NIPT新型出生前診断の費用と検査内容を徹底解説!知っておくべき重要ポイント【YouTube動画解説】

妊娠中のご夫婦にとって、胎児の健康状態を知ることは大きな関心事です。近年、日本でも急速に普及してきた「NIPT(新型出生前診断)」は、お腹の赤ちゃんの染色体異常の可能性を調べる検査として注目を集めています。

NIPTは「Non-Invasive Prenatal Testing(非侵襲的出生前検査)」の略称で、母体の血液を採取するだけで胎児の染色体異常の可能性を調べることができる検査です。従来の羊水検査などと異なり、針を刺すなどの侵襲的な処置が不要なため、流産のリスクがないことが大きな特徴です。

この検査は主に、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)といった、胎児の主要な染色体異常の可能性を調べるために行われます。妊娠10週目以降に受けることができ、高い精度で結果を得ることが可能です。

NIPT新型出生前診断の採血の様子

NIPT検査の費用はいくら?公的・自費の違いを解説

NIPTの費用は受ける医療機関や検査の種類によって異なりますが、大きく分けて「公的NIPT」と「自費NIPT」の2種類があります。

公的NIPTは、2022年4月から一部の医療機関で開始された保険適用外の検査です。日本産科婦人科学会が認定した医療機関で受けることができ、費用は約15万円〜20万円程度となっています。公的NIPTを受けるためには、以下の条件のいずれかに該当する必要があります:

  • 妊婦が35歳以上である
  • 夫婦のいずれかが均衡型染色体転座を有する
  • 染色体数的異常を有する児を妊娠・分娩した既往がある
  • 胎児超音波検査で染色体数的異常の可能性が示唆された

一方、自費NIPTは民間クリニックで受けることができる検査で、公的NIPTよりも条件が緩和されています。年齢制限がなく、希望すれば基本的に誰でも受けることができるのが特徴です。費用は医療機関によって異なりますが、一般的に約6万円〜20万円程度となっています。

自費NIPTの場合、検査項目によって費用が変わることがあります。基本的な染色体異常(13・18・21番染色体)のみの検査であれば比較的安価ですが、性染色体(X・Y染色体)の異常や微小欠失症候群なども含めた包括的な検査になると費用が高くなる傾向があります。

NIPT検査費用の内訳と支払い方法

NIPT検査の費用には、主に以下のような内訳が含まれています:

  • 初診料・再診料
  • 検査前カウンセリング費用
  • 採血・検査費用
  • 結果説明・カウンセリング費用

医療機関によっては、これらがすべて含まれた「パッケージ料金」として提示されることが一般的です。支払い方法は医療機関によって異なりますが、多くの場合はクレジットカード払いや現金払いに対応しています。また、一部の医療機関では分割払いに対応しているところもあります。

なお、NIPTは現在のところ公的医療保険の適用外となっているため、全額自己負担となります。また、医療費控除の対象にはなりますので、確定申告の際に申請することで一部が還付される可能性があります。

NIPT検査の精度と信頼性について

NIPTは非常に高い精度を持つ検査として知られています。特に、ダウン症候群(21トリソミー)に関しては、検出率が99%以上と非常に高いことが報告されています。エドワーズ症候群(18トリソミー)やパトー症候群(13トリソミー)についても、95%以上の高い検出率があるとされています。

しかし、重要なのはNIPTはあくまでも「スクリーニング検査」であり、確定診断ではないという点です。つまり、NIPTで「陽性」という結果が出た場合でも、それは「染色体異常の可能性が高い」ということを示すだけであり、実際に染色体異常があるかどうかを確定するためには、羊水検査などの確定検査が必要となります。

NIPTの偽陽性率(実際には染色体異常がないのに検査で陽性と判定される確率)は、検査する染色体の種類によって異なりますが、一般的に0.1%〜1%程度とされています。また、稀に「判定保留」や「判定不能」という結果が出ることもあります。これは主に、母体血液中の胎児由来のDNA断片(セルフリーDNA)の量が少ない場合などに起こります。

NIPT検査の限界と注意点

NIPTは優れた検査ですが、いくつかの限界や注意点があります:

  • すべての染色体異常を検出できるわけではない(検査対象外の染色体異常は検出できない)
  • 染色体のごく一部の欠失や重複などの微細な異常は検出できない場合がある
  • 双胎妊娠の場合は精度が若干低下する可能性がある
  • 母体の染色体異常や母体の悪性腫瘍がある場合に偽陽性の原因となることがある
  • 妊娠初期(10週未満)では検査の精度が低下する可能性がある

これらの限界を理解した上で検査を受けることが重要です。また、検査前後のカウンセリングを通じて、検査の意義や結果の解釈について十分に理解することが推奨されています。

