親子で遺伝するものとは~遺伝の仕組みを解説【医師監修】

親子で遺伝するものとは

本記事では、何が親から子へ遺伝するのかについて解説いたします。 親子で遺伝するものがわかると、あなたの不安が取り除かれたり、子を迎えるための準備をする助けになったりするでしょう。

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はじめに

  • 「私のこのコンプレックス、赤ちゃんに似てしまったらどうしよう」
  • 「パパの持病が遺伝して、将来苦労させないかな?」

幸せな妊娠期間中、ふとした瞬間にそんな不安がよぎることはありませんか?

実は、親の特徴がすべてそのままお子さんに伝わるわけではありません。遺伝の仕組みはとても奥が深く、受け継いでも表面には現れないものや、成長する環境によって変化していくものも多いのです。

本記事では、多くのパパ・ママが気になる「親子で遺伝する項目」について、
医学的な視点から分かりやすく解説します。
正しく知ることは、漠然とした不安を安心に変え、赤ちゃんを笑顔で迎えるための大切な準備になるはずです。

遺伝とは

遺伝とは、パパやママの特徴が、お子さんへと受け継がれる現象のことです。
この特徴を伝える「情報」を記録しているのが遺伝子で、私たちの体には2万5,000種類以上もの遺伝子が存在しています。

遺伝子・DNA・染色体の関係

遺伝子の正体は「DNA」という物質です。このDNAが細胞の中で安定して存在するために、ギュッと束ねられた状態を「染色体(せんしょくたい)」と呼びます。
つまり、染色体の中にDNAがあり、そのDNAの一部が「遺伝子」として働いているのです。
ヒトの染色体は全部で46本あり、その内訳は以下の通りです。

常染色体(44本)

男女共通の体の特徴を決めるもの

性染色体(2本)

性別を決定するもの(XとYの組み合わせ)
これらの染色体が親から子へ受け継がれることで、ご両親の特徴がお子さんへと現れます。

遺伝の伝わり方(4つの形式)

親から子へどのように特徴が伝わるのか、主な4つのパターンについて詳しく見ていきましょう。

・常染色体優性遺伝

(片方の親から伝わりやすいタイプ)

・常染色体劣性遺伝

(両方の親から受け継いで現れるタイプ)

・X連鎖性優性遺伝

性別によって伝わり方が変わる優性タイプ)

・X連鎖性劣性遺伝

性別によって伝わり方が変わる劣性タイプ)

常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたい・ゆうせいいでん)

一組(2本)ある遺伝子のうち、片方の親から受け継いだ遺伝子の特徴が、もう片方の特徴を抑えて優先的に現れる形式を「優性遺伝」と呼びます。

遺伝の確率と特徴

両親のどちらかがこの優性遺伝子を持っている場合、お子さんにその特徴が受け継がれる確率は、性別に関係なく50%です。

ポイント1

一回一回の妊娠で「50%」の可能性があります
「上の子が受け継いだら、下の子は受け継がない」といった決まりはなく、お子さん一人ひとりに対して、常に50%ずつの可能性があります。 毎回同じ条件で受け継がれる仕組みです。

ポイント2

「優性」=「優れている」ではありません
医学用語としての「優性」は、あくまで「特徴が表に現れやすい」という意味であり、性質の良し悪しを指すものではありません。

常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたい・れっせいいでん)

パパとママの両方から同じ特徴の遺伝子を受け継いだときに、初めてその特徴が表面に現れる形式を「劣性遺伝」と呼びます。
パパとママがそれぞれ「現れやすい遺伝子」と「現れにくいの遺伝子」をセットで持っている場合(保因者)、お子さんへの伝わり方は以下の3つの可能性があります。

・特徴が表面に現れる確率は25%

パパとママの両方から「隠れた特徴の遺伝子」を受け継いだケースです。

・ご両親と同じ「保因者」になる確率は50%

パパかママ、どちらか一方から「隠れた特徴の遺伝子」を受け継いだケースです。遺伝子は持っていますが、表面に特徴が出ることはありません。

・その特徴を「受け継がない」確率は25%

パパとママの両方から「正常な遺伝子」を受け継いだケースです。この場合、お子さんはその特徴を持たず、次世代へ伝えることもありません。

性染色体による遺伝(X連鎖性遺伝)

