不育症とは?原因や治療方法などを解説【医師監修】

不育症とは?原因や治療方法などを解説 ハート 女性

不育症では妊娠と流産・死産を繰り返し、精神的に追い込まれたり辛い思いをすることがあります。原因が不明ということも多く、自責してしまう妊婦さんもいらっしゃいます。今回は不育症について詳しく解説します。

血液検査だけでわかるダウン症検査
気になる費用をチェック

血液検査だけでわかるダウン症検査
気になる費用をチェック

この記事のまとめ

不育症は、妊娠は成立するのに流産や死産を2回以上くり返してしまう状態を指し、その多くは偶然に重なった流産のため、ご自身を責める必要はありません。主なリスク因子には、抗リン脂質抗体、子宮の形の異常、ご夫婦いずれかの染色体、内分泌の病気、血液が固まりやすい体質(血栓性素因)などがあります。原因を調べる検査と、抗凝固療法などの治療で、次の妊娠につながる道が見えてきます。日本には約3万人の方がいるとされ、決して珍しいことではありません。不安を一人で抱え込まず、産婦人科や公的な相談先を頼ってください。

この記事でわかること

  • 不育症とは何か、どのくらいの人に起こるのか
  • 抗リン脂質抗体・子宮形態・染色体・内分泌・血栓性素因という主なリスク因子
  • 原因を調べる検査と、抗凝固療法などの治療の考え方
  • 次の妊娠への希望と、つらいときに頼れる相談先

不育症とは|妊娠は成立するのに流産をくり返す状態

不育症とは、妊娠は成立するものの、流産や死産を2回以上くり返してしまう状態のことです。妊娠しにくい「不妊症」とは区別されます。日本産婦人科医会は、2回以上の流産(妊娠22週未満)・死産(妊娠22週以降)の既往がある場合を不育症としています。まずは、その定義と頻度から見ていきます。

異所性妊娠(子宮外妊娠)や胞状奇胎、生化学的妊娠(化学流産)は、流産の回数に数えません。すでにお子さんがいる方でも、その後に2回以上の流産・死産があれば不育症に含まれます。妊娠のたびに悲しい思いをくり返す状態。言葉の重さを、私も相談の現場で痛感してきました。

不育症とは 妊娠は 成立する 流産・死産を 2回以上 くり返す 不育症 日本には約3万人がいるとされ、決して珍しくありません
不育症の考え方(妊娠は成立するが流産・死産をくり返す状態)

どのくらいの人に起こるのか

不育症は、決してまれなことではありません。日本には約3万人の方がいると推定されています。流産そのものは、妊娠全体の約15%で起こるとされ、その多くは防ぎようのない偶然です。だからこそ、くり返してしまっても、ご自身の生活や努力が足りなかったからではありません。

妊娠初期のからだの変化に不安を感じる方は、妊娠初期症状の解説記事もあわせてご覧ください。小さな変化の一つひとつに、心が揺れる時期。知識が、少しだけ気持ちを支えてくれます。

不育症の主なリスク因子

不育症のリスク因子には、抗リン脂質抗体、子宮形態の異常、ご夫婦いずれかの染色体、内分泌の病気、血液が固まりやすい体質(血栓性素因)などがあります。ただし、いちばん多いのは偶発的な流産のくり返しと、原因不明のケース。その割合は全体の6割を超えると報告されています。順に整理していきます。

2019年の調査では、抗リン脂質抗体陽性が約8.7%、子宮形態異常が約7.9%、甲状腺機能の異常が約9.5%、ご夫婦いずれかの染色体異常が約3.7%とされています。これに対し、偶発的流産(胎児の染色体異常)と原因不明を合わせると、約65%にのぼります。多くは偶然の重なり。この事実が、少し肩の力を抜く助けになればと思います。

不育症の主なリスク因子 抗リン脂質抗体 子宮形態の異常 染色体 内分泌の病気 血栓性素因 甲状腺・糖尿病 など 最も多いのは偶発的流産・原因不明(約65%) =多くは偶然の重なりで、自分を責める必要はありません
不育症の主なリスク因子と、最も多い偶発的流産・原因不明の割合
不育症の主なリスク因子とその割合を示したイラスト

抗リン脂質抗体症候群と血栓性素因

抗リン脂質抗体は、母体の血液中にあらわれる自己抗体の一つです。この抗体があると血液が固まりやすくなり、胎盤の血流が悪くなって流産につながることがあります。第12因子欠乏症やプロテインS欠乏症といった、血液が固まりやすい体質(血栓性素因)も同じように関わります。

不育症は、原因が一つに絞れないことが多い病気です。血流や免疫といった、目に見えないところが複雑にからみ合います。Xでも@D9Dv19rさんが、血流の悪さや、免疫が強すぎて受精卵を攻撃してしまう仕組みがあり、それぞれに使える薬もある、原因は解明されていない部分も多い、と投稿していました。まさにその通りで、仕事や生活が原因だと単純に決めつけられるものではありません。

