FG症候群4型

FG Syndrome Type 4, CASK

概要

FG症候群4型は、知的障害や発達の遅れ、筋肉の緊張の弱さ(筋緊張低下)などを主な症状とし、主に男の子に起こる病気です。X連鎖潜性(劣性)遺伝の形式をとり、X染色体の上にあるCASK(Xp11.4)遺伝子の変化が原因となります。

「FG症候群」は、最初に報告されたご家族の名字の頭文字から名付けられました。知的障害、筋緊張低下、頭が大きめであること、がんこな便秘などをもつ病気のまとまりです。その後、原因となる遺伝子が複数見つかり、型の番号で分けられるようになりました。4型は、CASK 遺伝子が原因のものです。

CASK 遺伝子は、変化の種類や性別によって症状の重さが大きく異なる複数の病気を起こします。遺伝子のはたらきが完全に失われる変化では、女の子に小頭症と脳幹・小脳の発育不全(MICPCH)が、男の子にはさらに重い脳の病気が起こります。これに対しFG症候群4型は、はたらきが一部残る変化によって男の子に起こる、比較的軽い側の型です。報告されている患者さんはまだ少なく、わかっていないことも多い病気です。

原因

CASK は、神経細胞どうしのつなぎ目(シナプス)でほかのたんぱく質をまとめて正しい位置に並べる「足場」の役割をもつたんぱく質の設計図です。また、細胞の核のなかで、脳が育つときにはたらく遺伝子の調節にも関わっています。

FG症候群4型では、CASK のはたらきが完全には失われず、一部だけ弱くなると考えられています。そのため脳の形の大きな異常は目立たないことが多い一方、神経のネットワークの成熟がうまく進まず、知的発達や運動の発達に影響が出ます。

男性はX染色体を1本しかもたないため、変化した CASK 遺伝子を受け継ぐと発症します。女性はX染色体を2本もつため、1本に変化があっても症状がないか軽い「キャリア(保因者)」となることがほとんどです。お母さまがキャリアのとき、男の子は2分の1の確率で発症し、女の子は2分の1の確率でキャリアになります(X連鎖潜性遺伝)。ご家族に変化がなく、お子さまに新しく起こる場合もあります。

症状

症状の種類や程度には個人差があります。これまでの報告では、次のような特徴がみられます。

  • 知的障害・発達の遅れ:この病気のもっとも中心となる症状です。程度は人によって異なります
  • 筋緊張低下:赤ちゃんのころ体がやわらかく、首すわりやおすわり、歩き始めが遅れることがあります
  • ことばの遅れ
  • 頭が大きめ、広く高いおでこ:FG症候群として報告されたご家族でみられた特徴です
  • がんこな便秘
  • 目が細かく揺れる(眼振):CASK 遺伝子が原因の男の子でみられることがあります
  • 落ち着きのなさ、注意の続きにくさなどの行動面の特徴
  • 一部の方では、てんかん発作

検査・診断

妊娠中の超音波検査では、はっきりした異常がみられないことが多い病気です。多くは生まれたあと、首すわりやことばの遅れ、筋緊張低下などから気づかれます。脳のMRI検査で、脳幹や小脳の大きさなど脳の形を確認します。

確定診断は遺伝学的検査で行い、FG症候群4型では CASK 遺伝子に変化が見つかります。そのうえで、お母さまがキャリアかどうかを調べることで、次のお子さまの見通しが大きく変わります。症状だけで「FG症候群」と診断することは難しく、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、この病気を根本から治す治療はありません。一人ひとりの症状に合わせた治療と、早い時期からの療育・生活の支援が中心となります。

  • 早期療育:理学療法・作業療法・言語療法で、運動やことば、生活の力を伸ばします
  • 便秘の治療:食事の工夫やお薬で調整します
  • てんかんの治療:発作がある場合は抗てんかん薬を使います
  • 定期的な診察:発達、目(眼振・視力)、成長を継続して確認します
  • 教育・福祉の支援:お子さまに合った学びの場や、福祉制度の利用をご相談ください
  • ご家族への遺伝カウンセリング