これまでは男女共通の「常染色体」のお話でしたが、ここでは「性別を決める染色体(性染色体)」による遺伝について解説します。

まず基本として、ヒトの性別は2本の染色体の組み合わせで決まります。
女性:XX(パパとママからXを1本ずつ)
男性:XY(ママからX、パパからYを1本ずつ)

この「X染色体」に特徴がある場合を「X連鎖性遺伝」と呼び、さらに「優性」と「劣性」の2パターンに分かれます。

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X連鎖性「優性」遺伝

1本のX染色体に特徴があるだけで、表面に現れやすいタイプです。

・パパが持っている場合
娘:100%受け継ぎます。(パパからは必ずXが伝わるため)
息子:受け継ぎません。(パパからはYのみ伝わるため)

・ママが片方のXに持っている場合
性別に関わらず50%の確率で受け継ぎます。

X連鎖性「劣性」遺伝

女性(XX)の場合、2本のXが揃わないと表面に現れにくいタイプです。そのため、Xを1本しか持たない男性(XY)に現れやすいという特徴があります。

・パパが持っている場合
娘:全員が「保因者」になります。(パパのXを受け継ぎますが、ママの正常なXがカバーするため、表面には現れません)
息子:受け継ぎません。(パパからはYのみ伝わるため)

・ママが片方のXに持っている場合(保因者)
娘:50%の確率で「保因者」になります。
息子:50%の確率で表面に現れます。(ママのXをそのまま受け継ぐため)

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容姿や体格、性格などはどこまで遺伝する?

「パパの鼻の形にそっくり!」「ママに似て背が高くなるかな?」など、見た目の遺伝は一番分かりやすく、気になるポイントです。  身長・顔つきなど解説します。

容姿などの外見的遺伝

「身長」、「性格」、「病気」などの各見出しの下に、内容を示すシンプルな写真やイラストを添えると、読者が今何の話題を読んでいるか視覚的にわかりやすくなります。

身長:遺伝の影響は約8割

身長は、遺伝の影響を約8割受けると言われています。ただし、残りの2割は「睡眠・栄養・運動」といった環境要因が大きく関わります。
身長を決める遺伝子は少なくとも600種類以上あるとされており、多くの要素が複雑に組み合わさって決まるため、「親と全く同じ身長」になるとは限りません。

顔立ち:両親からバランスよく受け継ぐ

「男の子はママ似、女の子はパパ似」という説もありますが、実は科学的な根拠はまだありません。
顔立ちは「常染色体(じょうせんしょくたい)」にある複数の遺伝子によって決まるため、基本的にはパパとママ双方からバランスよく特徴を受け継ぎます。ヨーロッパの研究(注1)では顔立ちに関わる特定の遺伝子も発見されており、今後の研究でさらに詳しく解明されることが期待されています。
注1:2012年、オランダのエラスムスMC大学医学センターの研究による

耳:形や「聞こえ」の遺伝

耳の形(立ち具合)は遺伝しやすい特徴の一つです。また、生まれつき耳が聞こえにくい「遺伝性難聴」も、遺伝子の影響を受けることがあります。
その多くは、両親が「隠れた特徴の遺伝子(劣性遺伝子)」を持っている場合に現れるタイプ(常染色体劣性遺伝)ですが、それ以外の形式で遺伝することもあります。

歯並び:土台となる「骨格」が似る

歯並びも約8割が遺伝の影響と言われています。特に「顎の大きさ」や「歯のサイズ」のバランス、また「出っ歯(上顎前突)」や「受け口(下顎前突)」といった骨格のベースは遺伝しやすい部分です。
ただし、歯並びは成長期の生活習慣でも大きく変わります。以下の習慣には少し注意してあげましょう。

  • 指しゃぶりや舌の癖(前歯を押すなど)
  • 頬杖や姿勢の乱れ
  • 柔らかいものばかり食べる習慣

こちらの動画は遺伝が外見に与える影響度について解説していますので、是非参考にしてください。

DNA

性格や能力(内面)の遺伝

目に見えない「心」や「才能」についても、近年の研究で遺伝との関わりが少しずつ解明されています。

性格:遺伝と環境が「半分ずつ」

性格のベースとなる部分は約50%が遺伝、残りの50%は育つ環境によって決まると考えられています。
受け継がれるのは、例えば「セロトニン(心を安定させる物質)」の分泌量など、感情の波の立ちやすさといった気質的な特徴です。
ただし、性格はご両親との関わりや周囲の環境によってしなやかに変化します。たとえ同じ遺伝子を持っていても、育て方や経験次第でその子の個性は大きく花開いていくものです。

