眼白皮症I型(ネットルシップ・フォールズ型)

Ocular albinism, type I, Nettleship-Falls type, GPR143

概要

眼白皮症I型(ネットルシップ・フォールズ型)は、目のメラニン色素が少なくなり、生まれつき視力が低く、眼が揺れる(眼振)などの症状が出る病気です。X連鎖潜性(劣性)遺伝の形式をとり、X染色体の短腕(Xp22)にある GPR143 遺伝子の変化が原因となります。

「白皮症」という名前がついていますが、皮膚や髪の色はご家族とほぼ同じか、わずかに薄い程度で、色素の不足はおもに目に限られます。このため、皮膚・髪・目のすべての色が薄くなる「眼皮膚白皮症」とは区別されます。発症するのはほとんどが男の子で、キャリア(保因者)の女性は多くの場合、視力に問題はありません。

視力の低下は生まれつきのもので、多くは成長とともに進行することはありません。知能や寿命への影響はなく、眼鏡や弱視用の補助具、学校・職場での配慮を受けながら生活されている方が多くいます。

原因

GPR143(OA1 たんぱく質)は、色素細胞のなかでメラニンをつくる小さな袋「メラノソーム」の膜にある受容体(信号を受け取るアンテナ)です。

このアンテナは、メラノソームが正しい大きさ・数で育つように調節する役目をもっています。はたらかなくなると、メラノソームが異常に大きくなり(巨大メラノソーム)、数が減って、目の奥の網膜やその裏側の色素上皮に十分な色素がたまりません。網膜の色素は、視力の中心となる「中心窩(ちゅうしんか)」の発達や、目から脳へ向かう視神経の正しい配線に欠かせないため、結果として視力が育ちにくくなります。

GPR143 遺伝子はX染色体にあります。男の子はX染色体を1本しか持たないため、お母さまから変化したX染色体を受け継ぐと発症します。女の子はX染色体を2本持つため、1本に変化があっても、もう1本がはたらきを補い、多くは症状のないキャリアとなります(X連鎖潜性遺伝)。

症状

  • 眼振(目が細かく揺れる):多くは生後数か月以内に気づかれ、最初のきっかけになることが多い症状です
  • 生まれつきの視力低下:程度には個人差がありますが、眼鏡をかけても視力が十分に上がらないことが多くあります
  • 中心窩の低形成:視力の中心となる部分が十分に発達していません
  • 虹彩(茶目)の透け:光を当てると虹彩が透けて見えます
  • 眼底の色素が薄い:目の奥の血管が透けて見えます
  • まぶしさ(羞明)、斜視、強い屈折異常(遠視・近視・乱視)
  • 立体的に見る力(両眼視)の低下:視神経の配線の異常によるものです
  • 皮膚・髪の色はご家族とほぼ同じ:この点が眼皮膚白皮症との大きな違いです

キャリアの女性では、眼底に色素の濃い部分と薄い部分がまだらに混じる模様や、虹彩の透けが見られることがよくあります。これは2本のX染色体のどちらがはたらくかが細胞ごとに異なるためで、視力はふつう正常です。

検査・診断

乳児期の眼振や視線の合いにくさをきっかけに、眼科での診察で疑われます。虹彩の透け、眼底の色素の薄さ、光干渉断層計検査での中心窩の低形成が手がかりになります。視覚誘発電位検査では、視神経が左右で交差する割合が多すぎる(配線の異常)ことが確かめられることがあります。

お母さまの眼底を診察し、キャリアに特徴的なまだらの色素模様が見つかることも、診断の大きな手がかりになります。確定診断は遺伝学的検査で行い、GPR143 遺伝子に変化が見つかります。眼皮膚白皮症(常染色体潜性)と区別することは、次のお子さまの見通しが大きく変わるため重要です。

治療

現時点で、色素の不足そのものを治す治療はありません。ただし、早い時期から視力を最大限に生かすための対応を行うことで、生活や学習のしやすさを高めることが期待できます。

