この記事でわかること
MiSeq FGx Systemは、次世代シーケンサー(NGS)の一種です。法医学領域のDNA型鑑定のために開発されました。米国イルミナ社の技術をもとにVerogen社が製品化し、現在はQIAGENの傘下で提供されています。この記事では、機器の特徴とSTR・SNP解析の仕組みを整理します。あわせて個人識別や親子鑑定への使われ方も紹介します。ヒロクリニックのNIPPT(出生前DNA親子鑑定)との関係にも触れます。
- MiSeq FGx Systemがどんな機器で、誰が開発・販売しているか
- STR解析・SNP解析・ミトコンドリアDNA解析など、機器でできること
- 個人識別・親子鑑定・Y染色体解析といった具体的な用途
- ヒロクリニックのNIPPTでこの機器がどう使われているか
- 導入・利用時に確認しておきたい限界や注意点
MiSeq FGx Systemとは何か
ヒロクリニックのNIPPT(出生前DNA親子鑑定)を調べる中で、この機器名を目にした方もいるはずです。
MiSeq FGx Systemは、法医学分野に特化して開発・検証された次世代シーケンサーです。犯罪捜査や親子鑑定など、DNA型鑑定を必要とする現場での利用を想定しています。卓上に置ける大きさの分析機器。
開発の経緯と現在の位置づけ
この機器の土台は、米国イルミナ社のシーケンシング・バイ・シンセシス(SBS)技術です。法医学専門メーカーのVerogen社が、この技術をもとに製品化しました。
Verogen社は2023年にQIAGENの完全子会社となりました。現在はQIAGENの製品ラインとして提供されています。もとはイルミナ社の技術が土台になっている点は、押さえておきたいポイントです。
私自身、外来で「MiSeq FGx Systemとはどんな機械ですか」と尋ねられることがあります。名前だけでは想像しにくい機器。ただ、仕組みを知ると検査の信頼性を理解しやすくなります。
主な特徴
MiSeq FGx Systemには、法医学的なDNA型鑑定に適した特徴がいくつも備わっています。順番に見ていきましょう。
高精度なDNAシーケンス
この機器は、STR型(短鎖タンデムリピート)とSNP型(一塩基多型)の両方を同時に解析できます。メーカーの説明によれば、1回のランで解析できるライブラリは最大96検体分です。微量なDNAサンプルでも、複数のマーカーを組み合わせて判定の信頼性を高める設計です。
従来、法医学分野のSTR解析にはキャピラリー電気泳動法(CE法)が広く使われてきました。CE法は、STR断片の長さを1つずつ電気泳動で測る方法です。
これに対し、MiSeq FGx Systemは次世代シーケンサーです。多数のマーカーを並行して読み取れます。1検体あたりに得られる情報量を増やせる点が、CE法との大きな違いです。
検体からレポートまでの流れ
大まかな流れをつかんでおくと、検査結果の見方も理解しやすくなります。一般的なワークフローは次のとおりです。
- 検体からのDNA抽出
- ForenSeq関連キットによるライブラリ調製
- MiSeq FGx Systemでのシーケンス
- 専用ソフトウェアによるデータ解析とレポート作成
各工程は専門の担当者が行います。個人が自宅で実施できる作業ではありません。この流れを把握しておくと、検査機関に質問する際にも役立ちます。
法医学に特化したキットとソフトウェア
MiSeq FGx Systemは、法医学向けに設計された試薬キットと組み合わせて使用します。代表例は2つあります。ForenSeq DNA Signature Prep KitとForenSeq MainstAY Kitです。
常染色体STR27座、Y染色体STR25座、性判定用のアメロゲニン遺伝子を一度に解析対象にできる点が特徴です。常染色体STR27座には、FBIのCODISコア20座も含まれます。この点については、当院のNIPPT精度に関する解説記事でも触れています。
データ解析の速さ
次世代シーケンサーは、多くの情報を一度に得られます。一方で、解析結果の解釈には注意が必要です。脳神経内科医の@matsumoto_neuroさんは、興味深い事例をSNSで紹介しています。
次世代シーケンサーで遺伝子の欠失と判定された症例があります。その一部は、実際には類似遺伝子との組み換えでした。対象疾患は異なりますが、示唆に富む話です。
精密な機器であっても、専門家による確認作業が結果の信頼性を支えています。法医学分野にも共通する考え方です。メーカーによると、シーケンス後のデータ解析自体は1時間以内に完了するとされています。ただし、検体の前処理やライブラリ調製を含めた検査全体の所要時間は別途必要です。
