
- 骨形成不全症は指定難病274。国内患者数は推計で数千人規模とされ、約85〜90%はCOL1A1・COL1A2遺伝子の変異が原因です。
- エーラス・ダンロス症候群は指定難病168。全病型を合わせた頻度は5,000人に1人程度と推定されています。
- EDSは2017年の国際分類で13病型に分けられ、病型ごとに原因遺伝子と遺伝形式が異なります。
- 両疾患とも根本的な治療法はなく、骨折予防・関節保護・合併症管理を中心とした生涯にわたるケアが基本方針です。
出典: 難病情報センター「骨形成不全症(指定難病274)」、難病情報センター「エーラス・ダンロス症候群(指定難病168)」
骨形成不全症(OI)とエーラス・ダンロス症候群(EDS)とは
OIは骨がもろく折れやすい疾患、EDSは皮膚や関節が過度に伸びやすい疾患群です。どちらもコラーゲンという同じタンパク質の異常が背景にあります。
骨形成不全症(OI)とは
骨形成不全症は、わずかな衝撃で骨折を繰り返す「骨の脆さ」を主症状とする先天性疾患です。重症度によりSillence分類のI型〜IV型に加え、V型など複数の病型に分けられます。約85〜90%はCOL1A1・COL1A2遺伝子の変異が原因です。コラーゲンの量が不足する場合は軽症型、構造そのものが歪む場合は重症型になりやすい傾向があります。
エーラス・ダンロス症候群(EDS)とは
エーラス・ダンロス症候群は、皮膚の過伸展性・関節の過可動性・組織の脆弱性を特徴とするヘテロな疾患群です。2017年の国際分類では13病型に整理され、病型ごとに原因遺伝子が異なります。頻度が最も高いのは関節型(hEDS)で、現時点では原因遺伝子が特定されておらず臨床診断が中心です。血管型(vEDS)は動脈や臓器の破裂リスクがあるため、特に慎重な管理が必要とされています。
原因遺伝子と遺伝形式の違い
OIの多くは顕性遺伝、EDSは病型によって顕性・潜性の両方があり、一律ではありません。
OIの原因遺伝子と遺伝形式
COL1A1・COL1A2変異によるOIの大半は、常染色体顕性遺伝(顕性遺伝)の形式をとります。親の一方が原因遺伝子を持つ場合、50%の確率で子供に受け継がれます。一方で、コラーゲンの修飾に関わるCRTAP・PPIBなどの遺伝子変異による重症型は、まれですが常染色体潜性遺伝(潜性遺伝)の形式をとることが分かっています。
EDSの原因遺伝子と遺伝形式
- 古典型: COL5A1・COL5A2遺伝子。顕性遺伝。
- 血管型(vEDS): COL3A1遺伝子(まれにCOL1A1)。顕性遺伝。
- 脊柱側弯型(kEDS): PLOD1遺伝子(コラーゲン修飾酵素)。多くのEDS病型と異なり潜性遺伝。
- 関節型(hEDS): 原因遺伝子は未特定。臨床所見による診断が中心。
顕性遺伝・潜性遺伝とは
顕性遺伝は、遺伝子を1つ受け継ぐだけで症状が出る形式です。潜性遺伝は、両親双方から同じ変異を受け継いだ場合に発症します。同じ「コラーゲン病」でも、病型によって次のお子さんへの遺伝確率はまったく異なります。この点は遺伝カウンセリングで個別に確認してください。

症状の比較。共通点と見分けるポイント
OIとEDSには共通する症状がある一方、主症状の現れ方は明確に異なります。比較の軸を押さえておくと理解しやすくなります。
両方に共通してみられる症状
- 青色強膜: 眼球の白目が青く見える現象。コラーゲンが薄く、下の脈絡膜が透けて見えるために生じます。
- 関節過可動: 関節が通常以上に柔らかいこと。EDSの主症状ですが、OIの患者さんでも多く認められます。
- 象牙質形成不全: 歯が脆く変色する症状で、両疾患ともに見られることがあります。
あざのできやすさを訴える患者さんも珍しくありません。X(旧Twitter)でも「手にヨーヨーが当たる度に青あざができていた」という血管型EDSの当事者の投稿(@satiru758氏)を見かけました。組織の脆さが日常のささいな衝撃にも表れる実例だと感じます。
見分けるポイントとなる相違点
| 特徴 | 骨形成不全症(OI) | エーラス・ダンロス症候群(EDS) |
| 主症状 | 骨の脆弱性、頻回な骨折、骨変形 | 皮膚の過伸展性、関節脱臼、組織の脆弱性 |
| 骨密度 | 著しく低下することが多い | 通常は正常(一部の型を除く) |
| 血管リスク | 比較的低い(型による) | 血管型(vEDS)では動脈破裂のリスクが高い |
| 主な遺伝形式 | 顕性遺伝が中心(まれに潜性) | 病型により顕性・潜性の両方 |
