出生前診断でダウン症と分かったら?倫理的問題や中絶の法律を解説【医師監修】

出生前診断でダウン症と分かったら?

出生前診断は、出生前にダウン症などの赤ちゃんの病気を知れる一方、中絶の判断材料になるのではといった倫理的な問題が残っています。本記事では出生前診断の倫理的課題や法律、中絶を選んだ方の理由などを解説していきます。

妊娠15週目までの方はまだ間に合います
気になるNIPTの費用について

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出生前診断とは

出生前診断とは、お腹の中にいる赤ちゃんに先天性の異常があるかどうかを調べる検査のことです。

出生前診断には以下のような方法があります。

母体血清マーカー、NIPT(新型出生前診断)、胎児ドックは胎児への侵襲が少ない一方、確定診断はできないため『非確定検査』と呼ばれています。

羊水検査と絨毛検査は、子宮に穿刺をするため胎児へのダメージが懸念されますが、確実な診断結果が得られるため『確定検査』と呼ばれています。

出生前診断のメリットは、赤ちゃんの状態を事前に知ることで、出産後の準備や将来の予測がしやすくなるという点です。

NIPT(出生前診断)とは
NIPT(出生前診断)とは
新型出生前診断(NIPT)とは、「お母さんから採血した血液から胎児の、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、1...

出生前診断で分かる病気

出生前診断で分かる病気には、以下のような先天性疾患があります。

  • 奇形・変形などの形態異常
  • ダウン症候群
  • エドワーズ症候群
  • パトウ症候群
  • ターナー症候群
  • トリプルX症候群
  • クラインフェルター症候群
  • ヤコブ症候群 など

奇形・変形などの形態異常は、お子さんの健康状態や輸血などの状況を評価し、手術で治療するのが基本です。

一方のダウン症候群やエドワーズ症候群などの染色体異常症は、手術や薬による治療ができません。

中でも1番症例数が多いのがダウン症候群で、ダウン症をもつ赤ちゃんの年間出生数は推定2200人ほどです。

高齢出産になればなるほど、赤ちゃんが染色体異常を持って生まれてくる確率は高くなると言われています。

ダウン症とは

人は、2本1組の染色体を全部で23組持って生まれてきます。

ダウン症とは、このうち21番目の染色体が1本多く生まれてくる病気の事です。

通常2本の21番染色体が3本で生まれてくることから、『21トリソミー』とも呼ばれています。

ダウン症の子どもの特徴は、以下の通りです。

  • 頭は小さめ
  • 鼻が低く、顔は平坦
  • つり目で耳が小さい
  • 顔の筋肉が弱いので口を開けていることが多い
  • 身長が低い
  • 心臓などの病気を併発することが多い
  • IQは平均よりも低いことが多い
  • 注意欠如や多動症が見られることが多い
  • 対人関係が苦手、こだわりが強いといった自閉症状が出やすい など

ダウン症の赤ちゃんは、お腹の中にいる時から首が厚くなったり、鼻骨の形成が遅くなったりするなどの特徴が現れます。

母親の採血だけで完了する非確定診断のNIPT(新型出生前診断)では、99%以上の確率で検出が可能です。

ダウン症(21トリソミー)の特徴や検査方法について解説【医師監修】
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出生前診断と人工妊娠中絶

出生前診断はあくまで産後の育児計画を立てやすくするものですが、診断結果をもとに妊娠の継続や中絶を判断する方がいらっしゃるのも事実です。

中絶は正式には『人工妊娠中絶』と言い、赤ちゃんが母体外で生命を維持できない時期に、人工的に赤ちゃんを母体外に排出することを指します。

中絶手術が受けられるのは妊娠22週未満までです。

妊娠12週未満の場合、『掻爬(そうは)法』という子宮内をかき出す方法、もしくは『吸引法』という子宮内を器械で吸い出す方法が行われます。

妊娠12週~22週未満の場合、人工的に陣痛を起こして流産させる方法をとります。

妊娠12週以降で中絶手術を受けた場合は、赤ちゃんの死産届の提出と、埋葬許可証が必要です。

法律で認められていない中絶は堕胎罪になる

日本では、中絶できる条件が『母体保護法』によって定められています。

母体保護法14条によると、中絶手術が行えるのは以下の条件に該当する場合です。

  1. 妊娠の継続又は分娩が身体及び経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあるもの
  2. 暴行若しくは脅迫によってまたは抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

