この記事のまとめ
発達性およびてんかん性脳症27型(DEE27)は、GRIN2B遺伝子の変異によって乳児期からのてんかん発作と重度の発達の遅れが生じる、世界的にも報告数の少ない希少疾患です。ほとんどが両親由来ではない突然変異(de novo変異)で発症し、ご両親の妊娠中の生活が原因になることはありません。本記事では症状・原因・診断・治療の最新知見に加え、同じGRIN2B遺伝子から生じる、てんかんを伴わない知的障害・自閉スペクトラム症型との違い、次のお子様への影響、妊娠中のNIPTとの関係までを、学術文献にもとづいて整理します。
この記事でわかること
- DEE27(GRIN2B関連てんかん性脳症)の症状と、てんかん発作・発達の遅れそれぞれの特徴
- 原因遺伝子GRIN2Bの働きと、NMDA受容体の機能獲得型・機能喪失型で症状がどう変わるのか
- 「自分のせいではないか」という不安への答えと、次のお子様への遺伝の可能性
- 診断・治療(メマンチンなど精密医療の可能性)の現状と、妊娠中のNIPTとの関係
医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 27という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。
まだ小さなお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、てんかんや遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない疾患概念です。
この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症27型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE27(ディー・イー・イー・ニジュウナナ)と呼ばれることが一般的です。
また、原因となる遺伝子の名前をとってGRIN2B関連神経発達障害やGRIN2B関連てんかん性脳症と呼ばれることも増えています。
この病気は、乳児期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れや、体が勝手に動いてしまうような運動の症状が見られるという特徴があります。その原因として、GRIN2Bという特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。
脳症という言葉や27型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、重症度を表す数字ではありません。
また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合った療育やケアのプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。私自身、NIPTのご相談の中で「原因の遺伝子がわかって、かえって気持ちの整理がついた」という声を伺うことがあります。焦らず、一つひとつ整理していきましょう。
1. 概要:どのような病気か
発達性およびてんかん性脳症27型(DEE27)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することから始めましょう。
発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。
てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。
つまり、DEE27は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。
この27型は、第12番染色体(12p13.1)にあるGRIN2B(グリン・ツー・ビー)という遺伝子の変異によって引き起こされることが明らかになっています。この遺伝子の変異は、DEE27以外にも、てんかんを伴わない知的障害や自閉スペクトラム症の原因になることもありますが、DEE27はその中でもてんかん発作を伴い、比較的症状が重く出るタイプを指します。同じGRIN2B変異から生じる疾患であっても、変異の性質によって現れ方が大きく異なる点は、次の「原因」の章で詳しく解説します。
発症時期は生後数ヶ月から数歳の間であることが多く、早期発見と適切なケアが重要となる病気です。
2. 主な症状
DEE27の症状は、てんかん発作、発達の遅れ、そして特徴的な運動症状の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。
てんかん発作
多くの患者さんにおいて、乳児期から幼児期にかけててんかん発作が始まります。発作の形は様々ですが、以下のようなタイプが報告されています。
| 発作のタイプ | 特徴 |
|---|---|
| てんかん性スパズム | 両手を広げてお辞儀をするような動作を、数秒おきに繰り返す発作。シリーズ形成が特徴で、ウエスト症候群と呼ばれることもある |
| 全般強直間代発作 | 全身が硬直したあとにガクガクと震える大きな発作 |
| 焦点発作 | 体の一部がピクピク動いたり、視線が偏ったりする発作 |
