クリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群) 【医師監修】

クリ・デュ・チャット症候群

クリ・デュ・チャット症候群は、5番染色体の一部が失われてしまうことが原因で起こる疾患で、甲高い猫のような泣き声が特徴的な症状の一つです。その他にも特徴的な顔貌や成長障害、筋緊張低下、精神運動発達の遅れなど様々な症状を認めます。15,000~50,000出生に一人と比較的まれな染色体異常となっています。

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クリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群)とは

クリ・デュ・チャット症候群(Cri du Chat syndrome)は、5番染色体の一部が失われてしまうことが原因で起こる疾患で、甲高い猫のような泣き声が特徴的な症状の一つであり、「5p欠損症候群」、「5p-症候群(5pマイナス症候群)」や「猫鳴き症候群」とも呼ばれます。(’Cri du Chat’ とはフランス語で「猫の鳴き声」という意味です。)特徴的な泣き声以外にも、成長障害や筋緊張低下、精神運動発達の遅れなどの症状を認めます。

クリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群)の症状と特徴

クリ・デュ・チャット症候群では、特徴的な甲高い猫のような泣き声のほかに、様々な身体や発達の症状が起こります。ここでは一つずつ症状を詳しく見ていきます。

顔面の特徴    

クリ・デュ・チャット症候群のお子さんは特徴的な顔貌をしていることが知られています。具体的には、両目が離れている、丸顔である、耳の位置が低い、顎が小さいなどの特徴があります。

身体の特徴     

 クリ・デュ・チャット症候群では、代表的な症状である猫の鳴き声ような甲高い泣き声を新生児期から乳児期に認めます。

その他には、低出生体重(2,500g未満)、頭が小さい、筋緊張の低下などの身体的特徴も認めることがあります。

哺乳や飲み込みがうまくできないこともあり、誤嚥をして肺炎になってしまうこともあります。

クリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群)

各臓器の合併症 

各臓器にも下記のような合併症を生じることがあります。

先天性心疾患 

心室中隔欠損や動脈管開存、心房中隔欠損といった先天性心疾患を20%程度認めます。

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泌尿生殖器系の合併症 

停留精巣や尿道下裂、馬蹄腎・腎無形成などの腎臓の奇形を認めることがあります。

眼科系の合併症 

斜視や近視、乱視などを認めることがあります。

その他の合併症 

てんかん、脊柱側弯症や歯並び、口唇・口蓋裂などの合併症を認めることもあります。

発達障害

クリ・デュ・チャット症候群では、精神や運動発達の障害を認めることが多く、運動機能の遅れから首の座りやおすわり、独り歩きが遅れる傾向にあります。精神発達に関しては、言語発達の遅れ、コミュニケーション障害を認めます。

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クリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群)の原因

ヒトの遺伝子は46本の染色体で構成されており、父親から受け継ぐものと母親から受け継ぐものがペアとなって2本ずつが23対存在しています。23対のうち22対は常染色体と呼ばれ、1番から22番までの番号がついています。

残る1対は性染色体と呼ばれ、X染色体とY染色体の組み合わせで性別が決定します。(男性はXとYの組み合わせ、女性はXとXの組み合わせ)

1本の染色体はさらに細かい部分に分けることができ、中心にセントロメアがあり、それを挟んで短腕と長腕に分かれます。短腕のことを「p」と呼び、長腕のことを「q」と呼びます。例えば5番染色体の場合、短腕を5p、長腕を5qと呼ぶことになります。(図参照)

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クリ・デュ・チャット症候群では、5番染色体の短腕が部分的に欠失する(「欠損する」や「失われる」と同じ意味の遺伝学で用いられる用語です)ことが原因なので、染色体異常の位置を含めた呼び方として「5p欠失症候群」や「5p-症候群」とも呼ばれます。

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染色体異常は遺伝疾患の一つですが、クリ・デュ・チャット症候群が両親からの遺伝で起こるのかというと必ずしも遺伝するわけではありません。およそ85%程度が両親には染色体の異常は認めず、突然変異によるものと考えられています。突然変異は約80%が父親の精子で起こり、精子が形成されていく過程で何らかの原因で染色体が切断されることで異常が生じます。染色体がどのくらい欠失しているかには個人差があり、一般的には欠失が大きいほど重い症状が出る傾向にあります。

残りの10%前後が、不均衡型相互転座によるものです。このタイプでは両親のいずれかに「転座」と呼ばれる染色体の異常がある場合に起こり、両親から子供へ疾患が遺伝していきます。

残りの5%程度はモザイク型と呼ばれるのもので、受精したあとの受精卵が細胞分裂していく過程で染色体の欠失が起こります。受精卵には正常の細胞と染色体異常を持った細胞が「モザイク」のように混在しています。全ての細胞が染色体異常を持っているわけではないので、一般的には症状は軽い場合が多いです。

欠失が起こる場所によって、症状の現れ方が異なることも分かってきました。5p15.3領域の欠失は特徴的な猫のような泣き声に、5p15.2領域の欠失は知的障害や小頭症に関連するとされています。この5p15.2領域にあるCTNND2という遺伝子は、脳の神経細胞の発達に関わることが解明されつつあります。

クリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群)

クリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群)の検査方法

クリ・デュ・チャット症候群の診断は、出生後に身体的所見に基づいて判断され、血液を用いてFISH法と呼ばれる染色体検査により診断を確定します。最近では新型出生前診断(NIPT:non-invasive prenatal genetic testing)と呼ばれる検査によっても、クリ・デュ・チャット症候群を引き起こすような小さな染色体の欠失も検出できるようになってきています。

