
「NIPTを受けるべきか、受けないべきか」——外来でも、SNS上でも、この問いに立ち止まる妊婦さんとパートナーは少なくありません。NIPTを受けるかどうかに「正解」はなく、受けない選択も受ける選択も等しく尊重されるべきものです。ただ、そう言われても不安は消えないはずです。
この記事では、意思決定が悩ましい理由、受ける前に整理したい視点を解説します。陽性後の実際のデータ、母親たちの心理的な負担も取り上げます。ネット上の不安をあおる情報に振り回されず、ご夫婦で話し合うための土台にしてください。
この記事でわかること
- NIPTを受けるかどうか、多くの妊婦さんが悩む本当の理由
- 受ける前に整理したい3つの視点(何がわかるか・夫婦の価値観・期限)
- 「受けない」という選択も対等であること
- 陽性後の意思決定をめぐる実際のデータと数字の読み方
- 母親たちの心理的な負担と、ひとりで抱え込まないための相談先
NIPTを受けるかどうか、なぜこんなに悩むのか
NIPTの意思決定が難しいのは、費用・時間の制約・結果が突きつける現実という3つの負担が同時にのしかかるためです。「する・しない」だけの単純な二択に見えて、実際にはさまざまな不安が絡み合っています。
実際にX(旧Twitter)でも、迷いの声が数多く見られます。あるユーザーの@onmachannnさんは「NIPTどうするか悩んでたんだけどしなくていいかなという結論に至った気がする」と綴っていました。
「分かる病気が限定的すぎるのと、それに対して費用が我が家的には高い」とも記していました。費用と検査範囲を天秤にかけ、迷いながら結論を出す過程がよく表れています。
別のユーザーの@chunlu28さんも「どうしても悩んでしまって、皆さんの考え知りたいです」と、周囲の意見を求めていました。私自身、外来で同じような相談を毎日のように受けます。「受けたほうが安心か、受けないほうが穏やかか」という問いに、唯一の正解はありません。まずは何がわかる検査なのかを整理することから始めましょう。
受ける前に整理したい3つの視点
意思決定の土台になるのは、検査でわかることの範囲・夫婦としての価値観・受けられる期限という3つの視点です。順番に見ていきます。
視点1:NIPTで何がわかり、何がわからないか
NIPTでわかるのは、21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーなど、染色体の数の変化に起因する疾患が中心です。一方で、染色体の変化を伴わない発達障害や自閉スペクトラム症そのものを診断する検査ではありません。
この境界線を誤解したまま受けると、結果を見たときの戸惑いが大きくなります。詳しい範囲と限界はNIPTで発達障害・自閉症はわかる?検査の限界と遺伝の真実で整理しています。
視点2:夫婦としてどこまで知りたいか
「わかるなら知っておきたい」という考えと、「結果に振り回されたくない」という考え、どちらも自然な感情です。パートナーと価値観がずれている場合ほど、検査を受ける前の対話が欠かせません。
視点3:受けられる期限はいつまでか
NIPTには推奨される週数の目安があり、迷っているうちに時間切れになるケースもあります。実際に@ninkatsu1ataさんは「カウンセリング受けてしっかり考えて受けるかどうか決めたいのに受けれる日も限られてて」と、期限に追われる焦りを投稿していました。
検査を受けられる週数の目安はNIPTはいつまで?推奨は15週までにまとめています。迷っている段階でも早めの情報収集が、選択肢を狭めない鍵になります。
「受けない」という選択も、対等に選べます
NIPTを受けない選択は、受ける選択と同じ重みで尊重されるべきものであり、遠慮する必要はありません。この前提を知っておくだけで、意思決定の心理的な負担はかなり軽くなります。
出生前検査の非指示性(どちらの選択にも誘導しないという原則)を訴える声も見られます。@junmurotさんは「出生前検査では受ける受けないの選択はまったく対等です。受けないと決めた妊婦にも継続して支援が必要なのです」と指摘していました。この非指示性の原則は、日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会の指針でも重視されています。
「みんな受けているのだろうか」という周囲の目を気にして悩む方も多いはずです。しかし、受ける・受けないの判断基準は家庭ごとに違って当然。年齢、既往歴、これまでの妊娠経過、そして何より夫婦としてどう向き合いたいかによって、答えは変わります。誰かの選択と自分の選択を比べる必要はありません。
陽性という結果が出たら——意思決定と実際のデータ
陽性という結果を受けた後の意思決定は非常に重く、実際のデータでも約8割の方が妊娠中断を選んでいる現実があります。数字を知っておくことは、決断を急かすためではなく、ひとりで抱え込まないための準備になります。