NIPT検査結果を説明する医師と妊婦の様子

NIPT検査の流れと所要時間

NIPT検査は一般的に以下のような流れで行われます:

1. 検査前カウンセリング

まず、検査を受ける前に医師や認定遺伝カウンセラーによるカウンセリングを受けます。このカウンセリングでは、検査の目的、方法、精度、限界、結果の解釈などについて詳しく説明を受けます。また、検査後に陽性結果が出た場合の対応についても話し合います。カウンセリングは通常30分〜1時間程度かかります。

2. 採血

カウンセリング後、同意書にサインをして実際の検査に進みます。検査は母体から約10mlの血液を採取するだけの簡単なものです。採血自体は数分で終わります。採血は通常、妊娠10週以降に行われます。

3. 検査・分析

採取した血液は専門の検査機関に送られ、分析されます。母体の血液中には胎児由来のDNA断片(セルフリーDNA)が含まれており、これを分析することで胎児の染色体の状態を推測します。検査結果が出るまでには、医療機関によって異なりますが、一般的に1〜2週間程度かかります。

4. 結果説明

検査結果が出たら、再び医療機関を訪れて医師から結果の説明を受けます。結果は「陰性(低リスク)」「陽性(高リスク)」「判定保留」などで示されます。結果説明は通常30分程度かかります。

5. 陽性の場合の確定検査

もし結果が「陽性」だった場合は、確定診断のための検査(羊水検査絨毛検査など)を受けるかどうかを検討します。これらの確定検査は侵襲的であり、約0.2〜1%程度の流産リスクがありますが、より確実な診断が可能です。

全体の所要時間としては、初回のカウンセリングから結果説明まで、約2〜3週間程度かかるのが一般的です。ただし、医療機関の混雑状況や検査機関の処理能力によって変動することがあります。

NIPT検査を受けるべき人、受けない方がよい人

NIPT検査は万人に適しているわけではありません。検査を受けるかどうかの判断は個人や夫婦の価値観、状況によって異なります。以下に、検査を検討すべき人と、慎重に考えた方がよい人の特徴をまとめます。

NIPT検査を検討すべき人

  • 高齢妊娠(特に35歳以上)の方
  • 過去に染色体異常のある子どもを出産した経験がある方
  • 超音波検査で胎児に染色体異常の可能性を示唆する所見が見られた方
  • 夫婦のいずれかが染色体転座などの染色体構造異常を持っている方
  • 侵襲的な検査(羊水検査など)のリスクを避けたい方
  • 胎児の染色体状態について早期に情報を得たい方

NIPT検査を慎重に考えた方がよい人

  • 検査結果に関わらず、妊娠を継続する意思が固い方(検査の意義が低い可能性がある)
  • 検査結果によって大きな不安や心理的負担を感じる可能性がある方
  • 検査の限界や偽陽性・偽陰性の可能性を理解することが難しい方
  • 検査後のフォローアップや確定検査を受ける意思がない方
  • 多胎妊娠の方(双子以上の場合、検査の精度が下がる可能性がある)

いずれの場合も、検査を受けるかどうかの最終的な判断は、十分な情報を得た上で本人(夫婦)が行うべきものです。検査前のカウンセリングでは、これらの点について詳しく説明を受け、自分たちの状況や価値観に照らし合わせて慎重に検討することが重要です。

NIPT検査で分かること・分からないこと

NIPT検査は非常に有用な検査ですが、その限界を理解することも重要です。ここでは、NIPT検査で分かることと分からないことを明確にしていきます。

NIPT検査で分かること

  • 主要な染色体異常の可能性:ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)などの主要な染色体数的異常の可能性を高い精度で調べることができます。
  • 染色体異常の可能性:オプション検査として、ターナー症候群(X染色体の欠失)やクラインフェルター症候群(XXY)などの性染色体異常の可能性を調べることができる場合があります。
  • 胎児の性別:多くの場合、オプションとして胎児の性別を知ることができます(ただし、医療機関によっては倫理的配慮から性別の告知を行わない場合もあります)。
  • 微小欠失症候群の可能性:一部の拡張型NIPTでは、ディジョージ症候群(22q11.2欠失症候群)などの特定の微小欠失症候群の可能性を調べることができる場合があります。

NIPT検査で分からないこと

  • 確定診断:NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。陽性結果が出た場合は、羊水検査などの確定検査が必要です。
  • すべての染色体異常:NIPTは特定の染色体異常のみを対象としており、すべての染色体異常を検出できるわけではありません。
  • 染色体の微細な異常:染色体の一部分の小さな欠失や重複などの微細な異常は、通常のNIPTでは検出できない場合が多いです。
  • 単一遺伝子疾患:ダウン症候群などの染色体異常以外の遺伝性疾患(例:嚢胞性線維症、鎌状赤血球症など)は検出できません。
  • 先天性奇形:心臓奇形や神経管閉鎖不全などの先天性奇形は、染色体異常に関連しない限り、NIPTでは検出できません。
  • 胎児の健康状態全般:NIPTは特定の染色体異常の可能性を調べる検査であり、胎児の全体的な健康状態や発達状況を評価するものではありません。