包括的なデータ解析ソフトウェア
専用の解析ソフトウェアが付属しており、STRやSNPの型判定結果をまとめて確認できます。担当者がデータを解釈し、報告書を作成する作業を支える設計です。数字の羅列ではなく、視覚的な判定結果として確認できる点が現場での使いやすさにつながっています。
品質管理への配慮
法医学用の消耗品には国際規格ISO 18385があります。ヒトDNAの混入リスクを抑えるための規格です。メーカーは、この規格の考え方に沿って消耗品を製造していると説明しています。対象はForenSeq関連キットなどです。
分析装置そのものというより、キットの製造工程における品質管理を支える規格である点には注意が必要です。
主な用途

MiSeq FGx Systemは、幅広い法医学的DNA型鑑定に活用されています。用途は個人識別から親子鑑定までさまざまです。それぞれの用途を具体的に見ていきましょう。
個人識別
個人識別とは、現場で採取されたDNAから、それが誰のものかを特定する作業です。犯人の特定や身元確認の場面で使われます。
個人識別の精度については、SNS上でも関心が集まっています。@TsukiYOWANO_ovoさんの投稿が分かりやすい例です。DNA型鑑定は、数十億人に1人という桁の精度で個人を特定できるとされています。
その理由について、世代を経て変異しやすい部位を検査に使っているためだと解説しています。実務でも、複数のSTR座を組み合わせます。そうすることで、偶然一致してしまう確率を極めて低く抑える仕組みです。
親子鑑定
親子関係や家族関係の確認にも、この機器が使われます。常染色体STR・Y染色体STR・アメロゲニン遺伝子を組み合わせた解析により、統計的に高い精度での判定が可能です。
ヒロクリニックのNIPPT(出生前DNA親子鑑定)でも、この機器が使われています。解析を行うのは、次世代シーケンサーを複数台備える国内の検査機関(東京衛生検査所)です。検査の精度や仕組みについては、関連記事で詳しく解説しています。
ミトコンドリアDNA解析
ミトコンドリアDNA(mtDNA)は母系を通じて受け継がれる特徴があります。母系遺伝の確認や、古い遺骨の分析に利用されるケースが知られています。核DNAが劣化していても、mtDNAはコピー数が多い場合があります。そのため、解析しやすいケースがある点が特徴。
Y染色体解析
Y染色体は父系を通じて受け継がれます。そのため、男性同士の血縁関係の推定に使われます。
SNS上では、@kouki_FreeWillさんの解説が参考になります。死後に時間が経過した遺体からも、血液・骨・歯・毛根などからDNAを採取できるといいます。こうした試料からもY-STR解析が可能だと紹介しています。
骨や歯は法医学の現場で試料として使われることが多いものです。MiSeq FGx Systemのような機器は、劣化・微量サンプルの解析にも対応しています。
ヒロクリニックのNIPPTとMiSeq FGx System
ヒロクリニックのNIPPT(出生前DNA親子鑑定)は、出産前に父子関係を調べられる検査です。妊婦さんの腕からの採血だけで検査できます。この検査の解析工程には、MiSeq FGx Systemが使われています。ターゲット型次世代シーケンシングという方式です。
当院で日々検査に関するご相談を受けています。精度の数字だけでなく、解析に使われる機器や検査体制まで知りたいという方が増えていると感じます。機器の名前だけを見ても、仕組みは分かりにくいものです。だからこそ、この記事のような解説が役立つはずです。
解析対象は、常染色体STR27座とY染色体STR25座です。あわせて性判定用のアメロゲニン遺伝子も対象になります。常染色体STR27座には、FBIのCODISコア20座も含まれます。
この方式は、少数のSNPのみに頼る方式に比べてマーカー数を確保しやすいといえます。メーカー・検査機関はそのように説明しています。もっとも、どの解析方式が絶対的に優れているかを一概に断定することはできません。検討する際は、使用しているマーカーの種類と数、解析施設の体制を確認してください。
導入・利用時に確認しておきたいポイント
MiSeq FGx Systemは高精度な機器ですが、万能ではありません。導入や利用を検討する際に押さえておきたい注意点を整理します。
| 確認ポイント | 内容 |
|---|---|
| 検体の状態 | DNAが著しく劣化・微量な場合、判定が難しくなることがある |