日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会が公表した約10万人の追跡調査があります。NIPTで陽性となり羊水検査などで疾患が確定した症例について、染色体ごとの内訳は次のとおりです(出生前検査認証制度等運営委員会「NIPTを受けた10万人の妊婦さんの追跡調査」)。
| 染色体疾患 | 確定症例数 | 妊娠中断数 | 中断の割合 |
|---|---|---|---|
| 21トリソミー(ダウン症候群) | 1,034例 | 899例 | 86.9% |
| 18トリソミー | 490例 | 297例 | 60.6% |
| 13トリソミー | 100例 | 65例 | 65.0% |
| 合計 | 1,624例 | 1,261例 | 77.6% |
18・13トリソミーで割合がやや低いのは、胎児がお腹の中で亡くなる自然経過が一定数含まれるためと考えられます。
あわせて、陽性的中率にも触れておきます。同調査では21トリソミーで97.3%、18トリソミーで88.0%、13トリソミーで54.3%という陽性的中率が報告されています。対象となる染色体によって、精度に幅があることがわかります。
NIPTは非確定的検査であり、陽性が出ても確定には羊水検査などが必要です。偽陽性の仕組みはNIPT陽性=確定ではない。偽陽性の仕組みと確定診断ガイドで詳しく解説しています。
母たちの心理的な負担と、実情から見えてくること
NIPTの結果と向き合う母親には、身体的な負担以上に精神的な負担がかかり、行政や医療機関からの継続的なケアが欠かせません。数字の裏側には、ひとりひとりの重い決断があります。
日本産科婦人科学会の調査でも、NIPT受検者の多くが検査前後に強い不安を経験していると報告されています(厚生労働省「NIPT受検者のアンケート調査の結果について」)。実際にX上では、悩む妊婦さんへ向けた温かい言葉も見られました。
@zun180mgさんは「出生前診断うけるも、産むも産まないも好きにきめたらいい。誰がなんと言おうとあなたの人生はあなたが決めるべき」と発信していました。他人の物差しではなく、自分たち家族の物差しで決めていい——この姿勢が、負担を軽くする第一歩になります。
もちろん、迷いが晴れないまま日々が過ぎていく方もいます。@popopopndaさんは「出生前診断受けるか、迷う。何があっても産むとは言い切れないけど、せっかく来てくれた命だもんね」と揺れる胸の内をつづっていました。私も外来で、同じように気持ちが行き来する方を数多く見てきました。迷い続けること自体、決して悪いことではありません。
「生まれてくる子に健康に育ってほしい」というのは、多くの母親に共通する願いです。だからこそ、胎児に染色体疾患の可能性が見えると、孤独で重い責任を背負い込みやすくなります。周囲のサポートの有無が、そのあとの心の回復にも大きく影響します。
ひとりで決めないために——遺伝カウンセリングと夫婦の対話
意思決定を支える最大の土台は、正確な情報と、遺伝カウンセラーやパートナーとの対話です。ひとりで抱え込まず、専門家の力を借りることが結果的に心の余裕につながります。
遺伝カウンセリングでは、NIPTの知識を深めたり、胎児の状態を相談したりできます。陽性が判明した場合の選択を、一緒に考えることもできます。出産を選ぶ場合は、その後の育て方や支援制度のアドバイスも受けられます。妊娠中の情緒的な波との付き合い方は妊娠中の情緒不安定と上手に付き合う方法で取り上げています。公的な障害児支援の全体像はこども家庭庁の障害児支援のページでも確認できます。
夫婦での対話も欠かせません。「受けるかどうか」「結果をどう受け止めるか」を、検査の前にできるだけ具体的に話し合っておくと、いざ結果が出たときの混乱を小さくできます。一人で情報を抱え込まず、パートナーや専門家と分担して考える姿勢が、長い目で見て家族の負担を軽くします。
ヒロクリニックNIPTでできること
ヒロクリニックNIPTは、検査前のご相談から結果説明、陽性時のサポートまでを一貫して行う出生前検査の専門クリニックです。迷っている段階からのご相談も歓迎しています。NIPTは、かつての日本産科婦人科学会指針から日本医学会の新しい認証制度へ運用が移行しており、当院もその枠組みのもとで検査を提供しています。
これまでの検査実績は75,000件以上。国内の検査機関(東京衛生検査所)で検査するため、最短2〜5日というスピード報告が可能です。年齢制限はなく、紹介状も不要。産婦人科専門医・小児科専門医・臨床遺伝専門医が連携し、医師による遺伝カウンセリングを行っています。
陽性という結果が出た場合も、そこで終わりにはしません。他院での羊水検査にも適用できる費用補助制度を用意し、確定検査後の選択についても継続してサポートします。どのプランが合うか迷う方は、まずはLINEでの無料相談からお気軽にどうぞ。