DEE27のてんかん発作は、一般的な抗てんかん薬が効きにくい難治性であることが多いです。複数の薬を組み合わせても発作を完全に止めることが難しい場合があり、発作の回数を減らし、生活に支障が出ないようにコントロールしていくことが目標になります。
発達と神経の症状
発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。首がすわる、目でものを追う、お座りをする、ハイハイをするといった運動面の発達と、あやすと笑う、言葉を理解するといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。
多くの場合、中等度から重度の知的障害を伴います。言葉によるコミュニケーションが難しい場合もありますが、ジェスチャーや表情で感情を伝えたり、こちらの言っていることを理解していたりするお子さんもいます。
赤ちゃんの頃に、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが非常に多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。この筋緊張低下によって、運動発達がさらにゆっくりになる傾向があります。
また、目そのものの構造には問題がなくても、脳が映像を処理することが苦手なために、おもちゃを目で追わなかったり、視線が合いにくかったりする皮質視覚障害が見られることがあります。見えていないように見えても、光や動くものには反応することがあります。
運動障害(不随意運動)
DEE27(GRIN2B関連疾患)の非常に重要な特徴として、てんかん発作とは異なる、不随意運動と呼ばれる体の動きが見られることが挙げられます。
ジストニアは、筋肉が勝手に収縮して、体がねじれたり、手足が突っ張ったりする症状です。コレア(舞踏運動)は、手足が踊るようにくねくねと動く症状を指します。これらの動きは、てんかん発作と間違われやすいですが、脳波検査でてんかん波が出ていないことで区別されます。興奮した時や動こうとした時に強くなる傾向があります。
その他の症状
おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害や、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。また、自閉スペクトラム症のような行動特徴(視線を合わせにくい、こだわりが強い、同じ動作を繰り返すなど)や、睡眠障害、多動が見られることもあります。

3. 原因:GRIN2B遺伝子の働き
DEE27の原因は、脳の神経細胞にあるスイッチの役割をする受け皿、NMDA受容体の不具合にあります。なぜ、てんかんが起きたり、体が勝手に動いたりするのかを見ていきましょう。
GRIN2B遺伝子の役割
DEE27の原因は、第12番染色体(12p13.1)にあるGRIN2B(グリン・ツー・ビー)という遺伝子の変異です。この遺伝子は、NMDA受容体という、脳の神経細胞の表面にある重要なタンパク質の一部(GluN2Bサブユニット)を作るための設計図です。
脳の神経細胞は、電気信号を使って情報をやり取りしています。神経細胞と神経細胞のつなぎ目であるシナプスという場所で、グルタミン酸という物質が放出され、次の神経細胞にある受け皿(受容体)にくっつくことで、信号が伝わります。NMDA受容体は、このグルタミン酸を受け取るための主要な受け皿の一つで、特に記憶や学習、そして脳の発達に深く関わっています。
機能獲得型と機能喪失型で症状が分かれる仕組み
GRIN2B遺伝子に変異が起きると、このNMDA受容体の働きがおかしくなります。海外の研究チームによる機能解析では、変異の起きる場所や性質によって、大きく二つのパターンに分かれることが示されています。
| 変異のタイプ | 受容体の変化 | 現れやすい症状 |
|---|---|---|
| 機能獲得型(Gain of Function) | 受容体が過剰に働きすぎる。スイッチが入りっぱなしになったり、少しの刺激で過剰に反応したりする | 神経細胞にカルシウムなどが入りすぎて過剰興奮が起こりやすく、DEE27のような重度のてんかんを伴うタイプで比較的多いとされる |
| 機能喪失型(Loss of Function) | 受容体がうまく働かない、あるいは数が減ってしまう。スイッチが入りにくくなる | 神経伝達がスムーズにいかず、てんかんを伴わない知的障害や自閉スペクトラム症につながりやすい傾向がある |
DEE27では、これらの変化によって脳内の興奮と抑制のバランスが崩れ、てんかんや運動障害、発達の遅れが生じると考えられています。同じGRIN2B遺伝子の変異でも、機能獲得型か機能喪失型かによって現れる症状の重さや種類が変わってくる、という点はぜひ知っておいていただきたいポイントです。
なお、NMDA受容体はGRIN2B(GluN2Bサブユニット)だけでなく、必須構成要素であるGluN1サブユニットを作るGRIN1遺伝子の変異でも同様の疾患グループが生じます。GluN1はすべてのタイプのNMDA受容体に共通して必要な部品であるため、GRIN1関連障害はGRIN2B関連障害よりも症状の幅が限定されにくい傾向があるとされています。あわせて読むと、NMDA受容体関連疾患全体の見取り図がつかみやすくなります。
