発達性およびてんかん性脳症26型(Developmental and epileptic encephalopathy 26)

この記事のまとめ

発達性てんかん性脳症26型は、KCNB1という一つの遺伝子の変化に関連し、乳幼児期からてんかん発作と発達の遅れが重なって現れる、とても数の少ない病気です。多くは親から受け継いだものではなく、新たに生じた変化(de novo)で起こり、症状の重さには幅があります。診断は脳波・画像・遺伝学的検査を組み合わせて行い、治療は発作のコントロールと発達支援が柱になります。妊婦さんが受けるNIPTは、主に21・18・13トリソミーなど特定の染色体を調べる非確定的な検査。KCNB1のような単一の遺伝子が関わるこの病気は、一般的なNIPTの対象ではありません。診断や見通しの相談は、主治医や遺伝の専門外来へつないでください。

この記事でわかること

  • 発達性てんかん性脳症26型とはどんな病気で、KCNB1遺伝子とどう関わるのか
  • 乳幼児期のてんかん発作・発達の遅れ・行動面など、報告されている主な症状
  • 診断の進め方(脳波・画像・遺伝学的検査)と、治療・療育・家族支援の考え方
  • NIPTで調べられる範囲の限界と、出生前の検査とどう向き合うかのヒント

発達性てんかん性脳症26型とは|KCNB1遺伝子との関わり

発達性てんかん性脳症26型は、KCNB1という一つの遺伝子の変化に関連し、乳幼児期からてんかん発作と発達の遅れが重なって現れる、数の少ない病気です。医療現場では病名を数字の型で区別しますが、この26という番号は見つかった順番を表すもの。重症度の順位ではありません。まずは、病名が示す意味をひとつずつ見ていきます。

「発達性」とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが脳の発達に影響することを指します。発作の有無にかかわらず、発達に課題が生じやすい体質という意味です。「てんかん性」は、くり返す発作や脳波の乱れが、脳の働きにさらに負担をかける状態を表します。

「脳症」は、脳全体の働きに幅広く影響が及んでいる状態を示す医学の言葉です。つまりこの病気は、遺伝子による発達への影響と、発作による脳への負担という二つの要素が重なって症状が現れます。原因となる遺伝子が2014年ごろの研究でKCNB1と特定され、少しずつ理解が進んできました。

頻度はとても低く、正確な統計はまだありません。10万人に1人よりも少ないと考えられています。ただ、遺伝子を調べる技術が進んだことで、原因不明とされていたてんかんや発達の遅れの中からKCNB1の変化が見つかる例が、少しずつ増えてきました。

この病気で見られる三つの柱 てんかん発作 乳幼児期から 多彩なタイプ 発達の遅れ 言葉・運動・知的 重さに幅がある 行動面の特徴 こだわり・多動 感覚の過敏さ 症状の出方や重さは、お子さんによって大きく異なります
発達性てんかん性脳症26型で報告されている主な症状の全体像

KCNB1関連の病気という広がり

KCNB1の変化が関わる状態は、この病気だけではありません。てんかん発作が目立つタイプもあれば、発作は軽く発達の遅れが中心のタイプもあります。まとめてKCNB1関連の神経発達の病気と呼ばれることもあります。

同じ遺伝子の変化でも、現れ方は一人ひとり違います。だからこそ、診断名だけで見通しを決めつけないことが支えになります。似た背景を持つ発達の遅れについては、妊娠中の知的障害のリスクを整理した記事もあわせて読んでみてください。

主な症状|乳幼児期の発作と発達の遅れ

この病気の症状は、てんかん発作・発達の遅れ・行動面の特徴という三つに大きく分けられます。お子さんごとに出方はさまざまで、すべてがそろうとは限りません。ここでは、これまでに報告されてきた代表的な特徴を順に見ていきます。あくまで一般的な傾向として受け止めてください。

てんかん発作

多くの場合、生後6か月ごろから2歳ごろまでに最初の発作が始まります。もっと早いこともあれば、少し遅れて現れることもあります。発作のタイプは多彩で、一人のお子さんが複数の種類を併せ持つことも珍しくありません。

