羊水とは?【医師監修】

羊水とは

羊水は、胎児の発達・成長に非常に重要な役割を果たしており、妊娠中は羊水量が適切であるか注意して観察する必要があります。また、羊水検査は出生前診断として胎児の染色体異常や先天性異常を調べる目的でも重要です。

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羊水とは

羊水とは、妊娠中に子宮内の胎児の周囲を満たしている液体のことです。胎児にかかる圧力や衝撃を軽減させたり、子宮内の環境を良好に維持する役割を果たしています。

羊水の量に異常があると胎児に大きな影響が出るため、妊娠の状態を観察する上で非常に重要です。そのほか、出生前診断として胎児の染色体異常や先天性異常を調べるため、羊水検査が行われます。

羊水の色・におい

羊水は妊娠初期には無色透明ですが、妊娠後期になると胎児の皮膚や胎脂が混じり乳白色になります。正常ではにおいはありません。pHは7.0-8.5のアルカリ性の液体です。

羊水が混濁することもありますが、これは羊水が感染を起こしていたり、胎児が羊水の中に「うんち(胎便)」をしたりすることで起こります。

羊水の量はどうやって測る?通常の量は?

羊水の量は妊娠初期から徐々に増えていき、30〜35週で約800mlとピークとなり、それ以降は分娩まで減少していきます。

羊水の量の測定は超音波検査(エコー検査)により行われ、妊婦健診でも定期的に行われている検査になります。超音波検査では直接羊水の量を計測することは出来ませんが、羊水インデックス(Amniotic Fluid Index, AFI)や、羊水ポケット(Maximum Vertical Pocket, MVP)といった計測値で評価します。

羊水インデックスは臍を中心に子宮を上下左右に4分割し、それぞれの場所で羊水の深さを測って4つの数値を合計したものです(正常値は5〜24cm)。羊水ポケットはより簡単で、子宮の壁から胎児までの距離が最も離れている部位を測定します(正常値は2〜8cm)。

羊水の量はどうやって測る?

羊水の成分

羊水中には電解質や、ブドウ糖、アミノ酸、脂質など様々な物質が含まれています。これらは、母体や胎児の血液から漏れ出てくる成分、胎児の排泄(尿)や肺からの分泌液が主なものとして考えられています。

妊娠中期以降、胎児は羊水を飲み込んで、気道・肺へ取り込み、腸などで吸収されたあと、尿として排泄します。それを再び飲み込んで排泄することを繰り返して羊水は循環しています。

このように胎児の細胞や組織が含まれる羊水が、何らかの原因で母親の血中に入ってしまうと羊水塞栓症を引き起こし、呼吸困難や血圧低下などの重篤な症状を起こします。

羊水の役割

羊水は様々な役割を持っており、外から胎児に加わる衝撃を和らげたり、子宮内に一定の空間を作り胎児が運動しやすくしたり、胎児の体温を一定に保ちやすくしたりすることで物理的に胎児の発達・成長に大きな役割を果たしています。また、羊水に含まれる成長因子や生理活性物質の作用により消化管や気道など全身臓器の発達を促進することも知られています。

胎児の発達・成長以外にも、羊水は分娩時の子宮の収縮による圧力を分散したり、羊水の入った袋(胎胞)により子宮頸管を開大させたりすることで、分娩時にも重要な役割を担っています。

羊水検査とは?検査方法や費用などを解説します【医師監修】
NIPT(新型出生前診断)は、遺伝子の量から染色体の数や全染色体領域部分欠失・重複疾患をみる検査ですが、羊水検査は染色体そのものを羊水からみ...

羊水の異常

羊水は胎児の成長・発達、分娩に非常に重要であることは前に説明しましたが、羊水の量が多くなっても少なくなっても、胎児に起こっている大きな異常を反映している可能性があります。

羊水過多症

羊水の量が多くなってしまうことを羊水過多症と呼び、大きく分けて胎児側に異常がある場合と、母体側に異常がある場合の2種類があります。

胎児側に異常がある場合

胎児側の異常で羊水が増加する原因として、羊水の産生量が増える場合と羊水の吸収が妨げられる場合の2つにさらに分けることができます。

胎児から羊水の産生量が多くなる原因としては、血液型不適合妊娠などにより胎児貧血が起こり心拍出量が増加している状態が考えられます。

羊水の吸収が妨げられる原因としては、染色体異常や中枢神経系の異常などにより飲み込む力が弱っている場合や、食道閉鎖・十二指腸閉鎖など消化管に異常がある場合があります。十二指腸閉鎖による羊水過多症の場合、ダウン症を合併する可能性が高いことが知られています。

