日本における多胎妊娠の割合は、2017年では1.04%でした。 双子を授かる人に特徴はあるのでしょうか?双子を妊娠する理由やいつわかるのか、障害を持つ確率や出産前に障害の有無を検査する方法などを解説いたします。
この記事のまとめ
双子を授かる特徴は、高齢出産や不妊治療による排卵誘発剤の使用が関連しています。高齢出産や不妊治療で排卵誘発剤を使用すると、双子の可能性が高まります。双子か判断するにはエコー(超音波)検査による画像診断で妊娠5週目ごろから確認できます。多胎児は低出生体重児胎児になる確率が高く約70%以上です。また双子の成長には早産などのリスクが高まります。
日本での双子や三つ子などの多胎妊娠の状況
「多胎妊娠」とは、2人や3人など、同時に赤ちゃんを複数妊娠している状態のことです。一方で、お腹にいる赤ちゃんが1人だけの場合が「単胎妊娠」です。
日本における多胎妊娠は近年あまり増減がなく、1%前後で推移しています。多胎児の2017年の分娩件数は約9900件でした。
分娩件数の総数に対する多胎妊娠率は、以下の通りです。
| 1995年 | 0.9% |
|---|---|
| 2005年 | 1.18% |
| 2011年 | 0.96% |
| 2017年 | 1.04% |
双子を授かる人に特徴はある?
高齢出産だと双子になりやすい?
母親の出産時の年齢が高くなるにつれて多胎児となる割合は上がる、と考えられています。高齢の母体では卵胞刺激ホルモンの数値が高い傾向があり、複数の受精卵が生じる可能性が高くなるというのが、その理由の1つとされています。
多胎妊娠の日本における割合は、母親の年齢が30歳以上では2.0%を超え、40〜44歳になると2.71%、45歳以上では5.95%と次第に高くなっていきます。したがって高齢出産では、双子を授かる確率が上がるといえるでしょう。
不妊治療をすると双子を授かりやすい?
不妊の治療の際、排卵に障害がある場合などに、排卵を誘発する「排卵誘発剤」という薬を使用することがあります。排卵誘発剤を使用すると、1度に複数の卵子が排出されることがあり、複数の卵子がそれぞれ受精して着床すると、双子を授かることになるのです。このことから、不妊治療の際に排卵誘発剤を使用すると、双子を授かる確率は上がるといえるでしょう。
また、体外受精では2個以上の受精卵を子宮に移植することがあるため、この場合にも双子や三つ子を妊娠する確率が上がるといわれています。
近年、不妊治療が普及したことで、双子を授かる人の割合が世界的にも増加傾向となってきています。
引用:厚生労働省 – 多胎児支援のポイント
遺伝は関係ある?
双子を授かる人に遺伝的な特徴はあるのでしょうか?
双子には「一卵性双生児」、「二卵性双生児」があります。
一卵性双生児は、偶然により起こると考えられており、人種の違いなどによっても発生に差異がないことから、遺伝をするものではないと考えられています。
一方で、二卵性の双子の出生は、母親の排卵のメカニズムによる可能性があり、遺伝と関係があると考えられています。

双子の妊娠の頻度は人種によって違う?
一卵性双生児が誕生するのは偶然に起こることなので、人種による頻度の差異はみられません。
一方、二卵性双生児が出生する割合は人種により異なり、黒人種で最も多く、次に白人種、黄色人種が最も少ないと報告されています(ただし、近年普及してきた不妊治療によって人種による双子の出生頻度に変化がみられているとの報告もあります)。
このことからも、二卵性双生児の出生には遺伝が関係していると推測することができます。
流産した後は双子を妊娠しやすくなるって本当?