学習能力:遺伝の土台に「環境」をプラス

知能や学習能力も遺伝の影響を受け、学業成績の個人差の約7割に遺伝が関わっているという説もあります。
しかし、これらは決して「生まれつきすべてが決まる」というものではありません。知的好奇心を刺激する環境や、学習の習慣といった「後天的な要素」も、お子さんの可能性を広げる大切な鍵となります。

運動能力:6割以上が遺伝的要因

運動能力については、研究(注2)によって約66%が遺伝要因で決まると報告されています。現在、スポーツの得意・不得意に関わる遺伝子は200種類以上も見つかっています。
とはいえ、幼少期からの遊びやトレーニングによって、持っている能力をどこまで引き出せるかは大きく変わってきます。
注2:2007年Marleen H M De Moorらの研究による

病気の遺伝

発達障害

発達障害とは、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。(引用ママ)

引用:発達障害 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

本項目では、以下の2つの疾患について解説します。

発達障害は遺伝子だけが原因ではありません。環境要因との組み合わせで病気が発症します。

自閉症スペクトラム(ASD)

自閉症スペクトラムは、特定の遺伝子だけで決まるものではなく、遺伝的な背景と「環境要因」が複雑に組み合わさって現れると考えられています。
現在、環境要因として研究されている項目:

  • 妊娠初期の喫煙
  • 水銀や有機リン酸系農薬の摂取
  • ビタミンなどの栄養素の摂取
  • 高齢出産
  • 妊娠週数や出生時の体重
  • 出産時の状況(帝王切開など)
  • 夏の時期の妊娠
  • 生殖補助医療による妊娠

これらは「これがあるから必ず発症する」という直接的な原因ではなく、あくまで統計上の傾向として研究されている段階のものです。

ADHD(注意欠如・多動症)

ADHDは遺伝的な影響を受けやすいとされており、親御さんがADHDの特性を持っている場合、お子さんにもその特性が現れる可能性は、そうでない場合に比べて5〜10倍ほど高いと考えられています。
また、遺伝子そのものに問題がなくても、以下のような環境要因によって特性が強まるケースもあります。

  • 母親の妊娠中の喫煙・飲酒
  • 幼児期の強いストレス

これらも自閉症スペクトラムと同様に、単一の原因で決まるものではありません。大切なのは原因を特定することよりも、「今の赤ちゃんの状態を正しく知り、適切なサポートを準備すること」です。
そのための一つの手段として、出生前に情報を得られるNIPT(新型出生前診断)という選択肢があります。

親子で遺伝するもの

その他の病気・疾患の遺伝

生活習慣に関わる「体質」の遺伝
高血圧や糖尿病などは、病気そのものではなく「なりやすい体質」を受け継ぎます。これは、日々の生活習慣でリスクを下げられるという前向きな側面もあります。

  • 高血圧 ・遺伝の傾向
  • 糖尿病 ・遺伝の傾向
  • アレルギー ・遺伝の傾向
  • 糖尿病
  • 高血圧
  • アレルギー
  • がん

これらは病気そのものが、子へ遺伝するわけではありません。病気の原因になりやすい特徴が、子へ遺伝されます。

高血圧 ・遺伝の傾向

両親とも高血圧なら約50%、片親なら約30%の確率で体質を受け継ぐ ・備えのアドバイス:塩分控えめの食事や適度な運動など、日々の習慣でリスクを抑えられます。

糖尿病 ・遺伝の傾向

親が2型糖尿病の場合、そうでないケースに比べて3〜4倍なりやすい体質 ・備えのアドバイス:バランスの良い食事と規則正しい生活で、発症を防ぐことが可能です。

アレルギー ・遺伝の傾向

「なりやすさ」は遺伝しますが、必ず発症するとは限りません。 ・備えのアドバイス:お掃除などで住環境を整え、刺激を避けることで健やかな毎日を守れます。

がん ・遺伝の傾向

ほとんどが一生のうちに起こる「突然変異」によるもので、遺伝性はごく稀。 ・備えのアドバイス:定期的な検診を受けることが、将来の安心と早期発見に繋がります。

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生まれつきの病気や障がいは、遺伝子の影響だけでなく、突然変異や妊娠中の環境など、さまざまな要因が組み合わさって起こります。

■ 染色体異常(ダウン症など)

