人工妊娠中絶について【医師監修】

人工妊娠中絶について

日本で中絶が可能なのは妊娠21週6日までです。妊娠初期(12週未満)での中絶は母体の負担が少ないですが、妊娠中期での中絶は入院が必要で体に大きな負担がかかります。中絶を選ぶ可能性のある方は、出生前診断結果を21週6日までに確認することが必要です。

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出生前診断と中絶

出生前診断を受けるにあたって避けて通れないのは、「万が一結果が陽性だった場合に、中絶をするかどうか」です。

事前に中絶についての正しい知識を学び、いざというときの方針について夫婦で相談しておくことはとても大切なことです。

その時が来ても慌てないように、しっかりと勉強しておきましょう。

人工妊娠中絶とは

人工妊娠中絶(堕胎:だたい)とは、手術をして妊娠を人工的に中断させることです。

日本では、基本的には刑法によって堕胎罪が定められ、許可のない中絶は禁止されています。

母体が危険な場合などについては、例外的に母体保護法による中絶が認められていますが、中絶ができる条件や期間などが厳密に定められています。

人工妊娠中絶をできる時期

2021年7月現在、日本で中絶を行うことができる時期はである妊娠21週6日までに限られています。

人工妊娠中絶ができる条件

母体保護法が認める正当な中絶理由として、2021年7月現在では下記の2項目のみが認められています。

l  妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの

l  暴行もしくは脅迫によって、または抵抗もしくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

2021年7月現在では胎児の病気を理由とした中絶は認められていないため、出生前診断の結果を元に中絶を行う場合は、経済的な理由を挙げるケースがほとんどです。

中絶手術の実施には、基本的には本人と配偶者(パートナー、胎児の父親)の同意が必要となります。

中絶手術を実施できるのは、母体保護法により指定された『指定医師』のみです。

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中絶手術の方法

人工妊娠中絶の方法は、妊娠週数によって大きく異なります。

妊娠初期の中絶は、子宮から胎児を機械的に取り出します。

妊娠中期の中絶は通常の分娩と同じ形で行われます。

いずれの方法も、健康保険の適用にはなりません。

ちなみに海外では薬による中絶ができる国もありますが、日本では危険性があるとして使用は認められていません。

妊娠初期(妊娠12週未満)での中絶

妊娠初期での中絶は、胎児を含めた子宮の内容物を無理やり取り去る子宮内容物除去術と呼ばれる方法をとります。

掻爬(そうは)法(小さなスプーンのような器具で子宮の内容物をかき出す方法)と吸引法(吸引器を用いて子宮の内容物を吸い出す方法)の2つがあります。

どちらの方法も、子宮口を開く処置を行った後、静脈麻酔をしてから子宮の内容物を取り去ります。

手術時間は通常10〜15分程度です。

痛みや出血も少ないので、数時間経過を見て問題なければその日のうちに帰宅が可能です。

妊娠初期での中絶に必要な費用は、検査費・手術費なども合わせておよそ10〜15万円程度です。

妊娠中期(妊娠12週~妊娠22週未満)での中絶

妊娠中期での中絶は、子宮口を開く処置を行った後に薬で陣痛を無理やり引き起こし、強制的に胎児を出産する人工流産と呼ばれる方法が取られます。

体に負担がかかるため、通常は数日間の入院が必要となります。

妊娠12週以降に死産した胎児は、墓地埋葬法に規定して死体として火葬するよう定められています。

そのため、中絶後は死産届と埋火葬許可が必要になります。

妊娠中期での中絶に必要な費用は40〜60万円程度と高額になります。

これは手術費・入院費に加えて、火葬費用なども必要となるためです。

ただし、妊娠中期での中絶は分娩という扱いになるため、出産一時金(40万円程度)がもらえることがあります。

中絶手術が母体に与える影響

人工妊娠中絶手術は、基本的には安全な手術です。

手術が終わって時期が来れば、子宮は妊娠前と同じような状態に戻ります。

次の生理は中絶手術後1ヶ月程度で来ることが多いです。

ただし中絶手術の合併症や、中絶したことに対する精神的負担などからホルモンバランスが崩れ、不妊となる方がまれに見られます。

中絶手術そのものの合併症

中絶手術の合併症としては、子宮の中に胎児や胎盤などを取り残す遺残(いざん)や、子宮に穴が開く子宮穿孔(しきゅうせんこう)などがあります。