妊娠すると、子宮内に胎盤をつくる絨毛細胞ができます。流産後は絨毛細胞を子宮からきれいに出さなければ、妊娠率が低下するリスクがあると考えられています。
しかし絨毛細胞がなくなったからといって、流産前より妊娠率が上がるということが医学的に確認されているわけではありません。
流産後も子宮内に絨毛の取り残しがなく、ホルモンの状態が通常に戻っていれば、妊娠の可能性は流産前とほぼ同じとなるでしょう。双子かどうかに関わらず、「流産をすると、子宮内がきれいになるから妊娠しやすくなる」といった話に医学的根拠はないと考えられています。
妊娠の確率には、流産経験の有無よりも年齢の方が大きな影響を及ぼすといえるでしょう。
双子を妊娠するメカニズム
一卵性・二卵性とは
一卵性とは、1つの卵子に対して1つの精子が受精した後、その受精卵が2つに分かれて育つことです。そのため、遺伝子情報はほぼ同じものとなり、血液型、男女の性別も同じとなります。
二卵性とは、2つの卵子に対し、それぞれに別の精子が受精して2つの受精卵が育つことです。そのため、遺伝情報は異なったものとなり、兄弟と同じ関係となります。遺伝的にはおよそ50%が等しくなりますが、血液型や男女の性別は異なる場合があります。
一卵性の双子を自然妊娠する確率
一卵性の双子はほぼ同じ遺伝情報をもっており、
- 血液型や性別は同じ
- 容姿や性格がそっくり
といった特徴があります。
一卵性双生児を自然妊娠する確率は、約0.3〜0.4%といわれています。
一卵性の双子になる原因
一卵性・二卵性の双子のどちらになるのかは、もとの受精卵が1つなのか、または2つなのかによって変わります。
一卵性双生児は、もとは1つの受精卵だったことから、遺伝情報が同じで性別や見た目、性格がほとんど同じということが起こります。
一卵性双生児の遺伝情報は全く同じ?
長い間、一卵性双生児の持つ遺伝情報は100%同じものと考えられてきました。性格などの違いは「どちらが長男でどちらが次男になるか」などの環境による違いである、とされてきたのです。
しかし、最近の研究で、一卵性双生児が持つ遺伝情報は必ずしも100%一致するわけではないことがわかってきました。初期の発生段階で突然変異が起こると、双子の遺伝情報が一致しなくなることが明らかになってきたのです。
2008年2月に米アラバマ大学の研究チームが発表した研究論文、また2021年1月にアイスランドのデコード・ジェネティックスの研究チームによる論文でも、これを裏付ける結果が出ています。
デコード・ジェネティックスの研究チームは、全ゲノムの解析により、「どの突然変異がどの双子で発現し、そのうちのいずれが子に継承されるのか」を調べると同時に「モザイク現象」を調べた結果、突然変異は、受精卵が2つに分かれる前に発現していたことが判明しました。
一卵性双生児の研究は遺伝学において重要な役割を果たしてきましたが、ゲノムの違いについてはほとんど知られていませんでした。しかし今後さらに研究が進むにつれ、双子のさまざまな不思議が徐々に解き明かされていくことでしょう。
二卵性の双子を自然妊娠する確率
二卵性の双子は、それぞれで異なる遺伝情報をもち、
- 血液型や性別は異なる場合もある
- 容姿や性格は一卵性ほどそっくりにはならない
といった特徴があります。二卵性の双子を自然妊娠する確率は一卵性のときよりも少し高く、約1%といわれています。
二卵性の双子になる原因
通常の排卵では、左右どちらかの卵巣から1つの卵子が排出されます。しかし、何らかの理由で左右から1つずつ、またはどちらかの卵巣から2つの卵子が排出される場合があります。2つの卵子がそれぞれ異なる精子と出会って受精すると、受精卵が2つできます。その後、それぞれが無事に子宮内で成長することで、二卵性双生児が生まれます。
双子かどうかはいつわかる?
妊娠している子が双子かどうかは、いつごろ判明するのでしょうか。
妊娠検査薬では「双子である」ということを判別することはできず、双子の妊娠に特有の予兆というものもあるわけではないので、双子の妊娠は病院で診断してもらわなければわかりません。
病院の検査で双子の妊娠を診断できる時期は、一卵性と二卵性とで異なります。
二卵性の場合は、それぞれに異なる胎嚢(たいのう)に入っているため、エコー(超音波)検査による画像診断で妊娠5週目ごろから確認できます。
一方で一卵性の場合は、1つの胎嚢に2人一緒に入っていることがあるので、妊娠初期にエコー検査では確認することはできません。妊娠6週目ごろからは胎児の心拍が聞こえ始めるので、心拍が1人分か2人分かどうかで、双子であるかの判断ができます。
双子の場合、お腹の出方はどうなる?