子宮形態の異常

子宮の形の異常は、生まれつきのことがほとんどです。重複子宮、双角子宮、中隔子宮、単角子宮などが知られています。なかでも中隔子宮は、流産率が高いとされる形。子宮の中央に隔壁があり、受精卵が着床しても育ちにくいことがあります。

ご夫婦いずれかの染色体

ご夫婦のどちらかに「均衡型転座」という染色体の構造の違いがあると、流産の頻度が上がります。これは染色体の一部が入れ替わっている状態で、ご本人の健康には影響しません。不育症のカップルの約5%にみられますが、この場合でも最終的に6〜8割が出産に至るとわかってきました。

内分泌の病気

甲状腺機能の低下症や糖尿病があると、流産が起こりやすくなると考えられています。ホルモンや血糖の状態は、妊娠の継続と深く関わるためです。これらは治療でコントロールできる病気。次の妊娠に向けて、あらかじめ整えておける部分でもあります。

不育症の検査|原因を調べて次につなげる

不育症の検査は、リスク因子ごとに血液検査や画像検査を組み合わせ、流産をくり返す原因を一つずつ確かめていきます。原因がわかれば、次の妊娠への対策が立てられます。原因が見つからなくても、それは「偶然だった可能性が高い」という前向きな結果。検査の中身を知っておくと、受診のハードルが下がります。

抗リン脂質抗体は、抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントを血液で調べます。子宮の形は、子宮卵管造影や超音波(エコー)、子宮鏡、MRIなどで確認。ご夫婦の染色体は血液検査で調べ、あわせて遺伝カウンセリングを受けることが望まれます。内分泌は、甲状腺ホルモンや血糖の検査です。

流産した組織の絨毛を調べる「流産絨毛染色体検査(POC検査)」は、2022年4月から保険適用になりました。赤ちゃん側の偶発的な染色体異常だったとわかれば、次の妊娠・出産への見通しが明るくなります。着床の兆候が気になる方は着床のサインをまとめた記事も参考にしてください。

検査を受けるタイミングは、次の妊娠を考え始めたときが一つの目安です。妊娠していない時期にできる検査も多く、あらかじめ原因を整理しておけます。ただし、すべての検査を一度に受ける必要はありません。医師と相談しながら、ご自身の状況に合わせて優先順位を決めていきましょう。焦らず、一歩ずつで大丈夫です。

不育症の治療|抗凝固療法などの考え方

不育症の治療は原因によって変わり、抗リン脂質抗体症候群では低用量アスピリンとヘパリンを使う抗凝固療法が中心になります。血液が固まりやすい体質には、血栓をできにくくする薬。子宮の形には手術、内分泌の病気にはその治療というように、原因に合わせて選ばれます。順に見ていきます。

抗リン脂質抗体が陽性だった場合は、12週間以上あけて再検査をします。そのうえで、低用量アスピリンにヘパリンカルシウムを加えた治療が基本です。妊娠中も血液の状態をこまやかに確認しながら進めます。血栓性素因に対しても、同じように抗凝固療法が検討されます。

不育症の原因別の治療の流れを示したイラスト

中隔子宮のように流産をくり返す子宮形態異常には、手術が選ばれることがあります。手術で妊娠を続けやすくなる場合も少なくありません。ご夫婦の染色体に均衡型転座があるときは、直接の治療はできませんが、遺伝カウンセリングで見通しを一緒に整理していきます。内分泌の病気は、内科と連携して整えてから次の妊娠に臨みます。

費用の面では、2021年から不育症の検査・治療の多くが保険適用(3割負担)となりました。自治体によっては助成を続けていることもあります。詳しくは、お住まいの自治体へ一度問い合わせてみてください。

胎児の染色体と出生前検査

胎児の染色体そのものを治療することは、いまの医療ではできません。ただし、生まれる前に赤ちゃんの染色体の状態を知る選択肢はあります。出生前検査でわかることをまとめた記事も参考になります。

NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの採血で、主に21・18・13トリソミーなど対象を絞った染色体を調べる非確定的な検査です。結果が陽性でも、確定には羊水検査などが必要になります。流産のリスクがなく早い時期から受けられる点が特徴。妊娠期の不安を整理する一つの手がかりとして知っておいてください。

次の妊娠への希望と、頼れる相談先

不育症と診断を受けても、その後の妊娠で7割以上が出産に至るとされ、次への希望は十分にあります。偶発的な流産のくり返しだった場合、検査で異常が見つからず、次の妊娠でそのまま出産に至ることも多いのです。数字の裏には、たくさんの前向きな結果。それでも、心の負担は数字だけでは測れません。

