シルバー・ラッセル症候群とは|診断基準・原因・NIPTでわかるかを解説

シルバー・ラッセル症候群(SRS)は染色体の数ではなく遺伝子の働き方が変わって起こる成長の疾患です。NH-CSSによる診断、11p15メチル化異常やupd(7)mat、成長ホルモン治療、そしてNIPTで分かるのかを解説します。

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このテーマの総合ガイド新型出生前診断(NIPT検査)とは(総合ガイド)

「小さく生まれた」「体の左右で大きさが違う」と言われ、シルバー・ラッセル症候群という名前を初めて聞かれたかもしれません。

結論からお伝えします。シルバー・ラッセル症候群(Silver-Russell syndrome:SRS)は、染色体の数が増えたり減ったりする病気ではなく、遺伝子の「働き方の設定」が変わることで起こる、成長にかかわる先天性の疾患です。おなかの中にいるときから小さく、生まれた後も身長が伸びにくいことが中心的な特徴で、知的発達は多くの方で保たれます。

この記事では、診断の考え方、原因、成長と治療、そして「NIPTでわかるのか」という点を整理します。GeneReviews(米国NIH)と2017年の国際コンセンサス声明にもとづいてお伝えします。

💡 この記事でわかること

  • シルバー・ラッセル症候群がどのような病気なのか
  • 診断に使われる6つの項目(NH-CSS)と、その読み方
  • 原因が「染色体の本数」ではなく「遺伝子の働き方」であること
  • NIPTでこの病気がわかるのか、わからないのか
  • 確定診断に必要な検査と、その受け方
  • 成長ホルモン治療をはじめとする成長のサポート
  • 次のお子さまへの再発リスクの考え方

1. シルバー・ラッセル症候群とは

おなかの中にいるときから小さく、生まれた後も身長の伸びが追いつきにくい状態が続く先天性の疾患です。1950年代にSilver医師とRussell医師がそれぞれ報告したことから、この名前で呼ばれています。

頻度は正確にはわかっていませんが、エストニアで行われた後方視的な調査からの最小推定で出生 15,886人に1人とされています(GeneReviews)。実際にはもう少し多い可能性があります。

大切な点として、知的発達は多くの方で保たれます。小さく生まれた赤ちゃん全般に学習面の課題が出やすいという報告はありますが、この病気そのものが重い知的障害を伴うわけではありません。

2. 診断の考え方|6つの項目のうち4つ以上(NH-CSS)

現在の国際的な基準はNetchine-Harbison臨床スコアリングシステム(NH-CSS)で、次の6項目のうち4項目以上を満たすときに臨床的に診断されます。

項目内容
在胎週数に比して小さく生まれた(SGA)出生体重または出生身長が平均より2SD以上小さい
生まれた後の成長の遅れ2歳(24か月)時点の身長が平均より2SD以上低い
相対的な大頭(出生時)体の大きさに比べて頭囲が大きい
前額の突出おでこが張り出して見える
体の左右差脚の長さの差が0.5cm以上、または体の一部に左右差がある
哺乳・食事の困難2歳時点のBMIが平均より2SD以上低い、または食が細い

太字の2項目(相対的な大頭・前額の突出)は特に重視されます。この2つを含めて4項目以上を満たしながら、後述の遺伝学的検査で異常が見つからない場合も、臨床的なシルバー・ラッセル症候群として扱われます。

「小さく生まれた」というだけでこの病気とは限りません。SGA(在胎週数に比して小さく生まれること)自体は珍しくなく、そのうちごく一部がこの病気にあたります。気になる場合は、自己判断ではなく小児科・小児内分泌科でご相談ください。

3. 原因|遺伝子の「数」ではなく「働き方」の変化

この病気を理解するうえで、いちばん大切な点です。シルバー・ラッセル症候群の主な原因は、染色体が1本多い・少ないといった「数」の変化ではありません。遺伝子そのものは揃っているのに、そのスイッチの入り方(メチル化)や、父方・母方どちらから受け継いだかが通常と異なることで起こります。これをインプリンティング異常と呼びます。

原因おおよその割合内容
11番染色体 11p15.5 ICR1のメチル化低下約35〜67%成長に関わる領域のスイッチが入りにくくなる
7番染色体の母性片親性ダイソミー(upd(7)mat)約7〜10%7番染色体を2本とも母親から受け継ぐ
CDKN1C・IGF2・PLAG1・HMGA2などの変化まれ個々の遺伝子の変化によるもの
原因が特定できない約30〜40%臨床基準は満たすが検査で異常が出ない