お腹の中に2人の胎児が入っているので、双子を妊娠中のお腹は1人だけ妊娠しているときよりも大きくなる傾向があります。
単胎妊娠では、妊娠中期(妊娠5か月〜)でも人によっては妊娠中だと気付かれないほど、お腹の大きさに変化がないこともあります。しかし、双子の場合は明らかに「妊婦」とわかるぐらいまで大きくなっていることが多く、「妊娠5か月にしては大きなお腹だ」と驚かれることもあるかもしれません。
単胎妊娠の場合、妊娠8か月ごろから「いよいよ大きくなってきたな」という実感が湧いてくるものですが、双子の妊娠8か月では、すでに臨月並みの大きさになっていることが多いようです。
飛行機などの狭い座席に座る際や、夜眠る際などには、大きなお腹を持て余して苦労するかもしれません。
双子の胎児はお腹の中ではどうなっている?
双子の胎児のお腹での様子は、胎盤(絨毛膜)と胎児を包む羊膜の状態によって、大きく三つに分類することができます。
- DD双胎(2絨毛膜2羊膜双胎):胎盤・羊膜がいずれも2つに分かれている状態
- MD双胎(1絨毛膜2羊膜双胎):胎盤は1つだけで、羊膜が2つに分かれている状態
- MM双胎(1絨毛膜1羊膜双胎):胎盤・羊膜がいずれも1つしかない状態
一番多いのは、二卵性双生児に見られるDD双胎(胎盤・羊膜とも2つ)です。一卵性双生児の場合は、MD双胎(胎盤は1つだけで羊膜が2つ)という状態が一番多くなります。MM双胎はとても珍しく、双子妊娠の1%未満の発生率とされています。
双子に限らず、お腹の中の赤ちゃんは成長すると頭が下にくる頭位の状態になります。双子の場合でも、2人とも頭位が正常の状態ですが、1人だけ頭が上に来ている逆子の状態だったり、横を向いていたりする場合もあります。そのため、双子を妊娠した場合、帝王切開が選択されるケースが多く、自然分娩で出産する方の割合は単胎妊娠より少なくなります。
双子が障害を持つ確率は?
双子の妊娠で起こりやすい合併症には、「子宮内胎児発育遅延」があります。子宮内胎児発育遅延とは、胎児に十分に栄養が行きわたらず、発育が遅延してしまう状態のことです。双子の場合は、母体からくる栄養を2人で分け合っており、1人を妊娠している場合と比較して、赤ちゃんの体重も少なくなる傾向があります。また、栄養がどちらか一方の赤ちゃんに偏ることもあります。
2017年の低出生体重児の割合は以下の通りでした。
- 単胎児:8.17%
- 多胎児:71.65%
2人以上の妊娠で低体重児になる確率は非常に高いことが分かります。
2人以上の妊娠で低体重児になる確率は非常に高いことが分かります。ただし、出生後の発達については、単胎児であっても多胎児であっても、大きな差がでることはありません。
低体重で生まれた赤ちゃんも、3〜6歳ごろには平均値に追いつくことが多いので、気にしすぎる必要はないでしょう。
一卵性・二卵性、障害を持つ確率が高いのは?
双方のリスクを比べると、一卵性双生児の方が障害を持つ確率は高いといえます。なぜなら、一卵性双生児は、上述したMD双胎・MM双胎であったときに、2人で1つの胎盤を分かち合っていることがあり、胎児への栄養供給のバランスに偏りが生じやすいためです。
この原因として、2人が占有する胎盤面積が異なることや、臍帯が絡まっていること、互いの血管が吻合していることなどが考えられます。
MD双胎、MM双胎の場合は、先天性疾患の有病率も単胎児より高いため、精密な検査が重要といえます。
バニシングツインとは
バニシングツインとは、「双胎一児死亡」とも呼ばれ、妊娠初期に双胎児のうちの片方の胎児が死亡した後に母親の子宮に吸収され、消えたようにみえる現象のことです。双胎妊娠の約10~15%で起こると報告されています。
胎児が吸収されるメカニズムについては分かっていません。しかし、バニシングツインを引き起こす原因の多くは、胎児の染色体異常ではないかと考えられています。バニシングツインが起きた場合、生存している片方の胎児には大きな影響はないとされていますが、ごくまれに、死亡した胎児が母体に吸収されず残った児に結合してしまう寄生性双生児となることもあります。
双子が無事に生まれる確率は?
