概要
接合部型表皮水疱症4型(中間型)は、皮膚の表皮と真皮をつなぎとめる「接合部」が弱いために、軽い摩擦やけがで皮膚に水ぶくれ(水疱)やただれ(びらん)ができやすくなる病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、COL17A1 遺伝子の変化が原因となります。
接合部型表皮水疱症のなかでは「中間型」と呼ばれる比較的おだやかなタイプで、生まれたときから全身に水疱ができますが、多くの方は成人し、社会生活を送っています。一方で、髪の毛が薄くなる(脱毛)、爪の変形や脱落、歯のエナメル質の形成不全が目立つことがこの型の特徴です。かつては「汎発性萎縮性良性表皮水疱症」と呼ばれていました。
接合部型表皮水疱症は、原因遺伝子によっていくつかの型に分かれます。ラミニン332というたんぱく質の遺伝子(LAMA3・LAMB3・LAMC2)がまったくはたらかない重症型では、乳児期に命に関わることが多いのに対し、COL17A1 による4型は中間型で、生命の見通しは比較的良好です。また、COL17A1 遺伝子の片方だけの変化は、角膜のただれをくり返す目の病気や、歯のエナメル質の小さなくぼみの原因になることが知られており、これらは4型とは別の病気です。
原因
COL17A1 は、17型コラーゲン(BP180 とも呼ばれます)というたんぱく質の設計図です。
17型コラーゲンは、表皮のいちばん下にある細胞から真皮の側へ突き出した「留め金」のような構造(ヘミデスモソーム)の一部で、表皮をその下の基底膜にしっかり固定する役割を担っています。このたんぱく質がつくられない、または正しくはたらかないと、表皮と真皮の境目(透明帯)で皮膚がはがれやすくなり、こすれただけで水疱ができます。17型コラーゲンは毛根や、歯のエナメル質をつくる細胞でもはたらいているため、髪や歯にも症状が出ます。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。
症状
- 生まれたときからの全身の水疱・びらん:手足、ひじ・ひざなど、こすれやすい場所に多くみられます
- 萎縮性の瘢痕:水疱が治ったあとに、薄くへこんだ跡や色の変化が残ります
- 脱毛:頭髪がまばらになり、年齢とともに目立ってくることが多いのがこの型の特徴です。まゆ毛・まつ毛・わき毛などが少なくなることもあります
- 爪の変形・脱落:爪が厚く変形したり、なくなったりします
- 歯のエナメル質の形成不全:エナメル質に小さなくぼみや薄い部分ができ、むし歯になりやすくなります
- 口の中や目(角膜)のただれ:みられても比較的軽いことが多いです
- 成人以降の皮膚がん(有棘細胞がん):長く治らない傷から生じることが報告されており、定期的な診察が勧められます
- 一部の方では、皮膚の一部が自然に水疱のできにくい状態になる「復帰変異モザイク」がみられます
検査・診断
生まれてすぐからの皮膚の水疱やびらんから疑われます。妊娠中の超音波検査で見つかることはほとんどありません。皮膚の一部を採取して調べる皮膚生検(蛍光抗体法による抗原の検査や電子顕微鏡)で、表皮と真皮の境目の透明帯で皮膚が裂けていること、17型コラーゲンが欠けているか減っていることを確認します。
確定診断は遺伝学的検査で行い、接合部型表皮水疱症4型では COL17A1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。表皮水疱症は型によって見通しや遺伝形式が大きく異なるため、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。
治療
現時点で、この病気を根本から治す治療はありません。治療の中心は、皮膚を守り、傷を早く治し、合併症を防ぐことです。皮膚科・小児科・歯科などが連携して、長く支えていくことが大切です。
- 創傷ケア:水疱は清潔な針で中身を抜き、皮膚にくっつきにくい被覆材で保護します
- 摩擦を避ける工夫:やわらかい衣類や靴の選び方、だっこのしかたなど、日常生活での注意をご説明します
- 感染症の予防と治療
- 歯科での定期的な管理:エナメル質が弱いため、フッ素塗布や早めのむし歯治療が大切です
- 脱毛への対応:ウィッグの使用など、見た目の悩みに配慮した支援
- 皮膚がんの定期チェック:成人以降は、治りにくい傷がないかを定期的に確認します
- 遺伝子治療や細胞治療の研究が進められていますが、まだ研究段階です
- ご本人・ご家族への心理的支援
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる COL17A1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、COL17A1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。
専門的な解説