遺伝について:ご自身を責めないでください
多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。しかし、重症型であるDEE27のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。
これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にGRIN2B遺伝子に変化が起きたことを意味します。つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。
4. 次のお子様への影響:遺伝形式と再発リスク
DEE27は常染色体顕性遺伝の形式をとりますが、実際の患者さんのほとんどは孤発例(家族内で一人だけ)です。「次の子にも同じことが起こるのか」というご心配は、ご家族が最も知りたい点の一つでしょう。
海外の症例データベースをまとめた報告では、DEE27をはじめとする重症型のGRIN2B関連障害はほとんどがde novo変異による孤発例とされています。ただし、両親のどちらにも変異が見られないケースでも、ごくまれに生殖細胞モザイク(親の精子や卵子の一部にだけ変異が生じている状態)により、きょうだいに再発した例が報告されています。両親の血液検査で変異が検出されない場合でも、この可能性がある分だけ、一般集団よりわずかにリスクが高くなるとされています。
お子さんのGRIN2B変異が特定されていれば、次の妊娠では、絨毛検査や羊水検査でその特定の変異の有無を直接調べる確定的な出生前診断や、体外受精を行う場合は着床前遺伝学的検査(PGT)が選択肢になります。次のお子様への影響がどの程度かは、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングで個別に確認してください。
5. 診断と検査
診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。DEE27は症状だけでは他の発達障害やてんかん症候群と区別がつかないことが多いため、最終的には遺伝学的検査が確定診断の決め手になります。
脳波検査
てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。DEE27のお子さんの脳波では、ヒプスアリスミアと呼ばれる点頭てんかんに特徴的な乱れた波形や、多焦点性スパイクといって脳のあちこちからてんかん波が出ている状態が見られることがあります。また、脳全体の電気活動がゆっくりになっている徐波化が見られることもあります。
画像検査(MRI)
脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。発症初期には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、発作が長く続いた後や、年齢が進んでくると、脳全体が少し萎縮して小さくなっている様子や、脳梁(右脳と左脳をつなぐ部分)が薄くなっている様子などが見られることがあります。
遺伝学的検査
確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、てんかん関連遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。これは、遺伝子のうちタンパク質を作る重要な部分を網羅的にすべて解読する検査です。この網羅的な遺伝子検査を行って初めてGRIN2B遺伝子の変異が見つかり、診断に至るケースがほとんどです。
診断がつくまでに複数の医療機関を回った、というご家族の経験は珍しくありません。原因不明の難治性てんかんや発達の遅れとして経過観察されていたお子さんが、全エクソーム解析によって初めてGRIN2Bの変異が同定され、確定診断に至るケースも報告されています。
6. 治療と管理
遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法は、現時点ではまだ確立されていません。しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。
てんかんの治療
てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。GRIN2B変異に対する特効薬というものはまだ確立されていませんが、発作のタイプに合わせて様々なお薬が試されます。バルプロ酸、レベチラセタム、クロバザム、トピラマート、ラモトリギンなどが使われることが多いです。点頭てんかん(ウエスト症候群)のパターンを示す場合は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)療法という注射の治療が検討されることもあります。
また、研究段階ではありますが、遺伝子変異のタイプ(機能獲得型か機能喪失型か)に応じた精密医療の可能性が探られています。例えば、機能獲得型変異の場合、NMDA受容体の働きを抑える作用のあるメマンチン(本来は認知症の薬)という薬剤が、症例報告のレベルではてんかん発作や行動面の改善に役立った例があります。逆に、機能喪失型変異の場合は、受容体の働きを補う目的でL-セリンというアミノ酸の補充が検討されることもあります。これらはまだ広く確立された標準治療ではなく、専門医がお子さんの変異の詳細を見ながら、適応の可能性を慎重に検討する段階にとどまります。