染色体異常の多くは、ご両親の遺伝に関わらず「突然変異」によって起こるものです。
・突然変異が主な原因
両親の遺伝子に問題がなくても、受精の過程で染色体の数や形に変化が起こることがあります。
・一部にある遺伝的要因(ロバートソン転座)
ごく稀に、ご両親のどちらかが「ロバートソン転座(染色体の一部が入れ替わっている状態)」を持っている場合に遺伝することがあります。

ポイント

NIPT(新型出生前診断)でわかること
ダウン症などの染色体異常は、お腹の赤ちゃんの健康状態を採血だけで調べる「NIPT」で、事前に確認することが可能です。「生まれてくる子のために、万全の準備をしたい」という親御さんの安心を支える検査です。

単一遺伝子疾患

たった一つの遺伝子の変化が原因で起こる疾患の総称で、その多くは「難病」に指定されています。これまでの章で解説した通り、遺伝形式によってお子さんに受け継がれる確率が異なります。

【遺伝形式ごとの主な疾患例】

常染色体優性遺伝(片方の親から伝わりやすいタイプ)常染色体劣性遺伝(両方の親から受け継いで現れるタイプ)X連鎖性遺伝(性別によって伝わり方が変わるタイプ)
ハンチントン病
家族性アミロイドポリニューロパチー
家族性大腸腺腫症
フェニルケトン尿症
ウィルソン病
ウェルナー症候群
ニーマン・ピック病
血友病
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
ハンター症候群
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多因子遺伝

単一の遺伝子だけではなく、複数の遺伝要因と生活環境が複雑に絡み合って現れるものです。
主な例: 糖尿病、心臓病、本態性高血圧症など
病気そのものが100%遺伝するわけではなく、あくまで「なりやすい体質」を受け継ぐというものです。
これは日々の食事や適度な運動といった「生活習慣」を整えることで、発症のリスクを十分にコントロールできるということでもあります。親子の絆として体質を理解し、家族みんなで健康的な生活を送るきっかけにしてみてくださいね。

妊娠中の環境と「催奇形性(さいきけいせい)」

妊娠中の環境と「催奇形性(さいきけいせい)」

赤ちゃんの成長には、遺伝子だけでなく、妊娠中のママを取り巻く環境も影響を与えます。これを「催奇形性」と呼びますが、これらは「正しく知って、正しく避ける」ことで、リスクを最小限に抑えられるものがほとんどです。

注意したい環境要因:

  • 放射線への曝露
  • 特定の薬剤(妊娠中の服用が禁忌とされているもの)
  • アルコール・喫煙
  • 極端な栄養不良
  • 母体の特定の感染症(風疹など)

「あれもこれもダメ」と神経質になりすぎる必要はありません。これらは現代の妊婦健診でしっかりとケアやアドバイスが受けられる内容です。主治医の先生とコミュニケーションを取りながら、ゆったりとした気持ちでお腹の赤ちゃんとの時間を過ごしてくださいね。

まとめ:正しく知ることで、赤ちゃんを迎える安心へ

本記事では、パパやママの特徴がどのようにお子さんへ受け継がれるのか、その仕組みと具体的な項目について解説しました。

遺伝の仕組みはとても奥が深く、多くの特徴は遺伝だけでなく「環境」との組み合わせによって現れます。ご両親のコンプレックスや持病が、必ずしもお子さんに同じ形で現れるわけではありません。

「今できる備え」としての出生前診断

遺伝する特徴の中でも、ダウン症などの染色体異常については、出生前の検査(NIPT)で詳しく調べることができます。染色体異常は、遺伝だけでなく「突然変異」によって誰にでも起こりうるものです。
事前に赤ちゃんの状態を知っておくことは、決して不安を煽るためのものではありません。

  • どのようなサポートが必要か、あらかじめ情報を集めておく
  • 家族で話し合い、心の準備を整えておく

このように、「大切な赤ちゃんを万全の体制で迎えるための準備」ができるという大きなメリットがあります。
正しく知ることは、漠然とした不安を「安心」や「覚悟」に変えてくれます。お腹の赤ちゃんの未来のために、まずは第一歩として「正しく知る」ことから始めてみませんか。

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【参考文献】

本記事では、何が親から子へ遺伝するのかについて解説いたします。 親子で遺伝するものがわかると、あなたの不安が取り除かれたり、子を迎えるための準備をする助けになったりするでしょう。

NIPT(出生前診断)について詳しく見る

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記事の監修者


新田 啓三先生

岡 博史先生

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