  • 眼鏡・コンタクトレンズ:屈折異常を早めに矯正し、視力の発達を助けます
  • まぶしさへの対策:遮光眼鏡、帽子、サングラスなど
  • 弱視用の補助具(ロービジョンケア):拡大鏡、単眼鏡、拡大読書器、タブレット端末の拡大機能など
  • 斜視の治療:必要に応じて眼鏡や手術を検討します
  • 定期的な眼科での経過観察
  • 学校・就労での支援:座席の位置、拡大教材、試験時間の配慮など。運転免許は視力の基準によって取得できない場合があります

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる GPR143 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、GPR143 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

X連鎖潜性(劣性)遺伝の疾患は、お母さまが症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、男の子の2分の1の確率で発症し、女の子の2分の1がキャリアとなります。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

GPR143(OA1)はメラノソーム膜に局在する7回膜貫通型のG蛋白質共役受容体で、L-DOPA が内因性リガンドとして報告されている。メラノソームの生合成・成熟・大きさの制御に関わる細胞内シグナルを担い、欠損すると皮膚メラノサイトと網膜色素上皮に巨大メラノソームが出現する。皮膚の巨大メラノソームはかつて診断の補助に用いられたが、現在は遺伝子診断が主体である。

眼所見は眼皮膚白皮症と共通する「白皮症の眼」——中心窩低形成、眼振、虹彩透照、眼底低色素、視交叉での耳側網膜線維の過剰交差——を示すが、皮膚・毛髪の色素はほぼ保たれる。視力は症例により幅があり、多くは非進行性である。保因女性の多くに、ランダムなX染色体不活化を反映したモザイク状の眼底色素分布や虹彩透照がみられ、家系内の保因者の推定に役立つ。まれに、X連鎖性魚鱗癬(STS)などを含む Xp22.3 領域の隣接遺伝子欠失の一部として生じることがある。

鑑別としては、眼皮膚白皮症(TYR、OCA2 などの常染色体潜性で、軽症型では皮膚所見が目立たない)、オーランド島眼病(CACNA1F、X連鎖、かつて眼白皮症2型と呼ばれた)、X連鎖先天眼振(FRMD7)、無虹彩症(PAX6)、SLC38A8 関連の中心窩低形成が挙がる。遺伝形式が異なると、次子再発率や保因者の範囲が大きく変わるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気はX連鎖潜性遺伝のため、お母さまがキャリアの場合、男の子では妊娠ごとに2分の1の確率で発症し、女の子では2分の1の確率でキャリアとなります。まれにお子さまの遺伝子に新たに変化が起きている場合もあり、そのときの見通しは異なります。お母さまがキャリアかどうかを確認することが重要です。

Q. 父親が発症している場合、子どもはどうなりますか。

A. お父さまのX染色体は娘さんにだけ受け継がれるため、娘さんは全員キャリアとなり、息子さんには受け継がれません。娘さんは多くの場合症状はありませんが、将来ご自身のお子さま(男の子)に影響する可能性があります。

Q. 目が見えなくなってしまうのですか。

A. 視力は生まれつき低めですが、多くは成長とともに悪くなっていく病気ではなく、全く見えなくなることはまれです。眼振は年齢とともに目立たなくなることもあります。眼鏡や補助具を使い、通常の学校に通い、仕事をされている方も多くいます。

Q. 妊娠中の超音波検査で分かりますか。

A. この病気は目の色素や網膜の発達に関わるものなので、超音波検査で見つけることはできません。ご家族に患者さんやキャリアの方がいて原因の変化が分かっている場合は、遺伝学的検査で調べることを検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Lewis RA. Ocular Albinism, X-Linked. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
  • OMIM #300500 Albinism, Ocular, Type I; OA1. Online Mendelian Inheritance in Man.
  • Bassi MT, Schiaffino MV, Renieri A, et al. Cloning of the gene for ocular albinism type 1 from the distal short arm of the X chromosome. Nat Genet. 1995;10(1):13-19.
  • Schiaffino MV, Tacchetti C. The ocular albinism type 1 (OA1) protein and the evidence for an intracellular signal transduction system involved in melanosome biogenesis. Pigment Cell Res. 2005;18(4):227-233.
  • Lopez VM, Decatur CL, Stamer WD, Lynch RM, McKay BS. L-DOPA is an endogenous ligand for OA1. PLoS Biol. 2008;6(9):e236.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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