流産をくり返す経験は、言葉にできないほどつらいものです。私も相談の場で、次の妊娠に踏み出す怖さと願いのあいだで揺れる声を、何度も聞いてきました。Xでも@byambyammenさんが、流産をくり返す苦しさや、それでも2人目を諦めきれない思いを率直につづっていました。その気持ちに、優劣も正解もありません。感じ方はその人だけのもの。どうか、ご自身を責めないでください。

つらいときは、一人で抱え込まずに専門の窓口を頼ってください。こども家庭庁の不妊・不育に関する情報サイトには、相談先や支援の情報がまとまっています。学会の情報として日本産科婦人科学会、母子保健の施策としてこども家庭庁 母子保健の発信もあわせてご確認ください。

年齢を重ねてからの妊娠に不安がある方は、2人目の高齢出産についての記事も参考になります。信頼できる情報と、話を聞いてくれる人。この二つが、次の一歩を支えてくれます。

よくある質問

Q. 不育症は何回流産すると診断されますか?

2回以上の流産(妊娠22週未満)・死産(妊娠22週以降)の既往がある場合に、不育症と診断されます。異所性妊娠や胞状奇胎、生化学的妊娠(化学流産)は回数に数えません。すでにお子さんがいる方でも、その後に2回以上の流産・死産があれば含まれます。まずは産婦人科で相談し、原因を調べる検査を受けてください。

Q. 流産をくり返したのは自分のせいでしょうか?

ご自身のせいではありません。不育症の原因で最も多いのは、偶発的な流産のくり返しと原因不明で、あわせて約65%にのぼります。これらは偶然に重なったもので、生活や仕事、努力が足りなかったからではありません。自分を責めず、必要な検査と治療につなげることが、次の妊娠への近道になります。

Q. 不育症でも出産できますか?

多くの方が出産に至っています。不育症と診断を受けても、その後の妊娠で7割以上が出産できるとされています。ご夫婦の染色体に均衡型転座がある場合でも、最終的に6〜8割が出産に至るとわかってきました。原因に合わせた治療とこまやかな管理で、次の妊娠を支えていきます。過度に悲観せず、医師と一緒に進めてください。

Q. どんな治療を受けるのですか?

原因によって治療は変わります。抗リン脂質抗体症候群や血液が固まりやすい体質には、低用量アスピリンとヘパリンを使う抗凝固療法が中心です。中隔子宮など子宮の形の異常には手術、甲状腺や糖尿病などの内分泌の病気にはその治療を行います。まず検査で原因を確かめてから、担当医と方針を決めてください。

Q. 検査や治療に保険は使えますか?

2021年から、不育症の一般的な検査や治療の多くが保険適用(3割負担)となりました。流産絨毛染色体検査(POC検査)も2022年4月から保険適用です。ただし新しい検査や治療には適用外のものもあります。自治体によっては助成を続けていることもあるため、費用は医療機関とお住まいの自治体に確認してください。

Q. つらいとき、どこに相談すればよいですか?

一人で抱え込まず、専門の窓口を頼ってください。まずはかかりつけの産婦人科へ。公的な情報として、こども家庭庁の不妊・不育に関する情報サイトに相談先や支援がまとまっています。同じ経験をした方が集まる相談の場もあります。気持ちのつらさも医療の一部です。心のケアも含めて、遠慮なく声をあげてください。

著者・監修

岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。

Q&A
よくある質問

不育症についてよくある質問をいくつかまとめました。参考にしてみてください。

  • Q
    流産はどれくらいの頻度でおきますか?
    妊婦さんの年齢にも関係がありますが、妊娠が確認されたおよそ10〜20%が流産になるといわれています。

    年齢が35歳以上になると割合が上昇していきます。生化学的妊娠(化学流産)はより高率(30〜40%)で起こりますが、流産回数には含まれていません。

    妊娠12週未満、妊娠週数早期の流産は全流産の約90%を占め、妊娠22週未満、後期流産の頻度は低下します。
  • Q
    不育症治療をして出産した場合、次の妊娠も不育症治療が必要となりますか?
    不育症の原因によって異なってきます。次の妊娠時にも不育症治療が必要となることがありますので、次の妊娠の前に産婦人科へ受診されることをお勧めいたします。

不育症では妊娠と流産・死産を繰り返し、精神的に追い込まれたり辛い思いをすることがあります。原因が不明ということも多く、自責してしまう妊婦さんもいらっしゃいます。今回は不育症について詳しく解説します。

羊水検査について詳しく見る

羊水検査について詳しく見る

医師監修 監修日:2022年12月20日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

関連記事

  1. 化学流産
  2. バニシングツインとは?双子の妊娠で知っておきたい現象と影響 妊婦 写真
  3. 流産ってどんな状態のこと?流産の原因とは? 女性 写真
  4. 人工妊娠中絶について