発達性およびてんかん性脳症17型(Developmental and epileptic encephalopathy 17)

医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 17という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

まだ小さなお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、てんかんや遺伝、神経内科の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない、比較的新しい疾患概念です。

この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症17型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE17(ディー・イー・イー・ジュウナナ)と呼ばれることが一般的です。

また、原因となる遺伝子の名前をとってGNAO1関連神経発達障害やGNAO1関連てんかん性脳症と呼ばれることも増えています。

この病気は、乳児期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れや、自分の意思とは関係なく体が動いてしまう不随意運動が見られるという特徴があります。その原因として、GNAO1という特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳症という言葉や17型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合った療育やケアのプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。

概要:どのような病気か

発達性およびてんかん性脳症17型(DEE17)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。

まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。

発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。

てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。

脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。

つまり、DEE17は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。

この17型は、GNAO1(ジー・エヌ・エー・オー・ワン)という遺伝子の変異によって引き起こされることが2013年頃の研究で明らかになりました。

GNAO1遺伝子の変異は、症状の出方によって大きく二つのタイプに分けられることが多いです。一つはてんかんが主症状のタイプ、もう一つは激しい不随意運動が主症状のタイプです。DEE17は、この中でもてんかん発作を伴い、発達の遅れが見られるタイプを指しますが、成長とともに不随意運動が現れることも多く、両方の特徴を併せ持つお子さんも少なくありません。

主な症状

DEE17の症状は、てんかん発作、発達の遅れ、そしてGNAO1関連疾患に非常に特徴的な運動障害(不随意運動)の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. てんかん発作

多くの患者さんにおいて、生後数ヶ月以内の乳児期早期にてんかん発作が始まります。中には、生後数日以内の新生児期から発作が見られることもあります。

発作のタイプ

発作の形は様々ですが、以下のようなタイプが報告されています。

てんかん性スパズム:両手を広げてお辞儀をするような動作を、数秒おきに繰り返す発作です。シリーズ形成といって、一度始まると何度も繰り返すのが特徴で、大田原症候群やウエスト症候群と呼ばれるてんかん症候群の診断基準を満たすこともあります。

焦点発作:体の一部がピクピク動いたり、視線が偏ったりする発作です。

強直発作:手足が突っ張って硬くなる発作です。

難治性

DEE17のてんかん発作は、一般的な抗てんかん薬が効きにくい難治性であることが多いです。複数の薬を組み合わせても発作を完全に止めることが難しい場合があり、発作の回数を減らし、生活に支障が出ないようにコントロールしていくことが目標になります。成長とともに発作の頻度が減ったり、消失したりすることもあります。

2. 運動障害(不随意運動)

これはDEE17、およびGNAO1遺伝子変異を持つお子さんにとって、非常に重要かつ注意が必要な症状です。てんかん発作とは別に、自分の意思とは関係なく体が勝手に動いてしまう症状が現れることがあります。

ジスキネジア・コレア

手足や顔、口などがくねくねと踊るように動いたり、激しくバタバタと動いたりする症状です。

ジストニア

筋肉が勝手に収縮して、体がねじれたり、手足が突っ張って変な姿勢で固まってしまったりする症状です。

不随意運動発作(重積状態)

特に注意が必要なのが、感染症による発熱やストレスなどをきっかけに、この不随意運動が激しくなり、止まらなくなってしまう状態です。これをジスキネジア重積やジストニア重積と呼びます。

体が激しく動き続けるため、体力を激しく消耗し、筋肉が壊れてしまう横紋筋融解症や、脱水、高熱などを引き起こし、命に関わることもあります。てんかん発作と見分けがつきにくいことがありますが、意識があることが多いのが特徴です。このような状態になった場合は、集中治療室での緊急治療が必要になります。

3. 発達と神経の症状

発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。

重度の発達遅滞

首がすわる、目でものを追う、お座りをする、ハイハイをするといった運動面の発達と、あやすと笑う、言葉を理解するといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、重度の知的障害を伴います。言葉によるコミュニケーションが難しい場合もありますが、ジェスチャーや表情で感情を伝えたり、こちらの言っていることを理解していたりするお子さんもいます。

筋緊張低下

赤ちゃんの頃に、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが非常に多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。これにより、運動発達がさらにゆっくりになる傾向があります。

4. その他の症状

おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害や、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。

また、視線を合わせにくいといった視覚的な反応の乏しさや、睡眠障害が見られることもあります。

原因

なぜ、てんかんが起きたり、体が勝手に動いたりするのでしょうか。その原因は、細胞の中で情報を伝えるメッセンジャーの役割をするタンパク質の異常にあります。

GNAO1遺伝子の役割

DEE17の原因は、第16番染色体にあるGNAO1(ジー・エヌ・エー・オー・ワン)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、Gタンパク質アルファサブユニット(Gαo)というタンパク質を作るための設計図です。

私たちの体の中では、細胞の外からの刺激や情報を細胞の中に伝えるために、様々なシグナル伝達という仕組みが働いています。Gタンパク質は、この情報の受け渡しを行う非常に重要なメッセンジャーです。

特にGNAO1が作るタンパク質は、脳の神経細胞に非常に多く存在し、神経細胞の興奮を抑えたり、運動をコントロールしたりする信号を伝えるのに中心的な役割を果たしています。