NIPT(新型出生前診断)は母親から血液を採取する検査ですが、母親の血液中にある赤ちゃんのDNA断片を解析して、染色体の病気や異変を調べることができる新しいスクリーニング検査です。ヒロクリニックNIPTが提携している東京衛生検査所では、VeriSeqNIPT Solution V2という最新型の遺伝子検査装置を有しており、他の装置では検出困難な小さな染色体異常を検出することが可能となっています。(クリ・デュ・チャット症候群の全てを検出できるわけではありませんが、500万塩基以上の欠失があれば検出することができます)

ヒロクリニックNIPTではエコー検査で妊娠を確認後すぐに染色体検査を受けることが可能です。

出生後の確定診断では、身体的な特徴から疑いを持った上で、次の遺伝学的検査を組み合わせて欠失の有無や範囲を確認します。

染色体核型分析(G分染法)

最も標準的な検査です。顕微鏡で5番染色体を観察し、短腕の一部が短くなっていないかを確認します。

FISH法

特定の遺伝子領域に光る標識をつけて確認する方法です。G分染法では見逃されやすい微細な欠失を見つけるのに適しています。

マイクロアレイ検査(CMA)

ゲノム全体を細かくスキャンし、欠失している正確な範囲を特定できる検査です。欠失した遺伝子の種類が分かるため、その後の症状の予測や管理にも役立ちます。

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クリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群)になる確率

クリ・デュ・チャット症候群が起こる確率は15,000~50,000出生に一人と考えられており、比較的まれな疾患となっています。

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クリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群)の治療法 

クリ・デュ・チャット症候群に対する特別な治療法は現時点ではありません。症状に個人差があり、年令によっても注意すべき問題点が異なってくるので、現れてくる症状に対応した治療が行われます。

新生児期には主に哺乳障害に対して経管栄養を行ったり、呼吸の症状に対する治療を行います。前に説明したような先天性心疾患や泌尿器科的合併症、てんかんなどが目立つ場合は手術を行ったり、薬物による治療を行ったりして対応します。

合併症の対する治療が落ち着いた幼児から学童期以降では、運動や精神発達の遅れに対してリハビリを行い、歯科や眼科の定期検診を行っていきます。幼稚園や小学校では特別支援教育の調整が勧められます。

クリ・デュ・チャット症候群では身体的な障害だけでなく、精神発達の遅れやコミュニケーション障害など様々な症状を認め、個人差も大きい疾患なので、一人ひとりに合わせた多面的なサポート体制を準備することが重要になってきます。

クリ・デュ・チャット症候群の予後は、先天性心疾患や難治性てんかんの状況によって左右されますが、成人するまで生きることができる方も多いです。

治療そのものは症状に応じた対症療法が中心ですが、理学療法(PT)や作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)による早期からの療育が、お子さんの発達を大きく後押しします。小児科や循環器科、耳鼻咽喉科、歯科など、複数の診療科が連携して支えていく形が一般的です。

クリ・デュ・チャット症候群(5p欠失症候群)で受けられる福祉制度と家族への支援

日本では、5p欠失症候群のお子さんとご家族が利用できる福祉制度がいくつも用意されています。診断がついた後は、こうした支援制度を早めに確認しておくと安心です。

制度名概要
療育手帳知的発達の遅れに対して交付されます。福祉サービスや交通割引、税の減免などが受けられます。
身体障害者手帳心疾患や運動機能の障害がある場合に交付されます。
特別児童扶養手当障害のある20歳未満の児童を養育する家庭に支給される手当です。
小児慢性特定疾病の医療費助成合併症の内容によって、医療費の助成が受けられる場合があります。
放課後等デイサービス学齢期のお子さんに、放課後の療育や居場所を提供する福祉サービスです。

日本では「5p-症候群家族会」といった家族会も活動しています。同じ疾患のお子さんを育てるご家族と悩みや喜びを分かち合えることは、大きな心の支えになります。一人で抱え込まず、医療者や療育スタッフ、地域の支援を頼りながら、お子さんの成長をゆっくり見守っていってください。

まとめ

クリ・デュ・チャット症候群は、5番染色体の一部が失われてしまうことが原因で起こる染色体異常で、甲高い猫のような泣き声が特徴的な症状の一つです。その他にも特徴的な顔貌や成長障害、筋緊張低下、精神運動発達の遅れなど様々な症状を認めます。

15,000~50,000出生に一人と比較的まれな染色体異常ですが、最近では最新型の検査装置を用いてNIPT(新型出生前診断)によって出生前診断ができるようになってきています。

特別な治療法はなく、個々の症状に応じた治療が行われますが、合併症の管理が良ければ成人まで生きる方も多くいらっしゃいます。

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【参考文献】

クリ・デュ・チャット症候群は、5番染色体の一部が失われてしまうことが原因で起こる疾患で、甲高い猫のような泣き声が特徴的な症状の一つです。その他にも特徴的な顔貌や成長障害、筋緊張低下、精神運動発達の遅れなど様々な症状を認めます。15,000~50,000出生に一人と比較的まれな染色体異常となっています。

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医師監修 監修日:2021年11月30日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2021年11月30日
水田 俊 (医師・医学博士/ヒロクリニック岡山駅前院 院長)

日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科学会認定 出生前コンサルト小児科医/小児科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2021年11月30日
新田 啓三 (医師/ヒロクリニック札幌駅前院 院長)

日本小児科学会 小児科専門医/日本アレルギー学会 所属/小児科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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