全身が硬直してから震える大きな発作、数秒だけ意識が途切れる発作、手足が一瞬ビクッとする発作などが見られます。視線が偏る、体の一部がピクピクするといった、体の一部から始まる発作もあります。両手を広げてお辞儀のような動きをくり返すタイプが現れることもあります。

見過ごされやすいのが、睡眠中の脳波の乱れです。目に見えるけいれんがなくても、寝ている間に脳の中で異常な電気活動が続くことがあります。この状態が長引くと、言葉の発達が止まったり、いったんできたことができなくなる退行が起きたりしやすいと考えられています。発作が薬でおさまりにくい難治のケースもありますが、複数の薬を調整して発作を減らせることもあります。

発達と運動の遅れ

発作と並んで目立つのが、発達のゆっくりさです。とくに言葉の面で遅れが見られる傾向があります。聞いて理解する力は育ちやすい一方、自分から話す力が伸びにくいお子さんが多いです。

発語が少なくても、絵カードや身ぶりを使って気持ちを伝えられる子もいます。知的な発達の遅れは軽い場合から重い場合まで幅広く、新しいことを覚えるのに時間がかかったり、複雑な指示の理解が難しかったりします。首すわり・お座り・歩き始めといった運動面も、ゆっくり進む傾向。

赤ちゃんのころに、体がやわらかく感じられる筋緊張の低下が見られることもあります。抱いたときにずっしり重く感じたり、関節がやわらかすぎたりする状態です。多くのお子さんは成長とともに歩けるようになりますが、少しふらついたり、手先の不器用さが残ったりすることがあります。

行動面の特徴

行動の面でも、いくつかの特徴が知られています。視線が合いにくい、こだわりが強い、同じ動作をくり返すなど、自閉スペクトラム症に似た様子が見られることがあります。人とのやりとりが苦手なお子さんもいます。

じっとしているのが苦手で動き回る、気になったものにすぐ手が出るといった、落ち着きにくさが目立つこともあります。大きな音や特定の触り心地を強く嫌がる感覚の過敏さ。自分の思いが通らないときに、自分や周りを叩いてしまう子もいます。これは言葉でうまく伝えられないもどかしさの表れであることも多いと感じます。

原因|KCNB1遺伝子と神経の電気信号

この病気の原因は、脳の神経細胞で電気信号のブレーキ役をになうKCNB1遺伝子に変化が起きることにあります。親の育て方や妊娠中の生活が招くものではありません。ここでは、遺伝子の働きと変化の意味、そして遺伝の仕組みを順にお話しします。

脳の神経細胞は、電気信号を使って情報をやりとりしています。信号を出したり止めたりするために、細胞の内と外でナトリウムやカリウムといったイオンが出入りします。KCNB1が作るのは、カリウムを通す小さな通り道(カリウムチャネル)。興奮した神経細胞を落ち着かせる、ブレーキのような役割をになっています。

この遺伝子に変化が起きると、カリウムの通り道がうまく作られず、ブレーキが効きにくくなります。神経が過剰に興奮しやすくなり、てんかん発作が起きやすくなると考えられています。さらにKCNB1は、脳が育つ時期に神経細胞を正しい場所へ導く働きにも関わるため、発達の遅れにもつながるとされます。

多くは新たに生じた変化(de novo)

多くのご家族が、自分が遺伝させたのではないか、妊娠中の何かが悪かったのではないかと、ご自身を責めてしまいます。けれど、症状の重いタイプのほとんどは、新たに生じた変化(de novo)によって起こります。

これは、両親の遺伝子には変化がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精のすぐあとの細胞分裂の段階で、偶然にKCNB1に変化が生じたことを意味します。つまり、どちらかの親のせいではありません。妊娠中の食事・薬・ストレス・環境が原因になるものでもないのです。誰にでも起こりうる、生命が生まれるときの偶然のできごと。

遺伝の仕組みや再発の可能性は、ご家族によって事情が異なります。正確な見通しは、遺伝カウンセリングで一人ひとりの状況に合わせて確認してください。神経の遺伝子が関わる別の病気の例としては、神経線維腫症1型についての記事も参考になります。