子宮穿孔を起こした場合は穴から細菌がお腹の中に漏れて腹膜炎となり、緊急手術が必要となることがあります。

いずれも頻度は非常にまれです。

中絶が次の妊娠に与える影響

中絶手術で合併症が起きると、次の妊娠に影響することはあり得ます。

ただし合併症が起きる確率自体が極めて低く、手術で大きなトラブルがなければ不妊になる可能性はほとんどありません。

ただし合併症がなくても、複数回の中絶手術の後は癒着が起こるため、不妊の原因となることがまれにあります。

出生前診断と中絶の関係

高齢出産が増えるにつれて、生まれつき病気を持っている先天性疾患児の出生が増えています。

特にダウン症(21トリソミー)を中心とした常染色体数的異常は、母体の年齢が40歳を超えると発生率が飛躍的に上がるため、出生前診断を受ける人の数も大幅に増えています。

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出生前診断の種類

出生前診断には、NIPT(新型出生前診断)を代表とする非侵襲的検査と、羊水検査や絨毛生検などの侵襲的検査(確定診断)があります。

NIPT(新型出生前診断)は妊娠10週0日から実施可能ですが、先天性疾患の可能性が高いと判定された場合は羊水検査などでの確定診断が望まれます。

ただし羊水検査が実施可能なのは妊娠15〜16週以降、絨毛検査は妊娠11〜14週以降と、いずれも妊娠中期に入らなければ実施できません。

また羊水検査や絨毛検査自体で流産する確率が0.2〜1%前後あることも重要なポイントです。 

出生前診断の結果から中絶を選ぶ人の割合

新型出生前診断検査の臨床研究を行っていた共同研究組織NIPTコンソーシアムがまとめた集計では、2013年4月からの1年間で検査を受けた7,740人中、142人(1.8%)が染色体異常の疑いがある陽性と判定されました。

そのうち113人が羊水検査などで染色体異常が確認されました。

その結果、113人中110人(97%)が人工妊娠中絶を選びました。

残る3人のうち2人は流産し、他1人はダウン症と判明したものの出産を決めたと発表されています。

妊娠21週までに出生前診断結果の確認を

妊娠22週目を過ぎた場合は、妊娠後期と呼ばれます。

この時期に入ると妊婦の申し出による中絶は法的に認められておらず、どのような手段をもってしても胎児の救出が不可能だと判断されたときのみ中絶が行われます。

そのため、出生前診断の結果によって中絶を選ぶ可能性がある方は、遅くとも21週6日までに出生前診断の結果を確認する必要があります。

新型出生前診断と中絶

NIPT(新型出生前診断)を利用した場合は妊娠12週以内に結果を確認することもできるため、より母体に負担の少ない妊娠初期に中絶を行うことも可能です。

ただしNIPT(新型出生前診断)の精度は羊水検査よりも低いため、本来であれば陰性だったかもしれない胎児を中絶で失うリスクがあります。

出生前診断を受ける場合には中絶について考えておこう

高齢出産や兄弟姉妹が染色体疾患などの理由で出生前診断を受ける人が増えています。

出生前診断を受けるという人は、胎児に染色体異常があれば中絶することも考えている人がほとんどです。

結果が出てから慌てないように、陽性だった場合にどうするのか、事前に夫婦で話し合って方針をしっかり考えておきましょう。

羊水検査の前に血液検査だけでダウン症を診断

【参考文献】

日本で中絶が可能なのは妊娠21週6日までです。妊娠初期(12週未満)での中絶は母体の負担が少ないですが、妊娠中期での中絶は入院が必要で体に大きな負担がかかります。中絶を選ぶ可能性のある方は、出生前診断結果を21週6日までに確認することが必要です。

羊水検査について詳しく見る

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記事の監修者

白男川 邦彦先生

白男川 邦彦先生

ヒロクリニック名古屋駅前院 院長
日本産婦人科学会専門医

産婦人科専門医として40年近くにわたる豊富な経験を持ち、多くの妊婦さんとかかわる。
現在はヒロクリニック名古屋駅前院の院長としてNIPTの検査担当医を行う一方、全国のヒロクリニック各院からのオンラインで妊婦さんの相談にも乗っている。

経歴

1982年 愛知医科大学付属病院
1987年 鹿児島大学附属病院 産婦人科
1993年 白男川クリニック 院長
2011年 かば記念病院
2019年 岡本石井病院
2020年 ヒロクリニック名古屋駅前院 院長

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