小さな異常が大きな影響に…NIPTで見る「見えないリスク」

妊婦

「大きな異常は見つからなかったから、もう安心」と考える方は少なくありません。
ですが、NIPTには検出できる範囲とできない範囲があります。私自身、外来のご相談で「NIPTを受ければ先天性のことは全部わかると思っていました」という声を何度も聞いてきました。この記事では、NIPTで「わかること」と、意外と知られていない「わからないこと」を整理します。

この記事でわかること

  • NIPTが調べているものと、その仕組み
  • NIPTでは判定できない先天性疾患の具体例
  • 偽陽性・偽陰性が起こる理由(モザイクと胎盤限局性モザイシズム)
  • 「わからない部分」にどう備えればよいか

監修: 岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director

目次

NIPTでわかること・わからないこと まず整理します

結論から言うと、NIPTは限られた疾患だけを調べる非確定的なスクリーニング検査です。すべての先天性疾患を網羅する検査ではありません。

NIPTが調べているもの

NIPTは母体血に含まれる胎児由来のcfDNA(セルフリーDNA)を解析する検査です。
採血だけで、赤ちゃんの染色体に関する情報の一部を調べられます。

ただし対象となるのは、主に13・18・21トリソミーなどの染色体数の異常と、一部の性染色体異常、施設によっては微小欠失・重複です。日本産科婦人科学会の指針でも、NIPTは非確定的検査であり、陽性の場合は羊水検査などによる確定診断が必要とされています。

対象となる主な染色体異常

SNSでも同様の整理をしている投稿を見かけました。@sakurako202001さんは、出生前診断でわかるものとして、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)の3つを挙げ、他の染色体異常は対象に含まれない点に注意を促していました。実際の対応範囲は施設のプランによって幅がありますが、この投稿の指摘は核心を突いています

この3疾患に加え、施設によっては性染色体異常や一部の微小欠失症候群(22q11.2欠失症候群など)も対象になります。検査でわかる範囲の詳細は事前に確認しておきましょう。

「見えないリスク」①検出対象外の先天性疾患

NIPTの染色体解析だけでは、構造の異常は判定できません。ここが最初の「見えないリスク」です。

心疾患や口唇口蓋裂は超音波検査の領域

先天性心疾患や口唇口蓋裂といった構造異常は、染色体の数や大きな欠失とは別の問題です。
これらは超音波検査でしか確認できません。NIPTの結果が陰性でも、構造異常がないと保証されるわけではないのです。

単一遺伝子疾患は対象外

脆弱X症候群のような単一遺伝子疾患も、通常のNIPTでは検出対象外です。
染色体単位ではなく、1つの遺伝子の変異による疾患だからです。

気になる方向けの検査もありますが、対応範囲はプランごとに異なります。プラン診断で自分に合う検査範囲を確認しておくと安心です。

「見えないリスク」②モザイクと胎盤限局性モザイシズム

NIPTの結果と赤ちゃんの実際の染色体が一致しないことも、稀にあります。これが2つ目の「見えないリスク」です。

偽陽性・偽陰性が起こる仕組み

NIPTが解析するcfDNAの多くは、胎児そのものではなく胎盤由来です。
胎盤の一部の細胞だけに染色体異常がある「胎盤限局性モザイシズム」が起きていると、胎児本体の染色体とは異なる結果が出ることがあります。

また、体の一部の細胞だけに異常がある「モザイク型」の場合も、採血のタイミングや解析部位によって結果が揺れる可能性があります。
陽性でも赤ちゃんに異常がない場合、陰性でも異常が見逃される場合、どちらも起こり得るのです。

微小欠失症候群にも精度の限界がある

22q11.2欠失症候群のような微小欠失は、検出対象になっている施設でも精度に限界があります。
欠失の範囲が極端に小さい場合や、モザイクの割合が低い場合、検出が難しくなるためです。

「見えないリスク」③全ゲノム・全疾患を網羅する検査ではない

NIPTは「一部を可視化する検査」であって、全ゲノムを網羅する検査ではありません。ここを誤解したまま検査を受けると、結果への向き合い方が変わってしまいます。

検査機関選びが結果の信頼性を左右する

どこで検査を受けるかによっても、対象範囲や精度管理の水準は変わります。
実際に妊婦さんと話していると、価格やスピードだけで施設を選びかけて、後から不安になるケースをよく見かけます。

@itsumonemui888さんも、NIPTをどこで受けるか悩んでいると投稿していました。知人が受けたクリニックはスピードも費用も良かったものの、認証を受けた施設かどうかが気になる、という内容です。認証施設かどうかの確認は、検査の質を見極める重要な手がかりになります。