発達支援と療育(リハビリテーション)
早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。理学療法(PT)では、体の柔らかさ(筋緊張低下)や、不随意運動(ジストニアなど)に対してアプローチします。姿勢を保つための練習や、体幹を鍛える遊び、関節が硬くならないようなストレッチを行います。座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギー、足底板(インソール)など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。
作業療法(OT)では、手先の感覚を養ったり、光や音などの刺激を使った遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、入浴や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。言語聴覚療法(ST)では、言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法(絵カード、ジェスチャー、スイッチなど)を探ります。食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行い、飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。
日常生活のケア
飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。
睡眠障害がある場合は、生活リズムを整える工夫に加え、必要に応じてメラトニンなどの睡眠導入剤を使用することもあります。良質な睡眠は、てんかん発作の予防にもつながります。皮質視覚障害がある場合は、見えやすいおもちゃ(コントラストの強い色や光るものなど)を使ったり、視覚以外の感覚(聴覚や触覚)を使った遊びを取り入れたりする視覚支援を行ってください。
7. どれくらいの患者さんがいるのか
DEE27を含むGRIN2B関連神経発達障害は、世界的に見ても報告数が限られる希少疾患です。正確な患者数はまだわかっていませんが、これまで「原因不明のてんかん性脳症」「原因不明の発達遅滞」とされてきたお子さんの中に、次世代シーケンサーによる網羅的な遺伝子検査の普及によって、新たにGRIN2B関連障害と診断されるケースが世界各地で増えています。
報告数が少ないぶん、長期的な経過に関する大規模なデータはまだ蓄積の途上です。定期的な通院で、その時々の状態に合わせた支援を続けることが大切です。
8. 他の遺伝性てんかん性脳症との関係
発達性およびてんかん性脳症(DEE)は、GRIN2B以外にも100種類を超える原因遺伝子が知られている、大きな疾患グループの総称です。「27型」という番号は、あくまで原因遺伝子ごとに割り振られた分類番号にすぎません。
原因遺伝子が異なれば、関わる仕組みも症状の出方も変わってきます。例えば、乳児期の難治てんかんの原因として知られるSCN2Aは、神経細胞の電気信号そのものを作るナトリウムチャネルの遺伝子です。また、不随意運動を伴うことがあるGNAO1は、NMDA受容体のようなイオンチャネル型の受容体ではなく、細胞内の情報伝達を担うGタンパク質の遺伝子であり、GRIN2Bとはまったく異なる仕組みで似た症状を引き起こします。同じ「てんかん性脳症」という診断名でも、原因遺伝子と関わる仕組みによって見通しが変わってくる、という点は知っておいていただきたいポイントです。
9. 妊娠中のNIPTとの関係
NIPTで調べる21・18・13トリソミーなどの基本検査は、GRIN2Bのような単一遺伝子疾患を対象としていません。一方、単一遺伝子疾患まで検査対象を広げたプランでは、GRIN2Bを含む200種類以上の疾患をスクリーニング対象に組み込んでいる検査もあります。
当院の「NIPTy-MONO(単一遺伝子疾患検査)」も、GRIN2B(Developmental and epileptic encephalopathy 27)を対象疾患に含む単一遺伝子疾患パネルの一つです。ただし、これはあくまで非確定的なスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。陽性の所見が出た場合は、羊水検査などの確定検査で確認する必要があります。すでにお子さんのGRIN2B変異が特定されているご家族が次の妊娠に備える場合は、前章で述べたとおり、その特定の変異を直接調べる絨毛検査・羊水検査による確定検査が基本になります。
今回、この疾患について国内の実体験に基づく投稿をX(旧Twitter)で探しましたが、GRIN2BやDEE27に関する直近の投稿は見当たりませんでした。世界的にも報告数の少ない希少疾患であるため、一次情報が乏しいのは自然なことです。本記事では代わりに、米国国立医学図書館のGeneReviews・GARD(希少疾患情報センター)、および査読済みの学術論文を根拠としています。
10. ご家族へのメッセージ