割合はGeneReviewsの記載によります。3〜4割の方は検査で原因が見つかりません。「検査が陰性だった=シルバー・ラッセル症候群ではない」ではない、という点は知っておいていただきたいところです。

4. NIPTでわかりますか|原則としてわかりません

結論から申し上げると、シルバー・ラッセル症候群はNIPTの対象にはなりません。理由は、検査が見ているものが違うからです。

NIPTは、お母さまの血液に含まれる胎児由来のDNAの「量」を測って、染色体が1本多い・一部が足りないといったコピー数の変化を推定する検査です。一方この病気の主な原因は、コピー数は変わらないままメチル化や親由来の偏りが変わることです。量が変わらない変化は、量を測る検査では原理的にとらえられません。

妊娠中にこの病気が疑われるのは、多くの場合超音波検査で胎児発育不全(FGR)が指摘されたときです。その場合の精査は産科・小児科の担当医とご相談ください。「NIPTを受けておけば分かる病気」ではないことを、あらかじめ知っておいていただければと思います。

NIPTがどこまでを対象にするのかは検査プランによって異なります。ご自身に合う範囲がわからない場合はプラン診断もご利用ください。

5. 確定診断のための検査

GeneReviewsでは、最初に行う検査として「11p15.5のICR1・ICR2のメチル化解析」と「7番染色体の母性片親性ダイソミーの検査」を同時に行うことが勧められています。通常の染色体検査(G分染法)や、コピー数を見る染色体マイクロアレイ検査(CMA)だけでは、メチル化の異常は見つかりません。

これらで結果が出ない場合に、CDKN1C・IGF2・PLAG1・HMGA2などを含む遺伝子検査へ進むことがあります。検査の選択は、臨床遺伝専門医のいる施設でご相談ください。

6. 成長と治療|早い時期の栄養と、成長ホルモン

治療の中心は栄養管理成長ホルモン治療です。未治療の場合、成人身長は平均より3.1±1.4SD低いと報告されています(GeneReviews)。

  • 栄養のサポート:食が細く体重が増えにくいことが多く、乳幼児期は栄養士と一緒に進めます。急いで体重を増やしすぎないことも大切とされています。
  • 低血糖への注意:筋肉量が少なく食事量も少ないため、幼少期は空腹時の低血糖を起こしやすいことが知られています。長時間の絶食を避ける、体調不良時の対応を決めておく、といった備えが要ります。
  • 成長ホルモン治療:SGA性低身長症として保険診療の対象になる場合があります。適応の判断は小児内分泌科で行います。
  • 体の左右差:脚の長さに差がある場合、整形外科で経過を見ます。

7. 次のお子さまへの再発リスク

原因によって考え方が変わります。メチル化異常やupd(7)matの多くは偶発的に生じるため、次のお子さまでの再発リスクは一般に低いとされています。一方、CDKN1CやIGF2などの遺伝子の変化が原因の場合は、遺伝形式に応じたリスクを考える必要があります。

「どの原因だったか」がわかっているかどうかで説明が変わります。次のお子さまを考えるときは、検査結果を持って臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーにご相談ください。

よくある質問

Q. 小さく生まれたら、シルバー・ラッセル症候群なのですか。
いいえ。在胎週数に比べて小さく生まれること(SGA)自体は珍しくなく、そのうちのごく一部がこの病気にあたります。診断には6項目のうち4項目以上という基準があります。

Q. NIPTでわかりますか。
原則としてわかりません。NIPTは染色体のコピー数を推定する検査で、この病気の主な原因であるメチル化の変化や片親性ダイソミーは、コピー数が変わらないため検出できません。

Q. 知的障害を伴いますか。
多くの方で知的発達は保たれます。ただし小さく生まれたお子さま全般と同様、学習面の支援が役立つ場合があります。

Q. 検査が陰性でした。この病気ではないということですか。
そうとは限りません。臨床基準を満たす方の約30〜40%では、現在の検査で原因が特定できないと報告されています。

Q. 身長はどのくらいになりますか。
未治療の場合、成人身長は平均より3.1±1.4SD低いと報告されています。成長ホルモン治療の適応になる場合があり、小児内分泌科で判断します。

監修:岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、GeneReviews(米国NIH)・2017年の国際コンセンサス声明などの公的機関・学会情報を参照して作成しています。記載の頻度・数値は文献により幅があり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。

シルバー・ラッセル症候群(SRS)は染色体の数ではなく遺伝子の働き方が変わって起こる成長の疾患です。NH-CSSによる診断、11p15メチル化異常やupd(7)mat、成長ホルモン治療、そしてNIPTで分かるのかを解説します。

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医師監修 監修日:2026年9月5日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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