これらの限界を理解した上で、必要に応じて超音波検査などの他の出生前検査と組み合わせることで、より包括的な胎児の健康評価が可能になります。

NIPT検査の倫理的側面と心理的影響

NIPT検査は医学的な側面だけでなく、倫理的・心理的な側面も持ち合わせています。検査を受けるかどうかを決める際には、これらの側面についても十分に考慮することが重要です。

倫理的側面

NIPTをめぐる主な倫理的課題には以下のようなものがあります:

  • 生命の選別:NIPT検査は、染色体異常がある胎児の妊娠中絶につながる可能性があります。これが「生命の選別」につながるのではないかという懸念があります。
  • 障害者差別:NIPT検査の普及が、障害を持つ人々に対する社会の受容度や支援体制に悪影響を与えるのではないかという懸念もあります。
  • 情報へのアクセスの不平等:経済的な理由などで検査を受けられない人がいることで、情報へのアクセスに不平等が生じる可能性があります。
  • 検査の商業化:特に自費NIPTの場合、検査が商業的に提供されることで、適切なカウンセリングなしに検査が行われる懸念があります。

これらの倫理的課題に対して、日本産科婦人科学会などの専門団体は、適切なカウンセリング体制の整備や、検査を受ける際の十分な情報提供の重要性を強調しています。

心理的影響

NIPT検査は、受検者に様々な心理的影響を与える可能性があります:

  • 検査前の不安:検査を受けるかどうかの決断自体がストレスとなることがあります。また、検査結果を待つ間の不安も大きいものです。
  • 陽性結果への対応:陽性結果が出た場合、大きな不安やショックを感じることがあります。特に、確定検査の結果を待つ間の心理的負担は非常に大きいものです。
  • 決断の重圧:陽性結果が確定した場合、妊娠を継続するか中絶するかという非常に難しい決断を迫られることになります。
  • 罪悪感:検査を受けること自体に罪悪感を感じる人もいます。また、検査結果によって妊娠を中絶した場合にも、長期的な罪悪感や悲嘆を感じることがあります。

これらの心理的影響に対処するためには、検査前後の適切なカウンセリングが非常に重要です。また、必要に応じて心理専門家によるサポートを受けることも検討すべきでしょう。

NIPT検査を受けるかどうかは、医学的な側面だけでなく、個人や夫婦の価値観、宗教観、人生観なども含めた総合的な判断が必要です。十分な情報を得た上で、自分たちにとって最善の選択をすることが大切です。

まとめ:NIPT検査を検討する際のポイント

NIPT(新型出生前診断)は、母体血液から胎児の染色体異常の可能性を高い精度で調べることができる非侵襲的な検査です。この記事では、NIPT検査の基本情報から費用、精度、検査の流れ、倫理的側面まで幅広く解説しました。最後に、NIPT検査を検討する際の重要なポイントをまとめます。

検査前に確認すべきこと

  • 検査の目的を明確にする:なぜ検査を受けたいのか、検査結果をどのように活用したいのかを夫婦で話し合っておきましょう。
  • 検査の限界を理解する:NIPTはスクリーニング検査であり、すべての異常を検出できるわけではないことを理解しておきましょう。
  • 費用と保険適用の有無を確認する:公的NIPTと自費NIPTの違いや、具体的な費用を事前に確認しておきましょう。
  • 信頼できる医療機関を選ぶ:適切なカウンセリング体制が整っている医療機関を選ぶことが重要です。

検査後の対応を考える

  • 陽性結果が出た場合の対応を考えておく:確定検査を受けるかどうか、陽性が確定した場合にどうするかなどを事前に考えておくことが大切です。
  • 心理的サポートを確保する:検査結果に関わらず、必要に応じて心理的サポートを受けられる体制を整えておくことも重要です。

最終的な判断

NIPT検査を受けるかどうかの最終的な判断は、十分な情報を得た上で、個人や夫婦が自分たちの価値観に基づいて行うべきものです。検査を受けることも、受けないことも、どちらも正しい選択です。大切なのは、自分たちにとって最善の選択をすることです。

妊娠・出産は人生の大きなイベントであり、様々な不安や疑問が生じるのは自然なことです。NIPT検査についても、わからないことがあれば、遠慮なく医療機関に相談してください。適切な情報と支援を得ながら、安心して妊娠期を過ごせることを願っています。