遺伝性疾患の当事者コミュニティでは、複数の結合組織疾患の症状を併せ持つケースも語られています。「血管型EDSとマルファン症候群のような症状を併せ持つ」と話す方の投稿(@Mashiro1841341氏)もあり、教科書どおりの一疾患一診断とは限らない現実がうかがえます。診断に迷う場合は自己判断せず、専門施設での評価をおすすめします。
「両方の特徴を併せ持つ」重なる病態
OIとEDSは別の疾患ですが、一部の遺伝子変異では両方の特徴が同時に現れます。
COL1A1・COL1A2変異による関節弛緩型EDS
コラーゲンの「アミノ末端プロペプチド切断部位」に関わる特定の変異では、骨の脆弱性(OI的特徴)と、皮膚の高度な伸展性・関節脱臼(EDS的特徴)が同時に現れます。これは関節弛緩型EDS(arthrochalasia型)と呼ばれます。求められるのは、整形外科と皮膚科・遺伝診療科が連携した長期的な管理。
脊柱側弯型EDS(kEDS)とPLOD1遺伝子
PLOD1遺伝子(コラーゲン修飾酵素)の欠損により、重度の筋緊張低下・脊柱側弯・中程度の骨脆弱性を呈するのが脊柱側弯型EDSです。「EDS」の名を冠していますが骨の脆弱性を伴うため、OIとの鑑別が極めて重要になります。前述のとおり潜性遺伝である点も、他のEDS病型との大きな違いです。
診断方法。臨床評価から遺伝子検査まで
正確な診断は、適切な治療とリスク管理の前提です。臨床評価と分子診断を組み合わせて進めます。
臨床診断。ベイトン・スコア(Beighton Score)
関節の柔らかさを評価する国際的な指標です。小指が90度以上曲がるか、親指が前腕につくかなどを点数化し、EDSの可能性を評価します。骨折歴や骨密度の低下があればOIを強く疑う材料になります。
分子診断。マルチ遺伝子パネル(NGS)
現在は、OIとEDS双方の原因遺伝子(COL1A1・COL1A2・COL5A1・COL5A2・COL3A1・TNXB・PLOD1など)を一度に調べる次世代シーケンシング(NGS)パネルが推奨されます。症状だけでは判別しにくいサブタイプの特定に役立つ検査です。
NIPT(新型出生前診断)でOI・EDSはわかるのか
結論から述べると、標準的なNIPTだけでOI・EDSを確実に見つけることはできません。両疾患は単一遺伝子疾患であり、染色体の数を調べる標準NIPTの対象とは仕組みが異なるためです。
標準的なNIPTのスクリーニング対象
日本の出生前検査認証制度が対象とするのは、13番・18番・21番染色体のトリソミーです。OI・EDSの原因の多くはCOL1A1・COL1A2・COL5A1などの遺伝子内にある小さな変異(点変異)であり、染色体の数を調べる標準NIPTのスクリーニング対象には含まれません。
単一遺伝子疾患スクリーニング(NIPTy-MONO)との関係
当院の単一遺伝子疾患スクリーニングプラン(NIPTy-MONO、200種類以上に対応)には、本記事執筆時点で骨形成不全症のI型〜V型(COL1A1・COL1A2・IFITM5)が対象疾患として含まれています。一方、EDSの原因遺伝子(COL5A1・COL3A1・PLOD1など)は、本記事執筆時点でNIPTy-MONOの対象には含まれていません。ご家族に該当する病歴がある場合は、対象疾患の最新の設定を事前カウンセリングで確認してください。
確定診断に必要な検査
NIPTはあくまで非確定的なスクリーニング検査です。OI・EDSの確定診断には、羊水検査による遺伝子解析(該当遺伝子のシーケンシング)、または出生後の臨床評価と遺伝子検査の組み合わせが必要です。NIPTの結果が陰性であっても、これらの病気の可能性が否定されるわけではありません。この点は必ず押さえておいてください。
治療とQOL(生活の質)を支えるケア
どちらの疾患であっても、治療の目的は骨折予防と機能維持です。アプローチは病態によって異なります。
薬物療法(主にOI)
- ビスホスホネート製剤: 骨吸収を抑え、骨密度を高めることで骨折率を下げます。
- デノスマブ: 小児OIへの適用も近年検討が進む選択肢です。
リハビリテーションと外科的対応(主にEDS)
- 筋力強化: 関節の不安定性を補うため、等尺性運動を中心とした筋力トレーニングが行われます。
- 低侵襲手術: EDS患者さんは組織が脆く創傷治癒が遅れるため、手術には細心の注意が必要です。
- 脊柱側弯の管理: 早期からの装具療法や、重症例での固定術が検討されます。
実際に経過を伺うと、同じ「コラーゲン病」でも治療の重心はOIとEDSでまったく異なると実感します。骨折予防を軸にするか、関節・皮膚の保護を軸にするか。鍵を握るのは、診療科をまたいだ連携。
家族に患者さんがいる場合。妊娠を考える前に