| 解析の解釈 | 機器が高精度でも、結果の解釈には専門家の確認が欠かせない |
| キットの品質管理 | ISO 18385など、消耗品側の品質規格の有無を確認する |
| 解析施設の体制 | 第三者認定の有無や、解析を担う機関の実績を確認する |
骨や歯のように劣化した試料でも、解析そのものは可能な場合があります。ただ、結果の解釈に時間がかかることもあります。
機器の性能と、それを扱う施設の体制は別の話です。混同されがちなので注意してください。導入を検討する場合は、機器のスペックだけを見ないことです。解析を担当する検査機関の実績や第三者認定の有無まで確認してください。
まとめ:法医学の現場を支えるNGS機器
MiSeq FGx Systemは、STR・SNP解析を組み合わせる次世代シーケンサーです。個人識別から親子鑑定まで、法医学特化型の機器として幅広く対応します。イルミナ社の技術を土台に、Verogen社を経て現在はQIAGENが提供しています。
ヒロクリニックのNIPPTでも、この機器を用いた解析が国内の検査機関で行われています。機器の性能だけでなく、検体の状態や解析施設の体制まで理解しておきましょう。検査結果への納得感が高まります。
よくある質問(FAQ)
MiSeq FGx Systemについて、よく寄せられる質問にお答えします。
MiSeq FGx Systemは誰が開発した機器ですか?
米国イルミナ社のシーケンシング技術がもとになっています。法医学専門メーカーのVerogen社が、この技術で製品化しました。Verogen社は2023年、QIAGENの完全子会社になりました。現在はQIAGENの製品として提供されています。
どのような検査に使われていますか?
個人識別、親子鑑定、ミトコンドリアDNA解析、Y染色体解析などに使われます。いずれも法医学分野のDNA型鑑定です。ヒロクリニックのNIPPT(出生前DNA親子鑑定)でも、この機器を用いた解析が行われています。
一度にどのくらいの検体を解析できますか?
メーカーの説明によると、SNPとSTRを組み合わせたライブラリは、最大96検体まで扱えます。1回のランで解析できるとされています。実際の検体数は解析施設の運用によって異なります。
結果はどのくらいの時間で得られますか?
メーカーによると、シーケンス後のデータ解析自体は1時間以内に完了するとされています。ただし、検体の前処理やライブラリ調製を含めた検査全体の所要時間は別途必要です。具体的な日数は、依頼先の検査機関に確認してください。
NIPT(新型出生前診断)と何か関係がありますか?
NIPTは胎児の染色体異常の可能性を調べるスクリーニング検査です。父子関係は判定しません。一方、ヒロクリニックのNIPPT(出生前DNA親子鑑定)は父子関係を調べる検査です。MiSeq FGx Systemを使用しています。名称が似ているため、目的の違いを確認したうえで検討してください。
STR解析とSNP解析はどう違いますか?
STR解析は反復配列の長さの違いを比較する方法です。法医学分野で古くから使われてきました。SNP解析は一塩基単位の違いを比較する方法です。MiSeq FGx Systemは、この両方を同時に扱える点が特徴です。
個人でこの機器を使った検査を申し込むことはできますか?
MiSeq FGx System自体は、検査機関が導入する分析装置です。個人が直接操作するものではありません。この機器を用いた検査を希望する場合は、対応する医療機関・検査機関にご相談ください。ヒロクリニックのNIPPTも選択肢の一つです。
監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、臨床研修後2年で医学博士を取得。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関・メーカーの公開情報を参照して作成しています。
参考:Verogen(a QIAGEN company)「MiSeq FGx Sequencing System」製品ページ/FBI「CODIS and NDIS Fact Sheet」/ISO「ISO 18385:2016」
関連記事:MiSeq FGx Systemを用いた出生前親子鑑定の精度について/ForenSeq MainstAY Kitについて/ForenSeq DNA Signature Prep Kitについて/EZ2 Connect Fxのキアゲン機器について/法医学と遺伝子学の関係
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