母体側に異常がある場合

母親が糖尿病であると、胎児も高血糖となり胎児の尿の量が増え、羊水が増える原因となります。

羊水過少症

羊水の減少は、胎児の尿産生が減少したり、先天的に腎臓に異常や尿の通り道(尿管や尿道)に閉鎖・狭窄があったりする場合に起こります。

妊娠高血圧症候群や胎児発育不全により胎児の置かれる環境が悪い状態でも尿の産生量が減少し、羊水が少なくなることが知られています。そのほか、前期破水による羊水の喪失などでも起こります。

羊水の異常

羊水混濁

羊水の混濁は、主に胎児が子宮内で「うんち(胎便)」を排出することで起こります。週数が進むと起こりやすく、妊娠42週を超えると30%に達するという報告もあります。胎便を含んだ羊水混濁は胎児の成熟を反映したものであり、それ自体だけでは特別な処置が必要なわけではありません。しかし、混濁した羊水を胎児が吸い込んでしまうと「胎便吸引症候群」となり、肺や気道に障害を引き起こし、呼吸困難に陥ってしまうので注意が必要です。

羊水検査とは

羊水検査は赤ちゃんが生まれる前に行われる出生前検査の一つで、羊水を採取して羊水に含まれる胎児の細胞を詳細に分析し、胎児に染色体や遺伝子の異常があるかどうかを調べる検査です。

妊娠15〜18週に行われ、超音波検査により胎児の位置や胎盤の位置を確認しながら、細い穿刺針を用いて羊水を体の外側から採取します(検査は局所麻酔で行われます。)。採取した細胞は培養したのちに染色体の分析を行うため、最終的な結果を得るまでには数週間かかります。

羊水検査の適応になるのは、夫婦のどちらかが染色体異常保因者である場合やダウン症などの染色体異常出産児を経験している場合、母親が高齢妊娠となる場合、NIPT(新型出生前診断)で陽性となった場合などです。

危険性が高い検査というわけではありませんが、子宮に針を指して行う検査であるため、約0.1〜0.3%程度の確率で検査後に流産する可能性があります。

現状では自閉症のような発達障害に関する判断を羊水検査で行うことは難しいと考えられています。

NIPT(新型出生前診断)と羊水検査の違いとリスクについて【医師監修】
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NIPT(新型出生前診断)

NIPT(Noninvasive prenatal testing, 新型出生前診断)とは、出生前検査の一つですが、羊水検査とは異なり母親から採取した血液の中に含まれる胎児のDNAの断片を解析することによりダウン症などの染色体異常を調べることのできる検査です。

血液で検査可能なので、羊水検査に比べ簡単に行うことができますが、非確定的な検査であるため、NIPT(新型出生前診断)で陽性の結果が出た場合は、確定的検査である羊水検査によって診断を確定させる必要があります。

【参考文献】

Q&A
よくある質問

羊水についてのよくある質問です。

  • Q
    羊水が多いと逆子になる?
    足やおしりが下に来ている状態である逆子(骨盤位とも呼ばれます)の多くは原因不明です。羊水過多は原因の一つと考えられていますが、羊水過多であるからと言って必ずしも逆子になるわけではありません。
  • Q
    羊水が多いと赤ちゃんに障害が残る?
    胎児の染色体異常や中枢神経系・消化管の先天性異常が羊水過多の原因であった場合、胎児の障害は出産後も残ることになります。
  • Q
    羊水が多いと巨大児になる?
    羊水過多の結果として巨大児になるというよりは、羊水過多の原因の一つである母体の糖尿病の場合、巨大児になる確率が上がりその結果として羊水過多になると考えられています。

羊水は、胎児の発達・成長に非常に重要な役割を果たしており、妊娠中は羊水量が適切であるか注意して観察する必要があります。また、羊水検査は出生前診断として胎児の染色体異常や先天性異常を調べる目的でも重要です。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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