遺伝子の変化による影響

GNAO1遺伝子に変異が起きると、このメッセンジャーであるタンパク質の形が変わってしまったり、うまく働かなくなったりします。

機能喪失型

メッセンジャーが働かず、信号が伝わらない状態です。これにより、てんかん発作が起きやすくなると考えられています。DEE17ではこのタイプが多い傾向にあります。

機能獲得型

メッセンジャーが過剰に働きすぎたり、誤った信号を伝え続けたりする状態です。これにより、運動のコントロールが効かなくなり、激しい不随意運動が引き起こされると考えられています。

実際には、これらの機能の変化は複雑で、一つの変異がてんかんと不随意運動の両方を引き起こすこともあります。

脳の中の信号伝達がうまくいかないことで、神経回路の形成や機能に支障が出て、てんかん、運動障害、発達の遅れという三つの大きな症状が現れるのです。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、重症型であるDEE17のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にGNAO1遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

赤ちゃん

診断と検査

診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 脳波検査

てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。

DEE17のお子さんの脳波では、サプレッション・バーストと呼ばれる特徴的なパターンが見られることがあります。これは、脳波が平坦になる時期と激しい波が出る時期を交互に繰り返すもので、大田原症候群などの重篤なてんかん性脳症で見られる所見です。

また、成長とともにヒプスアリスミアと呼ばれる点頭てんかんに特徴的な乱れた波形や、多焦点性スパイクといって脳のあちこちからてんかん波が出ている状態が見られることもあります。

2. 画像検査(MRI)

脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

発症初期には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、発作が長く続いた後や、年齢が進んでくると、脳全体が少し萎縮して小さくなっている様子や、髄鞘化(神経の伝達速度を上げるための被覆)が遅れている様子が見られることがあります。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、てんかん関連遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。

これは、遺伝子のうちタンパク質を作る重要な部分を網羅的にすべて解読する検査です。DEE17は症状だけでは他の発達障害やてんかん症候群と区別がつかないことが多いため、この網羅的な遺伝子検査を行って初めてGNAO1遺伝子の変異が見つかり、診断に至るケースがほとんどです。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

1. てんかんの治療

てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。

GNAO1変異に対する特効薬というものはまだ確立されていませんが、発作のタイプに合わせて様々なお薬が試されます。

フェノバルビタール、レベチラセタム、バルプロ酸、クロバザム、トピラマートなどが使われることが多いです。

点頭てんかん(ウエスト症候群)のパターンを示す場合は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)療法という注射の治療が検討されることもあります。

また、お薬でコントロールが難しい場合は、ケトン食療法(脂肪分を多く、糖質を極端に少なくした食事療法)が選択肢に入ることがあります。GNAO1関連疾患のてんかんに対してケトン食療法が有効であったという報告もあります。

2. 運動障害(不随意運動)の治療と管理

ここがGNAO1関連疾患のケアにおいて非常に重要なポイントです。

ジスキネジアやジストニアなどの不随意運動に対しては、抗てんかん薬とは異なるお薬を使います。

テトラベナジンなどのドパミンを調節するお薬や、筋緊張を和らげるお薬などが試されます。

緊急時の対応

不随意運動が止まらなくなる重積発作が起きた場合は、入院して点滴で鎮静剤を入れるなどの集中治療が必要です。

薬物療法でもコントロールが難しい重度の不随意運動に対しては、脳深部刺激療法(DBS)という外科的な治療が行われることがあります。これは脳の特定の場所に電極を埋め込み、電気刺激を送ることで異常な動きを抑える治療法で、GNAO1関連の運動障害に対して劇的な効果を示すケースが世界中で報告されています。

3. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさ(筋緊張低下)や不随意運動に対してアプローチします。

姿勢を保つための練習や、関節が硬くならないようなストレッチを行います。不随意運動がある場合、手足がベッドの柵などに当たって怪我をしないように、クッションで保護するなどの環境調整も重要です。

座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギーなどを作る際も、不随意運動があっても安全に乗れるような工夫を専門家と相談します。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、食事や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法(絵カード、ジェスチャー、スイッチなど)を探ります。また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

4. 日常生活のケア

摂食・嚥下管理

飲み込む力が弱かったり、不随意運動で食事が難しかったりする場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、安定した栄養摂取を可能にする有効な手段です。

感染症対策

発熱はてんかん発作や不随意運動の増悪(重積)の引き金になりやすいため、感染症対策は非常に重要です。手洗いなどの基本的な対策に加え、流行期には人混みを避ける、インフルエンザなどの予防接種を計画的に受けるなどの対策を心がけます。

まとめ

発達性およびてんかん性脳症17型(DEE17)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

GNAO1遺伝子の変異により、神経細胞の信号伝達に異常が生じ、脳の機能や運動制御に影響が出る先天性の疾患です。

主な特徴

乳児期の難治性てんかん、重度の発達遅滞、そしてジスキネジアなどの特徴的な不随意運動が見られます。

治療の鍵

てんかんの治療に加え、不随意運動の管理が非常に重要です。重症の場合は脳深部刺激療法(DBS)などの選択肢もあります。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

発作のコントロール、不随意運動への対策、栄養管理、感染症予防など、全身をトータルでケアすることが大切です。

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