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる CASK 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、CASK 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

X連鎖潜性遺伝の疾患は、お母さまが症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、男の子の2分の1の確率で発症します(女の子は2分の1の確率でキャリアとなります)。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

CASK(calcium/calmodulin-dependent serine protein kinase)はMAGUK(膜結合型グアニル酸キナーゼ)ファミリーに属する足場たんぱく質である。シナプス前部でニューレキシン、Mint1、Veli と複合体を形成するほか、核内では転写因子 TBR1 と協調して発生期の脳での遺伝子発現に関与する。Xp11.4 に位置し、女性ではX染色体不活化を受ける。

CASK 関連疾患は、残存機能と性別により連続した表現型スペクトラムを形成する——重症端から順に、①男性の機能喪失変異(重度のてんかん性脳症、小頭症と橋小脳低形成、乳児期死亡もある)、②女性のヘテロ接合機能喪失変異(多くは新生突然変異で、進行性小頭症と橋小脳低形成を伴う MICPCH)、③男性の部分的機能低下(ミスセンス・スプライス変異)による X連鎖知的障害(眼振の有無を問わない)および FG症候群4型となる。FG症候群4型はイタリアの FG症候群家系で CASK のミスセンス変異が同定されたことで定義され、この変異は正常転写産物の減少を伴う部分的機能低下と考えられている。③の病型では保因女性は無症状〜軽症のことが多く、家系内で男性に発症が集積する。

鑑別としては、FG症候群1型(MED12)、FG症候群2型(FLNA)、そのほかの X連鎖知的障害、脆弱X症候群(FMR1)が挙がる。「FG症候群」という臨床診断は特異性が低く、原因遺伝子が多様であるため、現在は遺伝子名に基づく診断(CASK 関連疾患)が推奨される。母親が保因者であれば男児の再発率は50%、新生突然変異であれば再発率は低いが、性腺モザイクの可能性を考慮してゼロとはしない。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気はX連鎖潜性遺伝のため、お母さまがキャリアの場合、男の子は2分の1の確率で発症し、女の子は2分の1の確率でキャリアになります。お子さまに新しく起こった変化の場合は、再発の可能性は低くなりますが、ゼロではありません。お母さまの検査で、どちらにあたるかを確かめることが重要です。

Q. 女の子も発症しますか。

A. この型の変化を受け継いだ女の子は、多くの場合キャリアとなり、症状がないか軽い程度です。ただし、CASK のはたらきが大きく失われる別の種類の変化では、女の子でも小頭症などを伴う別の病気が起こります。変化の種類によって見通しが違うため、詳しくは遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 超音波検査で気づかれることは少ない病気です。ご家族ですでに原因となる変化がわかっている場合は、出生前検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 成長するとどうなりますか。

A. 知的障害は大人になっても続きますが、療育や教育の支援によって、お子さまなりのペースで発達していきます。報告されている患者さんが少ないため、長い経過についてはまだ十分にわかっていません。定期的な診察を続け、その時々に必要な支援を受けることが大切です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Moog U, Kutsche K. CASK Disorders. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
  • OMIM #300422 FG syndrome 4; FGS4. Online Mendelian Inheritance in Man.
  • Piluso G, Carella M, et al. A missense mutation in CASK causes FG syndrome in an Italian family. Am J Hum Genet. 2009;84(2):162-177.
  • Najm J, Horn D, Wimplinger I, et al. Mutations of CASK cause an X-linked brain malformation phenotype with microcephaly and hypoplasia of the brainstem and cerebellum. Nat Genet. 2008;40(9):1065-1067.
  • Hackett A, Tarpey PS, Licata A, et al. CASK mutations are frequent in males and cause X-linked nystagmus and variable XLMR phenotypes. Eur J Hum Genet. 2010;18(5):544-552.
  • Moog U, Kortüm F, et al. Phenotypic spectrum associated with CASK loss-of-function mutations. J Med Genet. 2011;48(11):741-751.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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