診断と検査|確定には遺伝学的検査が必要

診断は、症状の観察に加えて脳波検査・画像検査・遺伝学的検査を組み合わせ、最終的にKCNB1の変化を確認して確定します。症状だけでは、ほかの発達の病気やてんかんと見分けがつきにくいためです。ここでは、それぞれの検査が果たす役割を整理します。

脳波検査は、発作のタイプや脳の活動を調べる欠かせない検査です。とくに睡眠中の脳波を確認し、寝ている間の異常な放電がないかを見ます。見た目の発作がなくても発達が止まっているときは、睡眠中の脳波を詳しく調べることがすすめられます。

脳の形を調べる画像検査では、発症の初期に明らかな異常が見られないことも多いです。年齢が進むと、脳が少し縮んで見えることもあります。ほかの病気と区別するためにも役立つ検査。そして確定に欠かせないのが、血液を採ってDNAを調べる遺伝学的検査です。遺伝子を広く読み解く検査や、てんかんに関わる遺伝子をまとめて調べる検査を行い、KCNB1の変化が見つかって初めて診断がつくケースがほとんどです。

診断のために脳波や遺伝学的検査を受ける乳幼児をやさしく見守るイメージ

治療と管理|発作のコントロールと発達支援

今の医学では遺伝子の変化そのものを治す方法はまだありませんが、発作を抑える治療と発達を支える療育で、お子さんの生活の質を高めることは十分にできます。症状に合わせた対応と、ご家族への支援が両輪になります。ここでは治療と管理の柱を紹介します。

てんかんに対しては、発作のタイプに合わせて抗てんかん薬を選びます。特効薬はまだ確立されていませんが、複数の薬を組み合わせて発作を減らすことを目指します。睡眠中の脳波の乱れが強いときは、それに合わせた薬が検討されることもあります。薬でおさまりにくいときは、食事の内容を工夫する食事療法が選択肢に入ることもあります。

発達を支える療育は、できるだけ早い時期から始めると力を発揮します。言葉の訓練では、絵カードやタブレットなど話し言葉の代わりになる手段も活用します。気持ちが伝わると、かんしゃくや行動面の困りごとが減ることもあります。手先の練習やバランス感覚を養う運動、感覚の過敏さへの工夫も、日々の暮らしを楽にしてくれます。

発作によるけがを防ぐ安全対策も欠かせません。家具の角を保護する、入浴中は目を離さない、発作が起きたときの対応をあらかじめ主治医と決めておく。こうした備えが、家族の安心につながります。信頼できる情報源として、難病情報センターや、発達の支援に関する国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報も確認してみてください。公的な相談先や支援制度はこども家庭庁の障害児支援の案内にまとまっています。

NIPTで分かること・分からないこと

妊婦さんが受けるNIPTは主に21・18・13トリソミーなど特定の染色体を調べる非確定的な検査で、KCNB1のような単一の遺伝子が関わるこの病気は一般的な対象ではありません。検査で分かる範囲には限りがあります。ここでは、その線引きと向き合い方を整理します。

検査で調べる範囲のイメージ 一般的なNIPTの対象 染色体の数の変化 21・18・13トリソミー など(非確定的な検査) 一般的な対象外 単一の遺伝子の変化 KCNB1の変化 この病気はここに含まれる 確定診断は羊水検査など。詳しい対象は医師に確認してください
一般的なNIPTが調べる範囲と、この病気の位置づけのイメージ

NIPTは、お母さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAの断片を調べ、特定の染色体の数の変化がないかを見る検査です。あくまで可能性を示す非確定的な検査で、確定には羊水検査などが必要になります。KCNB1のような一つの遺伝子の小さな変化は、一般的なNIPTの対象には含まれません。

検査を受けるかどうか、迷う気持ちは自然なものです。私も外来で、同じように悩む声をたくさん聞いてきました。10週で受けるかどうかを夫婦で相談中という@koinuvhanさんも、年齢的に確率が気になり、周りに受けている人もおらず、費用の高さもあって悩む、と率直につづっていました。迷いながら決めていくのは、ごく当たり前のことだと感じます。