家族歴がある場合は、妊娠を考える前の段階で遺伝カウンセリングを受けておくと選択肢が広がります。
パートナーのどちらかがOI・EDSと診断されている、あるいは家系内に該当者がいる場合、遺伝形式によって次のお子さんへの伝わり方は大きく変わります。顕性遺伝なら50%、潜性遺伝なら両親双方が保因者である場合に限られるなど、確率は病型ごとに個別に計算する必要があります。自己判断は避け、産婦人科医による遺伝カウンセリングで確認してください。
NIPTで分かる範囲と分からない範囲については、NIPTの確率・的中率・限界を解説したページもあわせてご確認ください。単一遺伝子疾患のスクリーニングプランについてはNIPTy-MONOの対象疾患一覧ページで最新情報を確認できます。
NIPTと羊水検査それぞれの特徴や違いは、NIPTと羊水検査の違いを解説したページで詳しく取り上げています。出生前検査全体の選び方は出生前診断の種類と選び方のページを参考にしてください。骨形成不全症の各病型について詳しくは、I型(軽症型)・III型(重症型)の各解説ページもご覧ください。
まとめ。結合組織疾患としてのトータルケア
骨形成不全症とエーラス・ダンロス症候群は、遺伝子レベルでの原因は異なるものの、患者さんが直面する「身体の脆さ」という課題は共通しています。「骨が折れやすいのはOI、関節が柔らかいのはEDS」という単純な二分法ではなく、コラーゲンの異常がどの組織に強く現れているかを評価することが欠かせません。
NIPTとの関係で押さえておきたい点は明確です。両疾患の原因となる点変異は、標準NIPTの対象外です。当院のNIPTy-MONOではOI(I型〜V型)は対象に含まれますが、EDSは本記事執筆時点で対象外です。確定診断には羊水検査による遺伝子解析が必須です。疑いがある場合は自己判断せず遺伝カウンセリングを受けてください。整形外科・眼科・歯科・リハビリ科が連携した生涯にわたるサポートこそが、患者さんのQOLを最大化する鍵となります。
よくある質問
骨形成不全症とエーラス・ダンロス症候群について、よく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 骨形成不全症とエーラス・ダンロス症候群の一番の違いは何ですか?
主症状の現れ方が異なります。OIは骨密度が低下し骨折を繰り返す「骨の脆さ」が中心です。EDSは皮膚の過伸展性や関節の脱臼しやすさなど「組織の緩み」が中心です。原因遺伝子もCOL1A1・COL1A2(OI)とCOL5A1・COL3A1・PLOD1など(EDS)で異なります。
Q2. 両方の特徴が同時に出ることはありますか?
あります。COL1A1・COL1A2の特定の変異による関節弛緩型EDSでは、骨の脆弱性と皮膚・関節の過伸展性が同時に現れます。脊柱側弯型EDS(PLOD1)も骨脆弱性を伴うため、OIとの鑑別が重要な病態です。
Q3. NIPTでOI・EDSはわかりますか?
標準的なNIPTでは通常わかりません。染色体の数を調べる検査であり、単一遺伝子疾患であるOI・EDSは対象外だからです。当院のNIPTy-MONO(単一遺伝子疾患200種以上)にはOI(I型〜V型)が対象として含まれますが、EDSは本記事執筆時点で対象に含まれていません。
Q4. 家族に患者がいる場合、次の子どもに遺伝する確率は?
病型によって異なります。顕性遺伝であれば親の一方が原因遺伝子を持つ場合に50%の確率で伝わります。脊柱側弯型EDS(PLOD1)のような潜性遺伝では、両親双方が保因者である場合に限られます。正確な確率は遺伝カウンセリングで個別に確認してください。
Q5. 確定診断にはどんな検査が必要ですか?
妊娠中に疑いがある場合は、羊水検査による該当遺伝子のシーケンシングが確定診断の手段となります。出生後はベイトン・スコアなどの臨床評価と、マルチ遺伝子パネル(NGS)による分子診断を組み合わせて診断されることが多くあります。
Q6. 妊娠中に医師からこれらの病名を聞いて不安なとき、どうすればよいですか?
まずは産婦人科医による遺伝カウンセリングを受けてください。プラン診断のページで検査プランを確認することもできます。お電話でのご相談は0120-169-629まで承っています。
OI・EDSについて、より詳しい公的情報も確認できます。こども家庭庁「出生前検査とは」ではNIPT認証制度の対象範囲が解説されています。疾患の詳細は厚生労働省「骨形成不全症」概要資料、厚生労働省「エーラス・ダンロス症候群」概要資料もあわせてご覧ください。
監修: 岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