多胎妊娠は、単胎妊娠に比べて様々なリスクが高まるといわれています。
具体的には、以下のようなリスクです。
特に早産が引き起こされる可能性は非常に高く、単胎妊娠の場合は4.7%であるのに対し、多胎妊娠では50.8%です。死産率は減少傾向ではあるものの、単胎妊娠と比較した場合、2倍になるというデータもでています。
特に、2人で1つの胎盤を分かち合っている場合、栄養バランスや血行に偏りが生じたり、臍帯が絡まったりしやすく、心不全などの合併症や低体重、最悪の場合は胎児の死亡にもつながる恐れがあります。
リスクを過度に心配する必要はありませんが、定期健診を怠らないことはもちろん、早産や緊急手術に対応できる病院を選ぶなどの対策はおこなっておきましょう。

双子を妊娠したら、NIPT(新型出生前診断)を受けましょう
双子の場合、特に一卵性双生児の場合は先天性疾患を持つ確率も高くなります。出生前診断では胎児の疾患の有無を出産前に調べることができるので、必要に応じて利用してみましょう。
特にNIPT(新型出生前診断)は、エコー検査で妊娠を確認後すぐに母親から採取した血液のみで、胎児の染色体異常の有無を調べることができます。
ただし、現状では、すべての病院やクリニックで双胎児のNIPT(新型出生前診断)を受けられるわけではないので注意が必要です。
NIPT(新型出生前診断)とは
NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液で赤ちゃんの染色体異常の有無を調べる出生前診断です。非確定診断ではありますが、検査精度が高く、21トリソミー(ダウン症候群)は感度99.9%、特異度99.90%の精度で判別可能です。
採血のみで検査可能なため、流産や死産のリスクを負うことがないのもメリットです。
ヒロクリニックNIPTのNIPT(新型出生前診断)では、双胎児においても全染色体の異性数および、全常染色体全領域部分欠失・重複を調べることができます。
また、ヒロクリニックNIPTのNIPT(新型出生前診断)では、胎児の性別も調べることが可能です。ただし双子の場合はY染色体があるかどうかの判定となりますので、「両方女の子」あるいは「どちらかが男の子」または「両方が男の子」かわかります。
まとめ
双子を授かる人は不妊治療によって増えて来ているといわれていますが、自然妊娠でも双子を授かることはもちろん起こりえます。
双子を授かると一度に2人の赤ちゃんを迎えることができるため楽しみが増えますが、妊娠中のリスクが上がったり、育児の負担も増える傾向にあります。
双子を授かったら、安心して出産できる病院を選び、負担の少ない妊娠生活を心がけることが大切です。
また、お腹の中の赤ちゃんについて心配や不安がある方は、NIPT(新型出生前診断)を始めとする出生前診断を検討してみましょう。
【参考文献】
- 厚生労働省 – 多胎児支援のポイント
- 朝日新聞「ののちゃんのDO科学」 – 双子はおなかでどう育つの?
- 国立成育医療研究センター – 多胎妊娠外来
- Newsweek日本版 – 「一卵性双生児の遺伝情報は同一ではない」ことが明らかになってきた
日本における多胎妊娠の割合は、2017年では1.04%でした。 双子を授かる人に特徴はあるのでしょうか?双子を妊娠する理由やいつわかるのか、障害を持つ確率や出産前に障害の有無を検査する方法などを解説いたします。
記事の監修者
岡 博史先生
【役職】
NIPT専門クリニック医学博士
ヒロクリニック統括院長
【資格】
平成8年 医師免許 取得
平成14年 慶應義塾大学医学博士号 取得
平成15年 皮膚科専門医 取得
平成29年 産業医 取得
【略歴】
平成8年 慶應義塾大学医学部 卒業
平成8年 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 入局
平成11年 川崎市立川崎病院総合心療内科 勤務
平成12年 川崎市立川崎病院皮膚科 勤務
平成14年 慶応義塾大学病院皮膚科 勤務
平成17年 城本クリニック 勤務
平成20年 ヒロクリニック開院・院長就任
平成21年 医療法人社団福美会 設立・理事長就任
【所属】
医療法人社団福美会
【SNS】
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