もう一つ知っておいてほしいのが、どんな検査にも分かる範囲の限りがあるという点です。すべての病気を一度に調べられる検査は存在しません。2人目の出生前診断をどうするか考える@mi0813rt3さんも、すべての障害が分かるわけではないと理解しつつ、不安の可能性は少しでも減らしたい、でも高額で悩む、と書いていました。分かること・分からないことを整理してから選ぶ姿勢が、後悔の少ない決断につながります。

NIPTの結果の読み方や、その後の流れを知りたいときは、NIPTの検査結果の見方をまとめた記事や、ダウン症とNIPTの関係を解説した記事も役立ちます。不安なことは一人で抱えず、遺伝カウンセリングで相談してください。

よくある質問

Q. 発達性てんかん性脳症26型は遺伝しますか?

症状の重いタイプの多くは、両親から受け継いだものではなく、新たに生じた変化(de novo)で起こります。両親の遺伝子には変化がなく、精子や卵子ができる過程や受精直後の偶然によって生じたものです。ご自身の育て方や妊娠中の生活が原因ではありません。再発の可能性はご家族ごとに異なるため、正確な見通しは遺伝カウンセリングで確認してください。

Q. NIPTでこの病気は分かりますか?

一般的なNIPTは、主に21・18・13トリソミーなど特定の染色体の数の変化を調べる非確定的な検査です。KCNB1のような一つの遺伝子が関わるこの病気は、一般的なNIPTの対象には含まれません。確定診断には羊水検査などが必要です。検査で分かる範囲には限りがあるため、何を調べたいのかを医師や遺伝カウンセリングで整理してから受けてください。

Q. 発作は薬でおさまりますか?

発作のタイプによっては、薬でおさまりにくい難治のケースがあります。ただ、複数の薬を組み合わせて調整することで、日常生活に支障が出にくい程度まで発作を減らせることもあります。睡眠中の脳波の乱れが強いときは、それに合わせた治療が検討されます。薬でコントロールが難しいときは食事療法が選択肢になることもあるため、主治医と相談を続けてください。

Q. 26型の「26」は重症度を表しますか?

この数字は重症度ではなく、発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号です。数が大きいほど重いという意味はありません。同じKCNB1の変化でも、症状の重さや現れ方は一人ひとり大きく異なります。診断名の数字に不安を感じすぎず、お子さんの実際の様子に合わせたケアを主治医と考えていってください。

Q. 早期の療育にはどんな意味がありますか?

できるだけ早い時期から言葉や運動、生活動作を支える療育を始めると、お子さんの持つ力を引き出しやすくなります。話し言葉が難しくても、絵カードやタブレットなどの手段で気持ちを伝えられるようになると、かんしゃくが減ることもあります。地域の支援制度は、こども家庭庁や発達障害の情報センターの案内で確認できます。まずは主治医や地域の相談窓口へつないでください。

Q. 出生前に検査を受けるか迷っています。どう考えればよいですか?

迷う気持ちは、とても自然なものです。まず、その検査で何が分かり、何が分からないのかを整理してください。すべての病気を一度に調べられる検査はありません。費用や結果が出たあとの選択も含めて、ご夫婦で話し合い、必要なら遺伝カウンセリングで専門家に相談すると、納得のいく決断につながります。ヒロクリニックNIPTでは、LINEでの無料相談も受け付けています。

著者・監修

岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。

医師監修 監修日:2026年1月16日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2026年1月16日
花澤 司 (医師/ヒロクリニック大宮駅前院 院長)

日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2026年1月16日
陽川 英仁 (医師・医学博士/ヒロクリニック大阪駅前院 院長)

日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Torkamani A, Blendy JA, Kunkel DH, et al. De novo KCNB1 mutations in epileptic encephalopathy. Ann Neurol. 2014 Oct;76(4):529-40.
  2. Saitsu H, Akita T, Ohba C, et al. De novo KCNB1 mutations in infantile-onset epilepsy associated with developmental delay. Clin Genet. 2015 May;87(5):481-5.
  3. de Kovel CGF, Brands MM, van Kempen MJA, et al. Neurodevelopmental disorders caused by de novo variants in KCNB1. Neurol Genet. 2017 Sep 20;3(5):e189.

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