COL17A1 はXVII型コラーゲン(BP180/BPAG2)をコードする。II型膜貫通タンパク質で、細胞内ドメインはヘミデスモソーム内でBP230・プレクチン・インテグリンβ4と結合し、細胞外のコラーゲン様ドメインは透明帯を横切ってラミニン332と相互作用する。ヘミデスモソームと基底膜の接着の要となる分子であり、欠損すると透明帯で表皮下の裂隙が生じる。
両アレルのナンセンス・フレームシフト変異でXVII型コラーゲンが欠損する例では、全身の水疱、びまん性の瘢痕性脱毛、爪甲の欠損、エナメル質低形成がそろう典型像をとる。ミスセンスやスプライス変異で蛋白が一部残る例では、より軽症(限局性)となる傾向がある。表皮水疱症における復帰変異モザイクは本遺伝子で初めて分子レベルで示され(Jonkman ら、1997年)、正常化した皮膚を利用する細胞治療の研究につながっている。成人期には有棘細胞癌の発生が報告されており、長期の経過観察を要する。ヘテロ接合の保因者にエナメル質の小陥凹がみられることがあり、特定のヘテロ接合変異は顕性遺伝の角膜上皮再発性びらんジストロフィーを起こす。
鑑別としては、ラミニン332欠損による接合部型表皮水疱症重症型(LAMA3・LAMB3・LAMC2、乳児期致死が多い)、ラミニン332の部分欠損による中間型、幽門閉鎖を伴う接合部型表皮水疱症(ITGB4・ITGA6)、単純型表皮水疱症(KRT5・KRT14、多くは顕性)、栄養障害型表皮水疱症(COL7A1、顕性・潜性)が挙がる。新生児期には臨床像の重なりが大きく、抗原マッピングと遺伝子診断を組み合わせて病型を確定することが、予後の説明と次子再発率(潜性25%、顕性の新生突然変異ではほぼ0%)の提示に直結する。
よくある質問
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。表皮水疱症には顕性遺伝の型や、新たに起きた遺伝子の変化による型もあり、その場合の再発率は異なります。再発率が大きく異なるため、原因遺伝子を確定することが重要です。
Q. 妊娠中に分かりますか。
A. この病気は、妊娠中の超音波検査ではほとんど分かりません。前のお子さまやご家族で原因となる遺伝子の変化が確定している場合は、出生前の遺伝学的検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q. 大人になるまで元気に過ごせますか。
A. この型は中間型で、多くの方が成人し、学校生活や仕事を続けています。ただし水疱は生涯続くことが多く、脱毛や歯のケア、成人以降の皮膚がんのチェックなど、長く付き合っていく管理が必要です。症状の程度には個人差があります。
Q. 重い型の接合部型表皮水疱症とはどう違いますか。
A. 重い型はラミニン332の遺伝子がまったくはたらかないことで起こり、乳児期に命に関わることが多い病気です。4型は COL17A1 遺伝子が原因で、皮膚の症状に加えて髪・爪・歯の症状が目立つ一方、生命の見通しは比較的良好です。型の区別には遺伝学的検査が役立ちます。
Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。
A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。
参考文献
- Pfendner EG, Lucky AW. Junctional Epidermolysis Bullosa. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
- McGrath JA, Gatalica B, Christiano AM, et al. Mutations in the 180-kD bullous pemphigoid antigen (BPAG2), a hemidesmosomal transmembrane collagen (COL17A1), in generalized atrophic benign epidermolysis bullosa. Nat Genet. 1995;11(1):83-86.
- Jonkman MF, Scheffer H, Stulp R, et al. Revertant mosaicism in epidermolysis bullosa caused by mitotic gene conversion. Cell. 1997;88(4):543-551.
- Fine JD, Bruckner-Tuderman L, Eady RA, et al. Inherited epidermolysis bullosa: updated recommendations on diagnosis and classification. J Am Acad Dermatol. 2014;70(6):1103-1126.
- Has C, Bauer JW, Bodemer C, et al. Consensus reclassification of inherited epidermolysis bullosa and other disorders with skin fragility. Br J Dermatol. 2020;183(4):614-627.