よくある質問(FAQ)
外来でよくいただく質問に、簡潔にお答えします。気になる項目から読み進めてください。
NIPTを受けるかどうか、いつまでに決めればいいですか?
施設によって推奨される週数は異なりますが、目安は妊娠15週前後までです。カウンセリング予約から結果報告までに時間がかかるため、迷っている段階でも早めに情報収集を進めてください。
NIPTを受けない選択をしても問題ありませんか?
問題ありません。受ける・受けないのどちらも対等な選択であり、非指示的な立場が原則です。受けない場合も、必要なときにはいつでも相談できる体制が整っています。
NIPTで陽性が出たら、必ず妊娠を中断しなければなりませんか?
そのようなことはありません。データ上は中断を選ぶ方が多い傾向にありますが、最終的な選択はご夫婦の判断に委ねられます。NIPTは非確定的検査のため、まず確定検査と遺伝カウンセリングで結果の意味を正確に把握することが先決です。
NIPTの結果をパートナーや家族にどう伝えればいいですか?
結果を受け取る前から、伝え方や共有範囲について話し合っておくと安心です。遺伝カウンセラーが同席する場で一緒に説明を受ける方法も選べます。
ひとりで抱えきれないときは、誰に相談すればいいですか?
まずは検査を受けた医療機関の遺伝カウンセラーや担当医に相談してください。パートナーや家族に加え、行政の相談窓口も利用できます。
NIPTで知的障害や発達障害はすべてわかりますか?
すべてはわかりません。NIPTでわかるのは染色体の数の変化に起因する一部の疾患に限られ、染色体異常を伴わない発達障害や自閉スペクトラム症は検査の対象外です。
まとめ
NIPTを受けるかどうかに、唯一の正解はありません。費用・検査でわかる範囲・期限という3つの視点を整理したうえで、受ける選択も受けない選択も、等しく尊重される権利です。陽性という結果が出た場合の意思決定は重く、実際のデータでも約8割が中断を選んでいる現実があります。それでも、その先の選択はあくまでご夫婦のものです。
大切なのは、正確な情報と、ひとりで抱え込まない相談体制。遺伝カウンセラーやパートナーと対話を重ね、ご自身たちのペースで結論を出してください。私たちヒロクリニックNIPTは、迷っている段階から結果が出たあとまで、一貫して寄り添います。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を持つ。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関・学会の情報を参照して作成しています。記載の数値は文献により幅があり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
Q&A
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QNIPT(新型出生前診断)で自閉症がわかりますか?NIPTでは自閉症を直接的に検出することはできません。自閉症は遺伝的要因のみならず、環境的要因も関与する複雑な発達障害であり、現在の技術では出生前に診断することは難しいです。
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QNIPT(新型出生前診断)で知的障害がわかることはありますか?NIPTでは、ダウン症候群など一部の知的障害を伴う可能性がある染色体異常を検出することができます。しかし、すべての知的障害やその原因を特定することはできません。
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QNIPT(新型出生前診断)で検出できない障害はありますか?NIPTでは主に染色体異常を検出しますが、環境因子による障害、自閉症を含む発達障害は検出できません。
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QNIPT(新型出生前診断)でどのような障害がわかりますか?ヒロクリニックでは、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)などの1番~22番の全染色体検査、全常染色体全領域部分欠失疾患、4種類の微小欠失症候群が検出できます。
詳しくはこちら -
Q出生前診断で染色体異常が陽性だった場合、中絶率はどれくらいですか?日本で行われたNIPTの調査では、21トリソミーで約87%、18トリソミーで約60%、13トリソミーで約68%の妊婦さんが中絶を選択しています。
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Q中絶率が高い背景にはどのような理由がありますか?胎児の染色体異常が陽性の場合、重篤な障害や短命の可能性があるため、妊婦やその家族が出産後の生活への影響を考慮して中絶を選択するケースが多いとされています。