「脳症」「27型」という言葉の重さに、必要以上に押しつぶされる必要はありません。この番号は重症度を示すものではなく、原因遺伝子を区別するための整理番号にすぎないからです。
長期にわたる療育や通院が必要になる場面もあり、ご家族の負担が大きくなることもあるでしょう。医療チームや地域のサポート団体、同じ疾患のご家族同士のつながりを頼りながら、無理のない範囲で付き合っていく体制を整えてください。
遺伝カウンセリングの現場では、「両親の検査が正常でも子に伝わることがあるのか」というご相談を数多くお聞きします。生殖細胞モザイクのように、血液検査だけでは分からない事情もあるというのが実感です。ひとりで抱え込まず、専門家に相談してみてください。
まとめ
発達性およびてんかん性脳症27型(DEE27)についての重要なポイントを振り返ります。
病気の本質:GRIN2B遺伝子の変異により、脳の神経伝達に関わるNMDA受容体に異常が生じ、脳の過剰興奮や発達に影響が出る先天性の疾患です。
主な特徴:乳児期のてんかん、重度の発達遅滞、ジストニアやコレアなどの不随意運動、筋緊張低下などが特徴です。
治療の鍵:てんかんの治療に加え、変異のタイプ(機能獲得型・機能喪失型)に応じた精密医療が研究段階で試みられています。
原因:多くは突然変異(de novo変異)によるもので、親のせいではありません。ごくまれに生殖細胞モザイクによる再発があるため、次のお子様については遺伝カウンセリングで確認してください。
ケアの要点。発作のコントロールだけでなく、運動障害へのリハビリ、栄養管理、睡眠管理など、全身をトータルでケアすることが大切です。
お電話でのご相談も受け付けています。0120-169-629までお気軽にお問い合わせください。
よくある質問
DEE27と、てんかんを伴わないGRIN2B関連知的障害は同じ病気ですか。
同じGRIN2B遺伝子の変異から生じますが、症状の重さが異なります。DEE27は乳児期からのてんかん発作と重度の発達の遅れが主体で、NMDA受容体の機能獲得型の変異が多い傾向にあります。一方、てんかんを伴わない知的障害や自閉スペクトラム症のタイプは、機能喪失型の変異が多い傾向にあり、てんかんが軽いか見られないことが多いとされています。
主な症状は何ですか。
乳児期から幼児期にかけて始まる難治性のてんかん発作、重度の発達の遅れ、そしてジストニアやコレアといった不随意運動が代表的な症状です。筋緊張低下や哺乳障害、皮質視覚障害を伴うこともあります。
親から遺伝するのですか。
DEE27のほとんどは、ご両親のどちらにも原因がない突然変異(de novo変異)によるものです。妊娠中の生活が原因になることはありません。ごくまれに、両親の血液検査で変異が検出されなくても、生殖細胞モザイクによりきょうだいに再発した例が報告されています。次のお子様への影響は遺伝カウンセリングで確認してください。
どのような治療法がありますか。
抗てんかん薬による発作のコントロールが治療の中心です。研究段階ですが、機能獲得型の変異にはメマンチン、機能喪失型の変異にはL-セリンの補充など、変異のタイプに応じた精密医療の可能性が症例報告のレベルで探られています。根本的に遺伝子の変化を治す治療法は、現時点ではまだ確立されていません。
妊娠中のNIPTでこの病気はわかりますか。
21・18・13トリソミーなどの基本検査の対象ではありません。単一遺伝子疾患まで対象を広げたNIPTy-MONOのようなプランでは、GRIN2B(DEE27)を含む200種類以上の疾患をスクリーニング対象としていますが、非確定的な検査であり、陽性所見が出た場合は羊水検査などの確定検査が必要です。すでに家族内でGRIN2B変異が判明している場合は、その変異を直接調べる絨毛検査・羊水検査が基本になります。
DEE27は指定難病ですか。
2026年現在、DEE27やGRIN2B関連障害は、単独の病名として国内の指定難病リストには含まれていません。医療費助成や療育支援の制度については、主治医やお住まいの自治体の窓口に確認してください。
監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関・学会・学術論文の情報を参照して作成しています。記載の数値は報告例に基づくものであり、症例数が限られるため今後の知見により変わる可能性があります。診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
参考情報:GRIN2B-Related Neurodevelopmental Disorder|GeneReviews(米国国立医学図書館 NCBI Bookshelf)/Intellectual Disability, Autosomal Dominant 6(GRIN2B関連神経発達障害)|GARD 希少疾患情報センター(米国国立衛生研究所)/GRIN2B encephalopathy: novel findings on phenotype, variant clustering, functional consequences and treatment aspects|PubMed/指定難病一覧|厚生労働省
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
