発達性およびてんかん性脳症19型(Developmental and epileptic encephalopathy 19)

医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 19という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

まだ小さなお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても報告数がまだ少なく、希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、てんかんや遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない疾患概念です。

この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症19型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE19(ディー・イー・イー・ジュウキュウ)と呼ばれることが一般的です。

また、原因となる遺伝子の名前をとってGABRA1関連神経発達障害やGABRA1関連てんかん性脳症と呼ばれることも増えています。

この病気は、乳児期から幼児期早期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れが見られるという特徴があります。その原因として、GABRA1という特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳症という言葉や19型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合った療育やケアのプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。

概要:どのような病気か

発達性およびてんかん性脳症19型(DEE19)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。

まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。

発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。

てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。

脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。

つまり、DEE19は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。

この19型は、GABRA1(ギャブラ・ワン)という遺伝子の変異によって引き起こされることが明らかになっています。

GABRA1遺伝子の変異は、DEE19のような重度のてんかんだけでなく、若年ミオクロニーてんかんや小児欠神てんかんといった、比較的軽度で知的な遅れを伴わないてんかんの原因になることもあります。

しかし、DEE19という診断がついた場合は、より早期に発症し、発達の遅れを伴う重度なタイプであることを意味します。

主な症状

DEE19の症状は、特徴的なてんかん発作、発達の遅れ、そして神経学的な特徴の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. てんかん発作

多くの患者さんにおいて、生後数ヶ月から遅くとも2歳頃までの乳幼児期にてんかん発作が始まります。

発作のタイプ

発作の形は様々ですが、DEE19では全身性の発作が見られることが多いです。

全般強直間代発作は、全身が硬直したあとにガクガクと震える大きな発作です。

ミオクロニー発作は、手足や体が一瞬ビクッとする発作です。

欠神発作は、意識が数秒間途切れ、動作が止まる発作です。

強直発作は、手足が突っ張って硬くなる発作です。

発作の誘因

特に、発熱した時に発作が起きやすくなる傾向があります。最初は熱性けいれんとして発症し、その後、熱がなくても発作が起きるようになるという経過をたどるお子さんもいます。また、光の刺激(点滅する光など)によって発作が誘発される光感受性を持つ場合もあります。

難治性

DEE19のてんかん発作は、一般的な抗てんかん薬が効きにくい難治性であることがあります。複数の薬を組み合わせても発作を完全に止めることが難しい場合があり、発作の頻度を減らし、怪我を防ぎ、生活の質を維持することを目標に治療が進められます。

2. 発達と神経の症状

発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。これは、発作によるダメージだけでなく、GABRA1遺伝子の変異自体が脳の発達に影響しているためです。

重度の発達遅滞

首がすわる、目でものを追う、お座りをする、歩くといった運動面の発達と、あやすと笑う、言葉を理解するといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、中等度から重度の知的障害を伴います。言葉による会話は難しいことが多いですが、声のトーンや表情、全身の動きで快・不快などの感情を伝えることができるお子さんもいます。

筋緊張低下

赤ちゃんの頃は、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが非常に多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。これにより、運動発達がさらにゆっくりになる傾向があります。

運動失調

お座りや歩行ができるようになっても、体がふらついたり、手が震えたりする運動失調が見られることがあります。

3. その他の身体症状

DEE19のお子さんには、神経以外の身体的な課題も見られることがあります。

哺乳障害と摂食障害

生まれた直後から、おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害が見られることがあります。また、離乳食が始まっても、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。

自閉的な特徴

視線を合わせにくい、同じ動作を繰り返す、こだわりが強いといった自閉スペクトラム症に似た行動の特徴が見られることもあります。

原因

なぜ、てんかんが起きたり、発達が遅れたりするのでしょうか。その原因は、脳の神経細胞にあるブレーキシステムの故障にあります。

GABRA1遺伝子の役割

DEE19の原因は、第5番染色体にあるGABRA1(ギャブラ・ワン)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、GABA(ギャバ)受容体という、脳の中で非常に重要な役割を果たすタンパク質の部品を作るための設計図です。