認証施設に関する情報は、NIPTコンソーシアムの公表資料でも確認できます。予約前に一度目を通しておいてください。

わからない部分にどう備えるか

NIPTの限界を知った上で大切なのは、「わからない部分」への備え方を持っておくことです。

遺伝カウンセリングを受ける

検査結果の意味は、数値だけでは正しく伝わらないことがあります。
遺伝カウンセリングは医師が担当し、対象疾患の範囲や確率の意味を一つずつ説明します。

確定診断(羊水検査)を検討する

NIPTで陽性となった場合、確定診断は羊水検査または絨毛検査で行います。
NIPTだけで最終判断をせず、確定検査の結果を待って方針を決めてください。

出生後の医療・支援体制を整える

構造異常や単一遺伝子疾患のように出生後にわかるものについては、生まれてからの体制づくりが備えになります。

医療的フォロー

小児科での定期的な健康管理や、専門外来・療育センターの早期利用が挙げられます。

教育・療育サポート

乳幼児期の児童発達支援、学齢期の特別支援学級や通級指導が候補になります。

福祉・経済的サポート

療育手帳の取得、特別児童扶養手当や医療費助成の活用で、経済的な負担を抑えられます。
制度の詳細はこども家庭庁の母子保健情報で確認できます。

ハート

家族の心理的な備えと情報収集

「わからない部分がある」と知ることは、不安の種にも、備えのきっかけにもなります。

感情の整理と夫婦での対話

不安や戸惑いは自然な反応です。
一人で抱え込まず、パートナーやカウンセラーと共有してください。出生後の生活を事前にイメージしておくことも助けになります。

患者会・支援団体とのつながり

同じ経験を持つ家庭との情報交換は、想像以上に心の支えになります。
私たちの外来でも、家族会に参加したご家族から「一人ではないと感じられた」という声をよく聞きます。孤立させない環境づくりが、育児を続ける力につながります。

まとめ:NIPTは「見えないリスク」の一部を照らす検査です

NIPTは、母体血のcfDNAを解析し、限られた染色体異常のリスクを調べる非確定的検査です。構造異常や単一遺伝子疾患、全ゲノムの状態まではわかりません。

  • 対象疾患は13・18・21トリソミーなどに限られる
  • モザイクや胎盤限局性モザイシズムにより偽陽性・偽陰性が起こり得る
  • 陽性時の確定診断は羊水検査絨毛検査で行う

「わからない部分」を正しく理解した上で検査プランを選ぶことが、妊娠期の安心につながります。
詳しい対象範囲は知的障がいがわかるNIPTとは、代表的な遺伝子異常については代表的な遺伝子異常と知的障害のページで確認してください。予約手順は予約情報にまとめています。

NIPTの予約はこちら

お電話でのお問い合わせ:0120-169-629

よくある質問(FAQ)

NIPTを受ければ先天性疾患は全部わかりますか。

いいえ、わかりません。NIPTが調べるのは主に13・18・21トリソミーなどの染色体数の異常と、施設によっては一部の性染色体異常微小欠失です。心疾患や口唇口蓋裂などの構造異常、単一遺伝子疾患は対象外です。

NIPTの結果が陽性だった場合、それが確定診断になりますか。

なりません。NIPTは非確定的検査です。確定診断には羊水検査または絨毛検査が必要です。

偽陽性・偽陰性はどのくらいの頻度で起こりますか。

頻度は対象疾患や施設の解析精度によって異なります。モザイクや胎盤限局性モザイシズムが原因となるケースが知られており、頻度の詳細は検査前の遺伝カウンセリングで確認してください。

超音波検査を受けていればNIPTは不要ですか。

いいえ、目的が異なるため、どちらか一方で足りるものではありません。超音波検査は構造異常を、NIPTは染色体数の異常を確認する検査です。両方を組み合わせることで、確認できる範囲が広がります。

検査機関はどのように選べばよいですか。

費用やスピードだけでなく、認証を受けた施設であるかを確認してください。対象疾患の範囲や遺伝カウンセリング体制も、事前に比較しておくと安心です。

NIPTでわからなかった疾患は出生後にどう対応しますか。

出生後の健診や小児科での経過観察で見つかることがあります。医療・教育・福祉の支援体制を早めに把握しておくと、必要になったときにスムーズに動けます。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会.
    「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針(2022年改訂)」
    https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/NIPT2022_guideline.pdf
  2. McDonald-McGinn DM, Sullivan KE, Marino B, et al.
    22q11.2 deletion syndrome. Nat Rev Dis Primers. 2015;1:15071.
    https://doi.org/10.1038/nrdp.2015.71
  3. Wapner RJ, et al.
    Chromosomal microarray versus karyotyping for prenatal diagnosis.
    N Engl J Med. 2012;367:2175‑2184.
    https://doi.org/10.1056/NEJMoa1203382
  4. Miller DT, et al. Chromosomal microarray is a first-tier clinical diagnostic test for individuals with developmental disabilities or congenital anomalies.
    Am J Hum Genet. 2010;86(5):749‑764.
    https://doi.org/10.1016/j.ajhg.2010.04.006
  5. Riggan KA, et al. Ethical considerations in prenatal genetic testing.
    Clin Perinatol. 2020;47(2):355‑372.
    https://doi.org/10.1016/j.clp.2020.02.010
医師監修 監修日:2025年9月25日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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