条件に当てはまる場合、医師会からの指定を受けた医師のみが、本人と配偶者の同意を受けて人工中絶手術を行えます。

配偶者が分からない場合や、配偶者の意思確認ができない場合は、配偶者の同意は必要ありません。

上記の条件を満たさない中絶は、刑法により堕胎罪に問われることになります。

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出生前診断の倫理的問題

人工妊娠中絶は母体保護法の条件下で認められているとはいえ、出生前診断には倫理的な問題がいくつかあります。

まず1つ目は、病気の有無が中絶の判断材料になる可能性が高いという点です。

出生前診断で赤ちゃんの病気が判明すると、生まれる前から赤ちゃんの可能性を判断してしまうこともあります。

「病気の有無で生命に優劣を付けているのではないか」といった声があるのも事実です。

2つ目は、病気が判明した後のクリニックのサポート体制が整っていないことがあるという点です。

残念ながら、検査をして赤ちゃんの病気が判明した後、サポートが何もないというクリニックもあります。

出生前診断は両親の『知る権利』を守る重要な手段である一方、子どもの命と両親の心をどう守っていくかも重要な課題です。

出生前診断で中絶を選んだ人の理由

出生前診断を受けた方に関するレポートは多数存在しますが、中には実際に中絶を選んだという方もいます。

中絶を選んだ理由は各家庭で様々です。

  • 年齢や家庭環境を考えると、障害がある子を育てる経済的余裕がなかった
  • 生まれた後の将来や病気の予後を考えると、子どもが幸せになると思えなかった

など、様々な要因が絡み合い、中絶という決断に至っています。

確実に言えることは、どのご家庭でも相当の葛藤を経て決断に至っているということです。

自分の中で理由を納得させたつもりでも、多くの方は中絶後に後悔の念や孤独感に苛まれます。

出産後の問題だけではなく、中絶後の問題も考え、慎重に決断することが重要です。

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出生前診断を受ける前に確認すべきこと

出生前診断は両親の『知る権利』を守ってくれる検査である一方、知ってしまった後どうするかという点も考えておかなければなりません。

出生前診断で赤ちゃんの病気が判明しても落ち着いていられるよう、以下の3つを確認しておくようにしましょう。

1. 出産前診断後のサポートの有無

出生前診断を実施しているクリニックには、検査のみを実施して病気判明後のサポートは何もしてくれないところもあります。

しかし、出生前診断後の両親には、確定診断や精神的なサポート、カウンセリングといった様々なケアが必要です。

検討しているクリニックで、出生前診断後にどのようなサポートを行っているか確認しておきましょう。

2. 出産後の社会的サポートの内容

出生前診断で赤ちゃんの病気が判明した場合、出産した後のイメージをしておくことが大切です。

中でも、治療や介護にかかる費用は両親の心配の種でしょう。

日本では障害がある子に対して様々な福祉サービスを用意しています。

障害の程度によって毎月補助金をもらえる『特別児童扶養手当』や、優先的に保育園に入れる『療育手帳』などが利用可能です。

自治体によって提供しているサービスは異なるので、詳しくは役所に直接問い合わせてみましょう。

3. 障害を持つお子さんのご両親のお話

出生前診断で赤ちゃんに病気があることが分かると、落胆してしまうご両親は多いです。

しかし、実際は障害を持つお子さんの子育てを楽しんでいる方もたくさんいらっしゃいます。

自分が悲観的に受け止めていたことでも、他の人は前向きに捉えていることは多々あるものです。

今はインターネットで様々な事例を知ることができますので、他の親御さんの子育て方法を知り、極端に悲観的にならない心構えを作っておきましょう。

まとめ

出生前診断は、赤ちゃんの病気の有無を出産前に知ることができる検査です。

出産前に適切な準備ができる一方、中絶の判断材料になるのではといった倫理的な問題が残っています。

中絶は母体保護法の条件下で認められているものの、中絶後は多くの方が後悔と孤独感に苛まれます。

出生前診断を受ける際は本記事を参考にしっかりと準備を行い、冷静な判断ができるようにしておきましょう。

妊娠18週目までの方はまだ間に合います

出生前診断は、出生前にダウン症などの赤ちゃんの病気を知れる一方、中絶の判断材料になるのではといった倫理的な問題が残っています。本記事では出生前診断の倫理的課題や法律、中絶を選んだ方の理由などを解説していきます。

羊水検査について詳しく見る

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記事の監修者

川野 俊昭先生

川野 俊昭先生

ヒロクリニック博多駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医

産婦人科医として25年以上、主に九州で妊婦さんや出産に向き合ってきた。経験を活かしてヒロクリニック博多駅前院の院長としてNIPT(新型出生前診断)をより一般的な検査へと牽引すべく日々啓発に努めている。

略歴

1995年 九州大学 医学部卒業
1995年 九州厚生年金病院 産婦人科
1996年 九州大学医学部付属病院 産婦人科
1996年 佐世保共済病院 産婦人科
1997年 大分市郡医師会立アルメイダ病院 産婦人科
1998年 宮崎県立宮崎病院 産婦人科 副医長
2003年 慈恵病院 産婦人科 医長
2007年 日本赤十字社熊本健康管理センター診療部 副部長
2018年 桜十字福岡病院 婦人科
2020年 ヒロクリニック博多駅前院 院長

資格

日本産科婦人科学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
厚生労働省認定臨床研修指導医
日本抗加齢医学会専門医

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