GABAという物質の名前を聞いたことがあるかもしれません。チョコレートやサプリメントにも含まれていることがありますが、体の中では脳の神経細胞の興奮を抑える、いわばブレーキの役割をする神経伝達物質として働いています。

神経細胞の表面には、このGABAを受け取るための受け皿、つまりGABA受容体があります。GABRA1遺伝子は、この受容体を構成する主要な部品(アルファ1サブユニット)を作っています。

遺伝子の変化による影響

GABRA1遺伝子に変異が起きると、このGABA受容体の形が変わってしまったり、数が減ってしまったりします。

最も一般的なのは、機能喪失型変異といって、受容体がうまく働かなくなる変化です。

ブレーキであるGABAを受け取る受容体が壊れてしまうと、神経細胞の興奮を鎮めることができなくなります。

ブレーキが壊れた車が暴走してしまうように、脳の神経が過剰に興奮してしまい、激しいてんかん発作が引き起こされます。

また、GABAによる信号伝達は、脳が作られる時期の神経細胞の移動や、ネットワーク形成にも重要な役割を果たしていることが分かっています。そのため、この機能がおかしくなると、脳の発達そのものにも遅れが生じると考えられています。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、重症型であるDEE19のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にGABRA1遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

診断と検査

診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 脳波検査

てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。

DEE19のお子さんの脳波では、全般性棘徐波と呼ばれる、脳全体から一斉にてんかん波が出るパターンが見られることが多いです。また、背景活動(発作がない時の脳波)がゆっくりになっている徐波化が見られることもあり、これは脳機能への影響を示唆しています。

光感受性がある場合は、光刺激を行う検査で異常な反応が見られることもあります。

2. 画像検査(MRI)

脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

発症初期には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、発作が長く続いた後や、年齢が進んでくると、脳全体が少し萎縮して小さくなっている様子が見られることがあります。これは他の病気を除外するためにも重要な検査です。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、てんかん関連遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。

これは、遺伝子のうちタンパク質を作る重要な部分を網羅的にすべて解読する検査です。DEE19は症状だけでは他の発達障害やてんかん症候群と区別がつかないことが多いため、この網羅的な遺伝子検査を行って初めてGABRA1遺伝子の変異が見つかり、診断に至るケースがほとんどです。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

1. てんかんの治療

てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。

GABRA1変異に対する特効薬というものはまだ確立されていませんが、発作のタイプに合わせて様々なお薬が試されます。

バルプロ酸、レベチラセタム、クロバザム、トピラマート、ゾニサミドなどが使われることが多いです。

特に、全般発作のタイプが多いお子さんには、バルプロ酸などの広域スペクトルの薬剤が第一選択となることが多いです。

お薬だけで発作が止まらない場合は、ケトン食療法という、脂肪分を多くし糖質を極端に少なくした特殊な食事療法が検討されることもあります。

2. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさ(筋緊張低下)やふらつき(運動失調)に対してアプローチします。

姿勢を保つための練習や、筋肉をつける運動、関節が硬くならないようなストレッチを行います。

歩行が難しい場合は、座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギー、足底板(インソール)など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、食事や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法(絵カード、ジェスチャー、スイッチなど)を探ります。また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

3. 日常生活のケア

摂食・嚥下管理

飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。

発熱時の対応

発熱が発作の引き金になりやすいため、感染症にかかった時は早めの受診や解熱剤の使用、場合によっては発作予防の頓服薬の使用などを主治医と相談しておきます。

安全対策

発作による転倒や怪我を防ぐため、家具の角にクッションをつけたり、外出時は保護帽(ヘッドギア)を着用したりするなどの対策が有効です。

まとめ

発達性およびてんかん性脳症19型(DEE19)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

GABRA1遺伝子の変異により、脳内のブレーキシステム(GABA受容体)に不具合が生じ、脳の過剰興奮や発達への影響が出る先天性の疾患です。

主な特徴

乳幼児期のてんかん(全般発作など)、重度の発達遅滞、筋緊張低下、運動失調などが特徴です。

てんかん

難治性であることが多いですが、様々なお薬の調整やケトン食療法などでコントロールを目指します。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

発作のコントロールだけでなく、リハビリ、栄養管理、安全対策など、全身をトータルでケアすることが大切です。

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