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Q21トリソミー(ダウン症候群)の陽性診断後、中絶率はどれくらいですか?21トリソミーが陽性と診断された場合、中絶率は約87%に達すると報告されています。
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Q18トリソミー(エドワーズ症候群)や13トリソミー(パトウ症候群)の中絶率が低い理由は何ですか?18トリソミーや13トリソミーは流産率が高く、妊娠中に自然に終結する場合が多いため、中絶率が相対的に低くなる傾向があります。
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Q中絶率は年齢によって異なりますか?年齢が高くなるほど、染色体異常の陽性率が上昇し、それに伴い中絶率も高くなる傾向があります。特に40歳以上では、中絶を選択する割合が高いとされています。
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Q中絶率に地域差や文化的要因は影響しますか?中絶率には地域や文化、宗教的背景が大きく影響します。日本では中絶率が高い傾向にありますが、宗教的信念が強い地域では出産を選択するケースが多いとされています。
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Q出生前診断後の中絶率を低くするためのサポートはありますか?遺伝カウンセリングや心理的支援が中絶率の低下に寄与する可能性があります。専門家と相談することで、家族がより多くの情報を基に判断できるようになります。
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Q中絶を選択する家庭が感じる最大の負担は何ですか?中絶を選択した家庭は、倫理的な葛藤や心理的な負担を抱える場合が多く、精神的なサポートが重要となります。
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Q出生前診断で陽性だった場合、中絶以外の選択肢はありますか?陽性の場合でも出産を選択し、適切な医療やケアを準備する家庭もあります。医療施設と連携し、支援体制を整えることが可能です。
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Q中絶率を減少させるために必要な社会的対応は何ですか?出生前診断の結果について理解を深めるための教育や、障害児育児への経済的支援、地域でのサポート体制の充実が必要です。
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Q中絶率は非認証施設で受けた場合と認証施設で受けた場合で違いがありますか?認証施設と非認証施設の間で中絶率に大きな違いはないとされています。ただし、非認証施設ではより広範な検査が可能なため、判断に影響する場合があります。
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Q出生前診断で陰性と判定された場合、中絶率に影響はありますか?陰性の場合、通常中絶の選択肢は考慮されません。ただし、診断結果が誤っている可能性を考慮するケースもわずかにあります。
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Q出生前診断による中絶率は減少傾向にありますか?日本では中絶率に大きな変化は見られませんが、遺伝カウンセリングの普及や支援体制の強化により、選択肢が広がりつつあります。
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Q中絶を決断するまでの猶予はどのくらいありますか?日本の法律では、中絶は妊娠21週6日まで認められています。そのため、出生前診断の結果を受けた後、早急に検討する必要があります。
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Q出生前診断を受けた後、すぐに中絶を決断する必要がありますか?決断には一定の時間が与えられますが、確定診断(羊水検査など)が必要な場合は、検査や結果の時期を考慮して早めの決断が求められます。
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Q中絶を選択しない家庭が出生前診断を受ける理由は何ですか?中絶を選択しない家庭でも、出生前診断を受けることで胎児の健康状態を把握し、出産や育児に備えるために利用しています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

